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2005年6月

全国介護保険担当課長会議資料

6月27日に開かれた全国介護保険担当課長会議の資料が、wam-netに掲載されています。

Posted at 2005年06月30日 固有リンク | Comments (0) | TrackBack

2005年6月

2005年6月

「障害者自立支援法案」に対する民主党の対応について

障害者自立支援法への対応について、民主党として経緯と今後の方針を説明する文書が発表されたので、アップします。
MS-Word形式(37KB)
pdf形式(27KB)

以下に、本文をテキスト化したものを掲載します。

「障害者自立支援法案」に対する民主党の対応について

 民主党が、障害者自立支援法案に関する与党との修正協議を継続することを断念したことに対し、全国から数多くの声が寄せられました。一部に若干の誤解も含まれておりますので、改めてこの間の経緯と今後の方針をご説明致します。

昨年10月に厚生労働省より「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」が発表されて以来、党の障害者政策WTや厚生労働部門会議、議員団との懇談会などを通じて、障害者の皆様とは繰り返し意見交換・情報交換を行って参りました。この間のご協力に対しまして、改めて心より感謝を申し上げます。こうした皆様方との意見交換に加え、衆議院厚生労働委員会で行われた参考人質疑での障害者団体の意見を踏まえ、民主党は6月9日に「障害者自立支援法案」の骨格部分を含む9項目の修正要求を、与党に対して行いました。その内容は【別紙1】の通りでありますが、民主党としては何より同法案によって障害者の負担が過重となり、実質的なサービス抑制が生じないこと、少なくとも支援費制度を含む現行サービス水準の低下を招かないことを最重点として、与党との協議に臨むことと致しました。

これに対する与党回答は【別紙2】の通りであります。同法案の審議開始より既に2ヶ月を経過して法案の問題点も明らかになり、与党内からも「修正が必要」との意見がある法案にもかかわらず、実質的な「ゼロ回答」です。障害者等の実質的な負担軽減に係わる部分については、「修正には応じられない」「法案修正の必要はない」「法案修正にはなじまない」と明確な拒否を、与党は通告してきました。民主党としては、この与党回答を受けて、協議を継続する意味は乏しいと考え、6月22日をもって与党との協議を打ち切る決断を致しました。
一方で、民主党は与党との協議と並行して、厚生労働省とも協議を行っていました。同法案は抽象的な規定が多く、政省令(国会の議決を必要とせず、政府内で決めることのできる細目)が実質的に障害者の皆さんの生活を左右しかねないため、この政省令の内容について確認し、またできる限り負担が軽減できるように、行ってきたものです。民主党としては、法案修正を与党が拒否する以上、法案の修正は断念するとしても、この政省令の確認、方向性の改善については党を挙げて取り組んでいくことを決定しました。

ところが、民主党のこの決定を受けて、翌日、自民党・公明党(=与党)の衆院厚生労働委員会理事が揃って会見を行い、声明を発表しました。その内容は極めて異例なものであり、民主党が修正協議を断念したことについて、「まことに遺憾である」「修正協議打ち切りの決定を即刻撤回し、与党との協議を継続すべきである」としています。これは明らかに責任転嫁です。与党は、政府と一体となって万全の法案を国会に提出すべきであり、法案に問題があるなら、提出前に修正すべきは当然です。それにもかかわらず、与党が修正協議を求めるということは、自ら法案の欠陥を認めたも同然です。これを野党の責任というのは、滑稽でさえあります。百歩譲って、仮に修正協議を再開するとしても、まずは与党が欠陥法案を提出したことを関係者に陳謝し、その上で与党が考える修正案を示した上で、民主党に対して協議再開を求めることが筋だと考えます。ゼロ回答のままで「修正協議を再開せよ」というのでは、再開できるはずがありません。

加えて、厚生労働省は修正協議断念を受けて、民主党と厚生労働省の間の政省令に関する協議の打ち切りを通告してきました。国会の場において、法案の不透明な部分を確認することは当然であり、その前段階において「より障害者の立場に立った内容とすべきではないか」と国民の声を反映させることは、国民の代表としての国会議員の責務であります。厚労省は、この国会議員の責務さえも拒否し、障害者の皆さんの生活を実質的に左右する政省令を、独善的に決めていくと宣言したのです。

民主党は、障害者の方々のご協力を得て、昨秋より数え切れないほどの意見交換を行って参りました。この経緯を通じて、まず何より本法案に関する議論が余りにも不十分であることを痛感しています。その上で、本法案には、所得保障もなしに定率負担を導入すること、現行の障害者福祉サービスの水準低下に繋がりかねないことなど、極めて重大な問題があります。民主党の修正要求にゼロ回答を突きつけることによって、この問題を放置しようとする与党の姿勢には、強い憤りを感じています。

 国会における「障害者自立支援法案」の審議は、まだ行われる見通しです。民主党としては、与党自らが認める欠陥法案ですので、十分な慎重審議を求めていくと共に、その中で政省令の具体化、内容の改善について全力で取り組んで参ります。
 その上で、次期総選挙では政権を獲得し、国際的に見て低い障害者福祉水準の見直し、谷間のない総合的障害者福祉制度の確立に取り組んで参ります。引き続いてのご支援・ご協力を、是非ともお願い申し上げます。

Posted at 2005年06月29日 固有リンク | Comments (1) | TrackBack

障害者自立支援法には粘り強く対応(メルマガ668号より 一部編集)

 さて、今朝の衆議院厚生労働委員会理事会での障害者自立支援法案の審議見通しについて、取り急ぎ報告します。
 
 今日午後の建設労働者雇用改善法案の採決の後、7月1日(金)は、厚生労働委員会の定例日ですので、障害者自立支援法案の審議に戻るのか、あるいは、労働安全衛生法案の審議に移るのかが焦点でした。
 自立支援法の審議に戻るなら、採決も間近ということになります。

 結論を言えば、7月1日は定例日ですので委員会は開く方向ですが、具体的に自立支援法か労働安全衛生法を審議するかは、明日6月30日の午後にに理事懇談会を開いて決めるということになりました。

 以上は、決まったことで、以下、私の見通しを書きます。

 通常は、水曜日の理事会で金曜日の審議の予定を決めます。なぜ、それを与党は決めず、明日に先送りしたのでしょうか。普通に考えれば、金曜日には審議途中である自立支援法の審議に戻る可能性が高いのです。
 理由としては、次の3つが考えられます(単なる私の推測ですが)。

 まず、郵政民営化法案の委員会採決が間近に予想され、それにより国会が明日か明後日、混乱、空転する可能性があるので、金曜日の予定がまだ立てにくい。
 次に、7月1日は都会議員選挙の投票日の2日前で、開かない委員会も多い中で、厚生労働委員会を開くのかという問題。
 三つ目は、7月1日に自立支援法の審議に戻って、来週に自立支援法を採決する見通しが立ちにくい。
 ただ、7月1日から自立支援法の審議に戻る可能性もあるので、その場合の見通しを書きます。

 自立支援法はすでに19.5時間の審議を終えています。与党はおそらく30時間くらいの審議で採決を求めてくると予想されるので、委員会審議は1日平均5時間くらいなので、あと2,3日の審議で採決。つまり、採決の可能性がある日は、7月6日(水)か7月8日(金)となります。
 
 ただし、不確定要素は、郵政民営化法案です。この法案の採決で来週、国会が混乱すれば、また混乱、数日空転して、採決が延びる可能性もあります。

 このような状況ですが、障害者の方々の法案への危機感、不安は高まるばかりです。自立支援法案の審議入りからすでに1ヵ月半が経っているのに、法案の肝心な点がまだまだサッパリわかりません。

 6月8日に民主党は、「修正協議を求める9つの事項」を与党に申し入れました。
 1.法の目的、2.定率負担の凍結・所得保障、3.移動の保障、4.「自立支援医療」の凍結、5.重度障害者の長時間介護サービスの保障、6.居住支援サービスの水準確保、7.本人の意見聴取、8.対象拡大及び障害定義の見直し、9.権利擁護に係わる制度の確立 です。
 しかし、去る21日に返ってきた与党の回答では、ほとんどがゼロ回答でした。
 
 言うまでもなくこの法案は、多くの障害者の生活、人生、命を左右する法案です。にもかかわらず、採決間近になっても、まだこのような根本的な問題が明らかになっていないとは、いったいどういうことでしょうか? 
 十分な慎重審議と大幅な修正なくして、法案を成立させることはできません。遅かれ早かれ審議は再開されると思います。
 障害者の方々の切実な声を修正に生かすため、また、その声が受け入れられないなら法案成立の阻止も辞さないという思いで、粘り強く頑張ります。

Posted at 2005年06月29日 固有リンク | Comments (1) | TrackBack

厚生労働委員会議事録(建設労働者の雇用の改善等に関する法律改正案)

162-衆-厚生労働委員会-30号 平成17年06月29日
 建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)
 ◇建設労働者が置かれている現状の認識
 ◇改正により、建設労働者の雇用状況、労働環境は改善するのか
 ◇建設労働と人材派遣について
 ◇労災隠しについて
 ◇技能労働者の人材育成について
 ◇建設国保について

○鴨下委員長 次に、山井和則君。

○山井委員 これから三十分間質問をさせていただきます。
 今、一時間、同僚の小林議員がすばらしい質問をしてくださいましたが、本当にこの法改正は、ただでさえ今までから雇用が不安定で、また非常に労働条件が悪い中で働かされていた建設労働者の雇用改善が、ますます責任が不明確になるのではないかという危惧を持っております。そういう視点から、尾辻大臣と衛藤副大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 公共事業の減少、そして住宅産業というものの低迷もある中で、本当に建設労働者の雇用を取り巻く環境はますます厳しくなっております。東京や愛知では一部景気が回復していると言われておりますが、私の地元である京都南部でも非常に厳しい状況が続いておりまして、そんな中で、仕事にありつけても、賃金の不払いや単価の切り下げ、そういう厳しい状況が続いております。
 私もよく、朝、駅前で街頭演説とかしているんですけれども、十年ぐらい前ですか、そのころはたくさん、京都南部から大阪に行く建設労働者のトラックが、朝八時ごろは、どんどんどんどん引きも切らず走っていた。ところが最近では本当に見なくなってしまったわけですね。
 私は児童虐待の問題なども今までから取り組んでおりますが、いろいろそういう相談にも乗らせてもらいますと、何が引き金になったのかというと、結局は、一家の大黒柱であったお父さんの仕事がなくなってしまった、それがきっかけで非常に家庭的にも不安定になった。それで、最近ふえている相談は、お子さんが大学に進学できないという相談、あるいは、もっと言えば、親が仕事がなくなったという家庭の苦しさを見るに見かねて、子供が勝手に高校をやめてしまう、そして、高校をやめて、もう家計を支えるために働きに行くわと言い出す、そういうふうな非常に厳しい状況が、特に建設労働者の方々の間では深刻化していると思います。
 また、もう一つ、私は心に深く思っておりますのは、ホームレス自立支援法案というのを、私、与野党の方々と協議して、つくるお手伝いをさせてもらったんですけれども、それで釜ケ崎や山谷、いろいろなところに行っても、いろいろな方の話を聞いたら、やはりもともと建設現場で働いておられた、その方々が、病気をきっかけになかなか仕事にありつけなくなっている。先ほど小林議員もおっしゃっておられましたけれども、五十を過ぎたらなかなかやり直しというのは、本当に厳しい状況になってくるわけです。
 そういうホームレスの方々のお話をお聞きしても、もともとは、万博の工事をやったとか大きな発電所の工事をやったとか、輝かしい日本産業あるいは日本の発展のために寄与されてきた方々が非常に多いわけです。そういう意味では、そういう日本の社会を支えてこられた方々が、これからも働き続けられ、また誇るべき日本建築の伝統を継承する、そういう若い建設労働者がこれからもしっかりと熟練の労働者として育成されていくようにせねばならないと思っております。
 そういうふうなことを考えるにつけ、小林議員の質問と多少重なったり、また引き継いでとなりますが、今まで悪質ブローカーによって、あるいは口きき屋によって行われていたことが、今回の法案によって合法化されるのではないか、またそういう拍車がかかるのではないかという大きな懸念を持っております。
 最初に尾辻大臣にお伺いをしたいと思います。
 このような日本の建設労働者が置かれている現状について、大臣はどのように御認識でしょうか。

○尾辻国務大臣 地域格差などがありますことは、きょうも御指摘いただいたりいたしておりますけれども、総じて言いますと、全産業について、経済状況は改善傾向で推移しておると思います。
 ただ、そうした中であっても、建設業について見ますと、これは、バブル崩壊以降の民間投資の減少と近年の公共投資の削減の動き等を背景といたしまして、今なお厳しい状況にあると認識をいたしておるところでございます。
 数字は、先ほど小林先生がお述べになった数字そのものでございますけれども、特に建設投資が、平成二年に八十五兆円でピークを迎えました以降、平成十六年には五十三兆円となっておりますので、ピーク時と比較しますと四〇%減少をいたしております。それに対して、建設業の労働者の数は、平成九年の六百八十五万人と比較いたしますと、平成十六年は五百八十四万人でございますから、約一五%の減少にとどまっております。仕事はうんと減っておるけれども労働者の数はそんなに減っていない、このことが極めて象徴的に建設業界を物語っておるというふうに存じます。
 したがいまして、労働者をめぐる雇用環境は依然として厳しいものがございますし、当然のこととして、建設労働者の賃金水準についても低下傾向にあります。こうした建設労働者をめぐる現状については、極めて厳しい状況にあるというふうに考えておるところでございます。

○山井委員 尾辻大臣から、厳しい状況に置かれているという御答弁がありました。
 そこで、尾辻大臣にもう一つ続けてお伺いしたいんですが、問題は、小林議員の質問にもありましたように、今回の法改正によって、ますます責任体制が不明確になって、制度が複雑化するのではないかという危惧を私たちは持っております。また、派遣に対する突破口、解禁につながるのではないかという危機感を持っているんです。シンプルな質問ですが、今回の法改正によって、本当にそういう厳しい状況に置かれている建設労働者の雇用状況、労働環境はよくなるんですか。

○尾辻国務大臣 厳しい状況にありますから、できるだけ改善をする方策をとらなきゃいけないというふうに考えておりまして、先ほどトータルプランのお話もいたしました、予算措置もいたしました、それから、法改正もしなきゃいけないということで今度のお願いをいたしております。
 ただいまの御質問にお答え申し上げますと、私どもは、こうした厳しい状況を、すべての皆さんとはもちろんいきませんけれども、少なくとも一部の皆さんに対して改善をする方策だ、そのための法律だというふうに考えております。

○山井委員 これは、五百八十万人の労働者の方がおられて、この法案の対象になるのは二万数千人足らずというふうにも予測されているわけですけれども、本当に雇用改善をしていくために、もっと大きな抜本的な取り組みが必要でありますし、逆に、私は、この法改正がますます労働者の置かれている環境を悪くしてしまうのではないかというふうに心配をしております。
 そこで、衛藤副大臣にお伺いしたいんですが、建設事業主団体は建設事業主を主たる構成員とする社団法人等としておりますけれども、この構成員として人材派遣業者等が入ることはあり得ますか。また、この事業への参加は建設業許可の取得を明記しているわけですけれども、当然、人材派遣業者の参入を排除すべきであると考えますが、いかがでしょうか。

○衛藤副大臣 実施計画の認定を受けることができる建設業の事業主団体につきましては、厚生労働省令におきまして、構成員の一定の割合が建設事業であるものに限定するものというぐあいに考えています。
 さらに、仮に実施計画の認定を受けた事業主団体の構成員に人材派遣業者がいたとしても、送り出し事業主または受け入れ事業主となれる構成員は、建設事業を適正に実施している事業主に限ることとしておりまして、人材派遣業者は建設業務労働者就業機会確保事業を利用することはできないものであります。

○山井委員 続いて衛藤副大臣にお伺いしますが、これは先ほどの小林議員の質問とも多少重なるんですけれども、建設業務労働者就業機会確保事業では、送り出される常用労働者は送り出し元の常用労働者としての地位が守られるということでよろしいですか。先ほどの答弁では、適切に指導とかそういう答弁であったように思うんですけれども、建設業法や労働安全衛生法に規定された元請責任、使用者責任を法律に明記すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 例えば、現場の方の話を聞くと、いろいろなところから一つの仕事場に行く、そうしたらもともとの給料が違ったりして、本当にそれでうまくやっていけるのか。例えば、給料が多少違ったら、おまえ、たくさん給料もらっているんだからもっと働けよとか、そういうふうなことに、ただでさえ人間関係をきっちりやるのが難しいところに、ますますそういう難しさも入ってくるんではないかというような現場の方々の不安もあるわけなんですけれども、その点、衛藤副大臣、いかがでしょうか。

○衛藤副大臣 送り出し労働者は、送り出し事業主との雇用関係を維持しながら受け入れ事業主のもとで就業するということでございますので、送り出し事業主の常用労働者としての地位は、送り出し期間中も変更されるものではありません。
 また、送り出し終了後においても、送り出し労働者を戻ってきた際に解雇することは、経営上やむを得ないと考えられる場合もあり得ますけれども、基本的には、送り出し前に雇用し、送り出し終了後に解雇するような場合には、制度の趣旨に反するものでありまして、悪質なブローカーの温床となることが懸念されているため、指針等におきまして送り出し終了を理由に解雇してはならない旨を定めるということを検討しております。これらの指針等に基づいて、適切に指導してまいりたいというぐあいに思っています。
 なお、そのような運用をした者に対しましては、実施計画の認定を取り消すとか、あるいは建設業務労働者就業機会確保事業の許可を失効させるなど、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。
 さらに、建設業における元請責任につきましては、建設業の関係労使が参画する労働政策審議会の議論において、労働基準法上の災害補償責任については受け入れ事業主の元請事業主に責任を負わせるべきとの意見がありまして、特例を設けたところであります。
 また、労働安全衛生法については、元請事業主の果たすべき責任に関する規定が設けられており、この中で送り出し労働者をも含めた安全衛生管理体制の確立が図られるものというぐあいに考えています。

○山井委員 今答弁をお聞きしましたが、そういう中でも、実質上は非常に雇用関係が不明確になって、ますます無責任になっていくということはこれは明らかなわけでありまして、そこで一つ、例えば労災隠しについてお伺いしたいと思います。
 現状でさえ労災隠しが非常にふえているという指摘が現場からあるわけですね。事故が起こっても、ゼネコンとかに言ったら業者から外されてしまう。そういう中で、自分の健康保険でとにかく処理しておいてくれと。ちょっとしたけがだったらそれでもいいかもしれないですけれども……(発言する者あり)よくないんですよ、ちょっとしたけがでもよくないんです。よくないんですけれども、本当に、長期的に障害が残る場合とかだったらこれは大変なことになってしまって、この労災隠し、今でも大問題なのに、それがますますこういう複雑な制度にすると問題になっていくんではないかというふうに思うわけです。
 そこで、まず、この労災隠しの現状について厚生労働省はどう認識されていますか。

○衛藤副大臣 労災隠しにつきましては、労働災害の発生事実を隠ぺいするために、故意に労働安全衛生法に基づく労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出しない、あるいは虚偽の内容を記載したものを提出するというようなものでございます。
 その場合には、労働安全衛生法違反の罪に該当するのでありますけれども、その送検件数については、平成十五年、百三十二件というぐあいに増加傾向になっております。そのうち建設業の関係が約百件を占めているところでございますので、委員御指摘のとおり、この心配について、我々も同様に心配している、そのような現状でございます。

