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2006年6月

国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会議事録(陸上自衛隊のイラク撤退)

164-衆-国際テロリズムの防止及…-6号 平成18年06月22日

○山井委員 民主党の山井和則でございます。これから三十分間、質問をさせていただきます。
 まず最初に、一言申し上げます。
 約二年半のサマワ駐留から陸上自衛隊がこのたび撤収することが決まりました。まさに、遅きに失した決断です。ただ、一人の犠牲者もなく無事に任務を終えることができるのは喜ばしいことであり、派遣された延べ五千五百人の陸上自衛隊員の皆さんに、心から感謝と敬意を表します。今後、安全に、速やかに撤収されることを望みます。
 しかし、このイラクへの自衛隊派遣については、大量破壊兵器の存否など不正確でかつ恣意的な情報に基づき、安易にこれを支持して大義ない派遣となったこと、及び、イラク特措法に基づく自衛隊の活動に対して無理を重ねた法的構成と、国連中心の支援体制を構築してこなかったことは大きな問題であると考えます。今回があしき前例となり、今後とも、アメリカによる自衛隊への海外への支援要請は地球規模に拡大していく危険性があります。
 そこでまず、安倍官房長官にお伺いしたいと思います。
 この二年半の総括なんですが、国際貢献ということに関してはもちろん賛成でありますが、サマワは、この二年半を振り返って本当に非戦闘地域であったのでしょうか。
 防衛庁からの資料をこのパネルにしてみましたが、陸上自衛隊宿営地内外における事案等で合計十四回、こういう危険な事案が起こっております。例えば、平成十六年四月七日、迫撃砲によるものと思われる爆発音、二十九日にも迫撃砲、六月十日にも迫撃砲、八月二十一日にロケット弾、十月二十二日もロケット弾とこういうふうに続いておりまして、また、平成十七年の六月二十三日には簡易爆弾が陸上自衛隊の車両のそばで、人道復興支援活動に向かう路上で爆発してフロントガラスが破損したというようなことも起こっております。
 このような状況において、このサマワというのはやはり非戦闘地域であったと今でも言えるのでしょうか。

○安倍国務大臣 まず初めに、陸上自衛隊につきましては、まだもちろん任務が継続中でございますが、今までのところ一人の死傷者も出さずに、また、一発の銃弾も発射せずに任務を遂行してきたということは申し上げておきたいというふうに思います。
 サマワの治安につきましては、イラクの他の地域に比べれば比較的安定をしております。宿営地に対する迫撃砲発射等の事案につきましては、今委員の御指摘があったように、あったのも事実でございますが、これらの事案やサマワの情勢を総合的に判断すれば、イラク特措法に言う戦闘行為に該当するというふうには認識はいたしていないわけであります。
 つまり、サマワについては、いわゆる非戦闘地域であったというふうに考えているわけであります。

○山井委員 結局、そういう非戦闘地域というフィクションをつくってどんどんこれは拡大をしていっているわけであります。そして……(発言する者あり)

○三原委員長 静かに、静かに。

○山井委員 麻生外務大臣にお伺いをしたいと思います。
 まず、イラク全土の状況なんですけれども、この間の武力行使において多くの民間人がイラクで亡くなったということが言われております。日本政府としては、どれぐらいの方が亡くなられたと把握しておられますでしょうか。

○塩崎副大臣 イラクの民間人の死亡者の数でありますけれども、多国籍軍の活動に巻き込まれて犠牲となったイラクの民間人の死者数については、公式にとりまとめられた情報はございませんで、非公式な推計があるのみであるというふうに承知をしております。
 その一つであります、英米の研究者等がつくるイラク・ボディーカウントというところが推計をいたしておりますけれども、対イラク武力行使開始の二〇〇三年の三月からことしの六月十日までにイラクで死亡した民間人、これは軍人を含まないベースでありますけれども、この死者数は、最少で三万八千四百七十五人、それから、最大で四万二千八百八十九人というふうにこの団体からの数字では示されているというところでございます。

○山井委員 このように多くの、繰り返しますと、少なく見積もっても三万八千四百七十五人、多ければ四万二千八百八十九人の民間人の方々がこの間の武力行使でイラクで亡くなっておられるという報告が今ありました。
 安倍官房長官、これだけ多くの民間の方々がお年寄りから子供を含めて亡くなっておられるということについて、いかが思われますか。

○安倍国務大臣 我々、イラクの復興支援に協力をしているわけでありますが、それは、一日も早く、そうしたテロのない、平和で安定した、イラク人の手による民主的なイラクが建設される日を目指して努力をしているわけであります。もちろん、そうしたお年寄りを含めて死傷者が出ていることは大変残念でありますが、そういう意味におきましては、この苦しいときこそ国際社会が一致協力してイラクの復興のために汗を流さなければならない、日本はしっかりとその国際的な責任を果たしている、このように思っております。

○山井委員 これだけ多くの民間人が亡くなっておりますし、また、イラクの調査機関では、十万人以上が亡くなっているという結果も出ているわけであります。
 私たち民主党は、イラクへの自衛隊派遣には最初から反対でありますし、国連のきちんとした行動であれば別でありますが、アメリカが始めたこのような戦争に協力する余地はありません。
 そこで安倍官房長官にお伺いしますが、なぜ今陸上自衛隊が撤退するのか。人道復興支援は終わったのですか。

○安倍国務大臣 陸自部隊の活動しているムサンナ県においては、治安、復興の両面において、応急復旧的な支援措置が必要とされる段階は終了いたしました。イラク人自身による自立的な復興の段階に移行したものと考えられるため、これまでの陸自部隊の活動は、その目的を無事に、そして立派に達成をした、このように判断し、サマワから撤収させることとしたものでございます。
 我が国としては、今後も、イラクとの幅広い長期的なパートナーシップの構築に向けまして、各国また国連とも連携協力をしながら、円借款による経済活動の基盤整備を中心とする対イラク支援を継続していく考えでございます。

○山井委員 人道復興支援が一段落ついたということですが、そんなもの、今なぜそれが一区切りするのか、全く説得力がないわけですね。逆に、イギリス軍やオーストラリア軍がこれから撤退する、その際にこれは撤退するにすぎないだけじゃないですか。国会が閉会してからまたこのようにこそくに報告するというのも、私はとんでもないことだと思っております。
 額賀防衛庁長官にお伺いをいたします。
 この拡大していく航空自衛隊の活動範囲、今後どのように拡大するのですか、また、いつから拡大するのですか。

○額賀国務大臣 今、陸上自衛隊はそういうことで撤収を先日命じたわけでありますけれども、航空自衛隊の人道復興支援活動あるいはまた安全確保支援活動につきましては、国連等の要請があったことはもう委員も御承知のとおりでございまして、小泉首相もこれについては前向きに考えたいということで、我々も検討をしてきたところでございます。
 また、多国籍軍においてもさまざまなニーズがありますので、我々航空自衛隊で、実際にどういうニーズがあるのか、そして航空自衛隊でどういう仕事ができるのか、そういうことについて検討をしてきているところであります。
 したがって、今後、国連等の要望に応じて具体的にどういうふうに展開することができるかどうか、まだ判断をしておりませんけれども、これから実施要項を決めてしっかりと対応していきたいということをこの前明らかにしたわけでございまして、具体的にいつからどういうふうにということはまだ考えておりませんけれども、国連の要望はバグダッド空港それからエルビル空港等を要求しておりますので、そういうところの安全等々について今調査をしているところでございます。

○山井委員 今までは人道復興支援というものが前面に出ていたわけですけれども、これからますます安全確保活動、後方支援というものが中心になっていくわけで、まさに多国籍軍支援、アメリカ軍との一体化という懸念が高まってくるわけですね。今回、陸上自衛隊が撤退しても、航空自衛隊の輸送機がアメリカ軍その他の支援活動をやる意味で、仕事量の拡大以上に、撤退どころか、ますます踏み込んでいくということになるわけであります。
 そこで、今後どのようにこれを国民に説明していくのか、安倍官房長官にお伺いしたいと思います。

○安倍国務大臣 空自の任務につきましては、これはアナン事務総長からも要請をされてきたものでございまして、私がアナン事務総長とお目にかかった際にも、空自の協力の要請がございました。こうした要請も踏まえまして、多国籍軍に加えまして国連の活動も支援を行うことといたしまして、新たにバグダッドやエルビルへの移送を行う旨決定をしたわけでございます。
 このような方針につきましては、二十日に発表されました内閣総理大臣の談話においても御説明がなされたわけでありまして、また、本日の審議を含め、政府として国会などの公の場において適宜説明をしていきたい、時期に応じ説明することを通じて国民の理解を得ていきたい、このように考えているところでございます。

○山井委員 現時点ではなかなか中身が見えてこないわけですよね。やはりそのあたり、アメリカとはきっちり話をしながら、国民に対する説明責任が極めて不十分だと考えます。これは、実際派遣される航空自衛隊に対しても私は極めて失礼な話だと思います。国民に十分な説明もせず、国民の理解も得ずに、非常にこれは危険な任務につかせることになるわけです。
 次に、このパネルで、今回のバグダッド方面にまた輸送機が飛んでいくということについて少し考えてみたいんですが、これはきょうお配りしたこの資料にも出ておりますけれども、二〇〇三年五月一日以降でも、ムサンナ県では、死傷者、これはサマワがあるところで二人でありました。しかし、バグダッド周辺では四百八十七人もこれは亡くなっているわけですね。また、六月以降は、バグダッドではアメリカ軍とイラク軍による過去最大規模の武装勢力の掃討作戦も展開されています。そして昨年は、イギリス軍の輸送機がバグダッド周辺でテロ組織の対空ミサイルで撃墜をされた、そういうことも起こっているわけです。陸上自衛隊以上に、ますますこれは危険な任務じゃないですか。
 額賀防衛庁長官にお伺いします。
 このように、テロ組織の対空ミサイルの射程内に入って実際昨年イギリスの輸送機が撃墜されていても、それでもこのバグダッド空港周辺は戦闘地域ではないのですか。

○額賀国務大臣 バグダッド地域全体が戦闘地域であるのか非戦闘地域であるのかということについて、今我々は区別をしているわけではありません。ただ、バグダッド飛行場については、これは比較的、人員輸送それから物資の輸送等々について極めて重要なところでありますから、治安も物すごく重要視しているところであり、この地域については、飛行場については、我々は、非戦闘地域である、仕事の対象地域である、実施区域の一つであるという形で対応させていただいております。
 おっしゃるように、さまざまな、イギリスの飛行機が攻撃をされて墜落した事件もありました。それは一月のことでありましたけれども、その後半年間は、そういう事故、事件というものは起こっておらないわけでございます。
 もちろん、我々が空自を実際に飛ばす場合には、多国籍軍あるいはまた関係のイラクの政府治安当局と綿密な打ち合わせの上で、しっかりと安全を確保した上でこの任務を遂行させたいというふうに思っております。人員それから物資の輸送でございますから、これは、一分一秒を争う、そういう中で仕事をしていくわけではないので、きっちりと安全を確保した上で仕事をさせたいというふうに思っております。

○山井委員 今の話を聞いていると、自分たちが行く地域は非戦闘地域だと勝手に定義する、まさにこれは、本当にフィクションの世界であるわけですよね。そこで、本当に日本の輸送機がバグダッドあるいはエルビルまで行って撃墜されるということが起こらないのか。そのことは、これは非常に本当に重大な問題だと思います。
 これから秋以降の総裁候補と言われているお二人にお伺いをしたいと思います、安倍官房長官と麻生大臣に。このような地域に自衛隊を派遣して、万一、日本の輸送機が撃墜されたときの責任問題についてはどのような覚悟を持っておられますか。麻生大臣、安倍官房長官にお伺いします。

○麻生国務大臣 二人いらっしゃるというお話だったのでどちらかが言うお話ですけれども、ほかにも大勢いらっしゃるということをまず大前提にしておいていただかぬと失礼に当たりますので、お断りしておきます。
 今、自衛隊を派遣するという話から、いろいろこれからに返ってみますと約二年有余になりますけれども、少なくともこの二年半の間、犠牲者はゼロだったという事実はまず認めていただかにゃいかぬところです。
 ここが、結果として、お出しになりました資料を見ましても一人豪州兵のみということになっておりますが、それは、その地域だけが、いい、平和な地域、だから一人だったのか、自衛隊、豪州、イギリス軍等々の現地の人たちとの連絡がよく、人間関係もよかった結果として一人になったのか、極めて判断の大事なところなのであって、一人だけだったからここだけ平和だったなんという判断は明らかに偏っていると、基本的にはそう思っております。
 二つ目は飛行機の輸送の話ですが、これは国連からの要望だったと、私は、アナン事務総長にお目にかかったときにはそういう印象を強く持ったのが事実です。そして、国連から直接要請を受けたのに対しまして、私どもとしては、そういったことは防衛庁が判断されるところでもありますので、御要望としては預かっておきますとお答えをしたと記憶いたします。
 少なくとも、バグダッド周辺、空港周辺半径五キロ以内でいわゆる戦闘地域というような状況であろうかと言われると、その判断は、私どもがいただいている資料では、この五年間、そのようなことはないというような感じがいたしております。したがって、そういった状況が起きたら、巻き込まれたときには、政府として、基本的に、そういった危険地域、だから民間航空ではなくて自衛隊員が出ていくわけですから、ある程度危険を顧みず出ていってもらえる、日本で持っております組織というものは、これは自衛隊ということになろうと存じまして、これは政府の責任として対応していかねばならぬものだと存じます。

○安倍国務大臣 もう既に麻生外務大臣が答弁したとおりでありますが、バグダッドにおいては、民間の航空会社も既に運航を行っているとはいえ、全く危険がないという地域ではないのはもちろんのことであります。だからこそアナン事務総長も、日本の能力の高い航空自衛隊にこの任務を遂行してもらいたいという依頼があったわけであります。イラクの復興支援のためには、そうした任務をだれかがやはりやらなくてはならないわけであって、その中で、私たちもしっかりとこの復興支援の中で責任を果たしていくという決意をしたわけでございます。
 我々は、こうした決意を行った以上、しかし同時に、なるべく危険がないように最大限の調査等を行ったわけでございまして、その上で最終的な判断を政府全体として行ったところでございます。

