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現場を訪問して障害者自立支援法を考える(メルマガ653号より抜粋編集一部修正)

 今日は、24日(火)。郵政民営化法案の提出で国会は空転しています。
 さて、ちょうど時間があるのでこの週末に訪問した知的障害者の施設や精神科クリニックなどのことを書き、障害者自立支援法案について考えたいと思います。

 なお、自己負担の額など、さまざまな金額や数字が出てくるかと思いますが、法案の中身もまだ決まっていない点も多いので、おおまな数字であることをお許しください。
 また、登場人物は全て仮名ですので、ご了承ください。

 知的障害者のデイサービスセンターとグループホームを訪問。
  デイサービスセンターには、中・重度の知的障害者19人が日中、朝9時から午後4時まで平日に通っています。リスト付きの車などで送迎。織物や箱作り、空き缶拾い、古紙回収などをしています。また、近所に2ヶ所のグループホームを運営し、それぞれ4人の重度の知的障害者が住んでいます。
 このデイサービスセンターは、知的障害のみならず、自閉症との重複障害の利用者も多くおられます。私が訪問した時も、大きな声をあげている利用者や走り回っている利用者がおられました。


 その光景を見て私が思い出したのが、今年1月に訪問した、福岡の知的障害者施設「カリタスの家」です。ここには重度の自閉症と知的障害の重複障害の利用者が入所していますが、職員が入所者に熱湯を飲ませ大やけどを負わせたり、夜間に落ち着かない入所者を布袋に入れたりという虐待が発覚し、問題になっていたのです。臭いも臭く、かなりいたんだ施設で「ここに居れば、逆にますます落ち着かなくなる」と感じました。
 それ以来、私の心の中で「重度の知的障害者や自閉症の人たちにとっての最適な居場所は?」という問いが大きくなっていました。
 5月の連休にはスウェーデンに調査に行きましたが、知的障害者や自閉症の人たちの大規模施設は廃止され、すべてグループホームになっています。
 「大規模な施設ではきめ細かなケアができず、障害者は落ち着きにくいが、グループホームのほうが落ち着きやすい」
 「大規模施設からグループホームに移ると、利用者はかなり落ち着く。問題行動も減ります。職員の働き甲斐もグループホームのほうが高い」
 と、スウェーデンの現場スタッフは言っていました。

 話は日本に戻ります。
 そのデイサービスセンターの利用者19人のうち8人が、2つのグループホームに分かれて暮らしていますが、そのひとつ、男性4人が住むグループホームを訪れました。
 入居者は、平日の日中はデイサービスに行っており、それ以外の時間をここで過ごします。
 夜は、世話人が1人泊まりこみでお世話をします。さらに、朝や夕方はホームヘルパーがグループホームに来て、それぞれの入居者を世話したり、外出の付き添いをします。

 太郎君(26歳)は、重度の自閉症と知的障害です。言葉を発することはできません。他人とのかかわりを拒み、養護学校を出たあとは、自宅から出ようともしませんでした。
 数年前にデイサービスの職員が、サービスの利用を勧めに自宅を訪れても、太郎君は押入れに入って出てきませんでした。
 数ヶ月間かけて慣れてもらい、やっとデイサービスセンターに来てもらうことになりました。
 しかし、車がデイサービスセンターに着いても太郎君は降りません。新しい環境になじめないのです。それから4ヶ月間、太郎君は、毎日デイサービスセンター前の車の中で日中の時間を過ごしました。
 とにかく、家から出ることが出来ただけでも大きな一歩でした。その後、デイサービスセンターにも入ることができるようになり、職員ともなじみ、今は日中をデイサービスセンターで過ごしています。