○山井委員 いや、まさにそれは氷山の一角で、本当に多くの労災が隠されてしまっていると思うんですが、問題は、この法改正により使用者責任がより不明確になり、労災隠しに拍車がかかるのではないかという強い不安があります。今後どのように労災隠しをなくそうと考えておられるんですか。

○衛藤副大臣 送り出し労働者に関する使用者責任につきましては、雇用関係にあることに着目いたしまして送り出し事業主が負うものと、それから指揮命令関係に着目し受け入れ事業主が負うものとがありますけれども、いずれも法令の規定により明確に区分されているところであります。
 また、建設業の関係労使が参画する労働政策審議会の議論におきまして、建設業では安全衛生など広く元請事業主が責任を負うこととなっていることを踏まえまして、送り出し労働者に係る災害補償責任については受け入れ事業主またはその元請事業主に責任を負わせるべきとの意見があり、改正法にはそのような特例を設けたところでありまして、責任関係は実態に即して明確にされています。
 労災隠しにつきましては、これまでにもその防止を図ってきたところでありますけれども、送り出し労働者についても労災隠しが行われないよう、周知徹底、啓発を図るとともに、適切に指導してまいる所存であります。

○山井委員 これ以上このことについて議論はしませんが、やはりこれはもっと根本的な問題、結局、現場の方も労災が起こっても上に上げることができないという、この構造を私は変えていかねばならないと思っております。
 そこで、これも小林議員の質問に続くんですが、やはり、この就業機会確保事業が労働者の派遣の解禁につながるのではないか、そのおそれがあるということが現場の一番の不安であります。きょうの朝も、中根議員から、愛知の地元の方からも非常にこの不安の声が上がっているという話を聞かされました。先ほどの小林議員の質問にありましたように、労働者派遣法に準ずる規定ぶりになっている点もあるわけであります。
 そういう意味で、先ほど尾辻大臣と青木局長からそれに関する答弁がありましたが、尾辻大臣の方から、派遣解禁につながるものではないということをきっちりと答弁していただきたいと思います。現場としては、これが解禁になると壊滅的な打撃を受けるという非常に大きな不安感が出ておりますし、実際、メディアでは派遣への解禁の第一歩ということが報じられているわけですね。大臣いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 改めて申し上げます。
 今回の法改正で導入いたしますところの事業でございますけれども、この事業は、建設事業主が一時的に余剰となった労働者を同一の事業主団体に属する他の建設事業主に送り出すことにより、その雇用を維持し、雇用の安定を図ろうとするものでございます。
 したがいまして、このために、事業主団体において実施計画を作成し、厚生労働大臣の認定を受ける必要がありますし、また、一時的に余剰となる常用労働者の雇用の安定を図る範囲内でのみ実施可能といたすことといたしておりますし、また、送り出しを専門とする事業主、送り出しのみに従事する労働者は認められないということも定めておりますし、さらにまた、労働者の送り出し先は実施計画にあらかじめ記載された同一の事業主団体の構成事業主に限られること、こういったような実施要件が定められておるところでございます。
 このように、労働力の需給調整を図ることを目的とし、専ら他の事業主に派遣するために派遣労働者を雇用することを認めておる労働者派遣事業とは、趣旨、規制の態様が異なるものでございます。
 改めて申し上げますけれども、派遣ではございません。

○山井委員 実質的に口ききや悪質ブローカーの存在を合法化して拍車をかけるのではないかという懸念がぬぐい去れないわけであります。
 そこで、改めて尾辻大臣にお伺いしたいと思いますが、そもそも建設労働者の派遣事業の導入はだめとなっておりまして、なぜ労働者派遣事業の適用除外業務となっているのか、その趣旨を改めて尾辻大臣からここで御説明いただきたいと思います。

○尾辻国務大臣 建設業務に係りますところの労働者派遣事業は、労働者派遣法によって禁止されておるところでございます。
 これは、建設業が重層的な下請関係により作業が行われる実態にありまして、こうした状況のもとで建設業務において労働者派遣事業が行われる場合には、雇用関係の不明確化を招き、建設労働者の雇用の改善等に関する法律により行われている雇用関係の明確化や雇用管理の近代化等雇用改善の取り組みを損なうということがございますし、さらに、労働者に対する不当な支配や中間搾取等の弊害を生ずるおそれがあるということが理由でございます。

○山井委員 まさに、そこで今問題点として指摘されていることが今回の法改正により拍車がかかるんではないか、まさにそういう懸念を私たちは持っているわけであります。これについては後ほど同僚議員からもさらに指摘があると思いますので、次の質問に移らせていただきます。
 一つ現場の方々がおっしゃっているのが、世界に誇る日本建築の伝統継承がうまくいかなくなっている、最近では若手の熟練技能労働者の教育が難しくなっている。ますますこの法改正というのはそういう建設労働者の不安定さを増して、現場で時間をかけてじっくり技術指導することも難しくなるんではないか。本当はしっかりと時間をかけて一人前の建設労働者になりたいという思いは強いけれども、こういう不安定な労働の中ではそういう人が育っていかない。これは日本の建設労働の現場にとって非常に深刻な、中長期的な大問題でもあると思っております。
 そこで、この点の教育訓練や建設雇用改善助成金の諸制度の改善が必要と考えるが、いかがでしょうか。また、手続の簡素化が必要と考えますが、いかがでしょうか。

○衛藤副大臣 建設業におきましては、技能労働者の高齢化が著しくなっています。そういう中で、若年労働者に対する教育訓練の推進が難しくなっているという、共通の認識をしている次第でございます。
 厚生労働省といたしましては、技能労働者の育成のために、長期間の公共職業訓練等を実施しており、さらに、事業主等がその雇用する労働者に対して実施する教育訓練について、建設雇用改善助成金を中心とした助成措置を講じているところでございます。
 今後とも、建設業の労使の意見を聞きながら、この建設雇用改善助成金の見直しを進めてまいりたいと思います。
 また、簡素化につきましても、適宜見直しを行っているところでございますが、今後とも、利用者の意見を伺いながら、可能な限り見直しを行ってまいりたいというように考えております。

○山井委員 この法案に対する不安の中に、要は建設事業主団体がどのようなものになるか、そういう不安もあります。まず、各都道府県建設業協会などの社団法人、次に事業協同組合及び協同組合連合会のうち一定の要件を満たすもの、三つ目に、適正な事業運営を確保するための厳格な要件を満たす任意団体が含まれることになっています。
 衛藤副大臣にこれもお伺いしたいんですけれども、問題は、果たしてどこまで社会的信頼度が担保できるのか。先ほどの答弁にもありましたが、悪質なブローカーが入らないようにするということですけれども、小林議員の質問の続きにもなるんですけれども、そこをどうやって担保するのか、そのことについて衛藤副大臣にお伺いしたいと思います。

○衛藤副大臣 労働者の就業機会確保事業につきまして、いかに中間搾取等の防止を図るのか、その担保をしていくのかということでございますけれども、やはり、許可を受けるに際しましては、建設業の労使等から成ります審議会の審査を経ることとする、あるいは不適格者の排除をちゃんと行う、あるいは当該事業主団体のみで労働者を送り出すことはできる、いわば、又の関係をつくらないとか、あるいは常用雇用されている者に限定するとかいうぐあいにしてまいりたいと思います。
 また、都道府県の労働局に担当者を配置いたしまして指導監督を行う、あるいは定期的に事業報告を聴取する、それから都道府県労働局におきまして労働者や関係事業主から申告や相談を受けるなどいたしまして、需給調整システムの運用の適正化を図る等をやっていきたいというぐあいに考えている次第でございます。

○山井委員 ここのところをやはりきっちりやっていかないと、まさに中間搾取がますます横行してしまうということになりますので、ここはきっちりやっていただきたいと思います。
 そして、また衛藤副大臣にお伺いしたいと思います。そもそも、送り出しされる労働者の賃金や労働条件はどのように決定されるのか、そして送り出し先は労働者が選択することができるのか、このことについてお伺いしたいと思います。

○衛藤副大臣 送り出し労働者は、送り出し事業主との雇用関係を維持しながら受け入れ事業主のもとで就業するということでございますので、送り出し事業主との間で締結している労働契約等におきまして賃金や労働時間等の労働条件が定められています。したがって、送り出し期間中の就業に係る送り出し労働者の賃金は、送り出し事業主から支払われるわけであります。
 また、送り出し事業主が自己の雇用する労働者を送り出し労働者とするためには、当該労働者の個別の同意を得なければならない、そしてその同意の内容につきましても、送り出し先を限定した同意も可能であるということから、送り出し先を労働者が選択することも可能である。
 なお、厚生労働省令におきまして、同意は文書によるものとする旨規定しようというぐあいに考えているところでございます。

○山井委員 時間が残りわずかになってきましたので、尾辻大臣にあと二問ほど聞かせていただきたいと思うんですが、一問は、先ほどの労災隠しに関係することであります。
 これは労働安全衛生法、今後審議されるものとも関係してくるかもしれないんですけれども、これは質問通告はしておりませんが、ぜひとも尾辻大臣の御決意を、やはりこういう労災隠しというのは建設労働の現場においては非常に深刻な問題でありますし、また、そこをきっちり取り締まっていくのが厚生労働省の責任であると思いますが、こういう労災隠しをなくすために最大限努力する、そういう大臣の御決意をお聞かせ願いたいと思います。

○尾辻国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、労働安全衛生法違反に該当するものというのは、平成十五年、百三十二件でございまして、増加傾向にございます。こうしたことは私どもとしては排除をしなきゃならない最大の課題だと考えておりますので、お話しいただきましたように、労災隠しをなくすべく、最大限、全力を尽くしてまいります。

○山井委員 時間が来ましたので、最後に、また質問と要望になりますが、建設国保についてお伺いしたいと思います。
 やはり、こういう非常に不安定な条件の中で、また厳しい労働条件の中で働いておられる建設労働者の方々にとって、せめて病気になったときぐらい安心して医療にかかることができる組合方式というのは、非常に重要な役割を果たしておるわけであります。このことに関して、要望になりますが、来年度の建設国保への国庫補助についても、ぜひとも従来水準を確保していただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 国保組合に対する国庫補助についてでございますけれども、これは、医療保険制度改革に関する基本方針におきまして、市町村国保との財政力の均衡を図る観点から、国庫助成のあり方について見直しをするというふうにされたところでございますので、こうした方針も踏まえながら検討をしてまいりたいというふうに存じます。
 ただ、この国庫補助につきましては、国保組合の国民健康保険制度におきます役割やこれまでの経緯を踏まえまして、安定した保険運営が行われるよう、検討の中では配慮してまいりたいと存じます。

○山井委員 ぜひともよろしくお願いします。
 以上で質問を終わります。

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2005年6月

2005年6月

介護保険制度等に関する再質問主意書

介護保険に関する再質問主意書に対する政府からの答弁書が返ってきましたので掲載致します。

キーワード:要介護認定、情報の公表、医療行為、介護労働者の労働条件、
       補足給付(ホテルコスト)、人員配置基準、身体拘束、介護報酬

平成十七年六月一日提出 質問第七四号

介護保険制度等に関する再質問主意書  提出者 山井和則

介護保険制度等に関する再質問主意書

 先般、介護保険法改正案が衆議院で可決されたが、改正の中で積み残しとなった課題も少なからず存在する。そこで以下の通り質問する。

一 前回の答弁書(内閣衆質一六二第六二号、以下同じ)には、「現行の認定基準に基づく要介護度は、在宅サービスの利用者のニーズを正確に反映していると考えられる」とある。しかし、現実に要介護認定は生活から遊離しているためほとんどケアプランに活かされていない、活かすことができないのが実態と思われるがいかがか。

二 ドイツでは基本介護に要する時間に加え、実測の家事援助に要する時間を入れて査定されるため、介護時間は日本に比べ非常に長く計算されることから、ドイツの要介護等級一は日本の要介護度一または二に該当すると指摘する専門家がいる一方で、前回の答弁書にはドイツの介護保険対象者が「おおよそ日本の介護保険制度における認定基準に定める要介護三程度以上の者」とあるが、国は詳細に調査したのか。国の見解として間違いないのか。

三 国が今後行う介護サービス情報の公表、福祉サービスの第三者評価事業(介護サービス)、認知症高齢者グループホームの外部評価事業、行政による指導監査はその目的や手法が異なるが、それぞれの調査内容が一部共通していることから、事業者の負担を減らすためにも調査情報の共有化、それぞれの役割分担を含め検討すべきと考えるがいかがか。

四 国が今後行う介護サービス情報の公表では、事業者から費用を徴収するということであるが、介護保険制度を運営する国が費用を負担するのが理にかなっているのではないか。

五 四において次期介護報酬改定でその公表に関する費用を盛り込み、その介護報酬を指定調査機関が回収するというのは行政コストの無駄ではないのか、そもそも最初から指定調査機関に介護保険から拠出すればよいのではないか。

六 認知症介護研究・研修東京センターが実施する外部評価では二ユニットで六万円、第三者評価機関が実施する評価事業では二ユニットのグループホームで約三十七万円(シルバーサービス振興会)の費用がかかるが、国が認知症高齢者グループホームに対して外部評価を義務化するのであれば、その費用を介護報酬に盛り込むべきではないか。また国が介護サービスの評価事業を推進していくのであれば他の介護保険サービスについても介護報酬において盛り込んでいくべきではないか。

七 前回の答弁書において二七三五の社会福祉事業のうち「二一〇九の事業場について何らかの労働基準法等の違反が認められた」とあるが、これについてどのような対応をしたのか。また介護保険事業を運営していく上でどう考えるのか。

八 七において、これからこれらの職に就く者や現在働いている者にとって、安心して働くためにも、個々の違反の情報が公表されるべきと考えるがいかがか。

九 前回の答弁書で「介護保険施設に入所している低所得者に配慮した特別の制度として、特定入所者介護サービス費を支給する制度を導入する」とあるが、居住費及び食費を支払うことができない低所得者は、特定施設や認知症高齢者グループホームを利用できなくても構わないと国は考えているのか。またそのような状況では、より施設志向が高まると考えられるがいかがか。

十 今後地域密着型サービスの中で、二十九人以下の小規模特養や小規模の介護専用型特定施設、認知症高齢者グループホームが存在することになるが、いずれも個室型、同じユニット数、定員の場合、利用者の視点に立てば、似たような介護サービスが利用者に提供されるにもかかわらず、介護報酬が異なり利用料が違ってくることは、不可解な仕組みであると考えるがいかがか。また高齢者住宅を含めた介護施設体系のあり方そのものを再検討すべきと考えるがいかがか。

十一 連合調査等でも明らかなように看護職員の夜勤体制を組むことができず、介護職員がやむを得ず痰の吸引等の医療行為を行っている施設が多い。この実態を踏まえ、施設や在宅での医療面での不安を解消するためにも、一定の研修や試験などをクリアした介護福祉士を「医療介護士」などの資格をもって認めていくことを検討すべきではないか。

十二 要介護度四、五の利用者しかいない介護施設において、三対一の人員配置基準通りで身体拘束することなしに介護することは可能かという質問に対し、昨年の答弁書(内閣衆質一六一第二四号)において「御指摘のような入所者の状況及び人員配置の場合であっても、身体拘束を行わずに介護を行うことは十分可能であると考えている。」とあるが、その具体的な根拠は何かという前回の質問書に対し、何ら当を得た回答がなかった。まだ身体拘束ゼロを実現できていない施設に「十分可能である」ことを示すためにも、一、二か所の例示でもかまわないのでお示し頂きたい。

十三 前回の答弁書で、個室ユニットケア型特養一三二か所のうち、「介護職員及び看護職員一人当たりの入所者数が二・五人以上三・〇人未満であった施設は五か所」とあるが、ならば個室ユニットケアを行う施設の最低限必要な人員配置基準は二・五対一以上とすべきではないか。

十四 前回の答弁書で「個室ユニットケア型特養については、一般の特別養護老人ホームよりも高い介護報酬を設定している」とあるが、個室ユニットケア型の施設でなくても人員配置を厚くしている施設に対しては、高い介護報酬にすべきではないか。また、それにともない基準を下回る四・一対一の基準は介護保険制度が五年経過したことから廃止すべきではないか。

十五 今後介護サービス事業所に対し情報を公表させることは非常に良いことだと考えるが、一方で国としても介護職員の待遇改善のためにも介護報酬の積算根拠等について情報を開示し、透明化すべきではないか。

十六 例えば、生活援助型の訪問介護を中心とする事業所が、労働基準法を遵守し、研修やヘルパーの移動、事務処理などを行える介護報酬となっているのか。生活援助一時間二九一〇円のうち、研修を行う費用はいくらと想定しているのか。

十七 大星ビル管理事件の最高裁判決(平成十四年二月二十八日)では、仮眠時間が労働からの解放が保障された休憩時間であるとは認められず、事業所に時間外割増賃金・深夜割増賃金の支払いを命じたが、同様の勤務体制である介護施設・事業所においてこの判決に準拠した賃金が支払われているのか。又支払えるだけの介護報酬となっているのか。

十八 軽度者のケアプランについては今後、適切であるかどうか地域包括支援センターでチェックされる仕組みになったが、重度者のケアプランについても適切でないものが当然存在すると考えられることから、重度者についても軽度者と同様に何らかのチェックをする仕組みが必要と考えられるがいかがか。
 右質問する。


平成十七年六月十日受領 答弁第七四号
内閣衆質一六二第七四号 平成十七年六月十日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員山井和則君提出介護保険制度等に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員山井和則君提出介護保険制度等に関する再質問に対する答弁書

一について
 要介護認定及び要支援認定(以下「要介護認定等」という。)は、介護の必要の程度等を客観的な指標を用いて認定することを目的として、介護認定審査会における審査及び判定に基づき、被保険者が要介護状態等に該当するかどうか、また、要介護状態に該当する場合にはその該当する要介護状態区分について認定するものであり、先の答弁書(平成十七年五月二十七日内閣衆質一六二第六二号。以下「前回答弁書」という。)においては、こうした過程を経て認定された要介護状態区分等と在宅サービスの利用者一人当たりの利用状況には一定の相関関係が認められることから、現行の要介護認定等は、在宅サービスの利用者のニーズを正確に反映していると考えられる旨答弁したところである。
 一方、ケアプランは、要介護者等であって、居宅において介護を受けるものが、在宅サービスの適切な利用ができるよう、当該者の依頼を受け、当該者の心身の状況に加え、家族の状況、住宅環境等の評価を通じて、当該者が自立した日常生活を営むことができるよう支援する上で解決すべき課題を把握するとともに、当該者や家族の希望、当該者が居住する地域のサービス提供体制等を総合的に勘案し、こうした課題に対応するための最も適切な在宅サービスの種類及び内容を定める居宅サービスの計画である。
 このように、要介護認定等とケアプランの目的はそれぞれ異なっており、要介護認定等は本来の目的に沿って適切に実施されていると考えている。

二について
 ドイツの介護保険制度については、受給者に関する事項を含め厚生労働省において調査を行っており、ドイツの介護保険制度の受給者については、要介護等級ごとの特徴的な状態像と日本の介護保険制度における要介護状態区分ごとの特徴的な状態像とを比較した上で、おおよそ日本の介護保険制度における要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成十一年厚生省令第五十八号)に定める要介護三程度以上の者であると考えている。