○山井委員 これは、我が国には憲法という枠があるわけでありまして、戦闘地域には行けないわけですよね。それをなし崩し的にどんどんこういうふうに踏み込んでいく、これは本当にあしき前例になりますよ。これからますます地球規模にどんどん支援要請が来ることになります。
 それで、今後もう一つ心配なのが、撤収する際はこれは危険性が増すわけなんですよね。実際、今回、サマワからタリルまで百キロ、長い車列を組んで撤退する。そして、その後タリルからアリ・アルサレムまでは航空機になるということですが、この場合、長い車列が毎日同じような時間に通行するというのは非常にねらわれやすいですし、また、宿営地がこれから警護を解いていく、その段階というのも非常にねらわれやすいわけですね。ここには万全の態勢をしいていただきたいと思いますが、どのように安全確保するのか、また、どこの軍が守るのか、そのことについてお答えください。

○額賀国務大臣 先ほど、バグダッドで英国の輸送機が墜落したのはこの一月と言いましたけれども、一年半前のことでありました。
 今、陸自が撤収する際にやはり安全が一番大事だと委員が御指摘いたしました。そのとおりだと思います。したがって、人道復興支援をするにしても、民間の日常生活を行うにしても、治安というものは一番大事なんですね。したがって、航空自衛隊も、治安確保のためにそれなりの、我々のできる範囲で仕事をさせてもらうということは大事なことだというふうに、あなたもだから考えていただけるものと思っております。
 したがって、陸上自衛隊が今度撤収する際にも、やはり安全があって初めてできるわけでありますから、これまでと同じように、南部の治安を担当している英国、豪州とよく連携をとる、それから、イラク政府それから現地の治安部隊と連携をとりながら、安全をしっかりとした上で撤収を図らなければならないというふうに思っております。
 それから、この二年半の陸上自衛隊の活動が成功した背景は、やはり現住民、地域の人たちと極めて良好な関係を築いてきたということがあったと思います。もちろん、仕事をやってのけたということもそれが実績として残っているわけでございますけれども、この撤収の際も、そのバックグラウンドとして、地域の方々とよく了解する中で、たたえられながら撤収をする、そういう環境づくりにも万全をし安全を確保したいというふうに思っているところであります。

○山井委員 ここは、これから一カ月あるいは一カ月半かけて撤収されるということですが、ぜひとも、最後の最後まで安全の確保をしていただきたいと思っております。
 少し視点が変わりますが、自衛官の方の自殺の割合について少し額賀防衛庁長官にお伺いしたいと思っております。
 私心配しておりますのは、いただいた資料では、イラク特措法に基づき派遣された経験のある隊員のうち自殺された方が六名であるということなんですね。問題は、この割合をそれ以外の隊員の方々の自殺される割合と比較すると、約二倍高くなっているわけであります。
 もちろん、こういうみずから命を絶たれるという不幸なことは、因果関係というのはなかなかこれは証明されることではありませんが、客観的な事実として二倍自殺率が高いという歴然たる事実があるわけでありまして、そういう意味では、帰国後の隊員の方々のサポートというのは、これは本当に十二分にサポートしていく必要があると思いますが、防衛庁長官、いかがでしょうか。

○額賀国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。このデータが、イラクに派遣された隊員のうち帰国後に自殺した方が六人いるわけでございまして、その割合と防衛庁・自衛隊員全体の中の自殺率を考えると、おっしゃるように二倍ぐらいの数字のデータにはなっているんだけれども、これが総体的に自衛官がイラクに行かれたから自殺したのか。六人の自殺の原因を考えると、イラクに派遣されたから自殺をしたということは直接断定できない、ストレートに結びつくものではないというふうに我々も理解をしているわけでございます。
 そういうことを考えると、全体的にこれをもうちょっと敷衍して考えますと、例えば一般職の国家公務員の自殺の割合とか、それから一般の国民全体の男子の自殺の割合とか、そういうことを考えると、自衛官の場合は三八・六になっているけれども、一般の国民の男子の場合でいくと四三・四になっている。そういうことを考えると、自衛官だけが高い割合ではないというデータもあるわけでございまして、それでなくても最近は自殺というのは多くなっているわけでありますから、もうちょっとその背景は別の視点からの分析をしてみる必要があるのではないかというふうに思っているところであります。
 もちろん、イラクに派遣する前のヘルスケア、それから帰ってきてからのヘルスケア、健康診断等々については、万全を期していかなければならないというふうに思っております。

○山井委員 今も答弁ありましたように、一般の隊員の方の自殺率が三八・六ポイント、そして、イラク特措法に基づき派遣された経験のある隊員のうちの自殺の割合が七八・九ポイントと、約二倍になっているわけであります。このような対応、ぜひとも十分によろしくお願いしたいと思います。
 それで、また額賀防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、陸上自衛隊が撤収して航空自衛隊が残るわけですね。これは、飛行中の安全または空港での安全ということにも関係してくるわけですけれども、どこの軍に守ってもらうことになりますか。

○額賀国務大臣 これは例えば、我々はさまざまな情報を、その空港の地域の天候の情報だとか治安の状況だとかそういうのは、米国を初め多国籍軍、あるいはまた北部のエルビルであれば、そこで仕事をなさっているのは韓国であります。そういう国々と、飛行場と関係のあるところで仕事をなさっている多国籍軍のそれぞれの国々と緊密な連携をとりながら安全を確保していかなければならないというふうに思っております。
 みずからのことでありますから、C130の防護装置等々さまざまな安全条件について、十分な形が整わなければ仕事はしないぐらいの覚悟を持って今度の仕事をさせなければならないというふうに私は思っているところであります。

○山井委員 このたび撤退する陸上自衛隊は自衛隊の一部であって、実際、航空自衛隊の活動範囲が拡大され、結果的には全面的な撤退というのは、次の内閣、つまり、次の総理の宿題として残ったわけです。アメリカでもブッシュ大統領は、全面撤退は次の大統領の仕事とおっしゃっているわけですね。
 そこでまた改めて、次の総理になる可能性が高いと言われている麻生大臣そして安倍官房長官にお伺いしたいと思います。
 このような全面撤退について将来的にどのように考えておられますか。これはまた今後の総裁選びの際にも大きなポイントになってくると思いますが、イラクからの自衛隊の全面撤退について将来的にどのようにお考えなのか、麻生大臣と安倍官房長官にお伺いします。

○麻生国務大臣 安易な予測みたいな話は余り意味がないことだと思っていますので何ともお答えのしようがありませんが、少なくとも、選挙をやって、新しい憲法を制定して、それに基づいて新政権をつくって、組閣が終わったマリキという今の内閣のもとで防衛大臣、治安大臣、石油大臣等々を決めて、今スタートしたばかり、治安がどれぐらいで移譲されるか私は最大の関心がありましたけれども、治安権限を移譲された中で、今回、名前を挙げて治安権限の移譲が行われたのがサマワということになって、まことに光栄だったと私自身はそう思っております。
 ほかの地域でも同じようなことが全面的に成っていくのかということに関しましては、これは今後、いわゆる宗教的にとか地理的にとかいうと、バグダッドから北西部に至る部分とかクルド人の地域とか、いろいろ分け方が分かれているところなので何とも申し上げられませんけれども、全体で完全に撤退が終わるのがいつかというのを今の段階で予測するのは、極めて難しいと存じます。

○安倍国務大臣 今回のサマワでの自衛隊の任務の終了につきましても、これにつきましては、イラクの政治プロセスの進展の状況あるいはまた治安権限の移譲状況、または現地の治安の状況、さらには、現地で活動している多国籍軍の状況等々を判断して最終的に決断をしたわけであります。
 今、今後の自衛隊の撤収の時期という御質問でございますが、これもやはり同じように、現地の、またイラクをめぐる治安の状況、あるいは多国籍軍の取り組みの状況、また、復興の状況等々を適切に判断して決めていきたい、こう思っています。

○山井委員 これは、安易にアメリカの大義なきイラクへの武力行使を支持して、そして、海外の戦闘地域に非戦闘地域というフィクションをつくって自衛隊を派遣したのは、本当に大きな禍根を残すあしき前例になると思います。
 最後になりますが、陸上自衛隊員が全員無事に帰国されることと、航空自衛隊の撤退を求めて、質問を終わります。
 ありがとうございました。

Posted at 2006年06月22日 固有リンク | Comments (0) | TrackBack

2006年6月

2006年6月

厚生労働委員会議事録(社会保険庁問題)

164-衆-厚生労働委員会-32号 平成18年06月16日

○山井委員 きょうは、大臣、副大臣、長官、そして政府参考人の皆さん、長時間御答弁ありがとうございます。
 それでは、私は、これから三十分間にわたりまして質問をさせていただきます。基本的に長官にすべて質問をさせていただきたいと思います。また、大臣には、お答えいただきたいときにお願いしたいと思います。
 それでは、きょうもずっと朝から議論をしてきて、今の柚木議員の質問も聞いてきて、かなり論点は絞られてきたなと。結局、免除する人をふやすよりはやはり納付してくれる人をふやす、そして、もっと言えば、納付したい、納付せねばならないと思われるような国民年金の制度にしていかねばならないということだと思います。
 私も、二日前に、ある社会保険事務所に行ってまいりました。受付に高齢の女性の方が案内で座っておられましたが、その方とちょっと雑談をしておりましたら、その高齢の女性の方がおっしゃっていたのは、いろいろ不正な問題はあるけれども、やはりこれは根本的にはシステムの問題なのよ、国民年金のシステムを何とかしなきゃねということをその受付の高齢の女性の方もおっしゃっておられました。
 そういう観点から、私は、今回のこの不正免除問題というのは、やはり根本的な年金制度の抜本改革の必要性を示しているというふうに思っております。

 それでは、村瀬長官、早速ですが、資料を見ていただきたいと思います。
 一ページ目の資料ですね。グラフと表が書いてございます。きょうの内山議員の質問などともつながりますが、根本的なこの二つの折れ線グラフ、皆さん見てください、今議論されているのはこの上の折れ線グラフです。国民年金の第一号被保険者、つまり、加入者のうち何人が払っているか。正確に言うと納付月数ですけれども、何人が払っているか。しかし、その分母から免除や猶予を抜く、そういう操作をした納付率、まさに村瀬長官が八〇%を目標とされているのはこの上の方なんですね。
 しかし、先ほどの内山議員や柚木議員の話にもあったように、そもそも問題なのは、加入者のうち何人が払っているのかという、この下のグラフですよね。こちらが根本じゃないか。内山議員が指摘したように、最新のデータでは、何と五〇・一%ですよ、ここにありますように。二人に一人しか払っていない。これは国民皆年金なんですよ。皆年金ですよ。皆年金でありながら、国民年金は二人に一人しか払っていない。この制度はこれでいいのかという気がするわけです。
 そこで、長官にお伺いしたいと思います。
 上の納付率は上がっておりますが、本来上げるべきなのは、加入者のうち払っている人をいかにふやすか、私は真の納付率と名づけておりますが、まさに下の真の納付率の方を上げるべきなんじゃないでしょうか。長官、いかがですか。

○村瀬政府参考人 私自身の考え方は、両方を上げるべきだというふうに思います。
 一つは、分子ということで年金を一〇〇%いただける方をふやす、これは当然のことでございます。ただ、お金がなくてどうしてもお支払いできない方をほっておいていいのか、これはやはりほっておくわけにはいきません。そういう点で、例えば学生なり若年者なりの特例措置、これはお金ができたときにちゃんと払っていただいて満額にしていただく、それから、免除ということでちゃんと年金権を確保していただく、これは非常に大事なこと。したがって、やはり両方を追うべきだろうというふうに思います。

○山井委員 長官のおっしゃるとおりなんですよ。両方を追うべきなんですよね。実際、どうなっていますか。減免がふえる、免除や猶予がふえることで上の納付率の方は上がっていますけれども、実際、加入者のうち払っている人の数というのはどんどん減っていっているじゃないですか。
 そういう意味では、分母対策は成功しているのかもしれないけれども、一番肝心の国民年金を払ってくれる人の数をふやすことに関しては、村瀬長官、うまくいっていないんですよ。そのことについてはお認めになりますか。

○村瀬政府参考人 現段階では、今委員おっしゃったように、納付月数は減っております。ただ、この部分につきましては、先般もお話し申し上げましたけれども、市町村から所得情報をいただくことによって、ある一定以上の所得がある方々については強制徴収ということでスタートをしてございます。
 十七年度後半から、十七万件、強制徴収をやってございます。十八年度、三十五万件まで、十九年度、六十万件までふやす予定をしております。したがいまして、分子対策はしっかりやっていけばこれからふえてくるというふうに思っております。

○山井委員 これ、半分まで下がってきているわけなんですよね。それで、これから強制徴収でふやすということですけれども、それでも大体二人に一人しか払っていないわけなんですよね。これを見ていただきますと、このグラフを見てみると、長官が就任されたのが二年前ですから、実際に、それからこのグラフは下がっていっているわけなんですね。もう一つ重要なのは、このグラフの中で最新の今年度の調査結果、六七・八%と出ておりますけれども、これについては不正免除の分も含まれているから、これより低くなるということなわけですね。
 そこで、これはやはり、なぜ半分の人しか払わないのか、払えないのか。国民年金制度を一つの商品と例えることをもしお許しいただけるとするならば、そもそも国民年金という商品が、魅力がなくてなかなか売れにくい商品になってしまっているんではないか。そういう意味では、もちろん現場の方々や本庁の方々が知恵を絞って、どうして売るか、どうしたらお金を払っていただけるか、その努力はもちろん必要です、当然必要です。しかし同時に、根本的には、入らないと損だ、入ろう、どうすれば喜んでもらえる、そういう商品に変えていくのか、そこが非常に重要なんですね。
 本来、これは国民皆年金という義務でもありますから商品という例えは正しくないかもしれませんけれども、そういう意味では、国民年金制度そのものが、国民年金そのものが欠陥のある商品ではないかと私は思っております。
 村瀬長官、国民年金制度というものに対して、やはり納付者をふやしにくい、そういうふうな御感想をお持ちでしょうか。