 そんな太郎君と職員とのコミュニケーションは、写真付きパネルです。太郎君は言葉を発することはできませんが、パネルを通じて意思疎通はできます。
 グループホームの太郎君の部屋には、1日の流れが写真のパネルで貼ってあります。
 今日の夕方の場所には、グループホームの写真が貼ってあります。夕方、グループホームにデイサービスセンターから帰ってくるという意味です。その後ろに、喫茶店の写真が貼ってあります。夕方、喫茶店に行くということです。次に、自動販売機の写真が貼ってあります。これは、自動販売機で缶コーヒーを買うという意味です。さらにその後には、夕食の写真、お風呂の写真、そして、就寝の写真。最後が、翌朝、デイサービスセンターに行く写真。
 職員がこの写真を1週間分、太郎君と相談しながら、貼るのです。イエス・ノーの意思表示を太郎君はできます。太郎君の自己決定です。
 その結果、月曜日の夕方は散歩を兼ねて、お気に入りの喫茶店。火曜日の夕方は、レンタルビデオショップ。水曜日はケーキ屋さんに買い物。月に一度、木曜日は映画館・・・。などと太郎君のお楽しみが並びます。今年に入って太郎君は数回、映画館に行っています。
 「太郎君は、映画やビデオが理解できるの?」と、私は失礼なことを職員さんに聞いてしまいました。「1つ1つのセリフは理解できないが、アクション映画の爆発などスリルがあるビデオが好き」とのことでした。

 そして重要なのは、毎日のスケジュールの写真表が、朝にデイサービスに行くところで終わっていることです。つまり、「明日もデイサービスに行ける」ということがわかれば、太郎君は安心するというのです。

 太郎君の部屋を見ました。ベッドがありません。「太郎君はベッドでは寝れないので、イスに座って寝ます」とのことで、ひじ掛けイスがありました。晩は、お風呂に入ったあと、一人でそのひじ掛けイスに座り、大好きなアクション映画のビデオを見て、そして、眠りに入るのです。

 月曜日の夕方、デイサービスセンターのあと、雨の中、そんな太郎君と一緒に彼お気に入りの喫茶店に行きました。
 その喫茶店は田んぼの横にあります。
 太郎君は、お店に入ると一番ながめの良い、太郎君の指定席に直行します。大好きなコーヒーとケーキセットを注文。ちびりちびりと美味しそうにコーヒーを飲む太郎君。その笑顔が何とも言えません。そして、ケーキセットをぱくぱく一気に食べます。
 太郎君が1週間で一番嬉しい瞬間です。
 帰りたくなれば、両手を合わせて「ごちそうさま」のポーズをします。

 喫茶店のママさんは、「去年、初めてここで太郎君が来たときはビックリしました。喫茶店の中を動き回り、どうなることかと思いました。でも、数ヶ月して、今では本当に落ち着いて、嬉しそうにコーヒーを飲んで下さいます。茶髪の付き添いのヘルパーさんがいつも付いて来られますが、偉いなあと思います」とおっしゃっていました。
 ちなみに、太郎君は家族との外出は今でもできません。職員さんとならできるのです。
 職員さんは、「太郎君は、生きる喜びを得たから、落ち着いてきました。1週間のいろんな楽しみを自分で見つけ、そのために、昼間はデイサービスセンターに行って、作業をする、という生活のリズムも得ました。もしデイサービスやグループホームと出会わなかったら、太郎君は、一生、自宅に閉じこもって過ごしていたでしょう」と言います。
 あるいは、大規模な施設に入所していたら、いくら職員さんの親身なお世話があったとしても、このように毎日のように外出をして、自分の楽しみを広げることはできなかったでしょう。
 数年前に知的障害者のコロニーと呼ばれる500人の施設を訪問しました。山奥にある巨大な施設で、太郎君よりはるかに障害の軽い人たちが、20年、30年、その山奥の施設で人生の終末まで暮らしています。職員の方々を責める気はありません。日本の福祉政策の誤りです。
 職員さんは、「デイサービスとグループホームとホームヘルプが3点セット。この3つがあれば、重度の障害者も施設に入らず、地域のグループホームで暮らせる」と言います。