三について
 第百六十二回国会に提出した介護保険法等の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)に規定する介護サービス情報の公表は、都道府県知事又はその指定する者(以下「都道府県知事等」という。)が介護サービス事業者が提供するサービスの内容及び運営状況に関する情報のうち、利用者の選択に資する情報の公表を行うものであり、公表する情報を都道府県知事等に報告するとともに、都道府県知事等は事実確認のために介護サービス事業者に対して調査を行うこととしている。福祉サービスの第三者評価事業は、事業者が事業運営における問題点を把握し、サービスの質の向上を図るための取組を行うことを支援するために行われているものであり、事業者がこれを活用するかどうかは任意のものである。認知症高齢者グループホームについては、認知症の高齢者が共同生活を営むという認知症高齢者グループホームの特性にかんがみ、介護サービス事業者が事業運営における問題点を把握し、サービスの質の向上に結び付けるため、外部の者による介護の質の評価(以下「外部評価」という。)を受けることを義務付けているところである。行政による指導監査は、法令の規定に基づく指定基準に適合しているかどうかを確認し、適合していない事項について行政処分等を行うものである。
 このように、それぞれの目的や役割は異なっており、それぞれの目的や役割に応じ、適切に調査を行うこととしているが、介護サービス情報の公表と認知症高齢者グループホームの外部評価事業は、ともに介護サービス事業者が、サービスの内容について定期的に調査を受けるものであるので、介護サービス情報の公表のための調査の実施等に当たっては、介護サービス事業者の負担の軽減の観点から、両事業の調整を行うことを今後検討してまいりたい。

四及び五について
 三についてで述べた介護サービス情報の公表の制度は、国が行うものではなく、都道府県知事等が、介護サービス事業者の調査を行い、当該事業者の介護サービス情報の公表を行うこととしており、都道府県知事等は、当該調査及び公表の事務に係る手数料を介護サービス事業者から徴収することができることとなっている。
 都道府県知事等が介護サービス事業者から手数料を徴収する場合に、当該手数料の費用を介護保険制度で評価するかどうか及び評価する場合の対応については、今後、社会保障審議会の議論を踏まえ、検討してまいりたい。

六について
 三についてで述べたとおり、認知症高齢者グループホームについては、定期的に外部評価を受けることを義務付けており、外部評価の費用に対する介護報酬における対応については、平成十八年四月に予定している介護報酬改定において、社会保障審議会の議論を踏まえ、検討してまいりたい。
 また、福祉サービスの第三者評価事業を活用するかどうかは任意のものであり、その実施に係る費用に対する介護報酬における対応については、今後の介護サービス事業所での当該評価事業の実施状況等を踏まえ、検討していくべきものと考えている。

七について
 御指摘の労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)等の違反が認められた事業場に対しては、是正を図るよう指導したところである。
 また、介護保険事業を運営していく上で、労働基準法等関係法令は当然に遵守されるべきであり、都道府県や関係団体に対して、訪問介護に従事する訪問介護員等の法定労働条件の適正な確保について、通知の発出やパンフレットの配布により周知を行う等の取組を行っているところである。

八について
 労働基準法等関係法令に対する重大又は悪質な違反については、刑事事件として取り扱うこととしているところであるが、これらの事件のうち同種の犯罪の防止を図るという公益性を確保する観点から必要なものについては、公表することとしている。

九について
 特定施設や認知症高齢者グループホームは、これまでもこれらの施設において提供される介護サービスに限り保険給付を行い、居住費及び食費は入居者が負担することを前提としているが、低所得者については、高額介護サービス費による介護サービスの利用者負担の軽減等により一定の配慮を行っているところである。
 また、今般の居住費及び食費に関する見直しは、在宅と施設との間の負担の公平を図る等の観点から行うものであり、より施設志向が高まるとは考えていない。

十について
 御指摘の二十九人以下の小規模特養及び小規模の介護専用型特定施設は、法案に規定する地域密着型介護老人福祉施設及び地域密着型特定施設であると考えられるが、地域密着型介護老人福祉施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な要介護度が高い者を主な対象とするとともに、社会福祉法人等に運営主体を限定している。また、入所者のうち低所得者については、特定入所者介護サービス費の支給対象となる。地域密着型特定施設は、要介護者等を対象とする有料老人ホーム等のうち一定の要件を満たすものであり、運営主体は多様である。認知症高齢者グループホームは、要介護者であって認知症であるもの(その者の認知症の原因となる疾患が急性の状態にある者を除く。)を対象とし、運営主体は多様である。介護報酬及び利用料については、こうしたそれぞれのサービスの性格を踏まえつつ、今後、議論が行われるものと考えているが、右に述べたように、それぞれのサービスの性格は異なるため、介護報酬及び利用料が違うことはあり得ると考えている。
 また、介護保険施設等の在り方については、今回の介護保険制度の見直しにおいて、利用者の多様な選択を可能とする観点から、有料老人ホーム及び軽費老人ホームに加え、高齢者向け優良賃貸住宅等も特定施設とすることを検討することとしている。

十一について
 業として行われる医療行為については、原則として、医師、看護職員等の医療関係資格を有する者が行うべきと考えており、これらの者と養成課程等が異なる介護福祉士に、一定の研修等を経たことをもって当該行為を行うことを認めることは適当ではないと考えている。
 なお、介護老人福祉施設における入所者に対する看護体制の在り方については、今後、平成十八年四月に予定している介護報酬や指定基準の改定に向けた議論の中で、具体的な方策について検討してまいりたい。また、在宅における療養患者及び障害者の介護職員による喀痰吸引については、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の在宅療養の支援について」(平成十五年七月十七日付け医政発第〇七一七〇〇一号厚生労働省医政局長通知)及び「在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に対するたんの吸引の取扱いについて」(平成十七年三月二十四日付け医政発第〇三二四〇〇六号厚生労働省医政局長通知)で示した一定の場合には、当面のやむを得ない措置として許容されるものと考えている。

十二について
 三対一の人員配置で身体拘束を行うことなく介護を実施している施設については、現在は把握していないが、厚生労働省は、認知症介護研究・研修仙台センターに委託して、全国の介護保険施設における身体拘束の状況に関する調査を本年二月に行っており、現在同センターにおいて集計中である。この調査結果がまとまった後において、具体例をお示しできるかどうか検討してまいりたい。

十三について
 小規模生活単位型特別養護老人ホーム(以下「個室ユニットケア型特養」という。)の人員配置基準については、適切なサービスを提供するために最低限必要な基準として定めているものである。一方、個室ユニットケア型特養の介護報酬については、居宅に近い居住環境と日常生活の中で、入所者の意思と自己決定を最大限尊重したケア(以下「個別ケア」という。)をより効果的に行うことが可能となるよう、一般の特別養護老人ホームよりも高い介護報酬を設定していることから、個室ユニットケア型特養の実際の人員配置は前回答弁書十一についてで述べたとおりとなっているものと考えている。したがって、個室ユニットケア型特養の最低限必要な基準としての人員配置基準を二・五対一以上とする必要はないものと考えている。

十四について
 十三についてで述べたとおり、個室ユニットケア型特養については、居宅に近い居住環境と日常生活の中で、個別ケアをより効果的に行うことが可能となるよう、一般の特別養護老人ホームよりも高い介護報酬を設定しているものである。したがって、個室ユニットケア型特養以外の施設において人員配置を厚くしたとしても、必ずしも個別ケアをより効果的に行うことが可能となるとはいえないことから、単に人員配置が厚いことをもって介護報酬上評価することは適当ではないと考えている。
 また、御指摘の四・一対一の基準については、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十九号)附則第二条において、平成十七年三月三十一日までの間の経過措置として定められているものであり、当該経過措置については、既に失効しているところである。

十五について
 介護報酬については、介護職員に支払われた給与に係る費用を含めた介護サービスに要する平均的な費用の額を勘案した上で定めることとされているが、その際には、社会保障審議会介護給付費分科会における介護サービス事業者の経営の実態等に係る調査等を踏まえた議論を経て設定しているところであり、同分科会における議論や同分科会に提出された資料については、公開しており、その決定過程は十分透明であるものと認識している。

十六について
 訪問介護の介護報酬については、適正な介護サービスが提供できるよう、社会保障審議会介護給付費分科会での議論も踏まえ設定しているところであり、事業者が訪問介護員に対して行う研修に係る費用や訪問介護員の移動、事務処理等に支払われる給与等の費用を支払えるものと考えているが、お尋ねの研修に係る費用については包括的に評価しているところであり、個別にお示しすることはできない。

十七について
 御指摘の判決の事例と同様の勤務体制であるかどうかについては、個別具体の事例に即して判断されるべきものであり、介護施設・事業所においてこの判決に準拠した賃金が支払われているかどうかについては、一概にお答えできないが、仮眠時間が労働時間であると認められた場合であって、当該労働時間に応じた賃金が支払われていないときには、賃金の支払について事業場に対する指導を行っているところである。
 また、介護報酬については、適正な介護サービスが提供できるよう、社会保障審議会介護給付費分科会での議論も踏まえ設定しているところであり、労働基準法に定められた割増賃金を支払えるものと考えている。なお、賃金の額自体については、事業主とそれぞれの労働者との個々の契約で決められるべきものである。

十八について
 今回の介護保険制度の見直しにおいては、要介護者の居宅介護支援を行うこととなっている居宅介護支援事業所ごとに、所属する介護支援専門員を都道府県に届け出る仕組みを導入し、これにより、都道府県と市町村とが連携して、保険者である市町村において、個々の介護支援専門員ごとに、担当する利用者数や居宅サービス計画の内容等が適切かどうかをチェックできるようにすることを検討している。

以上

Posted at 2005年06月28日 固有リンク | Comments (0) | TrackBack

2005年6月

2005年6月

障害者自立支援法案に対する責任の所在(メルマガ666号、667号を元に作成)

これまでも主にメールマガジンで書いてきた障害者自立支援法案について動きがありましたので、報告します。
 まず、22日(水)に、民主党の次の内閣は、障害者自立支援法案の修正についての与野党協議を打ち切る方針を決めました

2005年06月22日
【次の内閣】障害者自立支援法案の修正協議打ち切りを決定

 民主党『次の内閣』は22日午後、国会内で閣議を開催し、「障害者自立支援法案」の修正協議について対応を決定した。横路孝弘ネクスト厚生労働大臣が、与党や厚生労働省との協議経過を報告。
 民主党は、党としては原案反対であるが、定率負担導入の凍結など9項目について、与党側に法案の修正協議を申し入れるとともに、厚生労働省と政省令事項について協議を重ねてきた。22日に与党側から示された回答には、法案修正には応じられないが、協議は続けたいなどとあり、修正協議の継続の可否をめぐり、各ネクスト大臣からは、
「内容的には極めて不十分だが、たくさんの政省令事項の一つひとつが障害者の命・生活に関わることであり、協議は続けるべき」
「期限を設定した以上は、引き伸ばす戦術に応じるべきではない」
などと活発な発言が相次いだ。閣議としては、ゼロ回答を受けて与党との修正協議は断念すること、ただし、無責任に放置はせず、政省令事項という不透明な部分を厚生労働省へきちんと確認するなど、国会審議その他の場を通じて、不安が解消されるような状況づくりに努力を続けるべきことを確認した。以上

 これに対して、23日(木)に自民党と公明党は記者会見を開いて、「障害者自立支援法案に関する声明」を発表しました。(自民党のウェブサイトでは該当する記事が見つけられませんでした。また、自民、公明両党のウェブサイトを見てみましたが、声明の全文を見つけることができませんでした。[山井事務所ウェブサイト担当]) その声明文の最後の5行を紹介します。

 (前略)
 支援法案は、今後の障害者に対する支援体制を整備する重要な法案である。かかる事態を踏まえ、与党は、断固として支援法案の成立を期すとともに、引き続き関係者の声に真剣に耳を傾け、それに応え、よりよい制度の構築に最善の努力を尽くし、政権政党としての責任を果たす決意である。民主党においても、修正協議打ち切りの決定を即刻撤回し、与党との協議を継続すべきである。

 この、言いがかりとしか思えない与党からの非難に対して、民主党の仙谷政調会長が談話を発表しました。

2005年06月24日  【談話】「障害者自立支援法案」について 民主党政策調査会長 仙谷 由人

○異例の「与党修正協議継続要求」は、欠陥法案の証
 自由民主党と公明党は、6月23日記者会見を行い、民主党の「障害者自立支援法案」修正協議断念について、口を極めて「不誠実な協議申し入れ」と非難する声明を発表した。
 これは与野党の立場のすり替え、責任転嫁の外、何物でもない。与党自らが、同法案を障害当事者等の生活不安を増大させるものであり、「大修正」が必要と認識するなら、まずは自ら修正すべきは修正し、是正すべきを是正して、再提案をすべきである。法案のお粗末さに頬被りをして、それによって障害当事者等が被る被害を、我が党の責に帰そうとするなら、本末転倒である。

○「ゼロ回答」の上の継続要求は、単なる与党の「ポーズ」
 同法案の衆議院審議入りは4月26日であり、既に2ヶ月近くが経過している。また民主党の修正協議要求から与党回答までも2週間かかっている。その上で、与党は、民主党の求めた9項目の修正要求の骨格部分を含む大部分について「修正には応じられない」「法案修正の必要はない」「法案修正にはなじまない」と回答した。これで協議継続を求めるなら、それは与党が「ポーズとしての協議」の続行を唱えているにすぎない。

○「ポーズ」で国民を欺くことは許されない
 与党は年金合同会議においても「昨年の改正は画期的」と繰り返している。これは、同会議を継続する意味に大きな疑義を生じさせている。真の改革の意欲を持たないにもかかわらず、政局的な理由でみせかけの「ポーズ」としての「協議」を唱える与党の態度は、国民を愚弄するものである。本法案についても、与党の「協議継続」の真意が、都議選の争点ぼかしにあることは明らかである。障害当事者等を踏みにじるような、この与党の姿勢を、民主党は断じて許すことは出来ない。

○「欠陥法案」提出について、関係者に陳謝すべき
 仮に与党が真に障害当事者等の生活を懸念し、法案の修正が必要と考えるのであれば、まずは欠陥法案を提出したことについて関係者に対して陳謝し、その上で民主党に対して、誠意ある修正提案を行うべきである。

以 上


 この法案が不十分であり、修正協議が必要と与党が考えるならば、まずは民主党に言うのではなく、与党自らが政権政党の責任において、この自立支援法案を修正し、「この法案なら問題ありません」と胸を張れる法案に作り直した上で、民主党に対して、「審議しよう」と呼びかけるのが筋です。

 自分たちが勝手にできの悪い法案をつくっておいて、その法案の修正に民主党が協力しないのはけしからん、という前に、まず、修正の必要がないと自分たちが確信する法案に作り変え、障害者団体や民主党に提示するのが与党の責任です。

 ある与党の議員から、
 「このままの支援法案じゃ、とてもじゃないけど問題が多くて通せない
  ので、修正協議に応じてほしい。与党がつくった法案に与党だけで
  修正を加えることはカッコ悪くてできないから、民主党の力を借りたい」
 と言われました。
 私は、
 「それはおかしい。そんな欠陥法案を出すのでなく、まず、自分たちが
  責任を持てる法案を出して下さいよ」
 と言いました。

 自分たちができの悪い法案をつくった責任を棚に上げ、それが改善できない理由を民主党に押し付けるのはとんでもない言いがかりです。

Posted at 2005年06月24日 固有リンク | Comments (2) | TrackBack

2005年6月

2005年6月

厚生労働委員会議事録(独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案)

162-衆-厚生労働委員会-27号 平成17年06月10日
 独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案(内閣提出第六二号)(参議院送付)
◇施設整理の目的について
◇何が公共の福祉か
◇施設を売却さえできれば「後は野となれ山となれ」なのか
◇整理にあたっては、事前に地元自治体と協議・相談をするべき
◇整理対象の施設の労働者に責任はない


○鴨下委員長 次に、山井和則君。

○山井委員 民主党の山井和則です。これから一時間にわたりまして、尾辻大臣、西副大臣に質問をさせていただきたいと思っております。
 私は、きょう、資料二枚を配らせていただきました。この資料を見ていただきたいと思います。
 今の米澤先生の質問を聞いていても、これはまさに社会保険庁や年金の不始末を地域住民にしわ寄せをする、あるいはそこで働いている職員の方々に本当にしわ寄せをするという非常に問題がある法案だというふうに思っております。
 この資料にありますが、宿泊施設等二百六十一施設は一般競争入札、それ以外は、地域医療に貢献している施設などに関してはこれからいろんな配慮をしていくということであります。私は、この質問の中で、この宿泊施設等が安易に一般競争入札でされていいのかということについて質問をさせていただきたいと思っております。


 まず、尾辻大臣、最初にお伺いしたいと思っておりますけれども、この資料にありますように、また今までの答弁にもありますように、年金資金等への損失の最小化を図るということが目的となっておりますが、実は、私はこれだけではないだろうというふうに思っております。加えるならばあと二つ、社会保険庁や年金に対する信頼回復、そしてもう一つは公共の福祉の向上、これがセットでないとだめだと思うんです。当たり前のことだと思いますが、最初に確認をさせていただきたいと思います。年金資金等への損失の最小化を図ると同時に、社会保険庁や年金制度への信頼回復を図り、公共の福祉の向上を図る、これがこの法案の目的であるということを確認したいと思いますが、尾辻大臣、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 きょうの御審議の冒頭以来ずっとお答えいたしておりますように、今私たちにとって一番大事なことと言ってもいいことは、国民の皆さんから年金への信頼を回復することだと思っております。そのためにも、社会保険庁がまず信頼を回復しなきゃいけない。大前提でございます。
 そうしたことの一環としてこの法律もお願いをしておるわけでございますから、今仰せのことは当然のことでございます。そしてまた、絶えず私たちは福祉の向上に努めなきゃならない、これも当然のことでございますので、今先生が御確認になったことは、そのとおりでございます。

○山井委員 まさに、今大臣が答弁してくださったとおりだと思っております。年金資金等への損失の最小化を図る、しかし、その前提には、いかに失われた社会保険庁や年金制度への国民の信頼回復を図るかということは大前提の問題である。書いていないけれども、当然のことなわけですね。それとともに、公共の福祉の向上というのも、ここにはあえて書いていないけれども、当たり前のことである。当たり前過ぎて書いていないということであると思います。
 そこで、今までの議員の質問の続きにもなるんですけれども、地域で重要な機能を果たしているわけですね、この宿泊施設などの二百六十一施設に関しましても。その機能の維持については今までから質問が集中しているところでありますが、改めて、やはり地域に密着し、地域から必要とされて、あるいは利用者から必要とされて行われているという、この施設の機能の維持については、尾辻大臣、どうお考えでしょうか。

○尾辻国務大臣 宿泊施設についてでございますけれども、これまで多くの方々に御利用をいただいてまいりました。そしてまた、被保険者等の福祉の向上、今も福祉の向上というお話がございましたが、まさにその福祉の向上に一定の役割を果たしてきたと考えております。
 ただ、これは先ほど来申し上げておりますことの繰り返しになるわけでございますが、近年の年金制度等を取り巻く厳しい財政状況、施設を取り巻く社会環境及び国民のニーズの変化等を踏まえまして、今後は保険料を年金福祉施設等に投入しないということをまず決めましたし、年金資金等への損失を最小化するという、今お話しいただきましたその考え方に立って年金福祉施設等の廃止、譲渡を行うこと、こういうことにいたしました。
 そういう全体をどうするかという中で、とりわけ宿泊施設については平成十二年五月に閣議決定されたことがございまして、それは「民間と競合する公的施設の改革について」というものでございますけれども、民業圧迫という御批判も大変強かったものですから、このときに、「早期に廃止、民営化その他の合理化を行う。」ということにされておりますので、今回のことはまたその方針に沿ってということでもございますということを御説明申し上げるところでございます。