○村瀬政府参考人 私は実施庁の長でございますので、決められた商品をいかに効率的に売るかという部分、普及をさせるかという部分だろうと思います。その中で、現在の戦力でもって売れるかどうか、これが非常に大事な部分でございます。その点で、現在の社会保険庁の職員が収納に関してどれだけ汗を流して仕事をやっているかということにつきましては、まだまだ私自身は不十分だろうというふうに思っております。
 したがって、そこをまずしっかりやるということが非常に大事な話というのは、実は、行動計画なり目標値の設定、こういうことにつながってくるというふうにお考えいただけたらというふうに思います。
 それから、年金制度そのものという観点からいいますと、収納率は、実は二十代と五十代で極めて納付率が違います。これは昨日の参議院の予算委員会でもお話し申し上げましたけれども、五十代の方々であれば、七〇の後半から、地域によっては九〇近い納付率でございます。一方、二十代は五〇%を切るということで、若い方々にいかにこの年金制度を周知徹底して納めていただくか、まだ納められないのであれば、学生であれば学生納付特例、若年者であれば若年者の納付猶予という制度もございます。
 したがいまして、そういう部分をしっかりお伝えするということが、制度を運営するためにも極めて大事な仕事なんだろうというふうに思っております。

○山井委員 これは、周知徹底とか啓蒙とか、そういう問題だけではないんです。そもそもこの国民年金という制度が、まさに今おっしゃったように、若い世代の人たちにとって信頼できない、魅力がないというものになってしまっているんですね。その根本的な問題を今回の不正免除の問題を通じて考えないと、トカゲのしっぽ切りや、目の前の事象にだけばんそうこうを張っても、これはだめなんですね。
 ここは二年前に、百年安心という形で、年金制度改革、強行採決を与党の方々はされたわけであります。しかし、その当時から、私たち民主党は、国民年金はもう半分ぐらいの人しか納めていない、これではもちませんよということを本当に口を酸っぱくして言い続けてきました。まさにそのことを放置した結果、違法なことでもしないと納付率がなかなか上がらないということになっているんじゃないですか。
 そこで、新聞記事を少し見てみたいと思います。私の資料の三ページ目に、読売新聞の六月十三日、「どうする社保庁改革」「論陣論客」というのがございます。非常に興味深い。片や元社会保険庁長官の堤修三氏、もう一人は千葉大学教授の新藤宗幸氏。新藤氏は「組織内改革進めるべき」、堤氏は「現場の声 制度に反映を」という。
 しかし、じっくりこれを読んでみると、共通点があるんですね。線を引いてありますので、下の方です、読んでみます。
 堤氏はこうおっしゃっています。「国民年金という売りづらい「商品」を、そのまま販売し続けなければならない。それが未納の大きな原因だ。「ねんきん事業機構」を設けるにしても、機構から制度について年金局に意見をいい、年金局もそれを尊重するような仕組みにしなければ、同じ問題が起こるだろう。」ということをおっしゃっておられます。
 片や新藤氏、こうおっしゃっています。「年金部門と政府管掌健康保険部門を分離し、年金部門は「ねんきん事業機構」に衣替えするという。しかし、そんなことをしても保険料納付率は上がらない。単なる看板の掛け替えだ。」では、どう改革を進めるのか、それに対しては、「納付率が低迷するのは、国民が年金制度を信頼していないからだ。そもそも、年金制度をどう立て直すのかを、まず議論すべきだ。」
 そして、真ん中の「寸言」のところにも書いてございます。そこでコメントがどう書いてあるか。「立場は違うが、社保庁の組織だけでなく、年金制度そのものを改革しない限り、未納問題は解決しないという認識では一致している。」ということになっております。
 私、きょうの朝の九時半からずっと審議を聞いてきて、非常に不満であり不思議であるのが、どうして与党の方々は、処分のこととか組織のこと、もちろんそれも大切です、そのことばかり言って、なぜ根本的に、二人に一人しか払っていない国民年金制度、これはやはり変えないとだめなんじゃないの、何でその最も本質的な問題に疑問を呈しないんでしょうか。
 村瀬長官、このような声を聞いて、やはりこれは、村瀬長官はもしかしたら、私、被害者じゃないかと思うんです、本来は小泉総理が年金の抜本改革をやるべきだったわけです。それをせずに強行採決をして、しかし、改革しているふりはしないとだめだから、長官に民間人を登用したら何か改革しているというイメージになる。はっきり言って村瀬長官も大変ですよね、こんな信頼を失っている国民年金制度というものに対して、どんどん納付率を上げろという使命を帯びてここに来られているわけですから。
 だから、そういう意味では、やはり、ここに書いてありますように、組織や徴収方法とセットで年金制度をどう改革するのかということを議論すべきであると思います。
 そこで、村瀬長官にお伺いしたいと思います。今回の調査で本当にいろいろなことを聞かれているんですね。不正にどう関与したか、本庁には確認したのか、その不正の発案者はだれか。これは、全件調査、不正調査、きっちりされていますよ。しかし、私、極めて不本意なのは、現場の方々に、なぜそんなに徴収が難しいんですか、どう変えたらもっとこれに加入してもらえると思いますか、やはり、そういうことこそを聞いて、セットで改革をしていくべきだと思うんです。
 長官、いかがですか。やはり、こういう調査を機に、現場から、国民年金制度をどう変えるべきなのか、まさにその現場の一番説得力ある声をやはり今回の調査の中で聞いていく、そういうことをすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○村瀬政府参考人 まず、先ほどの新聞記事につきまして、ちょっとコメントをさせてください。
 お一方が、私の前々任の長官でございます。そして、八〇%という目標を決めたときの長官でもあられます。そういう方が何をおっしゃっているかということをよく見ておいていただけたらというふうに思います。
 それから、先ほどの全件調査の件でございますけれども、全件調査につきまして優先をさせたのは何かといいますと、今回の不正免除問題でございます。したがいまして、その全件解明をやるために、しっかりやるということで優先的にさせていただきました。
 したがいまして、今後の問題で、我々の組織がどうしていったら本当に皆さん方いいのかという具体的な提案だとかというのについては、別途、後からとってもいいんだろうというふうに思っております。

○山井委員 ぜひ別途、後からとっていただきたいと思います。そうしないと、単に犯人捜しだけをして、そして今までどおりの国民年金の制度、これでは問題の根本的な解決にはなりません。
 今回、抜本改革をすべきだということを私たちは言っているわけです。
 資料の四ページ目を見てください。与党・政府の皆さんは今回の年金制度が百年安心とおっしゃっている。百年安心と二年前におっしゃって、まさに二年で事実上これはもう破綻しているじゃないですか。私たちはそのときからマニフェストで、国民年金を含めた一元化、所得比例年金にしていく、そして基礎年金の部分は最低保障年金として消費税でやっていく、そうすれば無年金の人は出てこない、そして、後ほど古川議員からも議論がありますが、徴収の方は歳入庁にしていくと。まさにこれが抜本改革なんですよ。ねんきん事業機構のような看板のかけかえだけでは、この問題は永遠に続きます。
 この資料の右下にもマニフェストが書いてあります。私たちははっきりと社会保険庁を廃止すべきだということを政策でも打ち出しております。小泉総理は何か、民主党は改革抵抗勢力だとおっしゃっているようですけれども、まさに私たちは、国民年金を含めた一元化、抜本改革も言っているし、社会保険庁の廃止、そして歳入庁構想も言っております。にもかかわらず、来年の通常国会で、何やら政府・与党は共済年金と厚生年金の一元化だけをすると。一番今問題になっている国民年金、また先送りじゃないですか。
 そこで、では、この影響は、この不正免除の問題はどこにしわ寄せが行っているのか、次に移りたいと思います。
 長官、お伺いします。
 この資料の二ページ目を見ていただきたいんですけれども、ここに毎日新聞の「見せ掛け 納付実績アップ サラリーマンにツケ回し 肩代わり二兆円」という見出しが出ております。それで、三枚目に出ている資料がこのパネルになっております。
 村瀬長官、賦課方式ですので、納付した保険料が基礎年金の給付に回っている、こういう仕組みになっておるわけですけれども、二〇〇四年度、国民年金の加入者全員が保険料を払うなら、国民年金の拠出金は幾らになりますか、また実際の拠出金は幾らになっておりますか。

○村瀬政府参考人 二〇〇四年度における基礎年金の拠出額でございますけれども、総額で十六兆四千億でございます。そのうち国民年金の拠出が三兆七千億でございます。一方、国民年金の第一号被保険者がすべて、一定の条件でございますけれども、一号被保険者で免除者や未納者を含めて拠出金を算定するという形になりますと、国民年金の拠出額は五・六兆円になります。

○山井委員 そうなんですね、ここに表があるわけです。つまり、本来、加入者が全員払えば五・六兆円の拠出金になるはずだ。しかし、これだけ免除、猶予が多いために、実際は三・七兆円になっている。差額約二兆円。この差額については、長官、だれが肩がわりしていることになっていますか。

○村瀬政府参考人 制度の問題でございまして、これは、申しわけないんですけれども、実は年金局の所管でございまして、私自身が実施庁という立場で申し上げられる部分じゃないんですが、一応、年金局長に了解を得た上でお答えをさせていただいてもいいですか。
 基礎年金制度は、給付費を公的年金加入者全員で公平に負担するという考え方に基づきまして、国民年金、厚生年金、共済年金、各制度ごとの保険料納付済みの扱いとなる被保険者数に応じて拠出金を負担する、こういう仕組みになってございます。したがって、国民年金の第一号被保険者全員が保険料を納めた場合と比べれば、国民年金に免除、未納者があるということによりまして、その年だけを見ますと、国民年金、厚生年金、共済年金の各制度が負担する基礎年金拠出額一人当たりの単価、これは当然割高になってございます。その分は、それぞれの、先ほどの制度に合わせて、被保険者数によって負担をしている、こういう仕組みになってございます。

○山井委員 つまり、今の話をまとめますと、この約二兆円国民年金の拠出金が減っている分は、厚生年金の加入者、そして共済年金の加入者が肩がわりしている。大きくいえば、サラリーマンの方々が肩がわりしている、その年に限っていえば。そういうふうな図式になっているわけですね、これ。
 ですから、そういう意味では、この国民年金の問題、なぜ私たち民主党がずっと言い続けているかというと、国民年金がどんどん穴があいたままだったら、その負担が、これはやはりサラリーマンの方やほかの方々にも肩がわりになってくるということなんですよね。国民年金だけが独立している問題じゃなくて、基礎年金で全部つながっているわけなんですから。だから、そういう意味では、今回の不正免除問題は、その年においては不正にそのお金をサラリーマンの方々に肩がわりさせた、そういうことにもなるわけです。長官、このことについてどう思われますか。

○村瀬政府参考人 先ほどお話し申し上げましたように、一点、厚生年金、共済年金の被保険者だけではなくて、国民年金をお支払いになっている方にもその部分が負担増としていっておりますので、そこはぜひ御理解をいただけたらというふうに思います。
 したがいまして、今御質問の中で、先ほども何回もお話し申し上げておりますけれども、制度全体の仕組みというのは年金局が考えつくっているわけでございまして、その部分で免除者という観点がふえればどういうことになるかといいますと、その分には税が後ほど三分の一なら三分の一行くという、こういう仕組みでございまして、全体の問題からいきますと、免除者や未納者がいることによってサラリーマン等が保険料を割り増しで負担させられているということは、基本的には、将来の給付費ということも含めて考えれば、財政計算上はないのではなかろうかというふうに私は思っておりますが。
 もし正確な答弁が必要だとあれば、年金局長にお願いできたらと思います。

○山井委員 今の考え方は、簡単に言えば、免除する人とか未納の人がふえればふえるほど老後は年金を払わなくていいから、年金財政は助かるという話じゃないですか、国家財政は。しかし、その人の人生はどうなるんですか。それに、内山議員が言ったように、結果的には生活保護でもっとかぶることになるかもしれないんでしょう。余りにもそれは安易な考え方なんですよ。
 では、大体、これは不正に免除して、ずっと免除が続いて、二万円ぐらいの年金でその方がどうやって暮らしていけるのか。もしかしたらこれは村瀬長官が考えることじゃないかもしれないけれども、やはり年金というのはシステムだけの話じゃなくて、日本国民の老後をどう支えていくのかということとセットで考えないとだめだと思うんです。
 それで、今回、この調査はまだまだ続くわけなんですけれども、村瀬長官にお伺いしたいのが、これは不正に免除されてそのままずっと免除が続いたとしたら、三分の一程度で、国民年金は二万円程度になるんじゃないかと思います。そういう人たちは、これは老後どうやって暮らしていくと想定しているのか、イメージしているのか、そのことをお伺いしたいと思います。

○村瀬政府参考人 不正免除ということで、将来三分の一、二万円という論理で今御質問ございましたけれども、基本的に、今回、不正の免除をやった人たちというのは、実は長期未納者なんですね。それでいえば、年金権の確保も将来ひょっとしたらない方かもわからない。(山井委員「そんなことを聞いていない。二万円でどうするかということ」と呼ぶ)いやいや、そういうことがありますから、そういう点では、ちょっと論理的に、二万円に即結びつけて云々というのはなかなか答えがしづらいということを私としては申し上げたいと思います。