 長々と書いて何を言いたいのか、障害者自立支援法とどう関係するのか、と読者の皆さんは思われるでしょう。
 ここからが本題です。自立支援法では、グループホームの利用者はホームヘルパーが利用できなくなります。つまり、太郎君の夕方の喫茶店もレンタルビデオもなくなりかねません・・・。ひえー(悲鳴)。
 外出援助だけではありません。重度の障害者がグループホームに入居している場合、1人の世話人だけでは到底、対応できないので、今まではグループホーム内の
 介助にもホームヘルパーを利用していました。これも利用できなくなります・・・・。ひえー。
 おまけに、自立支援法ではグループホームは原則6人以上(職員体制が非効率になるからか?)。4人はダメです。しかし、日本には4人の知的障害者のグループホームが多いのです。私が最近訪問した6ヶ所のグループホームはすべて4人でした。
 職員さんは、「4人がベスト。6人では大きすぎて、きめ細かなケアができない」と言います。スウェーデンのグループホーム職員も同じことを言っていました。
 この点については、厚生労働省は、「今のグループホーム利用者が引っ越さねばならないようなことにはしないつもり」と答弁していますが、それでも新設は6人以上が原則。待ってくれよ。いくら職員や夜勤体制の効率が悪いからと言って、知的障害者のグループホームを6人以上にしてる国なんか、世界であるの?
 
 「閉じこもっていた太郎君が、せっかく、外出や喫茶店の楽しみ、生きる楽しみを知ったのに、制度が変わったからと言って、それを奪うことは不可能。補助が出なかったら、施設の持ち出しでも、ホームヘルプは続けるしかない。
  しかし、これから太郎君のようなケースを増やすことはできなくなる。第二、第三のグループホームを作って、このグループホーム、デイサービスセンター、ホームヘルプの3点セットがあれば、やっと重度の人も施設を出て、地域生活ができると思っていた矢先だったのに、今後のグループホームを増やす計画も白紙に戻さざるを得ない」と、職員さんは悲しんでいます。

 まだ問題点はあります。
 デイサービスセンターも、今まではほとんどの利用者が無料でしたが、自立支援法では1割負担。さらに食費も負担。グループホームは今までも家賃や食事は自己負担でしたが、自立支援法ではそれに加えて、グループホームにかかるケア費用の1割負担が増えます。
 非常におおまかに言って、(グループホームとデイサービスのを併せた)自己負担は3-5万円くらいアップで、本人のこづかいもほとんど無くなります。
 その結果、「そんなに高いのなら、グループホーム利用を断念」という家庭も増えてきます。

 太郎君のお母さんが、私に手紙を書いて下さいました。
 「(前略)小学校の頃は目を閉じ、聞くこともしない何かにおびえ、こわがり、音にはびくびくして、何も受け入れない。笑わない、泣くこともない毎日でした。(略)フトンでは寝られず、トイレに行って寝ようとする。日中外出はできません。最初は、グループホームに一泊するのは大変だったが、写真カードで毎日の生活がわかってくれるので楽しんでいる。今ではデイサービスが休みだと泣くので困ってしまう。太郎の好きな物 ケーキ、おまんじゅう、缶コーヒー。太郎の好きな場所 映画館、喫茶店」
 「グループホームに心から感謝している者として、自立支援法へも関心をもっています。というより支援費制度が財源不足でたちまち新制度に変わるという行政側の見通しの甘さ、見識不足に対し、親としては不安で不安でたまりません。政治の世界に期待するなんて愚かと言われつつ、それでも政治に期待するしかないのがいわゆる弱者(?)の側の立場です。私もやっぱり『よろしくお願いします』と申しあげるしかありません」