○山井委員 民業圧迫ということでありますけれども、それは、ほかに似たような施設があればいいんですが、ないケースもあるわけですね、民業圧迫以前の問題に。
 それで、余り一般論をお話ししてもわかりにくい面もあるかと思いますので、少し失礼になるかもしれませんが、私の地元にあるウェルサンピア京都というところの話を少し一例としてさせていただきたいと思います。
 話はどこでも似たような話であるとは思いますが、ここは十七年前にできまして、今は黒字も出ております。全国で三番目に黒字が出ている、お客さんが本当に満員の施設であります。私も、京田辺市の新年賀詞交歓会などで、この京田辺市にあります唯一の大きな施設でありますので、毎年行かせていただいております。(写真を示す)こういう庭園なども非常にきれいで、全国から非常に好評を得ておりますし、また、地域の方々に対してはテニスコートとかゲートボール場とかそういうものも開放して、これは三百六十五日、近所に同志社大学がありますこともあって、取り合いなわけですね、このテニスコートも。そして、地域の高齢者の方々にとってゲートボール場も取り合いになっているぐらい足りないというような状況であります。こういう状況の中で、この資料の二枚目にもありますが、休暇センター全国十七カ所の中でも、黒丸をしておりますけれども、ウェルサンピア京都、京都厚生年金休暇センターというのは三番目に黒字が大きいということになっております。
 それで次の質問なんですが、こういうことを踏まえまして、非常にうまくいっているこういう黒字の施設は、貴重な年金資金をむだ遣いしないという趣旨であれば、すぐに整理せず、むしろ経営効率を上げて黒字をふやして投資を回収して年金資金に戻すというようにするのが筋ではないかと思います。赤字になってうまくいっていないところと、こういうふうにうまくいっているところを一律に一般競争入札にかけて売却してしまうというのは乱暴ではないかと思います。
 私、ここに働いておられる職員の方の話も聞いたんですが、この法律のことを聞いたときに、職員の方は、毎日これだけたくさんお客さんが来ているのになぜなんだというのが素朴な疑問だったと言っているわけなんですね。その点について、大臣、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 これは、昨年、特に年金の見直しということの議論が始まりましたときに、社会保険庁をめぐるいろいろな不祥事も出てまいりました。そうした中での大変厳しい御批判がございまして、その中の一番の御批判がこの福祉施設でございました。これは、先ほど来私は身ぎれいにするという表現を使っておりますけれども、身ぎれいにしなきゃいかぬという、これは国民の皆さん方のお声であったと私は理解をいたしております。
 そのときに、どうするかという御議論がありました。そして、今先生がお話しのような御議論もあったことは事実でございますが、やはり例外をつくるというのはまずい、そのときの多くの、私が理解している多くの皆さん方のお声というのは、例外はつくるな、経営状況にかかわらず例外なく廃止、譲渡をすべしというお声が強かったというふうに理解をいたしまして、きょうの御質問の冒頭ございました、あの合意事項になるわけでございますが、そうした経緯があったと、私は今も振り返るわけでございます。
 そうした御議論の中で、今回のこの流れでございますので、私どもとしては、申し上げておりますように、やはり例外なく廃止、譲渡をさせていただくという考え方でございます。
 そして、今のお話をあえてもう一回申し上げますけれども、民間との競合ということもいろいろ御批判いただいておりますから、その地域に限って、地域を狭く限定しますと確かに民間と競合しないとかいろいろあるんでしょうが、大きく言いますと、公に類するところがこうした施設を持つということは、どうしても民間との競合になって民業圧迫につながるという大きな御批判も絶えずあるところでございますから、今回のこういうやり方というのを御理解いただきたいと存じます。

○山井委員 ここの場合はもう一つ実は民間の宿泊施設があったんですね。ところが、三年前にそこは撤退をしまして、ここが人口六万人の京田辺市の唯一の施設というふうになっているわけなんです。それと、関西学研都市の中の南田辺・狛田地区に位置しておりまして、国家的プロジェクトである関西学研都市にとっての重要な宿泊施設だという位置づけで京都府や京都市が誘致をした、そういう位置づけもあるわけなんですね。そして、この中では地域の農産物が売られたり、本当に地域に密着して、なくてはならない施設になっているわけであります。それで、やはりこのことについて、何とか存続してほしいという声も出ております。
 そこで、尾辻大臣に確認をしたいんですが、厚生労働部会長としてこの当時このことのまとめにもかかわってこられたとは思うんですが、正直言いまして、昨年の、社会保険庁、年金むだ遣いが多いからこういうものをばっさりと整理しろと言っていた昨年の状況と今法案審議をしている状況というのは、微妙に風向きが変わっているのではないかと私は思うんです。
 それが証拠に、朝のトップバッターの自民党の、与党の議員さんですら、一律に一般競争入札というのはいかがなものかと。やはりこういう法案が出てきて、改めて、どれだけ地域にとってその施設がプラスの効果があったのかというのを、与野党を超えて政治家も肌で感じてきた。ある意味では、昨年の、この法律の議論をするときにはマイナス面ばかりが取り上げられていた、しかし、今ではプラスの面もかなりあるということになっているというふうに思うんですね。大臣、その今の情勢の微妙な変化ということをお感じでしょうか。

○尾辻国務大臣 まず、こうした施設を運営してきた立場から申し上げますと、確かに、できるとき、それぞれのニーズがあってこういう施設ができてきた、そして、今のお話を伺いまして、改めて、その施設が大きな役割を果たしてきた、今日もまだ果たしている面を持っておる、そのお話を伺いますと大変ありがたいというふうにも思います。今日まで大きな役割を果たしてきたということで、改めて、そうしたお話を伺いますと、ああ、それなりの役割を果たしてきたんだなということを感じまして、大変ありがたいと思うわけでございます。
 そこで、今、去年の例外なく廃止、譲渡をしろと言ったときと今日の雰囲気は少し変わっているんじゃないかというお尋ねでございますが、雰囲気が変わっているかどうかは別といたしまして、私のところにいろいろな方から存続をさせてほしいという陳情があることだけは事実でございますから、そして私も陳情をお受けしておるということは申し上げたいと存じます。大きく雰囲気が変わっているかどうかというのは、私が今直ちにそこまで変わっているというふうに申し上げられる状況でもないと私は感じておりますけれども、ただ、多くの陳情が今参っておりますということだけは申し上げたいと存じます。
 それから、今後のことでありますけれども、今後、こうしたものに対する考え方、こういうものをよく整理して答えを出さなきゃいかぬというふうに思っておりまして、私どもは、何回も申し上げておりますように、今後こうあるべしということまで含めて、今回の御提案、お願いを申し上げておるということもつけ加えて申し上げたいと存じます。

○山井委員 まさに少しずつ、もし法案の中で行き過ぎた部分があったら修正をしていく、そのためにこういう国会審議があるんだと思っております。
 そこでお伺いしたいんですが、こういう今説明しましたような施設を一例としても、地域の中に密着して、地域の中でなくてはならない形になっている施設もたくさんあるわけですね。そういうことに関して、後は野となれ山となれという言葉がありますが、これは売却したら、後は宅地になろうが山を崩そうがマンションを建てようが、何になっても後はもう知らないというのが厚生労働省の姿勢ですか。大臣、いかがですか。

○尾辻国務大臣 後は野となれ山となれでいいのかとお尋ねいただきますと、決して私どももそういうふうに思っておるわけじゃありませんとお答えせざるを得ないんですが、この後またいろいろな御質問が続くであろうと思いますから、余り先走ってお答えするようなお答えを今ここで申し上げるのもいかがかと思いますから、我々としては、野となれ山となれという、そんな思いではありません。今お話しいただいていますように、今日まで役割を果たしてきたわけですから、ぜひそうした機能が引き継がれるような形で売却できれば、譲渡できれば一番うれしいということは当然思っておるところでございます。

○山井委員 まさに今大臣がおっしゃったとおりだと思うんですね。例外をつくるのは問題じゃないかという議論はもちろんある、とはいえ、後は野となれ山となれというわけでもないと。やはり、今大臣がおっしゃったように、今まで非常に地域に必要で黒字も出ているような施設だったら、できればその業種が続けられればうれしいなということをおっしゃいましたけれども、問題はそこなんですよ。
 私も、もう社会保険庁や国がこういう施設をやる必要はないし、もちろんお金を入れるのは問題だと思います。民間でできることは民間でやったらいいんです。ところが問題は、民間の手に渡った瞬間、何をやろうが、基本的には自由になりかねないわけなんですね。そこにこの法案の非常に悩ましいところがあると思うんです。
 地元の役所の方に聞いても、あるいはセンターの方々に聞いても、確かに民間に移ることはやむを得ないかもしれない、でも、業種が何になるかわからないと。当然、業種が一〇〇%変わったらリストラも非常に大胆なものになってしまうと思うんですね。そこのちょっとした配慮なりをどうつけるかということなんです。まさに一枚目の資料にもありますように、年金病院やそういうものに関しては、用途制限なり何らかの、急に物を変えてはだめだという縛りというか配慮があるわけですね。私が問題にしていますのは、この宿泊施設等の二百六十一施設に関しては一般競争入札、これは全く無条件の一般競争入札であれば、まさに今大臣がおっしゃったように、後は野となれ山となれではないけれども、そうなるリスクは回避されないということなんですね。
 そこでお伺いしたいと思いますが、例えば、施設の整理に当たっては、地域での機能や連携を考え、まず当該自治体への譲渡を前提とした話し合いというのをやってみるべきではないか。
 本当にローカルな話で申しわけないんですけれども、一例として言わせてもらいますと、この施設がなくなったら、京田辺市では新年の賀詞交歓会をする場所が基本的になくなっちゃうわけなんですよ、余りにもローカル過ぎるかもしれませんが。三年前まではもう一つあったんですよ。でも、そこよりもここの方が評判がよくて、民間の方がなくなっちゃったわけですよ。それがあればよかったですよ、もうそれは撤退させちゃったわけですよ。それを今になってなくすといったら、もう一回つくれといっても、それはあんまりじゃないかというふうに地域の方が思うのは当然だと思うんですね、切実な声として。
 そのあたり、まず地方自治体への譲渡を前提とした話し合いを行うべきではないかということについて、大臣、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 申し上げておりますように、これはそれぞれをできるだけ高くで売って、最後年金資金に戻したい、こういうふうに思っておりますので。ただ、戻す金額が使った金額より必ず小さくなる、これは、申しわけないんですが、そうならざるを得ません。しかし、できるだけたくさん年金の資金、積立金の中にお返ししたいと思うものですから、そういう意味で、損失という言葉を使っておりますが、損失の最小化を図るという表現にさせていただいております。そうなりますと、できるだけ高く売りたいということが出てまいりますので、高く売るための手法としては一般競争入札になるということで、一般競争入札ということを今私どもとしては申し上げておるところでございます。
 そうした中で、先ほど来先生がお述べになっておられることも私どももよくわかるわけでありまして、どなたかに対するお答えの中で私どもにもジレンマがあることは正直に申し上げたところでありますが、そうした中で、今までお役に立ってきたものであれば、できるだけお役に立つ形で残ることが望ましいというふうに思っておりまして、また、それぞれの譲渡に当たっては、特に、今お話しのように当該地方自治体との話し合いといいますか、そうしたことは大変大切なことだと思っておりますから、それぞれに当たって地方自治体との連携というのはとらせていただきたい、こういうふうに思っております。

○山井委員 地方自治体との連携はとらせていただきたいということですが、ということは、ある日突然、一般競争入札、はい、かけましたよということではなくて、一般競争入札にかける前に、当然地元自治体とは事前に協議をする、相談をするということでよろしいですね。

○尾辻国務大臣 そうさせていただきます。

○山井委員 それで、例えば、ここはテニスコートもございますし、関西学研都市の中での重要な宿泊施設としての役割も果たしておりますし、また地元の農産物を売ったりもしております。私が何を言いたいかというと、もう町づくりの中の重要な拠点施設として地域に溶け込んでいるわけなんですね、十七年間。それを、はっきり言って国の都合なわけですよ、国の都合で今までつくっていたものを急にどこかに売却してしまうということで。繰り返しになりますが、テニスコートでもそういうものでも民間がやってくれたら、民間がやってくれたらいいんですよ。問題は、それを買った方が何に変えるのかわからないということなんですね。
 だから、そのことに関してはやはり何らかの配慮というか、無条件ではないですよと。先ほど言いましたように、この法案の目的の一つが社会保険庁や年金制度への信頼回復にあるわけですね、公共の福祉の向上にあるわけですね。そこで、これだけ必要とされている施設がなくなっちゃって、全然違うものになっちゃったと。それが公共の福祉の向上につながるのか、あるいは、社会保険庁よくやったという信頼回復につながるのかというと、私は逆じゃないかと。何もそこまで言っていない、それはやり過ぎじゃないかということにもなるのではないかと思います。
 そういう意味で、先ほど、地元自治体との相談や協議も一般競争入札の前にするということですが、そのことを通じて、今までと同じような業種が望ましいということを大臣もおっしゃっておられましたけれども、それをどうやって配慮というか誘導していくのか。そのあたり、大臣、これは非常に重要なことだと思うんです。
 繰り返しになりますけれども、私は民間に移ることが何も悪いとは言っていないんです。ただ、全く関係ないものになってしまったら、この責任というのはやはりあると思いますよ、その市の機能、町づくりが破壊されるわけですから。そんなことを国あるいは私たち国会議員の力でやっていいものか。政治の責任というのは公共の福祉の向上なわけですから、少なくともこういう方向性での売却というか、そういう方向性、大臣、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、また先生もお述べいただいておりますように、基本的に、年金に対する信頼回復、社会保険庁に対する信頼回復、これをなさなければなりません。そのためにもと、私どもは判断をして今回のことをお願いしておるわけでございますが、そうした中で、例外をつくることがどうであろうかとかいろいろな御議論がございまして、そういうことがまた国民の皆さんにどういうふうに映るかといったようなことを判断しなきゃならない。そうした中で、ということを改めて申し上げるわけでございます。
 ですから、こうしたものが地元にそこまで溶け込んでおるのであれば、あるいは地方自治体にお買い上げいただければこんないいことはないと思ったりもしますが、今とても地方自治体にそれだけの余裕があるところというのはまずないわけでございましょうから、それも無理かなと思いつつ、ただ、一番いいのは、そういう形にでもなればという思いもありますということを申し上げておるところであります。
 したがって、まずは競争入札で売らせていただくということにさせていただいておりますけれども、競争入札の中でも機能を維持していただけるようなところで買っていただければ一番ありがたい、地方公共団体にかわるようなところで買っていただければ一番ありがたいというふうに思っておりますということを重ねて申し上げます。

○山井委員 まさに今の大臣の答弁でも、後は野となれ山となれではないんだと。今までから本当にそういう必要性の高いところに関してはできるだけその業種が続くことが、民間に移った後も望ましいんだということでありますが、そこが非常に重要なことであると思います。
 そこで、要は、地方自治体に購入の意思があっても、今おっしゃったように一般競争入札で地方自治体の方がたくさんのお金を入れて買い取るということはほぼあり得ないというふうに思います。その意味で、財政上等の理由で一括での購入が自治体や自治体に関連するところが困難なときには、特例債を認めたり分割払いにするなどの便宜を地方自治体に関しては最大限図るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 施設の売却代金の分割払いにつきましては、施設の引き渡し後の債権管理業務でありますとか、担保物件の評価、管理等に必要となる経費等を踏まえて慎重に検討する必要があるというふうに考えております。今まで民間に対して分割払いという例はございません。しかしながら、地元の地方公共団体も入札に参加しやすい、私どもも先ほど来申し上げておるような思いがありますから、そうした環境を整えることも重要な視点の一つだと考えておりまして、どのような方策が可能なのか、今の分割払いというお話がございましたので、これについては検討してまいりたいと存じます。

○山井委員 ぜひともそのあたりのところを検討していただきたいと思います。
 要は、繰り返しになりますが、この法案の趣旨は、もう年金のお金は投入しないということ、そして、国や社会保険庁がやらなくていいことは民間に任すということ、この部分に関しては、ある意味で与野党通じて思いは同じだと思うんですね。それで、まさに大臣が答弁してくださったように、うまくいっているところはその業種が残ればいいな、ここまではみんなの思いだと思うんですよ。ところが、残念ながら、この法案だけを見ていると、後はどうなってもいいのかということになりかねないわけです。
 それで、続きまして、雇用の方面からちょっとこの問題を考えてみたいんです。
 私、ウェルサンピア京都にお勤めの方やほかの施設にお勤めの方からも多少話を聞いたんですが、例えばこういう声があるんですね。五十代の方は、定年まであと十年、これが売却されて大体同じような業種になれば残れる可能性は高いけれども、全く違ったものになったり、それこそ宅地になってしまったらリストラになる可能性が高い、そうなったら、五十歳を過ぎたらなかなか新しい仕事は見つからなくて路頭に迷ってしまうというふうなことをおっしゃっています。また、お子さんが二人小学生でおられる四十歳代の方は、ここでずっと働いてきた、この法律を聞いてびっくりしている、子供も二人いる、奥さんからもこれから一体どうなるのと言われていると。
 皮肉なのは、このウェルサンピア京都のようにうまくいって黒字が出ているところほど早く売れやすいんですよ。これは何か余りにも皮肉というか、あんまりじゃないかなというふうに思うんです。
 そこで、要は社会保険庁としたら一銭でも高く売りたい、これはわかります。ところが、尾辻大臣は厚生労働大臣ですよね、労働大臣です、日本の雇用確保の最高責任者です。そして、さらに言いますが、今回、年金保険料のむだ遣いとかいろいろなことが問題になりましたけれども、この宿泊施設に働いておられた職員さんには何ら罪がないと私は思うんです。まず最初にこれをお聞きしたいんですが、今回こういう法案が出て売却することになりましたが、働いておられた職員さんに何か問題はありましたでしょうか。

○尾辻国務大臣 私は、働いておられた皆さん方は一生懸命頑張っていただいたものというふうに思っておりますから、決してその皆さんに罪があるとかという話ではございません。

○山井委員 私はそこは非常に重要な点だと思うんです。どっちかといえば、ミスがあったのは社会保険庁であり、私たちも含めた国会議員であり、その政策判断の甘さというものが今日の状況を招いたわけですよ。しかし、絶対やってならないのは、そのある意味で私たちのミスというか判断の甘さのツケを食うのが、まさに小さなお子さんたちを抱えておられる職員の方々が路頭に迷うという結果になったら、これはやはり私は筋としておかしいのではないかと思うんですね。大臣、うなずいてくださっておりますけれども、まさにその思いは一緒だと思います。
 そこで、このような従業員の方々の雇用の確保ということについて何らかの配慮が必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○西副大臣 今、種々委員からお話を伺いました。こういう宿泊施設、大勢の皆さんがいろいろな形態で働かれている、私も何回か泊まりに行かせていただきましたのでよく承知しているつもりでございます。
 今回の施設の売却に対して、一義的にはこれは雇い主である委託先法人が責任を持っていただくということで、相談窓口をつくっていただいたり、それから再就職先を開拓していただいたりということはお願いしなければいけないということが前提ではございますけれども、我々としましても、委託先公益法人の従業員の雇用問題につきましては配慮をしていくという前提ですので、これからも協力しながらこの職員の雇用問題には配慮をしていきたいと思っております。
 具体的に、国と独立行政法人が協力しまして、施設を購入した人に対して雇用を引き続きお願いする、それから、関連団体における求人情報の提供をお願いする、それから、地方自治体、地域の経済団体等への再就職支援のお願いをする等、我々としてできるだけの支援はしていきたいというふうに思っております。