○山井委員 私が申し上げたいのは、根本的に、これは低所得の方々が、未納や免除、猶予というような形でどんどん国民年金からはじかれようとしているわけなんですよね。やはり、これ、私たち国会議員が知恵を絞らないとだめなのは、それこそ三十年先、五十年先の日本、今の若者の未来を考えて、どうすれば所得の少ない人でも老後、やはりある程度、一定以上の生活を保障できるのか、そのためにはどういう年金制度でいいのか、そのことをやはり今議論しないとだめなんですね。目先のことだけ考えて、免除にすればそれがいいやということでは、問題は全く先送りで解決にならないわけです。
 それで、この調査結果、七月中旬に出るということです。真相究明、そして問題のある職員の処分、これも当然必要でしょう。組織の改革、必要でしょう。しかし同時に、そのこととともに、この国民年金が二人に一人しか納付していない、そういう状況をどう改善していくのかという抜本的な議論もやっていかねばなりません。
 そういう意味で、これは国民の不安と期待というのは、この年金問題に対して非常に大きいものがあります。きょうから国会は閉会になるそうですけれども、やはり私たちも税金でお給料として働かせてもらっている、そういう身である限り、閉会になったからこの問題は終わるというわけには当然いかないと思います。
 そうしたら川崎大臣にお伺いしたいと思いますが、これはもちろん理事会で後で議論することでありますが、大臣の御見解として、これだけ調査結果が七月中旬に出てくる、きょうはこれは中間報告ですよ。これはやはり、最終結果が出てきたときにもう一度この委員会でしっかり審議すべきだ。間違っても、次にこの問題を議論するのは十月や十一月、そんな無責任な話はあり得ない。そんなことをすれば、ますます年金への怒りと不安というのは私は高まると思います。大臣、この閉会中に調査結果が出た時点で審議をする、このことについてどう思われますか。

○川崎国務大臣 そのことについては、先ほどお答え申したとおり、委員会で御議論ください。
 基本的に、年金制度全体の考え方が与野党で大きく隔たりがある。わざわざ委員も質問の中で、単年度で見ればという言葉をつけられました。三十年、四十年というサイクルで見れば、制度一つに、例えば厚生年金の方に負担を大きくかぶせる制度ではない、率を決め、金額を決め、制度設計の中にやっているわけですから。国民年金の未納者が多いがゆえにすぐそれがはね返って厚生年金の負担増になる、三十年、四十年のサイクルになるという話とは、明らかに違うということを申し上げておきます。

○山井委員 朝の理事会でも、閉会中に調査結果が出たときに審議をしようということを言っておりますが、与党が反対をしております。(発言する者あり)協議をしようということですから、ぜひ、今の言葉を信じたいと思っております。拒否はしていないそうでありますから。ぜひとも閉会中にそのことを、私は審議をすべきだと思います。
 なぜこれだけ納付しない人がふえているのか、それは、年金制度に対する信頼が低下しているんですよ。その年金制度に対する信頼を高めること、これは私たちが国会で真剣に議論することですよ。
 今、川崎大臣、与党と民主党とで年金についての考え方が違うとおっしゃった。しかし、大きな違いは何か。与党は今の年金制度で百年安心と言っていることですよ。私たちは百年安心じゃないと言っていることですよ。国民の多くはどうですか。国民の中で、百年安心と思っている人は少ないと思いますよ。
 それに、過去一年間、社会保障合同会議やりました。私たち民主党は、最優先課題として国民年金の改革を議論しないとだめだと言ったにもかかわらず、それを逃げ続けているのは与党じゃないですか。やはり、国民年金の問題、まさにこの不正免除問題を契機にもう一度これは議論をせねばならないと思います。
 まとめになりますが、きょうの議論を通じて、本当の納付率、見せかけの納付率じゃなくて、加入者のうち納付している人の数というのは、村瀬長官の頑張りがあってもどんどん減っている、そしてその部分はサラリーマンの方々によって肩がわりをされているということが明らかになってまいりました。

○岸田委員長 山井議員、簡潔にお願いいたします。

○山井委員 次、ぜひ、閉会中じっくりと、調査結果が出たときに審議をしたいと思います。
 ありがとうございました。

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2006年6月

2006年6月

上甲晃氏講演会 「志の石を投げ続けよう」

  6月18日(日)午後2時から行われる私の恩師の講演会の案内です。
  主催は、私を応援して下さっている「やまのいネット相楽」の方々です。

  上甲晃(じょうこうあきら)さんは、私が今から15-20年前に在塾していた(財団法人)松下政経塾の塾頭でした。
  「政治を正さねば、日本は良くならない」という憂国の思いで、故松下幸之助塾長は、私財70億円を投じて、1985年に政経塾を創立。
  私は車椅子に乗った松下塾長から数回、直接、ご指導を受けました。
  「政経塾には教室はいらない。本を読んで学ぶのではなく、政経塾生は現場で学ばねばならない」 「政経塾は人間を学ぶ道場である」などと、松下塾長はおっしゃいました。
  政経塾の敷地内に住み込み、そのような政経塾の指導の最前線に立っておられたのが、上甲塾頭でした。
  松下塾長亡きあと、塾長にかわって、ご指導くださった上甲塾頭は、私の人生の師です。

  今回は、「教育講演会」ですが、受験勉強という意味での「教育」ではありません。
  「いかに世の中のために役立つ人間を育てるか」という意味での「人づくり」について語って頂きます。
  「志」がキーワードです。

  お気軽に是非ご参加ください(当日参加も大歓迎)。
  私は公務があるので、遅刻しますが参加します。
                              山井和則

  ◆ 元松下政経塾塾頭が教育について語る ◆
    上甲晃氏講演会 「志の石を投げ続けよう」

  主催 やまのいネット相楽
  日時 6月18日(日) 午後2時~4時
  場所 木津町中央交流会館(いずみホール)[会場地図
京都府相楽郡木津町大字木津小字宮ノ内92番地
tel:0774-72-8800

  入場料 500円(前売り、当日共通)

  ○連絡・問い合わせ やまのい事務所 電話0774-54-0703 kyoto@yamanoi.net

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2006年6月

2006年6月

国土交通委員会議事録

164-衆-国土交通委員会-26号 平成18年06月09日
 ○新交通バリアフリー法について
 ○障害者自立支援法の施行状況について


○山井委員 民主党の山井和則でございます。
 厚生労働委員会からこちらに差しかえで来させていただきまして、これから三十分間、北側国土交通大臣そして担当者の方々に質問をさせていただきます。また、後半は、厚生労働省の方からも自立支援法に関係して担当者の方に来ていただきましたので、質問をさせていただきたいと思っております。
 まず最初に申し上げたいんですけれども、今回のバリアフリー新法によって、駅や建物だけではなく、面として、障害のある方々がバリアフリーという形で社会に参加しやすくしていく、そして移動しやすくする、その権利性を高めていくということがこの法案の趣旨であるかと思います。
 しかし一方では、この四月から、これは厚生労働の担当でありますが、障害者自立支援法というのが導入されまして、原則一割負担という自己負担が今まで以上に導入されて、さまざまな軽減措置がございますが、そんな中で、それによって障害のある方々が社会参加しづらくなったのではないか、また外出しづらくなったのではないか、そういう不安の声、また現場からの悲鳴というものも起こっております。
 そういう中で最初に申し上げたいんですが、私は、車の両輪だと思っております。バリアフリー新法によってハードの面をバリアフリーに整備していく、それと同時に、ソフトの、サービスの面において、障害のある方々が社会参加、外出をしやすくしていく、これが車の両輪でなければならないと思っております。そういう思いから、前半では国土交通省に、後半では厚生労働省に質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初にお伺いをしたいと思います。
 私は、二十七歳のときですから今から十七年前、京都ボランティア協会というところに勤めておりまして、そこでボランティアのコーディネーターをしておりました。そこで視覚障害の方々に対して京都の観光案内をする、そういうボランティアのあっせんもしておりました。そんな当時から聞いておりましたのが、やはり視覚障害者にとって駅のホームが非常に怖い、危険であるということであります。
 ですから、第一問は、駅のホームのホームドアの設置ということについてお伺いし、要望したいと思っております。
 交通バリアフリー法の制定後も、視覚障害者などがホームから転落しているという事故が減少しておりません。私の知人の視覚障害のある方も、残念ながら数年前に駅から転落した。私もそのときにも彼から言われたんですけれども、こういう本当に転落をしないと、それを恐れていてはなかなか外に出ていけない、それぐらいホームは危険が多いという話を聞いたことがございます。
 その対策として視覚障害者の方々が求めているのが、ホームドアの設置であります。ホームドアを今回のバリアフリー新法においても計画的に進めていく必要があると思いますが、今回のバリアフリー新法で何らかの改善がなされるのでしょうか。あるいは、特に新設の場合などはホームドアの義務づけというものをやっていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。点字もしくはホームドアという形になっているんですが、どちらかでもいいというとそれは点字の方が安くて簡単だからそっちに流れがちなんですが、ホームドアの設置を急ぐべきだと思います。答弁をお願い申し上げます。

○梅田政府参考人 先生御指摘のホームドアあるいは可動式のホームさくの設置でございますが、この点につきましては、私どもも、ホームからの転落防止等の観点から整備を急ぐことが必要であるというふうに考えております。
 これまで、設置可能な駅におきまして設置を推進してきました。現在のところ、路線の新設時に設置されたものを中心といたしまして、ホームドアは十二路線百十五駅、可動式ホームさくは二十一路線の百八十三駅に設置されているところでございます。
 しかしながら、駅にホームドア等を設置する場合には、既存の駅につきましてはいろいろ問題もございますし、また新設の駅についてもやや問題がございます。仮にホーム上に十分な広さが確保できる新設の駅であったとしても、車両の面におきまして、例えば扉の位置が異なる、スリードアとかあるいはファイブドアとか、いろいろな列車が走行する路線、こういうようなところにつきましては、対応するようなホームドアをつくることはなかなか技術的に難しゅうございます。また、定位置に列車を自動的に停止させる装置、これもできるだけ設置可能な路線でなければ、ホームドアを設置することがなかなか難しいというようなことがございます。
 こういうことでございますので、一律に義務化をするということはなかなか困難であろうというふうに考えているところでございます。
 しかしながら、既存また新設を問わず、ホームドアあるいは可動式のホームさくを設置していくことは必要であるというふうに思っておりまして、例えば東京地下鉄の丸ノ内線、これはできてから相当古い地下鉄でございますが、ここにつきましても可動式のホームさくの設置を進めているところでございまして、平成十九年度の供用を目指してやっているところでございます。
 私ども、基本的に、この設備の設置につきましては、諸条件の整った路線を中心にしながら、ホームドアあるいは可動式のホームさくの設置を積極的に進めて取り組んでまいりたい、この設置につきましては今以上にしっかりやっていきたいというふうに考えているところでございます。

○山井委員 今以上にしっかりと取り組んでいきたいという答弁でございますが、まさにこれは、視覚障害者の方々が自由に移動するために、ある意味で死活問題でありますので、さまざまな課題はあるでしょうが、ぜひ整備を急いでいただきたいと思います。
 二番目に、当事者や市民参加ということについてお伺いしたいと思います。
 バリアフリー新法では、住民等による基本構想の策定、提案や、協議会の設置など、利用者の関与が促進されるが、なかなかその具体的な仕組みが明確には読み取れません。また、乗車拒否などの事例が後を絶たないことなど、法の精神と現場とが乖離しているという点も多々あるわけですね。そして、いざ設備ができてから、利用しにくいというふうな事例も起こってきているわけです。
 そういう意味で、この問題は、計画、実施、検証の各段階への当事者参画、つまり、障害のある方々が参加して、計画、検証の前に意見を言うということや、また、さまざまな乗車拒否などのトラブルやクレーム等の処理機関についても、当事者参画がなければ解決されない問題だと考えておりますが、このような点において、バリアフリー新法ではどのようになっておりますでしょうか。

○竹歳政府参考人 まず、当事者参画の点でございますけれども、面的にバリアフリーを進めていく、そのために市町村が基本構想をつくるというようなときに、高齢者、障害をお持ちの方々からの提案とか、それから協議会のようなものをつくるということで、当事者参画を充実していきたいと思っております。
 なぜかと申しますと、その前提として、私どもの国土交通省の方でバリアフリーのあり方を考える懇談会というものを設けまして、さまざまな方の意見を伺いました。せっかくバリアフリーの施設をつくったものの、実際に障害者の方から見ると非常に使いにくい、それから、逆に障害を強調するバリアフリーになっているんじゃないかとか、障害を隠すバリアフリーになっているんじゃないか、御利用者の目から見るとそういう大きな問題があるというようなことがございました。ということで、今後つくる計画におきましては、実際にこういういろいろな問題意識を持っておられる方々からの意見を踏まえて、計画づくり、事業を進めていきたいというのが第一点でございます。
 それから、せっかく制度ができても、いろいろな問題が起きる、乗車拒否とか利用拒否の問題、これについて中立的な機関を設けてはどうかというお話がございました。移動や利用をめぐるトラブルやクレームにつきましては、当事者からお申し出があれば、行政としても適切に対応していかなくちゃいけないと思っております。
 国土交通省では、ホットラインステーションというものを設けまして、これは平成十六年七月に設けました。この十六年度の八カ月間の様子を見ますと、全体で七千五百件ございまして、そのうち苦情が四百九十件ということでございます。こういう苦情につきましては、私どもの方で、窓口で一元的に承って、担当課を通じて事業者に対する確認や調査等を行い、相談された方にその結果を回答するということを行っております。
 ただ、新たに中立的な機関をつくってということまではなかなか手が及ばないのではないかと思っておりますが、いずれにしましても、今回、ハートビル法と交通バリアフリー法を一体化していくわけでございますので、窓口の一元化もして、こういう取り組みも強化していきたいと思っております。

○山井委員 障害者の方々からは、乗車拒否等さまざまなクレームを言っても、トラブルがあってもなかなか改善されないという思いがあるわけです。それに対しては、今も答弁ありましたが、やはりできれば当事者が参画した中立機関のような処理機関が必要であると思っておりますので、重ねて要望したいと思っております。
 三つ目の質問に入ります。
 問題は、障害者や高齢者の方々等、移動制約のある方々が、自宅から駅まで、どうやって今回の新法に入っているバリアフリー化される重点整備地域に行くのかということが重要なわけですね。幾ら駅周辺がバリアフリーになっても、家からそこまで行き着けないケースというのがたくさんあるわけです。
 そこで、移動介護も含めた観点で、やはり新法に基づく基本構想に交通計画として、家からどうやって今回バリアフリー化される重点整備地域まで行くのかということも交通計画に盛り込むべきではないかと思います。この点についていかがでしょうか。