 宏くんは、28歳。太郎君と同じく自閉症と知的障害をあわせもっており、言葉を発することはできません。宏君の部屋に入ると、1週間のスケジュール表があります。また、新幹線や電車のポスターが壁や天井に貼ってあります。旅行が好きなのです。先週土曜日にはホームヘルパーさんと共に新幹線で新大阪まで行きました。
 宏くんは、ホームヘルパーさんを月に32時間まで使っています。その範囲で、時には一泊旅行に行くこともあります。
 宏君はデイサービスセンターにいるときにも、大きなカバンをいつも抱えています。そのカバンの中を見せてもらいました。駅の旅行案内所などでもらってきたという旅のパンフレットが一杯詰まっています。
 職員さんに、「宏君はパンフレットの字は読めるの?」と、失礼なことを聞いてしまいました。「ほとんど理解できないけど、写真を見て、『ここに行きたい』と意思表示することはできます」。先日も伊勢志摩までホームヘルパーさんと一泊旅行に行ったとのこと。

 宏君も長年、家に閉じこもった人生を送っていました。しかし、グループホームに住み、日中はデイサービスを利用し、夕方や週末などはホームヘルパーさんと共に外出するという生活を見つけ、今ではいきいきと暮らしています。
 「旅行に行くという生きる楽しみを宏君は人生ではじめて見出した。だから、グループホームで落ち着いて地域生活をできるようになった」と職員さんは言います。
 ただ、なじみのホームヘルパーさんだからこそ一緒に外出できるのであり、一般の人の付き添いでは一緒に外出はできません。
 
 また、女性のグループホームも訪問しました。マンションの一角を借りています。重度の知的障害の女性4人が個室にそれぞれ住んでいます。男性のグループホームに比べ、女性のグループホームはおしゃれで室内もきれいです。

 恵子さんは34歳。言葉ではコミュニケーションはできません。私が行ったときには、多少、ご機嫌ななめでした。雨に濡れて帰ってきたからです。私と職員さんが部屋に入ると、恵子さんは苦しそうに身体をゆがめながら、CDプレーヤーのほうを指差しました。CDプレーヤーのスイッチを入れると「千と千尋の神隠し」の優しいメロディーが流れてきました。その曲を一人で聴き、心が落ち着けば、個室からリビングルームに恵子さんは出てこられます。テレビは料理番組と明石屋さんまが好きだそうです。

 二人の女性職員がおられました。1人が世話人。1人がホームヘルパーです。
 「自立支援法が成立すれば、グループホームでホームヘルパーが利用できなくなりそうです」と私が言うと、二人は目を見合わせ、「じゃあ、誰が恵子さんのお世話をするのですか。世話人1人で4人のお世話をするのですか? 外出はもう出来ないのですか?」とおっしゃいました。
 重度の障害者はグループホームで生活はできなくなる危険性があります。 

 まとめれば、一度、知的障害の人たちもグループホームでこのような生活を手に入れた以上、今更、後退することはできないということです。その意味で、支援費制度は障害者の地域生活支援やグループホームを支援する素晴らしい制度でしたが、財源が足りなくなってしまったのです。
 しかし、ただ単に財源が足りなくなったからと言って、このような「重度の知的障害者の地域生活」の流れにストップをかけていいものか?
 その点、今回の自立支援法はあまりにも安易で、簡単に「ハイ、そうですか」と納得できるものではありません。
 多くの障害者の人生がかかった死活問題なのです。

 「障害者自立支援法には不明な点が多すぎる。この人たちの生活がどう変わるのかがわからない」と、職員さんは言います。このようなグループホームの問題点は、国会審議でも議論が集中していますが、厚生労働省からは、未だ明確な答弁がありません。

Posted at 2005年05月25日 12:00 | TrackBack
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Comments

本文内容のグループホームは障害者自立支援法上の共同生活援助ですか、それとも共同生活介護(ケアホーム)ですか。ヘルパーの利用・定員等はケアホームの規定ではないですか。また、居宅介護(ヘルプ)の枠組みとなっている行動援護は国のQ&AでGH入居者も利用可となっていますが、H18以降は利用不可となるのでしょうか。教えてください。

Posted by: 福祉職員 at 2005年06月01日 14:48
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