○山井委員 できるだけの雇用確保への支援をしていきたいという答弁をいただきまして、それはぜひお願いしたいと思います。与党協議会の覚書にも雇用問題に対して配慮を十分行うということを書いてあるわけですね。雇用問題や老人ホーム等の入居者への配慮を十分に行うということが書いてあるわけですから。
 そこで、もうちょっと踏み込みますと、従業員の不安が広がりますと施設運営にも支障が出ますので、施設が譲渡される場合、原則として従業員を継続雇用する、そういうふうなことを施設の譲渡契約に盛り込むことを明確にすべきではないか、そこまできっちりやるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○西副大臣 ただいまのお尋ねは、従業員の継続雇用を譲渡の条件に盛り込むということはどうかというお話でございました。
 先ほどから大臣からも何回も御答弁申し上げていますように、今回の譲渡というのは年金資金へいかにたくさんの資金を繰り込むかということが求められておりまして、こういう条件と雇用の確保を最大限図るということは、これはなかなか双方がうまくマッチするわけでは必ずしもありません。雇用の条件をつければつけるほど、今度は年金の方に回るお金、つまり売却のお金が十分行かないという非常に難しい問題を本来はらんでいることでございます。
 この職員の雇用につきましては、先ほども申し上げましたように、第一義的には雇い主さんの責任でもって頑張っていただくということでございますけれども、施設を買っていただいた人に対して、我々としても先ほども申し上げましたようにできるだけ再雇用をお願いし、一人でも多くの人を雇用していただきたいということで全力を挙げていきたい、こう思っているところでございます。

○山井委員 今まさに、一円でも高く売りたいということと雇用の継続をお願いするというのは、つらいけれども矛盾しかねない問題だということをおっしゃいました。まさに、私はポイントはそこだと思うんです。
 繰り返しになりますが、私が最初にこの法案の目的は何ですかと言ったのは、年金資金等への損失の最小化だけではないんです。それとともに、年金制度や社会保険庁への信頼の回復と公共の福祉の向上というのがあるわけですね。だから、正直言いまして、私もきょう運営部長さんではなく大臣や副大臣に答弁をお願いしているのも、そこにあるわけです。社会保険庁の枠では、一円でも高く売りたいとしか言いようがないんです。
 しかし、繰り返しになりますが、尾辻大臣や西副大臣は日本の雇用を守る責任者なんですよ。日本の雇用を守る責任者が、一円でも高く売るためには雇用はどうなっても仕方ないんだとはやはり言いにくいと思うんですよね。言いにくいと思うんです。そこをまさに、西副大臣、うなずいてくださっていますので、せめて、一円でも高く売ることと雇用の確保は同列で両方頑張りたいと。これはやはり両立ですよ、基本的には。難しいのはわかりますけれども、両方力を入れていきたい、厚生労働省なわけですから、その答弁をお願いします。

○西副大臣 お答え申し上げます。
 御答弁はいただいたわけでございますが、まさしく我々が悩んでいるところは、そのことでございます。雇用の確保というのも大変大事なことでございます。
 先ほど大臣がおっしゃられましたように、それぞれの施設が一生懸命に頑張っていただいて、今の施設の維持をしてくださった、まして当該の施設は黒字を生んでいる。そのことは必ずやはり新しい譲渡に関してもいい結果が生まれるのではないか。赤字の団体よりも黒字で経営できるという努力をしていただいたところは、やはりそういうプラスの面があるんじゃないかと私は思いながら聞いておりました。私どもも、そのことは、雇用の確保ということと一円でも高く売るということの間にあって、双方ともに最大限実現できるように努力をしていきたいと思っております。

○山井委員 それで、私の資料の二枚目を再び見ていただきたいと思います。今、西副大臣からも雇用の確保にも最大限努力するという答弁をいただいて、本当にありがたいことだと思っておりますが、よく話に出るのが、この資料の二ページにもありますように、当期剰余に関しては黒が出ているけれども、減価償却費等を考えた差し引きは全部赤字になっているという批判がこういう休暇センターについては出ているんですが、一つ大事なことで確認しておかないとだめだと私思いますのは、これは、やはり一般のところよりも一割、二割は安い方向で価格などを設定するとか、そもそも年金の受給者への還元であるとか、そういう目的から、この価格も黒字が出るようにという仕組みにはなっていないんですよ。そもそも、もうけが目的じゃないわけですから。
 そういう意味では、このすべてのセンターで赤字になっているのは、経営努力や従業員の方々の問題ではなくて、黒字は目指さないという制度の枠組みであった。要は、これは宿泊料金とかも社会保険庁の許可というか報告することになっていたわけですから、そもそもそういう制度であったということ。これはちょっと確認をさせていただきたいと思います。

○尾辻国務大臣 それぞれの施設の価格設定とか、そういうことは詳しく承知をいたしておりませんから、今正確にお答えすることは無理なんですけれども、被保険者へのサービスということでこうしたものはそもそも始まっておりますから、被保険者に対するサービスというのは料金も安くするとかそういうことにもなるわけでありまして、そうした面があっただろうなということは考えるところでございます。

○山井委員 まさにそういう面があったわけでありまして、ですから、今までのものが全部赤字だったから経営がだめだったのではということではなくて、今まではそういうシステムでやってきたわけですよ。でも、これからは、料金を例えば自由に上げたり、いろいろなことをフレキシブルにできれば、経営上もっと黒字をふやしたり、そういうことは可能になってくるというふうに思っております。そういう意味では、これはほかの用途に使うのではなくて、できれば今までの業種に、今までから必要性が多かったところはやっていくべきだと思っております。
 それで、話は少し戻りますが、問題の一般競争入札ということでありますけれども、ほかの方法はそもそも考えられないのか、なぜ一般競争入札だけなのか、また、ほかの方法を何か御検討はされたのか、そのことをお伺いしたいと思います。

○尾辻国務大臣 恐らく念頭におありなのは、かつて私どもが総合評価方式なんというのをとって施設の売却をしたことがございます。その総合評価方式というのは、従業員ごと買っていただくと少々安くても構わないですから買ってくださいといったような方式をとったこともありますけれども、またこういう方式をとりますと、安く売ったという御批判もいただいたりもいたしております。ですから、今回、私どもは、検討はいたしましたけれども、そういう方式をとろうとしておるものではない、あくまでも一般競争入札だというふうに申し上げているところでございます。

○山井委員 それで、今の一般競争入札と先ほど言いました公共の福祉の向上、この両立をどう考えるかということなんですけれども、繰り返しになりますが、この種の施設がなくなりますと、近隣の方々や利用者の迷惑は甚大であるケースもあると思うんですね。
 そこで、公共の福祉に反するものはもちろん認めるべきではないと思うんですが、そのあたりはどうやって判断するのか、そういうふうなことの、これは突然質問させていただいているんですが、大臣のお考えですね。まず聞きます、少なくとも公共の福祉に反するようなものは基本的にはもちろんだめということでよろしいですね、一般競争入札でも。

○尾辻国務大臣 公共の福祉に反するというのをどう解釈するかでありますけれども、少なくとも公序良俗に反するようなものはだめだというのは常識だというふうに思います。

○山井委員 問題は、それをどこでどうやって判断するかということになりますけれども、それは先ほどおっしゃったような地元自治体との事前の相談とか、そういう中でそこは多少判断することになるということでよろしいですか。

○尾辻国務大臣 申しわけありません、質問の御趣旨がよく理解できませんでしたので、もう一回御質問いただけますでしょうか。

○山井委員 公共の福祉に反するかどうか、これの判断は正直言って非常に難しいと思うんですね、何をもって公共の福祉に反するか。それと、最初は違う目的で買ったけれども、二年ぐらいでもうからないから変えちゃえというケースもあり得るかと思うんですね。そのあたりの判断というのは、やはり地元の自治体と一般競争入札をする前に多少議論をすべきではないかというふうに思いますが、要は公共の福祉に反するかどうかですね。それと、裏返すならば、今までの業種をどうやって続けていくか、そういうふうなことに関して事前に自治体と協議をすべきと思いますが、いかがですか。

○尾辻国務大臣 今お願いしておりますこの法律をお認めいただいて、実際に独立行政法人がスタートして、そこがどういうふうにしてまた作業を進めるかということでございますので、細かなことについて今私から申し上げるというものでもございませんが、今のお話は、突き詰めて言うと、売るときに転売禁止みたいな条項をつけるのかと。もしそういうふうに突き詰めて具体的な話でありますと、そこまで譲渡条件につけられるかなというのは率直に思うところでございます。

○山井委員 ここは、先ほど言いました、後は野となれ山となれになるのかどうかというところにも関係してくると思いますが、今までから必要性が高い施設に関してはできるだけその業種が存続すればうれしいなという答弁、先ほど大臣おっしゃってくださいましたけれども、確認ですが、そういう立法者の意思があるということでよろしいですね。

○尾辻国務大臣 私どもの気持ちの中にその思いがあるということだけは申し上げます。

○山井委員 それをいかに、ある意味で実際の運用の中に落とし込んでいくかということが、本当にこれは私たちの責任だと思います。私たちが立法府に身を置く者としてそういうつもりでやったと言っても、実際は何の縛りもかからずに、結果的にはとんでもないことをしてくれた、社会保険庁というのはこんな無責任な役所だったのかということになっては、ある意味で本意ではないと思うんですね。
 それで、私の一枚目の資料に改めて戻りますが、要は病院などに関しては「譲渡に当たっては、病院機能の公益性を損なうことがないよう十分に検証した上で、適切な方法によって結論を得る。」とか、社会保険診療所に関しては「施設の中心的な機能の維持を条件とした一般競争入札」というふうなことが書かれているわけで、有料老人ホームに関してもそうであります。ところが、この宿泊施設等が一般競争入札となっているのですけれども、もちろん、病院の場合は命がかかっているのだとかあるかとは思いますが、このラインが、下半分はいろいろな配慮をする、ところが上はぼんと一般競争入札となっているわけなんですね。やはりここは、きょうの質問でもずっと言いましたように、地域への貢献、町づくりの視点、そういうことを考えて何らかの配慮をすべきではないかと思いますが、ここはクリアにカットしてありますけれども、この宿泊施設等に関してもそういう公益性は社会保険庁や厚生労働省としても認めているのだということでよろしいですね。

○尾辻国務大臣 きょうの資料としてお出しをいただいておりますこの紙でありますけれども、これは私どもがお出ししたものをそのままお使いいただいておるわけでございます。
 それで、私どもがこの紙で御説明申し上げようと思っておりますことは、基本的には一般競争入札なんですと、基本的には今度の譲渡、売却に当たっては一般競争入札にいたします、そのことを書いた上で、ただ、下の方に書いてありますものは、それぞれの特殊な事情もありますので、それについての配慮すべきことということをあえて書いておるわけでございます。決して途中で大きく線を引いておるというわけではございませんで、繰り返し申し上げますと、基本的には一般競争入札でございますという説明の紙だと御理解いただきたいと存じます。

○山井委員 少し雇用のことに改めて戻りますが、そこに働いておられる方々の数というのは、正社員の方は少ないかもしれませんが、パートの方とかを含めると非常に大きいわけでありまして、やはり小さな都市や町にとっては、そこが、その雇用の場がなくなってしまうということになると、地域の雇用に与える影響も非常に大きいと思うんですね。まさに、厚生労働省さんは、地域の雇用を確保する、その先頭に立って旗振りしているところが、逆に地域の雇用不安を悪化させることになってはだめだと思うんですが、そのような地域雇用に対してどのような対応をしていくおつもりなのか、西副大臣、お答えいただきたいと思います。

○西副大臣 お答えいたします。
 先ほど来ずっと御論議があるように、年金資金への損失を最小化する、こういう前提と、それから基本的に一般競争入札ということで宿泊施設の売却が行われるという条件の中で、私どもが今後町づくりを含めた雇用関係をどう維持していくかということは大変難しい問題でもありますし、また、直接なかなかタッチできないといいますか、それぞれの町のことですのでかなり難しい問題であるというふうに思っております。
 施設それから用地をこれから購入していただくわけですが、購入していただいた方がその場でまた新たな事業を起こしていただくということ、もちろん業績のいいところは今の事業をそのまま継続しさらに発展していくという可能性もありますし、また新たな事業を起こしていただくことによって、その中でさらに雇用が創出されるということを期待しているところでございます。

○山井委員 まさにこの雇用の問題、本当にこれは一つ一つが雇用不安を生んでいく危険性があるというふうに私も深刻に思っております。
 それで、民間にできることは民間にということをよく言われておりますけれども、繰り返しになりますが、一般競争入札で売っていく、先のことに関してどうなるかわからないという不安があるんですけれども、私が思いますのは、民間企業が持っていた場合でも、これだけ大きなものを売る場合は相当地元自治体などと話をすると思うんですね。なぜならば、ウェルサンピア京都でも十七年間も地域の方々に愛され親しまれやってこられたわけですよね、もしそこが社会保険庁ではなくて一般の民間企業がやっていても、経営が苦しくなったから、はい、売りますよ、後はどうなっても知りませんよということでは、逆に、その企業の社会的責任、まさに今問われている一般企業の社会的責任やモラルが問われると思うんですね。普通に考えれば、一般企業より社会保険庁や厚生労働省というのはもっと高いモラルがあってしかるべきですよ、これは根本的な問題ですけれども。
 だから、そういう意味では、売却する際においても、そういう社会的責任、そして町づくりや地域に対する今までの貢献、貢献というか支えてもらったという恩返しの気持ちも含めて、やはりこれからもできるだけ地元自治体や地域の意向に沿った売却というものを進めていきたいということを、大臣、ぜひもう一度思いとして述べていただきたいと思います。

○尾辻国務大臣 きょうるるお述べいただきましたように、今まで施設が地元の住民の皆さんに、先生のお言葉をそのままかりて申し上げますと、愛されて地元に密着をしてきた、根を張ってきた、本当にそういう役割を果たしてきたということを改めてありがたいというふうに思うわけでございます。そして、その原資となりましたものが国民の皆様方からお預かりをしております年金の積立金であるわけでございますから、私たちは、そのことに対する大変大きな責任を負っていると思います。そうしたすべての責任を負っているという立場から、これを売却するということになりましたときに、その責任を負っている分、慎重に地元の皆さんとの話もしながら進めていかなきゃならないものだということは、もうそのとおりでございますから、きょう先生がお述べいただきましたことも十分に踏まえながら、肝に銘じながらやらせていただきたいと存じます。

○山井委員 そろそろ時間ですので締めくくらせていただきますが、これは、極端な言い方をすれば、年金資金等への損失の最小化を図るというのは目的の一つにすぎないのですね。その前提としたら、社会保険庁や年金制度への信頼回復や公共の福祉の向上というのがあるわけです。ですから、一円でも高く売るために結果的にはその町の町づくりがめちゃくちゃになっても構わないということは、国がやる政策として私は許されないと思っております。
 また同時に、先ほどから大臣からもそもそもここに働いている職員さんには何ら罪はないんだということを、大臣、おっしゃってくださいましたよね、そういう何ら罪のない、もっと言えば必死になって働いてきた方々を国の都合で、もともと厚生年金保険法という法律によってつくった施設を、またこういう新しい法律で、現場の人に罪がないのにその方の生首を切るなんてことは、私は国家がやることは許されないというふうに思っております。
 そういう意味では、この法案の中で、もっと、これは附帯決議をつけるなりいろいろな形をして、この法案では語り尽くされていない立法者の意思はこうなんだと、雇用の確保やできるだけ今までの事業に関しては必要性が高いものは残していきたいというようなことを私はつけていくべきだというふうに個人的に思っております。このことについて最後に西副大臣に答弁をお願いします。

○西副大臣 大臣から種々お話がございました。山井委員のおっしゃられた種々の、特に宿泊施設を中心にきょうお話がありましたが、当然、この法律そのものの第一義は一円でも多く国民の年金の資金に繰り入れる、こういう大きな課題が趣旨ではございますが、その周辺を取り巻くいろいろな情勢、聞かせていただきましたことを、私たち政府としてできる限りの対策は考えていきたいというふうに考えております。

○山井委員 民間企業でも、今の時代、一円でも高くだけではだめだ。社会的責任ということが言われ、それをまさに指導していくのが厚生労働省なわけですから。厚生労働省が、もう雇用は関係ない、町づくりも関係ないとか、そんなことを言っちゃったら、日本の国は本当に秩序がこれからなくなりかねないわけですから、ぜひとも、一円でも高く売りたいということとともに、やはり地域の福祉の向上、そして雇用の確保、そういうことをしっかりやっていっていただきたいと思います。
 質問を終わります。

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2005年6月

2005年6月

厚生労働委員会議事録(障害者自立支援法案)

162-衆-厚生労働委員会-21号 平成17年05月13日
  障害者自立支援法案(内閣提出第三五号)
  障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)
◇社会的入院をしている精神障害者の社会復帰について
◇精神障害者の外来通院医療に係る公費負担制度の削減による影響
◇ニュースJAPANの報道について
◇作業所の工賃を上回る利用料について
◇定率負担導入によるサービス利用抑制の恐れ


○鴨下委員長 次に、山井和則君。

○山井委員 これから一時間、質問をさせていただきます。尾辻大臣、西副大臣、どうかよろしくお願いを申し上げます。
 そしてまた、きょうも多くの傍聴の方々、全国からお越しいただいております。現場で働く方、また御家族の方、そして何よりも当事者の方々も、目の不自由な方、また、いろいろな障害の方も来ておられます。本当にこういう方々は、全国数百万人と言われる方々を代表して、自分たちのこれからの生活、命、人生を左右する法案がどう議論されるのか、もっと率直に言えば、やはりこの法案では非常に困る、そういう憤りと不安を抱えて傍聴に来てくださっているんではないかと思います。
 そういう方々を前にして、私はこの一時間、この自立支援法案が、本当に名前のとおり自立支援する法案なのか、逆に自立を阻害する法案なのか、そのことをこの場で皆さんと一緒に考えていきたいと思っております。