○竹歳政府参考人 社会全体のバリアフリー化を進めるということになりますと大変長期間かかっていくということで、今私たちが進めておりますのは、まず優先度の高いところから進めていこうということでございます。
 そういう意味で、例えば駅につきましても、五千人以上の乗降客のあるところからと。これに対しては、例えば、大都市でバリアフリーの駅から乗ったけれども、地方に行っておりようと思ったらバリアフリーじゃない、こういうような御指摘もあります。それから、今先生御指摘のように、駅まで行くのにどうするんだということでございまして、将来的には、町全体がバリアフリーになるような構想というものをつくっていかなくてはいけないと思います。
 当面でございますけれども、自宅から駅までの移動について重要な役割を果たすと考えられますのがスペシャル・トランスポート・サービスでございます。今般成立いたしました道路運送法等の一部を改正する法律によりまして、NPO等が行うボランティア福祉有償に係る登録制度が道路運送法に位置づけられたところでございまして、基本構想の作成に当たりましても、このような制度と連携を図るということで、自宅から目的地までの切れ目のない移動が確保できるようにしていきたいと考えています。

○山井委員 ぜひとも自宅から駅まで、そこまでの移動も確保されるようにしていただきたいと思いますし、それはまさに、後で触れます障害者自立支援法とも関連してくることだと思います。
 ここで、個別事例になって恐縮ですが、京都の京阪八幡市駅、これは私も国会で今まで二度取り上げているケースですが、このパネルにありますように、多くの急な階段があります。その結果、この地域は割と高齢化が急速に進んでいるわけなんですけれども、御高齢の方がもう駅を利用しづらくというか、足腰が弱ったらできなくなってきて、わざわざほかの駅までバスで行くとかタクシーで行くとか車で行くという、何とも不便なことになってしまっているわけです。
 それで、住民の方々もこの署名活動をずっとされておられますし、先日は八幡の市議会で森川信隆議員も質問されまして、市議会でも市長から、平成二十二年度までにバリアフリー化するという答弁も出ているわけなんですけれども、やはりなかなかこれはお金もかかることであり、まだまだ実現のためには時間がかかるわけなんです。
 そこで、このケースを通じて、今回の新法がこのようなケースにどう関係してくるかということについて北側大臣にお伺いしたいと思います。
 旧交通バリアフリー法に基づく移動円滑化の促進に関する基本方針では、平成二十二年度までには、京阪八幡市駅のような既存の駅も、ここも乗降客数が一日一万人以上いるわけですから、バリアフリー化を行うということになっていたが、今回の新しい新法においてもそのような目標は変わりないと考えてよいのか、いかがでしょうか。

○北側国務大臣 変わりございません。

○山井委員 一つ一つ確認していきたいと思います。
 今回の法案の中では、バリアフリー化は、古い法律よりもどのように取り組みが進めやすくなるのでしょうか。

○竹歳政府参考人 今回の法律改正におきまして、いろいろな施設についても追加をしております。すなわち、基本構想をつくりやすくしていくということでございます。
 先ほども申し上げましたけれども、基本構想を作成するに当たっては、関係する施設の設置管理者、すなわち、公共交通事業者、道路管理者、それから駐車場の管理者、公園管理者、建築主等、公安委員会といったさまざまな事業主体の連携が必要となります。同時に、高齢者や障害者等の移動や施設利用の実態を踏まえ、そのニーズに的確に対応した構想を作成することが求められるところでございまして、利用者が構想作成のプロセスに関与していく、関係者と利用者が一緒のところで議論をするということが、こういう構想を推進する上で極めて有効ではないかと考えているわけでございます。

○山井委員 今御答弁いただきました法定化された協議会というのは、この関係者は正当な理由がなければ参加を拒否できないということになっていると思いますが、ここで北側大臣、改めて確認ですが、ということは、今まで以上に市町村が主体的にバリアフリー化を進めやすくなったというふうに理解してよろしいでしょうか。

○北側国務大臣 そのように御理解いただいて結構でございます。
 市町村が基本構想を作成しようとする場合に、協議会を設けたときは、鉄道事業者等を含みます関係する施設設置管理者についても、正当な理由がある場合を除いて、協議会における協議に応じなければならないこととなっております。この正当な理由というのも、近々施設を廃止、譲渡するだとか、そういうふうな極めて例外的な場合に限られるというふうに考えておりまして、ほとんどの場合におきましては、協議会への参加が義務づけられるということになっておるわけでございます。
 関係者の協議会への参加が担保されていくことになりますので、これらの者と高齢者、障害者等利用者との間で理解と協力を踏まえながら、今まで以上に市町村がバリアフリー化に主体的に取り組むことができるというふうに考えております。

○山井委員 これからの高齢社会においては、高齢者の方も足腰が悪い方がふえてこられますし、また赤ちゃんを抱いた保護者の方々も利用されるわけですので、ぜひとも急速にこれは進めねばならないと思っております。
 私の親しい友人も、実は、バリアフリー化が十分じゃないということで京都から東京にとうとう引っ越してしまいまして、やはりこういう地域間格差というのも非常に重要な問題となっております。
 そこで、もう一問北側大臣にこの八幡市駅に関してお伺いをしたいんですが、とはいえ、二十二年度までに義務づけても、やはり地方自治体も非常に財政的に厳しいわけでありますね。そういう意味では、これは要望になるわけですけれども、バリアフリー化という目標達成のために、起債への特段の配慮なども含めて、国土交通省としても市町村に対してさらなる支援というものを要望としてお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○北側国務大臣 関係省庁とよく連携をとらせていただきたいというふうに思っております。
 平成十八年度におきましては、これは国土交通省の関係でございますけれども、本法案の施行をにらみまして、重点整備地区において基本構想の作成を行う協議会に対して、バリアフリー環境整備促進事業によりその経費を新たに補助対象とする、このような対策もとらせていただいたところでございます。
 自治体へのより効果的かつ重点的な支援制度につきましては、よく関係省庁と連携をとらせていただきたいと考えております。

○山井委員 まさに今各省庁と連携してということをおっしゃいましたが、国土交通省としての支援だけじゃなく総務省やあるいは財務省の支援も必要だと思いますので、ぜひとも後押しをよろしくお願いしたいと思います。そして、平成二十二年度までに多くの駅がバリアフリー化が完成するように、これから引き続き新法をばねに後押しをお願いしたいと思います。
 それでは次に、厚生労働省の方に御質問をさせてもらいたいと思います。
 ちょっと話題がかわりますが、この四月から障害者自立支援法がスタートをいたしました。冒頭に申し上げましたように、このバリアフリー新法で面的にバリアフリーにしていく。それと同時に、やはり障害のある方々が社会参加していく、あるいは作業所や通所施設で昼間活動する、働く、あるいは社会活動をするために外出する。生きがいをもっともっと持ってもらう。学ぶ、働く、自己実現をする。さまざまなためにも、障害者の自立を支援していくということは必要であります。
 しかし、この四月から原則一割負担の導入ということが、さまざまな軽減措置はもちろんございますが、実施されたりする四月からの自立支援法の施行の中で、さまざまな問題点が今出てきております。そのことについてお伺いをしたいと思っております。
 ちょうど、きょう資料を配付いたしましたが、昨日も新宿で二千人規模の障害者の方々の集会がありました。ここに書いてありますように、「とうきょうフォーラム 障害者自立支援法の施行 いま、私たちにできることは 見えてきた課題・問題点を解決するために」。新宿文化センターの大ホールが超満員でありまして、実行委員会形式になっているんですが、東京の重立った障害者の団体の方々が本当に集まっておられました。
 どういう呼びかけ文になっているかというのをちょっと読ませていただきます。
  二〇〇六年四月、障害者自立支援法は施行されました。
  東京都をはじめ多くの区市は、障害のある人とその家族の負担を軽減しようとがんばってきました。
  一方、こうした自治体の努力のさなか、国は「障害者自立支援法による基準・報酬(案)」を三月一日に発表しました。しかもその内容は、きわめて厳しい水準にとどまりました。たとえば、居宅介護や移動支援は、たいへん利用しにくくなりそうです。またグループホームや通所施設などでは、大幅なサービスの後退もありえる、そんな内容が示されました。わたしたちが自治体とともに、長年築いてきた福祉が維持できなくなるのではないか、そんな声もあがっています。
こういうふうになっております。
 ですから、私がなぜこの委員会でこの問題を取り上げるのかというと、バリアフリー新法でバリアフリーなまちづくりになっている一方では、こういう現場での不安というのは高まっているということであります。
 また、私も、毎週末京都南部の地元に戻りますが、私の京都南部は障害者の通所施設や作業所が多い地域でありまして、これはほかの委員の先生方も同じかもしれませんが、福祉バザーがいっぱいあるんですね。それで、この三月ぐらいからバザーに行くたびに言われるのが、山井さん、大変や、この四月から自立支援法で収入が減ると。私の近所の施設でも、年間一千五百万円減る、二千万円減る、ただでさえ職員の給料少ないのにどうしたらいいだろう、首を切るしかないんだろうか、そういう声。
 それと、一割負担の導入によって、私の近所の通所施設でも、もう通所施設に行くのをやめますというケースが出ておりますし、あるいは、一気にやめるということにならなくても、お金がかかるんだったら、週に五日間通っていたのを二日にしますというケースも出てきておりまして、これは、第一回の請求書が届くのが五月の二十三日ぐらいだったわけですから、そういう意味では、まさに請求書が届いて、今かなりの悲鳴が上がっております。
 例えば、通所施設に行くことによって、いろいろな作業をして、知的障害者の方が今まで工賃を一万円もらっていた。ところが、五月末に来た請求書を見たら、三万円払ってくださいとなっているわけですね、一割負担と食費とか含めて。働きに行って一万円もらっていた、四月までは。ところが、自立支援法で、一万円もらってくるかわりに、三万円別個に費用を払わないとだめになった。それはやはり、家庭の事情でやめようかという方とか日にちを減らそうかという方が出てくるのも仕方ないかもしれないんですね。
 こういうことに関しては、そうならないようにさまざまな軽減措置を厚生労働省さんも講じてくださっているわけでございますが、こういう実態があります。
 そこで、まず最初にお伺いしたいと思います。
 一つの理由は、施設に払われるお金が日割り計算にこの四月からなったわけですが、通所施設や作業所に対して、こういう日割り計算になったことによって報酬はどれぐらい減っているんですか。このことをお答えください。
    〔委員長退席、吉田(六)委員長代理着席〕

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 障害者自立支援法は四月から施行されております。事業者の方にお支払いします報酬、この報酬も四月一日から改定をされております。そういった中で、報酬の支払いルールにつきまして、今委員からお話がございましたように、これまで、例えばお一人の施設利用者の方がおられれば、月一回利用でも一月、満額、一定額を支払う仕組み、いわば月払いから、その方が何回利用したか、その利用した日に応じて払う、日払いと今委員からそういうお話がありましたけれども、そういう方式に改められました。
 これは、利用される方にその都度一割負担もお願いするということもございますし、こういう支払い方式は介護保険制度と同様でございます。提供したサービスの実績に基づいて支払うこととし、事業者側のサービスの提供量を評価する仕組みとしたところでございます。
 今委員の方から、そういった場合、切りかえによってどのくらい変化があるのかということでございますが、四月から施行されておりまして、現段階、まだ四月分の報酬請求支払い事務も完了していないため、つぶさには承知しておりませんが、大まかに言って二つのケースがございます。
 一つは、今まで人数掛ける一定額でございましたので、通う回数が少ない施設につきましては、これによって報酬が減るというのは当然考えられます。他方、今度の制度改正で、定員を超えた利用者の受け入れも可能とするよう、例えば通所施設の場合は二割を超えることも容認するという規制緩和を行っておりますので、例えば、新たな利用者の受け入れに努めたり、土日に開所するなど開所日数をふやしたようなところにつきましては、収入増のケースもある。こういう二つのケースがあると考えております。
 前の方のケース、月払いから、これまで一回でも満額払っておったわけでございますので、我々の想定では、月二十二日通所していただくということをモデルにして、これは実態調査に基づいてやっているところでございますが、そのような回数来ていないところは大きな減収になるということも想定されましたので、十八年度におきましては、八割は保障するという激変緩和措置を講ずるということを行っておりますので、今委員からの御指摘の減収分につきましては、一番減収した施設があったとしても、この八割保障で救済される、こういうふうに考えているところでございます。

○山井委員 私がお伺いしたいと思っていますのは、今いろいろなことを想定しているということをおっしゃいましたけれども、実際、現場からは悲鳴が上がっているわけなんですね。ですから、厚生労働省としても、それが耐えられる痛みなのか耐えられないものなのか、やはりこれは実態調査を早急にしないと、私の近くでも、もう施設を畳まざるを得ないという、そんなケースも出てきているわけなんですね。
 やはり、法律を施行した以上、それがどういう結果を生んでいるかというのは早急に調べる必要があると思うんですが、この実態、ふえるところもあるでしょう、減っているところもあるでしょう、いつごろまでにお調べになるつもりですか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 四月から障害者自立支援法を実施しております。当然、私ども、実施状況につきましては十分ウオッチしていかなければならないと考えております。具体的には、給付費の動向など、この前の制度でございます、平成十五年から実施いたしました支援費制度という障害者の制度がございましたが、これは給付費が大変ふえて、いわば一種の財政破綻に陥った、こういうこともございますので、給付費の動向など、できるだけ詳細に把握していく努力が必要だと思っております。
 ただいま申し上げましたように、四月実施分につきましては、五月に請求があり六月に大体全国の実績がわかるということでございますが、介護保険の例で申し上げましても、平成十二年四月、二〇〇〇年四月から介護保険をスタートいたしましたけれども、四月の統計は相当、事業者の方もなれていない、請求漏れもあるとかいうことで不確定でございまして、介護保険の例でもノーマルオペレーションになりましたのは六月程度ではないかと思っております。
 そういったことも配慮しながら、私ども、六月、七月、八月、そういう実績について、給付費の動向、新制度のもとにおける開所日数やサービス利用の状況がどうなっているかというようなことについて把握してまいりたいと考えております。

○山井委員 これは余り悠長なことは言っていられないと思います。
 先ほども言いましたように、きのうも二千人の方々が集まっておられて、本当に、車いすの方を支えたり、必死になって、障害のある方とみんな地域で共生をしようとしていっている。この自立支援法が始まったらもう施設はやっていかれないんじゃないか、自分も首になるんじゃないか、そんな不安が高まっているわけですから、ぜひとも早急に実態を調査してほしいと思います。
 続きまして、それに関連して、この資料の二ページを見ていただきたいんですけれども、そして深刻なのは、それによって通所施設を退所してしまった人が出ているということです。これはできたてほやほやの調査ですが、昨日のフォーラムでも発表になりました。ここに書いてありますように、四月中旬の調査で、東京都セルプセンター、東京都社会福祉協議会、きょうされん東京支部などで調査実施したものであります。
 そこで、自立支援法に伴う退所等の影響、八十六カ所回答、三千百四人について調べたところ、既に退所をされたという方が十九人、日数を五日からもっと減らしていったという方が十九人、そして退所を検討している方が六十人。つまり九十八人の方が、日数を減らしたり、退所を検討したり、既に退所をされたということなんですね。
 考えてもみれば、十年、二十年前から、どうやったら障害のある人たちが社会参加できるのか、引きこもりや閉じこもりじゃなくて家から出てこられるのかということで、全国で作業所の運動や通所施設の運動が集まって、やっと地域に障害のある方が出てきたわけです。その方々が法律によって逆に通えなくなるということになったら、これはゆゆしきことだと思います。
 そこでお伺いします。これは東京の方々がやられた調査ですが、厚生労働省は、この四月施行によって通所施設、作業所等で退所された方々が何人ぐらいなのか、あるいは何%ぐらいなのか、その実態をどのように把握しておられますか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 障害者自立支援法の施行に伴う、今例えば通所施設の利用状況等についてでございましたけれども、先ほども御答弁申し上げましたように、施行後日も浅いこともございまして、詳細の把握は行っておりません。
 ただ、例年、例えば通所施設におきます退所の状況などは社会福祉施設調査等で把握しておりまして、例年の退所率というのは五・二九%というような状況でございますので、通所施設で年間五%程度の方がさまざまな理由で、死亡を除いてでございますが、退所されているということは確かでございます。
 また、今委員から御指摘の利用料の負担の関係につきましては、委員御案内のとおり、障害者等の家計に与える影響を十分考えまして、月ごとの負担の上限額を設定するとともに、その方の収入や預貯金の状況に応じて個別に減免するなど、きめ細かな負担軽減措置を講じさせていただいております。最大限の配慮を講じているところであり、サービスを受けることに支障のないようにというふうに考えております。
 いずれにしても、サービス利用につきましては、委員御案内のとおり、これまでの行政の措置ではなく、支援費制度以来、契約制度になっておりますので、利用者の方の選択によるものというふうに考えております。

○山井委員 そうしたら、把握をしていないんですか、何人ぐらいがやめられていって、やめることを検討しているのか。そして、いつごろまでに把握されるんですか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 障害者自立支援法施行後の施設利用者の状況につきましては、自治体のヒアリングを通じまして、まず現場の状況を把握してまいりたいと思っております。
 現在、自治体におきましては、先ほど来四月から実施されたと申し上げておりますが、委員御承知のとおり、新たに十月分の施行もございまして、障害程度区分判定等膨大な事務も実施しなければならない状況でございますので、自治体側の体制の状況も御相談しながら、利用者の動向等の把握をしてまいりたいと考えております。

○山井委員 これもそんな悠長なことを言っておられる場合じゃないんじゃないですか。退所した子供はどうなっているんですか。今まで施設では、家に閉じこもってそもそも家だけで面倒見られないからということで、作業所や通所施設に行っていたわけですよね。ところが今回行けなくなった。その子供はどうなっているんでしょうか。
 次に移らせていただきます。
 正直言いまして、こういう質問を取り上げるのは私は非常に気が重いんですが、これは厚生労働省も御存じかと思います。三月十一日、福岡市におきまして心中未遂事件が起こりました。障害のある娘さんがお母さんから殺されてしまった。そして、お母さんも両手をかみそりで切って、また包丁でおなかを刺して、無理心中を図った。
 そして、この三ページ目にありますのが、この心中事件に対する、刑を軽くしてほしいという嘆願書であります。少しだけ読ませていただきますが、無理心中未遂事件について、母親である容疑者が娘さんを殺害するに至ったのは、
 自分自身も体に障害を抱えていながら、重度の障害を持つ娘さんの介護をし、今後増えていくであろう肉体的負担への不安に加えて、障害者自立支援法成立に伴う介護サービス利用料の利用者負担の発生による家計の圧迫等により将来を悲観してのものと思われます。また、本件行為に至るまでに、複数の福祉関係者が容疑者本人からの相談を受けており、深く思い悩んでいた様子であったにも関わらず、政府が発表した制度の概要が曖昧であった為に十分な説明が出来ず、満足に問題解決の手助けができなかったことも、事件に至った原因の一つと考えられます。
ということで、この嘆願署名も四千人以上集まっているわけであります。
 私が言いたいのは、前途を悲観して、ただでさえ障害のあるお子さんを育てるということは保護者の方々、本当に御苦労をされている、その方々に対して、今回の自立支援法が間違ってもこういう心中事件、心中未遂事件の引き金になってはならないと私は思っているんですが、非常に失礼な質問かもしれませんが、厚生労働省としては、今回のこの事案というのは自立支援法が引き金になったというふうに認識されておられますか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 福岡市での御指摘の事件につきましては、現在裁判中であり、その事実の詳細については不明でございますが、五月二十五日の公判におきましては、母親は、行政側が負担額を七千五百円と説明したにもかかわらず、三万円になると思い込んでいたと検察側が指摘しているところであり、利用者負担についての誤解があったと報道されております。
 私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、きめ細かな負担軽減措置を講じておりますので、こうした事件が起こることのないよう、制度の一層の周知徹底に努めてまいりたいと思います。
 また、地域において、障害のある方やその御家族が利用者負担を含め相談できる体制の強化が重要であると考えておりまして、今回の法律でも、相談支援事業ということを市町村が必ずしなければならない事業として位置づけられておりますので、市町村の相談支援事業の充実強化も図ってまいりたいと考えております。

○山井委員 片や、バリアフリー新法で障害のある方々が社会参加、地域参加、もっと移動できるような社会にしていこうという議論があり、片や、今お聞きいただいておりますように、逆に、今まで通っていた作業所や通所施設に行けなくなってしまった。残念ながらお亡くなりになってしまったこの障害のある娘さんも、自立支援法の施行の前にそのサービスをカットしてしまわれたわけなんですね、自己負担増を心配して。
 そういう中で、本来は、バリアフリーの新法と、こういう障害者の方が町に出やすくする福祉サービスとは一体でなければならないと思っております。
 そこで、この資料の下に、新聞検索で調べたところですが、ことしの三月だけで、三月五日香川、三月十一日福岡、三月十二日愛知、三月二十八日山形、三月二十九日長野県というふうに、障害児者に関連した心中事件が五件起こっております。昨年の三月は一件でした。私は、もしかしたらこれは、障害者自立支援法に関連して、やはり前途を悲観したのではないかというふうなこと、これはわかりません、私もまだまだそこまで調べておりませんが、そういう心配はしております。
 厚生労働省に私がお願いしたいのは、もちろんこういうのは複合的な原因ですから、何が原因かなんてそんな簡単にわからないかもしれません。しかし、間違っても、この障害者自立支援法が施行されることを契機に障害者児を巻き込んだ心中事件がどんどんふえていったということになったら、これは大変なことになりかねない。ですから、私はきょうこの問題を取り上げさせていただいているんですが、厚生労働省にお伺いをいたします。
 先ほども言いましたように、初めての自己負担の請求書が来たのが五月末、それを見て私の知り合いの保護者の方々もショックを受けておられます。そういう中で、今後、まさかこういうふうに障害児者が犠牲になる心中事件がふえるということはございませんか。厚生労働省、いかがですか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 障害者自立支援法で目指しておりますのは、障害者の福祉サービスを拡大するようにということでやっておるわけでございまして、現時点では障害者の福祉サービスは大変地域間格差が大きくて、都道府県の間でも最大のところと最小のところと七・八倍の差があるということで、障害サービスが全国に均てんしていないという状況でございます。
 そういった中で、障害福祉サービスを充実するということで、市町村に今年度から障害福祉計画をつくっていただきますし、二十三年度まで、国としては、サービスの目標、訪問サービスも一・八倍、日中活動サービスも一・六倍にするという目標を掲げております。
 また実際に、障害者自立支援法で、福祉サービスの費用も国費で一一%十七年度に比べて増加するということで、サービス量をふやそうとしているわけでございまして、そういう努力が障害を持った御家族の介護負担というものを軽減し、また、障害者の方の社会参加を促進するものと考えておりますので、不幸な事件というものが生じないことに資するもの、こういうふうに考えております。

○山井委員 私は、中村局長を先頭に、厚生労働省の方々が障害者のために精いっぱい頑張っておられる、本当に寝る間も惜しんで頑張っておられること、本当にそのことにはある意味で敬意を表している部分はあるんです。
 しかし、残念ながら、やはりこういうものは問われるのは結果なんです。幾らいい法律をつくっているつもりだ、サービスをふやしたいという思いで法律をつくったといっても、もしかして心中事件がふえたとしたら、今まで通所施設や作業所に通っておられた方々が、あるいはグループホームにおられた方々が利用できなくなっているとしたら、残念ながら、やはりこれは見直さないとだめなんじゃないですか。
 だから、私がきょう、実態はどうなんですかと聞いているのは、今局長が答弁されたように、サービスがふえていっているのか、逆に減っていっている地域あるいは施設があるのか、まずそのことをきっちり把握しないと変えられないわけです。過ちを改むるにはばかることなかれという言葉がございます。私も実態をきっちりまだ把握しておりませんから正確なことを言えませんので、ぜひとも実態把握を急いでもらいたいと思います。
 それで、ぜひともお願いしたいのが、このような通所施設や作業所に通えなくなった障害者や障害児の方がその後どうしているのか、そのこともぜひとも調べていただきたい。その方が家族とのトラブルで虐待事件が起こったり心中事件が起こったりしたら、これはもう大変なことになりますよ。退所されていったケース、残念ながら全国でどんどん出てきています。そういう、利用者が退所してどういう暮らしをしているのか、そのことも調査していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来申し上げていますように、障害者自立支援法の施行は四月からでございます。まだ四月分の請求事務も終了していないという状況でございます。
 私ども、答弁申し上げておりますように、施行状況についてはウオッチしていく、注視していく。給付費につきましては、前の制度は破綻したわけでございますので、給付費について一番心配しておりますのは私どもでございますので、きちんと見てまいりたいというふうに思っております。
 それから、サービスの利用をやめられた方、先ほどの委員の御指摘の資料では〇・九%程度であったと思いますけれども、そういった方々についてどうなっているか。これは先ほど申し上げましたように、市町村に相談支援事業が義務づけられておりますし、また、成年後見制度など権利擁護事業も市町村がやらなきゃならない。その財源としては、地域生活支援事業ということで、障害者自立支援法の財源の枠内で市町村ができるようになっておりますので、私ども、市町村の方にそういう状況の把握に努めるよう申してまいりたいと思っております。

○山井委員 ぜひとも御理解いただきたいのは、これを早急に実態把握して、必要な見直しを早急にやる。十月から新事業体系がスタートするわけです。そのときのタイミングで私は改善すべきだと思います。そうすることによって、一件でも二件でもこういう不幸な事件が事前に防止できるかもしれないんですね。そのことは強く要望をしたいと思います。
 そして、グループホームについてお伺いしますが、施設ではなくて地域社会で障害者の方々が暮らすための一番重要なサービスがグループホームでありますが、残念ながら、この自立支援法施行によって、私の知り合いの方々が計画していたグループホームも頓挫をしてしまいました。その理由は、報酬額が低過ぎる、そして、今まではホームヘルプをグループホームのサービス以外に別枠で利用できたけれども、原則として今度の法律ではそれは利用できなくなった。重度の方々が利用できる……(発言する者あり)

○吉田(六)委員長代理 では、ちょっと時計をとめて。――山井君、質問を続けてください。

○山井委員 こういうふうな大事な人の命のかかった議論はぜひ聞いていただきたいと思います。
 それで、こういうふうなグループホームの問題、こういう計画が頓挫したケースもふえてきているわけですけれども、このような状況を厚生労働省はどう把握しておられますか。たしかこの法律は、グループホームなどをふやして、地域で障害者が暮らしやすくなるようにという目標でできた法律であったはずでありますから、それが逆に、この法律によって計画が頓挫しているケースが出ていたら、それは趣旨が正反対なわけですから、そのような実態、厚生労働省としてはどのように把握しておられますでしょうか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、グループホームやケアホーム、これは新しく障害者自立支援法に位置づけられましたけれども……(発言する者あり)

○吉田(六)委員長代理 静粛に。答弁中ですから。

○中村政府参考人 それの整備計画につきましては、先ほど申し上げましたように、障害者自立支援法で市町村の障害福祉計画がつくられます。その障害福祉計画の中で十八年度から二十年度までの整備計画も定められますので、市町村の方は、法律上は十月からこの作業が行われるということになりますので、その市町村の整備計画の積み上げで、全国のグループホームやケアホームの整備状況が把握できる、こういうふうに考えております。

○山井委員 整備状況の把握というより、そういう、計画していたのがこの法律によって頓挫しているケースがふえているわけですので、早急にやっていただきたいと思います。
 そろそろ時間ですので最後になりますが、やはり障害者の御家族あるいは障害者を支えておられる方々の御苦労というのは、本当にこれは大変なものがあります。
 そんな中で、先週日曜日も私は保護者の方々と話し合いをしましたが、なぜこの法律は自立支援法という名前なんですか、自立を阻害しているじゃないですか、そういう声も聞きました。また、昨年の法案審議の中で尾辻大臣が、この法律はサービス水準を落としません、サービスの利用抑制を招かないようにしますと言っていたにもかかわらず、これだけサービス水準が低下して、利用抑制が自分の周りでは起こっている、これは国会での答弁というのは何だったんですか、そんな声も聞きました。
 やはり、十月から新事業体系というのがスタートするわけですから、ぜひともそれまでに早急に実態調査をして、一日も早く直すべきところは直していかねばならない、そうしないと、虐待事件、心中事件がふえていったら、本当にこれはもう国会全体の大変な責任に私はなってくると思います。
 バリアフリー新法ということで、障害者の方々が移動、外出しやすい、そういう方向性を目指すと同時に、ぜひとも、障害者に向けての福祉サービスも、それに沿った自立や社会参加を支援するものにしていっていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