 私も、二十ぐらいのころから福祉施設でボランティアを始めたりして、福祉に人生をかけようと思いまして、それ以来、二十数年福祉の道を歩いてきて、福祉をよくしたいという一心で政治家になりました。その中で、やはり究極の福祉というのは、重度の障害の方が地域でひとり暮らしをできる、そういう社会こそが本当に豊かな社会なんだと。
 バブルのころに言われました、日本人はエコノミックアニマルだと。私は当時、福祉のことでアメリカやスウェーデンに留学をしておりましたが、本当に声を大にして反論したかった。日本人はエコノミックアニマルなんじゃない、世界で最も人間を大切にし、人間を愛し、そういう、人間を大切にする国なんだということを言いたかった。しかし、残念ながら、今の現状、日本は福祉、特に障害者福祉が非常におくれております。
 この連休も、一週間スウェーデンに行きまして、精神障害者の方々、知的障害者の方々の作業所やグループホーム、そういうところを訪問させていただきまして、改めて日本との落差というものを痛感し、日本のように、精神病院に多くの精神障害者が入っている、三十四万人も入っている、あるいは知的障害の方も多くは施設に入っている、やはりこういう先進国では恥ずかしい状況を一日も早く変えねばならないというふうに感じました。
 きょう、九枚、資料をここに添付させていただきました。ぱらぱらっと説明しますと、傍聴席の方、なくて申しわけありませんが、一枚目、世界、諸外国の福祉制度の概要ですが、何が言いたいかというと、最初にもう言っておきますが、世界の中で、障害者福祉のサービスに応益負担を導入し、重い障害の人ほどたくさんお金を払ってもらうというような制度をとっている国は、人類史上まだありません。この法案が通れば、日本が初めてになります。そのことですね。
 二枚目は、これによって、まだ未定稿ですが、昨日、障害福祉部からいただいたもので、今回、一割負担を導入したら、年間二百六十四億円ぐらいお金が入ってくる。この二百六十四億円のために今回の自立支援法があるというのも、一つの言い方ではないかと思います。
 それで、次のページは、きょうは二つのテーマ、前半は、精神科の通院医療公費負担の削減の問題、三十二条問題についてやりたい。後半は、重度の障害者の方々が地域でひとり暮らしをできる法案なのかということをやっていきたいと思いますが、四ページ目、五ページ目、六ページ目、七ページ目は、精神障害者の方々の生の声をここに添付させていただきました。
 それで、八ページ目が、ほかでもありません、きょうも多くの議員が指摘されているように、昨日、六千人あるいは八千人の方々が集まられて、大集会がございました。「聞いてください、わたしたちの声」という集会の状況です。大臣、この写真を見てください。私、午前も午後も行ってまいりましたが、この八ページ目です、朝日新聞の記事にも出ておりますが、本当に私は、この場に大臣にお越しいただいて、本当にこの法案を不安に思っている障害者の方々の声をぜひとも聞いていただきたいというふうに思いました。
 それで、まず最初の質問から入ります。
 前半は精神障害者の問題でありますが、これに関しては、厚生労働省が宿題を持っていると思います。二年前、私たち民主党が大反対をした心神喪失者医療観察法案の審議の中で、精神障害者の社会的入院、三十四万人のうち約七万人が社会的入院、つまり、地域に受け皿とサービスがあれば復帰できるのに、精神病院にずっと入院せざるを得ない、こんな非人間的な扱いを受けている方々が七万人もいる、これを十年以内に社会復帰してもらうというふうに約束をされたわけです。そのことについて、現状、あれから二年たっておりますが、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 精神障害者施策におきましては、受け入れ条件が整えば退院可能な入院患者の社会復帰を進めていく、このことは極めて重要な課題だと認識をいたしております。そこで、今、宿題だというお話もございましたけれども、平成十四年十二月から、精神保健福祉対策本部を設置いたしまして、その実現に向けての施策に着手をしたところでございます。
 それで、この課題は、今お話しいただきましたように、十年間という目標を持って解決していくということを申し上げておりますから、市町村を中心として、地域で暮らすために必要な福祉サービス、住まい、生活訓練、質の高い医療など、そのために各般にわたる支援を実施していく必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
 そこで、このたびお出しをいたしております障害者自立支援法案におきましては、精神障害を含め、障害の種別を超えて、市町村が中心となって障害者福祉サービスを一元的に提供する仕組みに改め、精神障害者に対する社会復帰や地域生活の支援を抜本的に強化をすることといたしておるところでございます。
 これもいつも申し上げておりますけれども、精神障害の皆さんを入院医療中心から地域生活中心へという基本的な考え方に基づいてそのように変えていく、そのためにはいろいろな条件整備をしなきゃいけませんけれども、大きなそのうちの一つがやはり社会的に受け皿をつくるということでございますから、その社会的な受け皿づくりとして今度の障害者自立支援法案をお出しした。そういう面もあるということを、そういう面もあるといいますより、そのことを強く願いながら私どもがこの法案を出したということを今申し上げておるところでございます。

○山井委員 答弁を聞いて、私は悲しい気持ちでいっぱいです。
 質問通告でもしましたから、私の質問の意味はわかっておられると思うんですよね。二年前に、今後十年以内に七万二千人の社会的入院をなくしますということをこの場で約束した。それから二年間たってどういう状況で、その計算でいけば二〇一二年までに七万二千人は社会復帰できるんですかという趣旨の質問をしているのに、全く答えられない、答えることができない。つまり、全く進んでいないわけです。
 それで、私、この答弁はもうこれ以上結構です、はっきり言って時間のむだですから。私が言いたいのは、二年前にそんなことを約束しながらも二年間も全然進んでいない、そういう状況の中でこの法案が出ているということであります。
 そこで、今回の法案の最大の問題の一つであります、きょうも午前中園田議員が非常に厳しく批判してくれました、三十二条の問題に入りたいと思います。
 この資料の中で、(3)の中に「精神科通院医療公費負担の削減ではなく、存続を求める署名」というのがあります。二十三万人もの署名が集まったと聞いております。精神保健福祉法三十二条に規定された精神障害者の外来通院医療に係る公費負担制度がこれは削減されていくわけなんですね。五%から一割負担になっていってしまう。
 しかし、これは大臣御存じのように、まさに今大臣が答弁された、精神障害者の方々が地域で生活するときの命綱がこの外来であり、またデイケアになるわけなんですよね。それを今減らそうとしているわけです。これによって、ちょっとでも負担がふえれば、精神の、心の病に苦しむ方々はやはり外来やデイケアに行くことができなくなって、それによって症状がかえって悪化する、あるいは逆に入院がふえる、そして最悪の場合は自殺がふえるんではないかということで、今、現場は大混乱に陥っております。まさに人の命を奪うことにすらなりかねない大問題だと思っております。
 この点について、この通院の、この三十二条を自立支援医療という名で自立支援法案の中に移すことは、やはり悪化、入院、自殺の増など、費用的にも結局は高くつく、そのようなことについて、大臣、問題と思わないか、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 これは御説明申し上げておりますように、今度の障害者自立支援法という新しい法律をつくる、そうなりますと、そのつくったことによって、今まで幾つかの法律があって障害者の皆さんの法体系をつくってきた、それとの関連が出てきて、整理をしながらやっていく。そうすると、今度の障害者自立支援法の本法の本則で書いてあることに照らし合わすと、それぞれの法律をいじらなきゃならない部分が出てくる、それについては附則でいじらせていただきますという整理をしておるということは、もう申し上げておるとおりでございます。
 そうした中で、今お話しのようないろいろな話が出てくるわけでございますけれども、法律全体を整理しておるわけでございますから、そして、今度の法律に三障害の皆さんの対応を……(山井委員「いや、その理由を聞いているんじゃなくて、こういうことで悪化をしたり自殺がふえたりしないかということを聞いているんです」と呼ぶ)ということをまず法律自体で整理をさせていただいておりますから、基本的に、政策を変えるわけじゃございませんので、私どもは今度の法律をつくったことによって自殺がふえるというふうには考えておりません。

○山井委員 そうしたら、ほかの聞き方をしましょう。
 自己負担がふえることによって受診が減るというふうに認識されていますか、それとも減らないと認識されていますか。自己負担はふえるんですから、これは。大臣お願いします。

○尾辻国務大臣 今のお話で申し上げますと、まず、現行の精神通院公費というのは、医療費の多寡にかかわらず一律五%、こういうことになっております。低所得者の方であっても高額の医療費の場合には五%ですから、その高い負担を求められる、こういう制度でございます。
 したがって、制度が変わりますから、負担が大きくなる方も小さくなる方もそれぞれにあるわけでございまして、制度を変えると負担の大きくなったり小さくなったりするということは当然起こるということはあるわけでございます。
 ですから、そうした中で、私どもは、一方で大きくなったり小さくなったりする面はありますけれども、低所得者の方々に対してのきめ細やかな対応をするということでそこを解決したいと思っておりますから、必要なサービスは、サービスといいますか医療というのは受けていただけるものというふうに考えておるところでございます。

○山井委員 要は、そう思って、この資料でも二ページ目をつけたのですけれども、言いますが、大体年間、これを自立支援医療に移すことによって、三十億円自己負担がアップすると書いてあるのですね。明らかにもうデータで出ているわけですよ。ということは、自己負担がふえるわけですよ。減る人もふえる人もいるというんじゃなくて、トータルで見るとふえるわけですよ。つまり、ふえることによって受診抑制がかかるんじゃないかと言っているにもかかわらず、そのことに関して明確な答弁がないわけです。
 そこで、これはもう水かけ論になりますので、厚労省の現状認識はそれでわかりましたから、具体的な話に入りたいと思います。
 やはり答弁を聞いていると、精神障害者の方々の置かれている現状をなかなかわかっていただいていないんじゃないかと思います。
 そんなことで、今回、公費通院医療の三十二条の制度を利用している方からこれだけ、ぜひ国会で読んでほしいという手紙を私いただいてきました。これを、大臣のお手元にも届いていると思いますが、読ませていただきます、その一部を。
 ちょっとはしょって読みますが、二十五歳、匿名の男性の方です。「私は、」「「そううつ病」になった者です。」と。それで、ちょっとはしょりますけれども、この七ページ。「そんな私に対して周囲は冷淡でした。」「家族も社会の人達も、私が精神的に弱く、物事から逃げているだけだとしか判断しませんでした。」
 そして、「身内も含めた世の中全てに絶望し、本気で大した迷いもなく死のうとしました。それが一番、自分にとって良いことなのだと思ったからです。その時、死ぬ前に今も通院している診療所に行くだけ行ってみようと思いました。それから、紆余曲折を経て、何とか死を思いとどまり、長い時間をかけて、少しずつ回復していくこととなりました。その長い間、私のほとんど唯一の居場所だったのが、」この診療所の「デイケアだったのです。」「自分と同じか、あるいはそれ以上の病状の人達、そして理解あるスタッフの方々と一緒に過ごすことで、私は再び正気に戻れました。」「デイケアとはそういうところなのです。」ということを書いておられます。一カ月の総出費、十一万円、家賃等込み。うち、食費は二万円。
 このデイケア、私も先日行きましたが、例えば焼きそばも、三人で食べられるときに二玉しか自分たちでつくって食べられないのですね。三人で焼きそば二玉ですよ。何でですかと言ったら、いや、焼きそば代がもったいないから、お金がないから。一カ月の食費二万円、一日平均六百五十円、それだけ切り詰めてやっておられるのです。厚労省は今回の三十二条の改正でちょっとしかお金はふえないから大丈夫だと言っておられますけれども、そういう感覚じゃだめなんです。
 その次、大臣、もう三ページ前、四ページを見てください。この方は実名を公表してもらって結構ですということで、あえて、国会議員の皆さんへ生の声を聞いてほしいということで、すぎもとはるなさん、二十三歳の女性です、書いてくださいました。三ページ、ちょっと長いですが早口で読みます。
 私は、この病院に二年ほど前から通院しています。最初は学生のときでした。そのころ会社に入りましたが、病気を理由に職につかしてもらえず、今はアルバイトで暮らしています。月の収入は五万円ぐらいです。
  幸い今は、病気と相性のよい薬と出会う事ができたので、自分のおこづかいくらいは稼ぐことができますが、同じ年の友達に比べれば家族に依存していることばかりで、ほんとに、情けなくなります。
  働きたいのに、働けない、頑張って就職活動して受かった会社で働けず、親に頭を下げて東京から地元に帰ってきた時の私のみじめさを想像して下さい。
 そこで、大臣、一つお願いがあるんです。その後の文章をちょっと六行ぐらい読んでみてほしいんですね。大臣、ありますね、この四ページ目の「生きている価値がない、と何度死にたいと思ったかわかりません。」そこから一段落だけちょっと読んでみていただけますか。(発言する者あり)

○尾辻国務大臣 お求めでございますので、手元にありますものを読ませていただきます。
  生きている価値がない、と何度死にたいと思ったかわかりません。
  昨日だって、会社を休んでしまいました。なまけている、といわれればそれまでかもしれません。でも、一生懸命働こうと思っても、心に負担がかかりすぎて、体のガソリンがきれてしまうのです。車なら、あと十リットルのところで、ランプがつきますが、私たちはガソリンがつきるのがわからない。その結果、エンストしてしまう。そんな病気とつきあいながら、それでも社会とつながっていたい一心で、生と死の間をさまよっているのです。

○山井委員 どうもありがとうございました。本当に申しわけありません。
 それで、本当に失礼なことで、申しわけなく思っておりますが、私は、今のことも失礼かもしれませんが、それを言うならば、この法案の方が、生と死をさまよっている精神障害者の方々に対してもっと失礼な法案だと思います。
 その後を読ませていただきます。
  今の病院、カウンセラー、そして薬に出会わなかったら、私は今、生きていないと思います。きっと人生がつらすぎて、自ら、命を絶っていると思います。ほんとに病気と向き合い、共に生きていくのは、一人ではできない、そして、長期的なスパンでの専門的治療を要する病気を、私は、背負ってしまったのです。
というふうに書いておられます。
 ですから、私がこういうふうな手紙を今読ませていただいているのは、私も含めて、本当にこの精神障害というのはわかりづらくて理解しづらい。そういう方々の苦しみというものが本当にわかって今回の三十二条の改正が行われているのかということであります。
 それで、あるデイケアの人に聞いてみたら、一週間に百人ぐらいが通っておられる。その中で、今回の三十二条が自立支援医療になることになってどういうリスクがありますかと言ったら、じっと考えていろいろ調べてくださって、もしかしたらその百人ぐらいの中の多くが、やはり自己負担がアップすることで、今まで週に四回来ているのを二回にするというふうに減らすかもしれない。その中で、百人中、顔を思い浮かべられるだけでも六、七人、自殺のリスクが高まる人がいるかもしれないということを言っておられました。
 もしこの法が、きょうの午前中も園田議員から指摘がありましたが、十月から施行されて、それによって来にくくなった人が自殺でもしたら、これは大変なことになります、私たち国会議員の責任は。そういう意味では、自立支援医療という名のもとで、自殺支援医療ということにもなりかねないわけです。絶対にそんなことはしてはならないというふうに思っております。
 大臣、お一言で結構です。この法改正は、自殺がふえることは絶対ありませんと責任を持って断言しますということを、ちょっとここで決意を語ってください。

○尾辻国務大臣 今、自殺の問題というのは、大変大きな問題になっております。国全体の大きな問題だというふうに私も理解をいたしております。そうした問題になっている中で、また、今お話しいただいておりますように、精神通院医療の役割というのは、これはもう極めて重要なことだと考えておるところでございます。
 そうした皆さんの公費負担医療制度につきましては、対象となる方の増加によりその費用が急増しておりまして、これも先ほど先生がお出しいただきました、未定稿だとおっしゃった資料の中の数字にも、このこともまた同時に述べていただいておるわけでございまして、費用が非常に急増をいたしております。
 その急増をしておる費用が、限られた財源の中でどうやって私どもは確保できるか。特に、必要な医療を確保するというのは大変重要なことでございますから、そのことを果たすためにまず今回お願いしているのは、費用を皆さんで公平に支え合う仕組みにしていただきたい、させていただきたい、そういうふうにしていただきたいということを申し上げておりますし、それから同時に、低所得の方や重度な障害でかつ継続的な医療を要する方など、医療費の家計への影響の大きい方に重点化した仕組みにしたい。
 そういうことで、必要な医療を引き続き受けていただきたいということを願っておるわけでございまして、そうした中で、自殺という悲しいことにならないようにということを、精いっぱい努力してまいりたいと考えております。

○山井委員 実は、たくさんの方が書いてくださって、これは後で大臣にお渡ししたいと思いますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。(発言する者あり)
 そして、これは百人のデイケアでもそういう状況ですから、もしかしたら、日本全国だったら本当に百人とか何百人という数の方がこれによって治療が減って、そういう自殺の危機に瀕する可能性があるわけです。
 これは、資料で見たら、年間三十億の負担増じゃないですか。ということは、例えは悪いですけれども、もし三十億円のために百人亡くなられたら、一人の命の値段というのは三千万円ですか。これは人の命の話ですよ。そこはしっかりお願いしますよ。
 それで、もう一つ、今まさに重度かつ継続の話になりましたが、ここは朝の園田議員の話にもありましたが、適正化のあり方の検討会の調査報告書の中で、こういう対象となることに関しては疾病はだめだ、疾病名による対象の限定はかえって差別、偏見助長につながるから、そうではなくて状態像だということになっているじゃないですか。このことに関しては、まさに現場の専門家であります水島議員が来週水曜日ももっと質問してくださると思いますが、我が党の朝日先生を先頭に、この問題はやはりこの自立支援法の最も深刻な問題の一つだ、一歩間違えば自殺支援法になりかねないということで、今後も取り上げていきたいと思います。
 ちょっとその辺で何か、人の手紙を読んで何とかというのがありましたが、きょうは違います。読んでくれといって向こうが書いてきて、持ってこさせていただきましたので、言っておきます。
 それで、次に、「ニュースJAPAN」という番組を先日見させていただきました。大臣も出演をされていたんですけれども、連休中の番組、大臣、これはごらんになりましたよね、御自分も出られていたので。三夜連続で十分ずつだったと思っております。そういう障害のある方五人がどういうふうに自立支援法案で変わるかということをされていまして、その方々についてお伺いをしたいと思っております。
 これは、私、その連休中はスウェーデンに行っておりましたので、父母がビデオに撮ってくれておりまして、とてもいい番組だから見なさいということで見させてもらって、本当に感動し、怒りを感じました。
 まず最初のケース、知的通所授産、奈良のちいろば園、パンなどをつくったりして、知的障害の方が通所授産という形で働いておられます。工賃が月に一万円。今は自己負担ゼロ。ところが、この法案が通ると、自己負担が二万円か二万九千円になるわけですね。一カ月の工賃が一万円で、自己負担が二万円から二万九千円になる。
 私の近所にも通所授産が幾つもありまして、もう怒り心頭に達しておられるわけなんですね。今まで、できるだけ家にこもらないで出てきなさい、出てきなさいといって通所授産を勧めてきたのに、逆にこれだけお金を取ったら当然利用が抑制される、引きこもるか、施設に入るか、自立に逆行するというふうに怒っておられます。
 やはりこういうのは問題ではないでしょうか。尾辻大臣、お願いします。

○尾辻国務大臣 「ニュースJAPAN」で取り上げられました幾つかの例でございますが、その中で、ちいろば園のケースというのが取り上げられておりました。あそこで取り上げられたものというのは、報道の内容だけでは詳細はわからないところもありますので、ある程度仮定を置いて私どもも判断しなきゃいけないわけでございますので、そのことはお許しをいただきたいというふうに思います。
 そこで、あそこで取り上げられたちいろば園のような通所授産施設を利用される方の利用者負担額でありますけれども、新制度におきましては、定率負担が、作業所で十五万円の通所費用、これも新制度になってこれが幾らになるかというのは、どういう施設になるかというのはあるわけでございますが、今現在十五万円という通所費用だというふうに見ますと、一割ですから一万五千円とまずなります。
 それから、食費及び高熱水費等の実費負担分というのは……(山井委員「いや、もうそれは今私がしゃべりましたので、そのことについてどう思うかということを聞いているんです」と呼ぶ)ですから、今先生がおっしゃった数字というのも、仮定の置き方なんですけれども、いろいろな数字に変化するものですから、必ずしもおっしゃった数字にもならないということをまず御理解いただきたくて、こういうことを申し上げておるわけでございます。それは御理解ください。
 したがって、今私が申し上げているのは、きめ細かに減免措置などをとりますから、そうしたものの中でまず負担をできるだけ小さくしたいというふうに思っておりまして、その仮定を置くわけですけれども、仮定を置いてその負担額を改めて計算しますと、大体、この前テレビで言われておったものよりはやはり小さい額になると、私どもはきのうもそれなりに計算しながら判断したわけでございます。
 したがって、今私が申し上げたいことは、できるだけ、今後またそういうきめ細かな減免措置をとることによって、そうした額を小さくしていきたいと考えておりますということを申し上げているところでございます。