Posted at 2006年06月09日 固有リンク | Comments (1) | TrackBack

2006年6月

2006年6月

決算行政監視委員会第一分科会議事録

164-衆-決算行政監視委員会第一…-2号 平成18年06月06日
  ○産業廃棄物問題(加茂町、京田辺市)
  ○城陽山砂利採取跡地の埋め戻し問題


○山井分科員 民主党の山井和則でございます。
 これから三十分間、産業廃棄物の不法投棄の問題、また、私の地元にございます城陽市の非常に広大な山砂利採取跡地の整備の問題、この問題を主に中心にお伺いをしていきたいと思っております。小池百合子環境大臣、そして答弁をしていただく方々、どうかよろしくお願いを申し上げます。
 まず、廃棄物事犯の検挙件数というグラフがございます。平成十三年から十七年の間にどんどんふえていっているわけであります。産業廃棄物の不法投棄の問題、これは全国的な規模で今非常に深刻な問題になっております。一方では、環境省の取り組みもございまして、多くの悪質な事例が検挙されているという点もございます。
 私の地元は京都南部、京都六区でございますが、ここでも昨年からことしにかけて、三カ所でこのような問題が起こっておりますので、順番にお伺いをしていきたいと思っております。

 まず第一問目、小池大臣にお伺いしたいと思っておりますが、加茂町のこと。全国の不法投棄の現状というのはまた後でお伺いするとしまして、まず最初に、具体的な加茂町の事例をお伺いしたいと思います。
 昨年十月に発覚をいたしまして、大手化学メーカーの石原産業が土壌埋め戻し材フェロシルトをゴルフ場に五万六千トン埋めておった、そして、その中から有害な六価クロムというものが検出されたわけであります。
 問題は何かといいますと、このフェロシルトは、二〇〇三年に三重県で、安全基準を満たしているということでリサイクル製品に認定をされていた。しかし、加茂町の現場では、これはちょっと怪しいんじゃないか、大丈夫なのかという声はあったんですけれども、なかなかこの町だけではチェックする体制もなくて、結局発見が遅くなってしまったわけであります。
 そこで、小池大臣にお伺いしたいんですが、こういう環境汚染対策というのは、市町村だけではなかなか難しい部分がございます。また、都道府県にまたがっている事例もふえております。このようなことに関して、国としてもさらに市町村や都道府県を支援していく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○小池国務大臣 御質問にもあったかと思いますけれども、産業廃棄物は、実際の加茂町の事例をとりましても三重県内の業者からのものでございます。よって、広域的に移動することが多いというのがまず大きな問題かと思います。そのために、適正処理を確保するために都道府県、政令市間の連携が重要であるということは言うまでもないかと存じます。
 また、環境省においては、昨年十月に、全国七カ所に地方環境事務所を設置させていただきました。これは、自然の保全という観点と、それからこういったごみの問題、廃棄物などの問題といったことを取り締まる、そういった環境事務所をまとめて各地に七カ所に置かせていただいたということでございます。その地方事務所を活用いたしまして、例えばブロック会議などを開催いたしまして、都道府県、政令市間の情報交換や連携の強化を図っていくというのが、一つ、国として支援につながるのではないか、このように思っております。

○山井分科員 もちろん時代は地方分権の時代ではありますけれども、こういう環境汚染の問題は非常に深刻な後遺症を地域に残しますので、やはり国としての支援、連携の支援ということをお願い申し上げたいと思います。
 それとも関連するんですが、その近所の京田辺市でも、昨年の五月に、産廃処理業者ら八人が京都府警に不法投棄で逮捕されたという事件が起こっております。農地に十トンダンプ千二百台分が運び込まれまして、リサイクル処理されていない産業廃棄物の建設汚泥だったとして、京都府警が不法投棄の疑いで逮捕したわけであります。このことに関しましても、建設汚泥などに固化剤を混ぜ処理した混合廃棄物の処理土を農地に搬入した業者が逮捕されているわけで、現在も係争中であります。このことに関しては、業者はリサイクル製品だと主張しておりまして、片や逮捕した側は廃棄物だというふうに争っているわけでございます。この事案について、環境省の認識はいかがでしょうか。

○小池国務大臣 先ほどのフェロシルトのケース、それから今の京田辺のケースなど、これはいわゆるリサイクルのものなんだ、だからここに置いてあるんだと。それから、廃棄物というのは無価値であるからこそ廃棄物という名前がつくわけでありますけれども、そこにあえて何らかの価値をつける例など、いろいろな例がございます。そのために、リサイクルと称して廃棄物処理法の規制を逃れるというような不法投棄などの不適正処理を引き起こす事例は、残念ながら多く見られるわけで、これについてはまことに遺憾ということでございます。
 そこで、環境省といたしましても、廃棄物か否かということの判断に当たっての考え方をもう少し明確にすべきではないかということから、また、現場での厳格な対応が可能となるように努める必要性があるということから、幾つかのポイントをまとめたところでございます。例えば、建設汚泥に対して、それから産業廃棄物全般に対してということで、判断の基準となる考え方を示しまして、通知させていただいているところであります。物の性状、排出の状況、市場性があるかないか、取引価値があるかないか、占有者の意思はどうなのかといったようなことがそのポイント、判断の目安でございます。
 こうやって判断をより明確にすることによりまして、こういったこれまでのような事案が発生しないように、自治体との連携を密にしながら、厳正に対処してまいりたいと考えております。

○山井分科員 まさに、製品なのか、産業廃棄物なのかリサイクル製品なのかという部分が市町村や都道府県レベルでもなかなか判定がつかないケースが非常にふえているわけでありまして、このことについて、より明確な指針が必要になってくると思っておりますが、次に、その隣の城陽市の大規模な山砂利採取跡地のことについてお伺いをしていきたいと思っております。
 実は、今お話しをしました京田辺市の事件の公判の中でその業者が、隣の城陽市の山砂利採取跡地にも同じ製品を、同じ処理土を埋めた、そちらは何も言ってきていないのに、なぜ京田辺だけこんな事件になるんだということを言ったわけでありまして、えっ、この城陽市にも同じものが捨てられているのかということで、また大問題になりました。
 そんな中で、先月五月十八日に、十トンダンプ三千台分を京都府が産廃と認定して、委託基準法違反で業者を告発したわけであります。またここでも、業者はリサイクル製品と主張しておりますが、市民としては非常に心配に思っている部分であります。そこで、この点について城陽市は京都府に判断をお伺いし、京都府はまた環境省に相談をしたわけでございます。
 そこで、お伺いしますが、京都府から環境省にこの処理土の廃棄物性について意見照会があったわけでございますが、どのように環境省は回答されましたでしょうか。

○由田政府参考人 お答えさせていただきます。
 環境省では、平成十七年十二月に、京都府より本案件の廃棄物該当性の解釈につきまして相談を受けております。その後、環境省と京都府は連携を密にいたしまして、京都府は、廃棄物処理法に基づきます報告徴収や立入検査を行いまして状況を明らかにしたわけであります。
 京都府におきましては、立入検査などの結果をもとにいたしまして、昨年七月に環境省が示しました廃棄物該当性の判断の考え方に基づきまして、先ほど大臣の方からも御答弁しましたように、物の性状、排出の状況、市場性、取引価値の有無、占有者の意思の各要素に関する検討を行いました。その上で、本事案におけます搬入物につきましては、総合的に勘案して産業廃棄物に該当すると解してよろしいかとの照会を本年三月に行ってまいりました。
 環境省は、本年翌四月に、これに対しまして、貴見のとおりという回答をいたしております。

○山井分科員 そのような御回答をいただいたわけなんですけれども、このことが地元でも、地下水は大丈夫なのかとか、非常に大きな波紋を呼んでいるわけであります。
 ここに地元新聞、洛南タイムスと城南新報の記事がございます。「山砂利採取場に産廃搬入で業者告発」「搬入現場からpH十一の高アルカリ性」。あるいは「地下水への影響心配する声…」というのは城南新報に。洛南タイムスには、一万六千台のうち立証容易な三千台分を告発したというような記事も出てきておりまして、地元では、今後徹底したチェック体制が必要だというような議論にもなっているわけであります。
 そこで、この城陽市の山砂利採取跡地について、少しパネルをお見せしながら、ぜひこの事情を御理解いただきたいと思うんですが、城陽市は、八万一千人の市民が住んでおりますが、そのうち一二%がこの山砂利採取跡地になるわけですね。非常に広大な面積であります。小池大臣にも御理解いただきたいのが、東京ドーム九十個分の広さであります。そしてまた、これは山の砂利をとっただけではなくて、水平からさらに穴をどんどん掘っていって、非常に良質な山砂利がとれたということで、その掘り込んだ、埋めねばならない容積も東京ドーム十三杯分ということになっているわけです。けた外れの広大な土地なわけなんですね。
 それで、常識的に考えてみても、当然安全な土で埋め戻さないとだめなわけであります。未来の子供たち、孫たちにとっても非常に重要な緑であり、財産であり、また地下水もあるわけであります。ここをどういうふうに埋め戻していくのかというのが、私も城陽市に事務所を構えておりますが、城陽市民にとって切なる願いであり、また大きな不安となっているわけなんですね。
 この山砂利採取跡地は、昭和三十六年に採取が始まりまして、良質の山砂利があるということで、建設骨材として近畿圏にずっと出荷されまして、例えば一九七〇年の万博、そして新幹線、そしてまさに七〇年代、八〇年代の関西圏の公共事業、高度成長を支えてきたわけです。しかし、その一方では、自然環境や景観が破壊されて、ダンプカーがもうびゅんびゅん走って、排気ガス、騒音、振動、また残念ながら交通事故も当然起こってしまっているわけであります。
 そういう山砂利採取跡地をこれからどうしていくのか。実際、もう採取が終わった地域に関しては、これから埋め戻しをどんどんどんどんやっていこうというふうになっているわけであります。そして、このことに関しては、昨年七月一日の京都府議会でも、北尾茂議員が、京都府と城陽市と近畿砂利協同組合の三者で構成する公社の連携を強化して、搬入残土の一元管理を厳格に行うべきだというようなことも訴えまして、その方向になっているわけでありますけれども、とにかく、これから埋め戻していっても三十年はかかると言われている。これをどうやって埋め戻していくかというのが地元にとって非常に重要な観点であります。これはまさに環境の問題でもあると私は思っているわけです。
 そこで、経済産業省にお伺いをしたいと思います。
 このような広大な山砂利採取の跡地というのは、全国で何カ所ぐらい事例があるんでしょうか。このような東京ドーム九十カ所分、四百二十ヘクタールの広さ、また東京ドームで十三杯すっぽり入るようなこの容積ですよね。こういうようなものも含めて、全国でこのような事例というのは幾つぐらいあって、また、この城陽の山砂利採取跡地というのは何番目ぐらいに広大な土地なのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。

○塚本政府参考人 お答えさせていただきます。
 先生、全国でどのくらいあるのかというお問い合わせでございますけれども、まず、この山砂利の採取につきましては、砂利採取法に基づきまして、都道府県知事が基本的な権限を有しているということで、当省は、毎年、各都道府県知事の方から業務状況報告書というものをいただいておりまして、そういう中で砂利の採取状況を把握させていただいています。
 それで、お尋ねの城陽市につきましては、十六年度の報告書によりますと、これは山砂利の採取場の業務状況報告書ということでございまして、現在稼働中のものにつきましては、約二百十ヘクタールということでございます。この中で最大のものが五十八ヘクタールということで、一つで東京ドームの十二個分、合わせて二百十ヘクタールということで、先生お尋ねの採取跡地も含めますとさらに大きく上回るというふうに考えております。
 それで、この地域は特に隣接して開発が行われているということで、一カ所が五十八ヘクタールでも、この城陽市で現在十五カ所ぐらいの稼働をやっておりますけれども、それがかなり隣接しておりますので、先生御指摘のように大変広大な土地がこういう砂利採取地あるいは跡地ということでございます。
 申しわけございませんけれども、全国でどの程度かということにつきましては、具体的な数字というのをちょっと今把握してございませんけれども、引き続きその辺につきましては集計をしてみたいと思っております。

○山井分科員 もう一言お伺いしますが、集計はぜひとも引き続きやっていただきたいんですけれども、そんなたくさんあるんですか、こういう大規模なものというのは。

○塚本政府参考人 かなりございまして、例えば、こういう砂利の採取が一番多いと言われております千葉県の君津市あたりで、一つで二百二十ヘクタールというようなものもございます。百二十ヘクタールのものもございますけれども、城陽市のものは、一番大きいものが五十八ヘクタール、それで、跡地という意味ではさらに大きなものがあるということで、全国規模でも相当な大きなものだというふうに承知しております。

○山井分科員 全国規模でも相当に大きなものであるということでありまして、何を言いたいかというと、これだけ大きなものになると、一城陽市あるいは京都府の対応の限界をかなり超えているんじゃないかということであります。このことについては本当に、城陽市、京都府一丸となって今まで取り組んでいるわけですけれども、やはりこの地域の良質な山砂利が、近畿の、関西の公共事業を支えてきたという、ある意味で自負もあるわけですね。
 そこで、経済産業省にあわせてお伺いしたいんですけれども、では、ほかの山砂利採取のこういう大規模な跡地というのはどのような形で修復をやっているのか、そのような事例がございましたら答弁をお願いいたします。

○塚本政府参考人 埋め戻しでございますけれども、具体的には、各都道府県知事が実際の採取計画というものを個別に認可しておりますけれども、その際に、個別にその土地土地の事情に合わせて、跡地をどうするかということを、措置の方法も定めております。個別の採取計画ごとにそれなりに異なってはいるわけですけれども、土砂崩れ等の災害防止の観点等から、一般的にはやはり埋め戻しということが多いというふうに我々承知をしております。