○山井委員 ちょっとテレビの名誉のためにも言っておきますが、一応厚労省からきのうもらった資料では、テレビでは一万五千円と出ていたけれども、厚労省で計算したら二万円から二万九千円となっているというふうに逆のことが書いてありますので、申し添えておきます。
 それで、結局、工賃一万円のところから、とにかくそれを上回る利用料を取ることがおかしくないのかという根本的な問題なわけです。
 次に、どんどん似たような話を行かせていただきます。
 次の「ニュースJAPAN」の方も、視覚障害の六十一歳の男性の方で、盲導犬を利用されておられます。中途障害でありまして、月三十時間、介助やショッピングに視覚障害のためにサービスを利用しておられます。収入は年金のみで、一割負担。この人は、今無料なのが、月に約五千五百円になるわけです。
 それと、次、もう一人のケースの方も、四十三歳の男性の方で、自動車事故で脊椎損傷、車いすになっておられます。一日十時間程度、月三百二十時間の介護を受けられて、収入が年金等で十万七千円。十万七千円収入の方が、二万四千円、今回の自立支援法で負担が発生をいたします。
 これは、大臣、素朴な疑問なんです。自立支援ということは自立をしやすくするわけですよね。自立をしやすくする法律でありながら、これを見てみると、法案が通ったら、自己負担が発生して二万四千円とか払えなんて、どう考えてもこれは自立しにくくなるように思えるんですが、大臣、いかが思われますか。

○尾辻国務大臣 今、また二つの例をお述べになりました。
 私どもも、きょう御質問いただくということを昨日お伝えいただきましたから、こうしたケースについてもそれぞれ、先ほど来申し上げておりますように一定の仮定を置かなきゃいけないわけでございますが、仮定を置きながら、私どもなりの計算をさせてもいただいております。ただ、きょうそのことを申し上げて、またそのことをお聞きになっておるわけでもありませんから、先ほど来申し上げておるように、私どもは軽減措置できめ細かく措置をしたいということを申し上げておる、そこのところは御理解いただいておるだろうというふうに思います。
 ただ、では、自立支援といいながら負担がふえるじゃないか、こういうことでございますけれども、これはこの法案をお出ししたときに申し上げておりますように、社会福祉、こうしたもの、障害者の皆さんの施策も社会保障全体の法律の体系の中できれいに整理をしていきたい、そしてまた、その他の社会保障の法律、仕組みなどと整合性を持たせたいということでのお願いをしておりますし、また障害者の皆さんにも、ぜひ皆さんの中でのお互いの助け合いも考えてくださいというようなお願いをしておるわけでございまして、そうした中で負担が一部ふえるということは、これはぜひお互いの助け合いだと思ってやってください、そうでないと制度そのものが持続可能でなくなりますということをお願い申し上げておるところでございます。

○山井委員 ちょっと私、気になっているんですが、先日の質疑のときから大臣は助け合い、助け合いとおっしゃるんですけれども、そもそも最初の助け合いは、それこそ健常でばりばり働けるお金のある人が障害者の方々を支えるというのがまず根本的な助け合いであって、今言っているのは、本当に障害で苦しんでおられる方々からお金を取るという話なわけですよ。
 だから、ここで大臣、落差があるんですよ。大臣や厚労省さんは自立支援、自立支援といいながら、利用者の方は自己負担がふえるだけなんですよ。自立阻害なんですよ、利用者の方にとったら。そこが問題なんです。
 そこで、根本的なことをお聞きしたいと思います。この法案で、重度の障害を持つ方がひとり暮らしはしやすくなりますか。大臣、これはもうシンプルな質問です。

○尾辻国務大臣 その重度の方の収入だとか、その他いろいろな環境があろうと思いますから、それ次第だというふうに申し上げざるを得ません。したがって、私どもから申し上げますと、生活が苦しくなったりやりにくくなったりしないように、精いっぱいさせていただきたいと存じますということを申し上げます。

○山井委員 だから、もう答弁一つ一つが何か根性論なんですね、頑張ります頑張りますと。でも、実際、データ一つ一つは明らかに自己負担はアップしていっているわけですよ。この資料にもありますように、年間自己負担は、書いてあるんですよ、二百六十四億一割負担でふえると言っているわけなんですね。
 それで、では具体的な話、昨日会ってきました。(パネルを示す)この「ニュースJAPAN」に出られたお一人の牧井さんという方に、その集会の中でお目にかかってきました。
 この方、脳性麻痺でおひとり暮らしです。一日十時間、月三百二十時間利用されております。収入は年金等で十万七千円。この方に、今まで無料だったのが、負担が二万四千六百円発生する。これは厚労省も認めておられるわけなんですね。それに対して牧井さんはどうおっしゃっておられるかというと、牧井さんのお写真ですけれども、どうおっしゃっておられるか。びっくりしますよ、僕らの生活ってこれからよくなっていくと思っていたのにということをおっしゃっているんですね。
 それで、今までだったら、施設に入っておられたわけです、牧井さんは。それで、在宅生活の方がいいということで、仲間の人にも施設から出てこい出てこいと言っていたけれども、この法律になるんだったら、制度不安があるので、仲間に施設から出てこいとは言いにくくなるということまでおっしゃっておられるんですね。それで、自己負担がふえたら、二万四千円の自己負担が発生したら、今一日十時間、月三百二十二時間介護を受けているのを減らすことにもなるかもしれないということをおっしゃっておられます。
 大臣、それで、きょう、その牧井さんが傍聴に来られているんです。大臣、入り口の方を見ていただければ、一番端っこにいられる方です。牧井さん、電動車いすで西宮から来てくださっています。この法案に対して素朴な疑問を持っておられます。ぜひ、一言、一日十時間、月三百二十時間の介護ということで、この方に対して、ぜひともどう思うのか、大臣、答弁をしてください。(発言する者あり)大臣、答えてください。いや、私が聞いているんですから。

○尾辻国務大臣 委員会のあり方として、傍聴席に向かって私が申し上げるというのはいかがかと思いますし、また、私はできるだけ多くの方とお話ししたいと思っておりますから、このケースの方についても、もしまた時間でもあれば、機会があれば、よく、これはこの場で先生にお答えする言葉として申し上げますけれども、お話もさせていただきたいというふうに思います。
 これは、できるだけ多くの皆さんの御意見を伺いながら、よくお聞きしながら、この法案も御理解をいただきたいと思いますし、また、いつも言っておりますように、細部を政省令で決めるところが多いわけでございますから、そこに持っていきたいというふうに思っておるわけでございます。
 計算の仕方で随分違うわけでございまして、牧井さんの場合も、私どもが今計算をして出しております数字でいいますと、最大限が二万四千六百円ということでございまして、その間いろいろな数字が出てこようと思いますし、よくそれぞれのケースでお話をお聞きしながら、本当に何回も言っておりますけれども、皆さんにきめ細かな対応をさせていただきたいということをまた改めて申し上げたいと存じます。

○山井委員 それでは、もうお一方のお話をさせていただきたいと思います。
 「ニュースJAPAN」に出ていられた海老原宏美さん、脊髄性筋萎縮症で、車いすでおひとり暮らしであります。昨日、集会に来ていられて、私もお目にかかってまいりました。きょうも傍聴席にお見えになっております。牧井さんの隣に座っておられます。この方も、収入が給料十二万円と年金。この方の場合は、自己負担が厚生労働省さんの試算によると二万四千六百円かあるいは四万二百円になるということなんですね。こういうふうに、非常に自己負担が発生する。
 この海老原さんがどうおっしゃっているのかというと、結局、買い物に行く、駅に行く、おふろに入る、食事をする、トイレをする、一日大体十数時間介護を受けられているわけですから、ほぼ全介助になるわけです。夜は人工呼吸器をつけて眠っていられまして、介助者の方がつきっきりでないとだめなわけですね。この海老原さんの素朴な疑問は、食事をする、買い物に行く、駅に行く、おふろに入る、トイレに行く、普通の人だったら当たり前のことをするのに、なぜこれだけお金が発生してくるのかということです。それも一カ月、二カ月のことじゃない、一生、この法案が通ればそういうことになる、それはやはり納得できないということをおっしゃっていられます。
 就職活動もされたそうですが、車いすで、トイレも介助が必要と言った段階で、面接さえしてもらえないで、結局門前払いに遭ったということなんですね。
 私は、そういう意味では、牧井さんや海老原さんのような方が地域でひとり暮らしをされている、それこそがある意味では日本の誇りであり、そういう方々がいらっしゃるおかげで日本という社会はよりすばらしい、いい社会になっていると思うんです。でも、自己負担のアップによってそういう方々が生きづらい社会をつくっていくというのは、逆に問題だと思っております。
 そこで、大臣、先ほどおっしゃってくださったんですけれども、ここという場ではなんなのでまた個別にお話をしたいとありがたい言葉を言っていただいたので、大臣がそうおっしゃってくださるのなら、牧井さんと海老原さんに、もちろんこの場でなくてよろしいので、来週ぐらいに、もう短い時間でも結構ですから、ぜひ直接お目にかかって生の声をぜひとも聞いていただきたいと思います。
 それで、私がお願いしたいのは、これは私、こういう個別の方の例をきょうあえて挙げさせてもらったのは、要は、全国の何百万人という方が本当に似たような思いを感じておられるんです。二日前に傍聴された方にも、終わってから私聞きました。感想、どうでしたかと言ったら、僕の暮らしはこの法案が通ったらどうなるのかわからないと言うんですよね。わからないというわけですよ。だから、そういう意味では、ぜひ、牧井さん、海老原さんをそういう重度の障害で勇敢にもひとり暮らしをされている方の代表としてお目にかかっていただきたい。それで、どこかでこそっとお目にかかっていただいて大丈夫だよと言ってもらってもしようがないわけですから、テレビとかにも入ってもらって、ぜひとも、そういう、悪いことにはならないからということを公の場で言っていただきたいと思います。
 まず、大臣、先ほど会っていただけると言っていただいたので、ぜひ御検討いただきたいと思います。大臣、お願いします。

○尾辻国務大臣 この場ではまさしく一般論でお答え申し上げますけれども、これは、これまでの審議の途中でも、先生からも御示唆いただきましたら、いろいろな現場に私も行かせていただきました。先生に言っていただいて出かけたところ、もう五カ所ぐらいあるかなと思ったりもいたしております。
 そのように、私、現場にあちこち行かせていただいておりますから、そうした努力は絶えずさせていただきますという、まさにこの場では一般論でお答えさせていただきたいと思います。

○山井委員 そうしたら、大臣が先ほどおっしゃったように、私が言うまでもなく、大臣の方から、この場で言うのもあれですから個別にお目にかかりたいと言ってくださったので、大臣の自由意思ということでお目にかかっていただけるということを御確認したいと思います。お二人に会ってくださると先ほどおっしゃったわけで……(発言する者あり)いや、大臣が先ほどそうおっしゃったので。

○尾辻国務大臣 私が申し上げておりますのは、できるだけ多くの皆さんの御意見を伺って事を決めていきたいと思っておりますし、できるだけ多くの現場を見ておきたいということをいつも申し上げておるわけでございますから、私はそのようにさせていただきますということを申し上げます。

○山井委員 昨日の六千人の集会の中で、本当に多くの障害のある当事者の方々が口々におっしゃったのは、当事者抜きに、私たちの声を聞かないで法案をつくって法案を採決するのはやめてほしい、私たちの人生と命にかかわることなんだからということなんですね。それで、それこそ全員に会えるわけではないので、私は、代表としてだれかに会ってほしいという話をしているわけであります。
 それで、やはりこれだけ何百万人もの障害者が、これは自立支援法なのかな、本当にそうなのかな、逆に自立を阻害しているんじゃないかという不安を持っているのは事実なんですよ。だからこれだけ大きな集会にもなっているわけなんですね。だから、もし大臣がそれは誤解だとおっしゃるならば、私は、どんどん大臣がその中に入っていって説明をされて、説得をされて理解してもらったらいいと思うんです。法案に自信があるならば、そのことをぜひお願いしたいと思います。
 それで、この法案審議の中で、財源が足りないからこういう障害の当事者の方々から自己負担をふやす、そういう選択をしたという話がありました。ちょうど昨日の集会でも、この資料の最後にあります「アピール(案)」、先ほど同僚議員からもありましたが、その中に「「障害者自立支援法」を考えるみんなのフォーラム」、その中にどう書いてあるかということは、「また、尾辻厚生労働大臣だけではなく、小泉総理大臣や谷垣財務大臣などにも、そして国会を挙げてわたしたちのことに真剣に向き合ってほしいのです。」と言っております。
 この問題は、やはり厚生労働省さんも、もちろんこれは義務的経費にするためにとか必死で頑張ってくださったわけですね。塩田部長も必死で頑張ってくださった。やはり、そういう意味では、これは財務省の責任者も呼ばないとだめだと思います。ぜひ、小泉総理や谷垣財務大臣もこの場に呼んできて、この自立支援法の審議の答弁の場に立ってほしいと思います。
 これは、委員長、後で理事会で諮ってください。

○鴨下委員長 その件につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。

○山井委員 これはやはり、本当に何百万人もの方々の命と生活と人生ずっとにかかわる問題ですから、国会を挙げて、総理や財務大臣も来てもらって、当然議論をすべき問題だと私は思っております。
 そこで、お金の問題に戻りますが、二ページを見てください。定率一割負担によって幾らぐらい国庫に影響するか。二百六十四億円入ってくるということなんですね。
 それで、私が心配なのは、この自己負担をふやせば利用抑制が当然かかるということなんです。先ほどの海老原さんも、自己負担が発生したら、そのお金を払う当てもない。もっと病気が悪化したときのお金のために蓄えもしておかないとだめだ。そうしたら今のサービスを減らさないとだめかもしれない。晩、人工呼吸器をつけて暮らしている。そんな中で、サービスを減らしたいけれども、減らして、もし何かのことで命絶えてしまったら、そんなふうにはなりたくないとおっしゃっているんですね。
 そこで、大臣、この二百六十四億円収入がふえるわけですね、自立支援法で、定率一割負担で。それによって逆に利用抑制がかかるわけですよ、それは値上げをしたら。どれぐらい利用が抑制されると厚労省は予想されているんでしょうか。

○西副大臣 今回の利用者負担の増加により、サービス量がどれだけ抑制されるかという質問でございました。
 この法案におきましては、一定の定率負担と所得に応じた月額の負担上限、これを組み合わせた利用者の負担をお願いしておりますと同時に、在宅福祉サービスに関する国の負担も同時に義務化ということで強化をさせていただきました。
 この負担をお願いするに当たりましては、所得の少ない方にきめ細かく配慮するとともに、激変緩和のための措置も同時に織り込ませていただいております。そのことによって必要なサービスは確保されるというふうに考えておりまして、サービスの抑制ということにつきましては、今のところは私どもは見込んでおりません。

○山井委員 皆さん、今の答弁聞かれましたか。定率一割負担を導入して、それによって厚労省はサービス利用抑制が起こるとは考えていないと。この現状認識で、だからこの法案が出せるんですね。
 現場の方々、当事者が何で苦しんでいられるかというと、自己負担がアップしたら、当然お金がないから利用できるサービスが減っちゃう。それでさっきの精神障害者の場合は、それが減ったら自殺につながっちゃうかもしれない。それだけ深刻に悩んでいるときに、法案を提出する側が、応益負担を入れても利用が減るとは考えていませんよと。それはあんまりじゃないですか。だからこれは、厚労省にとっては自立支援しているつもり法案だけれども、当事者にとっては自立阻害法案と言われるわけですよ、そのギャップが。
 先ほどの精神障害者の方の通院の話に少し戻りますと、あるクリニックの方はこうおっしゃっているんです。自殺しそうな方には毎日来てもらう。毎日顔を見て、きょうは自殺しないでね、きょうは自殺しないでねと一日一回約束する。それによって、自殺の意識がありそうな人には、とにかく何としてもこの緊急事態を抜け切って、命をもち長らえてもらおうと思っている。しかし、時々、きょうは自殺しないでねと帰るときに言ったときに、約束してもらえないときがある。そういうときは、その方がクリニックから出ていく後ろ姿をずっと見詰めて、本当にあしたこの方来てくれるんだろうかと思うことがある。しかし、約束してくれなかったら、やはりその日の晩に首をつって亡くなられたということがあるというんですよね。
 それぐらいの厳しい現実で、お金もかからないから来てね、そう言って来てもらっているわけですよ、自殺してもらわないために、現場は。それを、お金払ってまで来てとか言いづらいわけですよ。
 そういう、現場がぎりぎりのところで障害者の暮らしや命のために闘っているのに、厚労省が応益負担で一割負担入れてもサービス利用が減るとは考えていないというのは、これはあんまりじゃないですか。大臣、いかがですか。

○尾辻国務大臣 私どもは、そのことによって、受診抑制といいますか、そうしたことがないようにしたい、とにかくその努力をしますということを申し上げたのが先ほどの副大臣の答弁だと私は理解をいたしております。
 とにかく、私どもは、何回も申し上げますけれども、ケースに沿ってきめ細かく対応することによって、そういうことが起きないようにしていきたいということを今申し上げているところでございます。

○山井委員 この法案、私ずっと考えてきて、どうしても許せないなと思ってずっと考えてきて、なぜなのかなということを考えたら、要は、きょうも同僚議員から指摘があったように、応益負担、これは一ページ目の資料にありますように、障害者のサービスに応益負担、つまり、重い人ほどたくさんお金を払ってもらえるという制度を導入した国は人類史上ないんですよ。何でないんだと思われますか。あり得るはずないじゃないですか、障害が重い人ほど仕事もできなくて苦しんでいるわけですから。だから世界のどこにもこんな制度がないんですよ。
 大臣、これは世界に先駆けて、胸を張って、日本という国は、日本の国の障害者福祉というのは、重い人からたくさんお金を取る、そういう画期的な制度にするんですと胸を張って諸外国の人に言えますか。
 私は、この法案が、正直言って与党の方も気が重いと思っています。なぜ気が重いのかとずっと考えたら、この法案というのはやはり人の道に反しているんですよ。要は、お金が足りなかったらお金のある人から出そう、あるいは健康な人から出そう、それがまず物の順序なんですよね。ところが、今回の法案では、財源が足りないからといって、障害が重い人からお金を取ろうということになっているわけです。そういう意味で、私は、この自立支援法案、名前をつけさせていただきました。やはりこれは弱い者いじめ法案だと私は思います。
 大臣、どう思われますか。鹿児島の九州男児とお聞きしておりますが、別に、男性も女性もそういう弱い方々をきっちり守っていかないとだめなので、このことは男性も女性も全く一緒なんですが、大臣の生きざまからして、お金が足りない、そのときに、障害の重い、重度の人がより多くのお金を払うこの法案というもの、人の道に反していると思われませんか。

○尾辻国務大臣 私も一人の人間として、できるだけお役にも立ちたい、また弱い方がおられれば助けてもあげたい、それはそう思います。そう思うことは、今私が申し上げたら何か言われるかもしれませんけれども、私もあえて言わせていただくならば、その思いは人後に落ちないつもりでございます。
 ただ、どうぞ御理解いただきたいのは、一番基本のところで支援費制度が大変窮屈になって危うくなってきた、ここを何とかしたいという私どもの思いが、こういう形で私どもなりの解決策としてこの法案をお出ししておる。何とかこの制度を、制度といいますかこの考え方を続けていきたい、この制度を、大きな意味でのこの制度を維持したい、その思いであることを御理解いただきたくて申し上げたところでございます。

○山井委員 ある意味で大臣も思いは共有してくださると思いますが、政治の役割とは何かというと、これは与野党を超えて、政治の役割というのは、弱い立場の方々の盾となって弱い方々を守るのが政治の最高の使命なんですよ。そして、その先頭に立つのが、役所であれば厚生労働省であって、厚生労働大臣なんですよね。
 今回のこの支援費制度、財源がパンクしつつある、それに対して補正予算を確保して、義務的経費に持ってくる、そのために本当に奔走されたことには敬意を表します。敬意を表しますが、しかし、今言ったような、最も障害の重い、最も弱い立場の方々からお金を取ってきてその財源を穴埋めするという考え方は、これはやってはならない、人の道に反する禁じ手であると思います。国民の理解は得られない。
 先ほども言ったように、先日も私、一週間、連休中にスウェーデンに行って、スウェーデンの障害者のグループホームの方々とこの議論を一週間してきました。今度、日本ではこういう制度に変えるんですよ、応益負担といって障害の重い人からたくさんお金を取る、そんな制度に変えるんですよと言ったら、英語でスピーチしていましたが、向こうの人は理解できないんですね。え、何て言ったの、何て言ったのといって。結局、発想の中にないんですよ、そんな考え方は。そんな、重い人からたくさんお金を取るなんて、それは福祉じゃないというんですよね。やはりそれは、普通、どこの国でも、その考え方というのは共通なのではないでしょうか。
 そして、そういうこととともに、今回、昨日の集会でもあったように、十月にグランドデザインが出てきて、そして十分に当事者の方々の声を聞くまでもなく、二月に法案が出てきて、そしてこれから審議をちょっとやって法案を通す、それじゃあんまりですよ。
 先ほども大臣が繰り返しおっしゃったではないですか、ケースによって、いろいろな状況によって、自己負担は幾らになるかは正確にはわかりませんと。大臣がわからなかったら、だれがわかるのですか。大臣がわからなかったら、一般の人がわかるはずないじゃないですか。もちろん全くわからないと言っているわけではありませんので、それは。だから、それほど制度が複雑なんですよ。だから、そういうことを短期間に納得しろというのは無理なんですよね。だから、そういう意味では――大臣、どうぞ。

○尾辻国務大臣 一点だけ、誤解があるといけないと思って、手を挙げさせていただきましたのは、そこのことだけは申し上げたいと思います。
 先ほど「ニュースJAPAN」のケースについて、仮定を置かざるを得ません、よくわかりませんと申し上げましたのは、それぞれのケースが、より、どういうケースかというのがわからないと計算ができないのですということを申し上げたわけでありまして、決して私が制度を理解していないから計算ができないのですということを申し上げたものでもありませんので、そこのところだけは御理解いただきたいと存じます。

○山井委員 いや、私は大臣を責めているのではなくて、制度を責めているんです。
 今回も政省令が多くてわからない。厚労省と話をしても、この方のケースは幾ら自己負担になるのですかと言ったら、厚労省の担当者と私と議論しても、二、三時間考えないと幾ら払うのかもわからないぐらいだから、一般の人がわからないのは当然なわけなんですね。
 ですから、きのうの六千人の集会の方々の怒り、憤りというのは、自分たちの人生や命がかかっていることが、自分たちの声を聞かなくて、今国会で決められようとしていることなのです。
 ですから、大臣にお願いですが、やはりこの法案は、継続審議にするなり、もっと法案を詰めて出し直すなり、もっと時間を決めてやらないと、これはどう考えたって障害者の方々が納得できるはずがないじゃないですか。大臣、いかがですか。

○尾辻国務大臣 これはいろいろな見方、言い方があろうかと思いますが、障害者の団体の方々、代表の方々と、私が大臣になる前でも、もう勉強会で相当いろいろな意見交換をさせていただいておりまして、そういうのをずっと積み重ねてやってきた、それはもう厚生労働省は当然、省としてそういうことをやってきた、この積み重ねがあることもまたぜひ御理解いただきたいと存じます。

○山井委員 冒頭に、この法案は自立支援法案なのか自立阻害法案なのかという話をしましたが、私はこの一時間を通じて、やはり、厚生労働省にとったら自立支援しているつもり法案かもしれないけれども、実際、当事者にとっては自立阻害法案、引きこもり支援法案、閉じこもり支援法案、自殺支援法案、そして弱い者いじめ法案ではないか、そのことを強く申し上げて、私の質問を終わります。

Posted at 2005年06月17日 固有リンク | Comments (0) | TrackBack

2005年6月

2005年6月

障害者自立支援法案の動き(メールマガジン第662号より一部編集加筆)

先週、民主党が与党に対して出した障害者自立支援法案の修正要求に対して、14日に与党から「修正協議に入りたい」という返事が来ました。
 委員会の筆頭理事である、自民党の長勢議員と民主党の五島議員を軸に、修正協議が行われる方向です。

 国会が延長されるかどうか、まだ未定ですが、もし延長されたならば、7月3日(日)東京都議会議員選挙の投票日過ぎ、6日(水)あたりから衆議院厚生労働委員会で、障害者自立支援法案の審議が再開されると思われます。
 つまり、これから約3週間、修正協議が行われることになる見込みです。
 民主と与党との修正協議が成立するか、決裂するかは全くわかりません。
 以上、取り急ぎ報告します。

Posted at 2005年06月15日 固有リンク | TrackBack

2005年6月

2005年6月

介護保険制度等に関する質問主意書

介護保険に関する質問主意書に対する政府からの答弁書が5月27日に返ってきましたので
掲載致します。

キーワード:要介護認定、グループホーム、介護労働者の労働条件、補足給付(ホテルコスト)
       痰の吸引、人員配置基準、身体拘束、不正給付、介護療養型医療施設

平成十七年五月十八日提出(質問第六二号)
介護保険制度等に関する質問主意書  提出者  山井和則

先般、介護保険法改正案が衆議院で可決されたが、改正の中で積み残しとなった課題も少なからず存在する。そこで以下の通り質問する。

一 現在、要介護認定の基準時間は一九九四年時点の施設の集団処遇の作業時間を基準にしているが、十年以上前の処遇方法が全く異なる状況での基準を個室ユニット型の施設に当てはめることについて見直しが必要ではないか。見直しの必要がないというのであればその根拠は何か。

二 一のように施設の作業時間を基準にされ、調理、清掃、洗濯等の生活行為は含まれていないが、このような中で在宅の高齢者の状況が要介護認定に反映できていると国は考えるのか。また施設での基準を在宅に当てはめることは妥当でないと考えるがこれを見直す予定はないのか。

三 国は介護保険制度を創設する際にドイツの介護保険制度を参考にしたが、ドイツの介護保険制度の対象者は日本の介護保険対象者とどのように異なるのか。

四 今年二月に認知症高齢者グループホーム(以下「ホーム」)の介護職員による虐待殺人事件が起こったが、国はホームの運営実態、スタッフの勤務実態について全国的な調査をこれまでにしたのかどうか。夜勤時間帯に一人勤務となるホーム、夜間・深夜専従のスタッフがいるホームはそれぞれどれくらいあるのか。

五 介護労働者の労働条件が悪く、離職率が高い中で、国は介護サービス事業者が労働基準法を遵守しているかどうかについて全国的な実態調査をしたのかどうか。またどれくらいの介護サービス事業者が労働基準法を遵守しているのか。

六 介護保険三施設の利用者に対しては、これを居住施設と位置づける中で所得状況に応じて補足給付されることになっているが、もともと居住施設である特定施設や認知症高齢者グループホームにおいて、利用料が払えないために入居できない利用者に対して補足給付が行われないのは不公平ではないか。

七 例えば、どの施設・サービスを利用しても公平に補足給付が受けられるようバウチャー制度を導入することについて検討すべきと考えるがいかがか。

八 介護保険の対象であるなしにかかわらず、誰もが安心して居住できる仕組みを構築するため、居住コストに関しては介護保険の給付対象から外し、国として総合的な取り組みをすることが必要だと考えるがいかがか。

九 特別養護老人ホームにおいて、痰の吸引が必要な利用者は約一万人程度存在し、現行の人員配置基準では看護職員が二四時間対応できず、多くの施設では夜間看護職員がいないが、その間、どう対応しているのかという質問に対し、昨年の答弁書(内閣衆質一六一第二三号)において「夜間に定期的に喀痰吸引の処置が必要な者が特別養護老人ホームに入所している場合の対応状況のすべてを把握しているわけではないが、特別養護老人ホームの入所者で喀痰吸引の処置を行う必要のある者の中でも、当該者が就寝する前に、排痰を促したり、喀痰吸引の処置を行ったりすることにより、夜間に喀痰吸引の処置を行う必要がない者も存在する。また、看護職員が臨時に夜勤体制を組む等の対応を行う施設もあると承知している。」とあるが、そのような施設はどの程度存在するのか、またそのような施設以外はどのように対応すればよいのか。

十 要介護度四、五の利用者しかいない介護施設において、三対一の人員配置基準通りで身体拘束することなしに介護することは可能かという質問に対し、昨年の答弁書(内閣衆質一六一第二四号)において「御指摘のような入所者の状況及び人員配置の場合であっても、身体拘束を行わずに介護を行うことは十分可能であると考えている。」とあるが、その具体的な根拠は何か。また三対一の人員配置で身体拘束することなく介護を実践されている施設を明らかにされたい。

十一 従来型の特別養護老人ホームと個室ユニット型の特別養護老人ホームが同じ三対一の人員配置基準で運営される根拠は何かという質問に対し、昨年の答弁書(内閣衆質一六一第二四号)は「施設基準及び指定基準は、施設の状況が様々であることを踏まえつつ、最低限必要な人員配置を定めるものであるので御指摘のような人員配置基準となっている。」とあるが、最低限必要な人員配置基準を三対一とする具体的な根拠は何か、また実際三対一の人員配置でユニットケアを適正に運営している施設はどれくらい存在するのか。

十二 国民健康保険団体連合会(以下「連合会」)は市町村から委託を受け、居宅介護サービス費、居宅介護サービス計画費、施設介護サービス費、居宅支援サービス費及び居宅支援サービス計画費の請求に関する審査及び支払いを行っているが、不正給付が多いことから委託された手数料に見合った仕事が行われていないのではないか。連合会において不正を見落とした場合には市町村に手数料の一部を返還してはどうか。

十三 介護療養型医療施設において徴収される介護サービス費以外の日常生活費や特別居室料などが利用者にとってわかりづらい仕組みであることから、地域別、施設ごとにわかりやすく表示すべきと考えるが、いかがか。また、このことについて全国的な実態調査をすべきであると考えるがいかがか。
 右質問する。


平成十七年五月二十七日受領 (答弁第六二号)
内閣総理大臣 小泉純一郎

衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員山井和則君提出介護保険制度等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員山井和則君提出 介護保険制度等に関する質問に対する答弁書

一について
 要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成十一年厚生省令第五十八号。以下「認定基準」という。)に規定する現在の要介護認定等基準時間については、平成十三年に行った施設や在宅における高齢者の介護時間に関する実態調査(以下「実態調査」という。)及び平成十四年に行った全国的なモデル事業の結果等を踏まえて従来の要介護認定等基準時間を見直し、平成十五年四月から適用しているところである。御指摘の個室ユニット型の小規模生活単位型指定介護老人福祉施設については、同月の介護報酬の改定の際、指定介護老人福祉施設の一類型として介護保険制度に位置付けられたものであるが、このことにより、現在の要介護認定等基準時間を見直すべきかどうかについては、指定介護老人福祉施設の定員全体に占める小規模生活単位型指定介護老人福祉施設の定員の割合やこのことによる指定介護老人福祉施設の入所者に対する介護時間への影響等を見極めつつ、今後検討してまいりたい。

二について
 一についてで述べたように、認定基準の見直しに当たり、実態調査を行ったところであるが、その結果によれば、在宅サービスの利用者については、介護者の状況、住宅環境、地域性等の要因により、調査対象者ごとの介護時間が大きく異なっており、介護時間を標準化することが困難であったことから、実態調査により把握された施設サービスの利用者の標準化された介護時間を基に、認定基準の見直しを行ったところである。
 現在、認定基準により要介護認定等を行い介護保険制度が運営されているところであるが、在宅サービスの利用者一人当たりの利用状況と在宅サービスの利用者の要介護度には一定の相関関係があり、現行の認定基準に基づく要介護度は、在宅サービスの利用者のニーズを正確に反映していると考えられることや、介護保険制度に係る様々な調査においても要介護認定等の妥当性等については、おおむね良好な評価を得ていることから、在宅要介護者等に対する要介護認定等について、現時点においては見直しの必要はないものと考えている。

三について
 日本の介護保険制度の被保険者については、六十五歳以上の者及び四十歳以上六十五歳未満の医療保険の加入者である一方、ドイツの介護保険制度の被保険者については、厚生労働省において調査した限りにおいては、原則として医療保険の加入者の範囲に相当する者であり、年齢による制限はない。
 また、日本の介護保険制度の受給者については、要介護状態等となった六十五歳以上(要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する一定の疾病である場合は、四十歳以上)の被保険者となっている一方、ドイツの介護保険制度の受給者については、厚生労働省において調査した限りにおいては、年齢や要介護状態の原因疾病による制限はないが、要介護状態は、おおよそ日本の介護保険制度における認定基準に定める要介護三程度以上の者である。

四について
 厚生労働省においては、平成十四年から、毎年十月一日におけるすべての御指摘の認知症高齢者グループホームを対象として、職員数、夜間の職員体制、利用料等に関する調査を行っており、平成十六年十月の調査によれば、夜勤時間帯に夜勤又は宿直の職員を一人だけ配置している事業所は、三千二百二十二か所となっている。なお、夜間又は深夜にのみ勤務する職員の有無については、同調査では把握しておらず、お答えできない。

五について
 平成十六年に全国の労働基準監督署が、お尋ねの介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に基づくサービスを提供している事業場を含む二千七百三十五の社会福祉事業を行う事業場に対して監督を実施したところ、このうち二千百九の事業場について何らかの労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)等の違反が認められたところである。

六及び七について
 第百六十二回国会に提出した介護保険法等の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)においては、介護保険制度は要介護状態となった者に対して必要な介護サービスに係る給付を行うものであることから、介護保険施設における居住費及び食費について在宅と施設との間の負担の公平を図る等の観点から、居住費及び食費を保険給付の対象外とし、介護保険施設に入所している低所得者に配慮した特別の制度として、特定入所者介護サービス費を支給する制度を導入することとしている。
 御指摘の補足給付は、特定入所者介護サービス費を指すものと考えるが、特定施設や認知症高齢者グループホームは、居住費や食費は入居者が負担することを前提に、特定施設等において提供される介護サービスに保険給付を行う仕組みとなっており、要介護状態となった者に対して必要な介護サービスに係る給付を行うことを目的とする介護保険制度において、特定施設等での居住費や食費について、新たに特定入所者介護サービス費に相当する給付を行うことは困難であると考えており、また、御指摘のバウチャー制度の導入は考えていない。

八について
 高齢者が安心して居住できる仕組みを構築することは重要な課題と考えており、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)に基づき、高齢者向けの優良な賃貸住宅について整備や家賃の減額に要する費用の補助などによる当該賃貸住宅の供給支援、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録とこれに対する家賃債務保証制度の推進、持家に居住する高齢者による持家のバリアフリー化を支援する住宅金融公庫による融資などの施策を実施しているところである。
 また、介護保険制度においても、高齢者が在宅で安心して住み続けることができるよう、今後とも、在宅サービスの充実に努めてまいりたい。なお、六及び七についてで述べたとおり、法案においては、介護保険施設等における居住費を保険給付の対象外とすることとしている。

九について
 先の答弁書(平成十六年十月二十九日内閣衆質一六一第二三号)三についてで述べたとおり、夜間に定期的に喀痰吸引の処置が必要な者が特別養護老人ホームに入所している場合の対応状況のすべてを把握しているわけではなく、看護職員が臨時に夜勤体制を組む等の対応を行う施設の数は、把握していない。
 また、特別養護老人ホームの入所者のうち夜間に定期的に喀痰吸引の処置が必要な者の状況は個々に異なるものであり、各施設においては、入所者の処遇に支障が生ずることがないよう、看護職員を二十四時間配置したり、看護職員が臨時に夜勤体制を組む等の対応を行うほか、各施設が関係する医療機関に喀痰吸引の処置について協力を求める等の工夫を行うことにより対応できると考えている。

十について
 介護保険施設において身体拘束を行わずに介護を行うためには、身体拘束に至る原因を把握し、当該原因を除去するために、職員の意識や介護の方法を改め、施設環境の整備を図っていくことが重要であると考えている。
 例えば、入所者が徘徊しないように、車椅子や椅子に身体を縛っているような場合は、徘徊そのものを問題ととらえるのではなく、入所者が徘徊する原因や理由を究明した上で、対応策を講じたり、転倒しても骨折等を招かないよう弾力のある床材を用いる等の環境整備をすること、点滴や経管栄養のチューブを抜かないように四肢をベッド等に縛っているような場合は、点滴や経管栄養に頼らず、口から食べることができるかどうか十分に検討したり、点滴や経管栄養を行うにしても、時間や場所を適切に選んで行うようにすることなどの工夫を行うことにより、身体拘束を行わずに介護することが可能であると考えている。厚生労働省では、こうした身体拘束をなくすための工夫のポイントを、平成十三年に「身体拘束ゼロへの手引き」として取りまとめ、事業者等へ配布しているところである。
 なお、お尋ねの三対一の人員配置で身体拘束することなく介護を実践している施設については、調査を行っておらず、把握していない。

十一について
 特別養護老人ホームの人員配置基準については、要介護度の高い者に対して適切な介護を提供する観点から、平成十二年の介護保険制度導入時に、介護職員及び看護職員の総数は、常勤換算方法で、従来おおむね入所者の数を四・一で除して得た数以上とするとの基準を、入所者の数が三又はその端数を増すごとに一以上とするとの基準に改善したものであり、平成十五年に小規模生活単位型特別養護老人ホーム(以下「個室ユニットケア型特養」という。)の制度を創設した際、一般の特別養護老人ホームに合わせて最低限必要な人員配置基準として現行の個室ユニットケア型特養の人員配置基準を定めたものである。なお、個室ユニットケア型特養については、一般の特別養護老人ホームよりも高い介護報酬を設定しているところである。
 また、社団法人日本医療福祉建築協会が、個室ユニットケア型特養に関し行った調査によれば、その運営状況は必ずしも明らかではないが、平成十六年三月一日現在で個室ユニットケア型特養の介護報酬を受けている特別養護老人ホームであって回答のあった百三十二か所のうち、介護職員及び看護職員一人当たりの入所者数が二・五人以上三・〇人未満であった施設は五か所となっている。

十二について
 各都道府県の国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)は、受給者情報、介護サービスの提供を行う事業所情報、ケアプランの内容等に関する給付管理票情報と介護サービス事業者の介護報酬の請求内容を突合して審査及び支払の事務を行っているところである。
 御指摘の不正請求は、ケアプランの作成者と介護サービスの提供を行う事業者が示し合わせて行うものなどであり、これは連合会の見落としによるものではないことから、「委託された手数料に見合った仕事が行われていない」というものではないと考えており、また、審査支払手数料を返還する必要があるとは言えないと考えている。
 なお、不正請求への対処については、市町村からの受給者に対する介護給付費通知書の送付の推進等により、更に厳正に対処するよう指導しているところである。

十三について
 法案においては、介護サービス事業者がその提供する介護サービスに係る情報を都道府県知事に報告し、都道府県知事が当該情報を公表する仕組みを設けることとし、法案の成立後、平成十八年度から、公表する情報等の準備が整った介護サービスについて、順次実施していくこととしており、介護療養型医療施設については、今年度から有識者による検討会において公表する情報を検討することとしている。
 なお、介護サービスに係る情報の公表に当たっては、利用者が利用しやすいよう、地域別、サービス別、事業者別などに情報を検索できるシステムとすることを検討している。

Posted at 2005年06月08日 固有リンク | Comments (0) | TrackBack

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