○山井分科員 埋め戻し、まさに今この城陽の跡地でもやっているわけですけれども、繰り返しになりますが、東京ドーム十三杯分、そして三十年ぐらい今後かかるんではないか。安全な土をどう入れていくのかというのは、逆に今公共事業が減っている面もございますから、なかなかこれは大変な部分がありまして、その中に万が一でも有害物質や産業廃棄物が紛れ込んでは、本当に大変なことになるという危機感を持っているわけであります。
 そこで、続けて経済産業省にお伺いしたいんですが、城陽市民の気持ちとしたら、まさに七〇年代、八〇年代の、万博、新幹線、公共事業、関西を自分たちが支えてきたんだ、それで、先ほども言ったような、景観の破壊、ダンプ、そして排気ガスの問題、振動、いろいろなものでやはりそれに貢献してきたんだ、関西のために自分たちがという思いがあるわけなんですね。まさに産業の発展に寄与してきた。
 そういう意味では、経済産業省としても、ぜひともこれからの跡地整備にやはり何らかの応援をしていただきたいというのが、もう後は京都府と城陽市でやってよということではなくて、応援をしていただきたいというのが、やはり市民としての思いなんですね。その点について、経済産業省、いかがでしょうか。
    〔主査退席、前田主査代理着席〕

○塚本政府参考人 先生のお尋ねの、跡地利用等について経済産業省としての何か手助けはないかということでございます。
 先生もおっしゃいましたように、一義的には事業者と都道府県の方でどうお考えになるかというところでございますけれども、足元ではちょうど告発中ということもあるので、我々、この事案につきまして注視をしているということですけれども、先生の御指摘のように、京都府、それから城陽市、事業者が力を合わせて、自然環境と調和した町づくりということで、跡地の修復や有効利用に取り組んでおられるということですので、当省といたしましても、このような取り組みを注視しております。
 当省が担当しております分野で都道府県等からの具体的な御相談があれば真摯に対応をしてまいりたい、かように考えております。

○山井分科員 これは本当に一年、二年の問題じゃなくて、五年かかろうが十年かかろうが、やはりいい跡地整備というのをやっていきたいと思いますので、ぜひともお力をおかりしたいと思います。
 同時に、国土交通省にもお伺いをしたいと思います。
 まさに、ここを埋め戻していくためには、品質のよい土というものも必要になってくるわけであります。そして、この四百二十ヘクタールという広大な土地から考えても、都市計画上も非常に重要でありますし、景観という面もございます。
 そういう意味で、まさにこの城陽の山砂利採取跡地が過去、関西の公共事業を支えてきて、そのためにこういう大きな跡地になってしまったんだということにもかんがみ、例えば国の公共事業で出てきた土を優先的に城陽に持ってきてもらうというようなことも含めて、ぜひとも今後、山砂利採取跡地の整備、埋め戻しということについて御支援をいただきたいと思いますが、国土交通省、いかがでしょうか。

○川本政府参考人 公共事業において発生します建設発生土につきましては、これを有効に利用するということが大変重要だというふうに考えております。そのことが新しい土砂の採取というものを抑止することにもなりますし、発生した土というのをうまく使って、先生が御指摘のように、新しい町づくりという可能性も開けてくるというふうに考えております。
 私ども、平成十五年十月に建設発生土等の有効利用に関する行動計画というものをつくりました。これによりまして、現在、各地域ごとに建設副産物対策の連絡協議会というのをつくっております。これは、私ども国土交通省の地方支分部局、さらには農水省さんの地方支分部局、あるいは県、政令指定市、関係団体の方にも入っていただいておりまして、これによって、毎年度、各発注者の間で、発生土がどれくらい出るのか、どういう利用が可能なのかという調整を進めさせていただいているわけでございます。
 御指摘のような山砂の採取跡地の修復につきましても、事業の中身によって当然そうした土が使えるようになるというふうに考えておりまして、私ども、この協議会なんかを通じまして発生土の利用調整をやりまして、それによって、新しく出てきた土というものをこの地でうまく使っていただくということについて御支援をしてまいりたいと考えております。

○山井分科員 ぜひこの跡地修復について国土交通省としても御援助をいただきたいと思っております。
 ここに城陽市の都市計画のマスタープランもございますが、ここに出ております黄色い地域がまさに山砂利採取跡地の地域でありまして、こういう第二名神の予定もなっておりますけれども、やはりここを何としても、五年かかろうが十年かかろうが、もう一度きっちりとここで町づくりをしていきたい、今の本当に荒れた形の跡地を子供や孫のためにもう一度すばらしい地域に変えていきたいという思いを持っております。
 そこで、また小池大臣にお伺いをしたいと思います。
 このように、私たち城陽に住む者の悲願として、この地域をもう一度修復していきたい、五年、十年かけてでもやっていきたいという思いを持っております。そのときに何が一番心配かというと、計画が決まって、では、公園にしよう、あるいは町づくりをしようとなったときに、いざ整備してみたら産業廃棄物が出てきた、有害物質が出てきたということでは、これは取り返しがつかないことになってしまうわけですね。この部分はこれだけ広大な土地であるわけですから、城陽市、京都府だけではなかなか力の及ばない部分もございます。
 そこで、お伺いしたいのですが、このような広大な土地の埋め戻しにおいて、間違っても産業廃棄物などが紛れ込まないようにしていく、そのために環境省からも援助、御指導をいただきたいと思いますが、環境省として、いかがでしょうか。

○小池国務大臣 そのために、廃掃法、廃棄物処理法があるわけでございまして、その改正もそれぞれの国会でさせていただきました。その結果、罰則であるとか処理業者の許可要件、排出事業者の責任などをどんどんと強化させていただいているわけでございます。
 不法投棄対策というのは、不法投棄というのはそもそもイリーガルで、だからこそ不法投棄なわけでありますけれども、責任を逃れるために、わざわざ自分で会社をつぶしちゃったりして、どこかに肝心な人は逃げちゃったりするケースなどもございます。ですから、これからまた埋め戻しなど、これからのことであるならば、廃棄物処理法をよりしっかりと運用、活用していただいて、またそういったことのないように、ある意味では市民の目といいましょうか、そういったことを光らせていただいて、もちろん京都府、そして城陽市などにそういった点もお届けになっていただく。
 そして、それでも、もっとやってほしい、国に対してもより厳しくということであるならば、不法投棄一一〇番というのを私どもはつくっております。これは、全国各地から、そういった不法投棄のおそれのあるところについて、市民の皆さんが直接国に対しても物を言える、そういった受け皿をつくらせていただいたわけでございます。
 そういったこともございますし、それから、最初に御質問がございましたように、何が廃棄物なのかということでしょっちゅうもめるわけでございます。そういったことで、中間のすき間をつくろうというのが悪徳の処理業者ではないかと思いますけれども、その際に、判断の基準というのをより明確にするということで、先ほどもお答えさせていただきましたように、幾つかの明確な判断基準ということもつくらせていただきました。
 これからのそういった町の景観の取り戻し、自然の取り戻しというのは、大いなる市民の意思も必要でございましょうし、また、これまでの法律などもしっかり活用していただければ、このように思っている次第でございます。

○山井分科員 引き続きお伺いしたいんですが、環境省としても、まさにそういうバックアップをしていただきたいと思います。
 その中で、城陽市民の一番切実な点は、やはり地下水の問題なんですね。
 今回の事件でも、地下水は大丈夫なのかと。城陽市民八万一千人の水道水の八割がここの地下水から来ているわけでありますね。
 恐ろしいのは、十年後、二十年後になって、地下水が毒されていることにもしなったとしたら、私たち議員としても、また大人としても、一体何をやっていたんだ、何でもっときっちりと取り締まらなかったのかと、本当に後世からの鋭い批判を浴びるわけであります。そういう意味では、後になって、有害物質が入っていたということで、万が一でも地下水が侵されるということになったら、私たちは子供の世代に対して申しわけなくて、これは本当に通らないわけでございます。
 そこで、小池大臣に改めてお願い申し上げたいのは、安定的に環境省が京都府や城陽市と協力をしながら、地下水については安全基準が今後もしっかりと守られるように指導をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○小池国務大臣 水の問題というのは毎日のことでございますので、大変御不安なことだろうと思います。
 そこで、京都府によりますと、城陽市の不適正処分現場の周辺におきまして地下水の水質には異常は認められていない、このように京都府から聞いております。
 また、現場に投棄されました廃棄物でございますが、土壌の環境基準に定めます二十六項目の有害物質すべてについて環境基準に適合しているということでございますけれども、しかしながら、投棄されました廃棄物のpHが高いということから、周辺地下水への影響の防止には万全を期しまして、事業者に覆土などの措置を実施させるという旨のことも、あわせて京都府から聞いているところでございます。
 いずれにいたしましても、京都府、城陽市が周辺地下水への影響について継続的な監視を行われるということと同時に、京都府並びに城陽市に対しまして、環境省といたしまして、国として適切に助言をしてまいりたいと考えております。

○山井分科員 ぜひとも、これからも安全な水を守るために、環境省としても応援をお願いしたいと思います。
 最後になりますが、今述べましたように、特にこの城陽のケースは、繰り返しになりますが、関西の公共事業をずっと支えてきた、本当に近畿のために貢献してきたわけであります。四百二十ヘクタール、東京ドーム九十カ所という広大な土地が、かつ京都南部という関西のへそに当たる地域にあるわけであります。
 そういう意味では、きょうも、国土交通省、経済産業省、環境省にお伺いしましたが、ぜひとも国家的なプロジェクトとして、国を挙げて、こういう地域の跡地整備というものについても、これからも長い目で応援をしていただきたいと思っております。
 最後に一言、小池大臣からコメントをいただいて、終わらせていただきます。

○小池国務大臣 今、循環型社会の構築ということは環境問題の二本柱のうちの主要なものの一つでございます。各地で、不法投棄の問題、これらの不安がより軽減、ベストはなくなることでございますけれども、それらの対策に対しまして必要な施策を国とそれから地方自治体とがしっかり連携をして行ってまいりたい、このように考えております。

○山井分科員 どうもありがとうございました。

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2006年6月

2006年6月

厚生労働委員会議録(がん対策基本法提案理由説明)

164-衆-厚生労働委員会-27号 平成18年06月02日

○山井議員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、民主党提出のがん対策基本法案について、提案の理由及び法案の概要を説明いたします。
 本法案提出後、二カ月がたちましたが、やっと本日、がん対策基本法の趣旨説明ができることに感激をいたしております。
 命を救うことが政治家の仕事であると、我が党の山本孝史参議院議員は去る五月二十二日の参議院本会議場で演説をされました。しかし、日本の政治は人の命を救うために十分なお金を使ってきたでしょうか。死因トップのがん対策に十分なお金を使ってきたでしょうか。
 政治とは人の命と尊厳を守ることであります。その意味でも、死因第一位であるがんの対策は、国家の最優先課題とし、首相をトップとして行うべきであります。

 アメリカでがんによる死亡率が減っているのに、なぜ日本ではふえ続けているのでしょうか。アメリカでも、一九七一年にキャンサーアクト、がん対策法が制定され、がん対策が一気に進み、がんによる死亡率も低下しました。つまり、がん対策は政治の決断にかかっているのです。
 厚生労働省の予算の範囲内で総花的にさまざまな事業に予算を少しずつふやしても、国際的に大きく立ちおくれている日本のがん対策を一気に進めることはできません。予算獲得のためには根拠となる法律が必要であります。
 昨日発表された二〇〇五年の統計でも、がんは死因のトップであり、年間三十二万人、国民の三人に一人ががんにより亡くなっており、がんはまさに国民病であります。
 しかし、これまでの政府の対応は、多くの患者やその家族の期待にこたえておらず、患者の不安や苦悩に寄り添い、積極的に患者の求める情報を提供、開示し、問題を共有するという姿勢が欠けていました。従来どおりの微々たる財源投入では、いつまでたってもがん対策は遅々として進まず、がん治療の地域間格差、病院間格差は広がるばかりです。
 そして、患者やその家族は、不安と悩みに苦しみながら、がん難民となって、もっとよい治療法があるに違いないと、良質な医療と的確な情報を求めて各地をさまよい続けることになります。
 例えば、ある乳がんの患者は、半年の間に二度、胸にしこりが発見されましたが、良性と診断され、三度目に悪性、それも肺にまで転移していると診断されました。その後、胸の切除手術。しかし、次の診断を受けた病院では、その切除手術は必要なかったと診断され、その女性はショックで涙が出てとまらなかったそうであります。
 実際、国立がんセンターの調査でも、がんセンターを受診した乳がん患者のうち、それまでに基準に近い治療を受けていた患者は四九%にすぎず、二四%はかなり基準から外れた治療を受け、二七%は逆に治療でがんが悪化していました。このような状況の中で、先進国日本で、がん患者はよりよい治療を求めてさまよい、がん難民となっているのです。
 このようなおくれたがん対策の現状を放置してよいはずがありません。全国どこでも一定レベルのがん治療が保障されるべきです。
 民主党は、がん対策を総合的かつ一元的に強力に推進するためには、今こそ国家を挙げて、がん対策の基本理念、国及び地方公共団体の責務、基本的な施策等を規定した法律が必要であり、本法案を提案いたしました。このがん対策基本法にのっとり、日本の専門医の力を総結集し、標準治療の確立と充実、早期発見、予防医療の推進、専門医の養成のため、人と財源を集中投入し、国民の命と尊厳を政治が守りたいのであります。この法律によって我が国のがん医療を飛躍的に前進させることができます。
 ただし、がん対策だけが進めばよいと考えているのではありません。日本の医療の問題点の多くががん対策のおくれに集約されています。がん対策基本法の制定を突破口として日本の医療を患者中心の進んだものにしたいという願いを込めて、法案を策定いたしました。
 次に、法案の概要を説明いたします。
 第一に、基本理念として、今苦しんでいるがん患者に対して病状や治療方法について適切な説明がなされることにより、がん患者の理解と自己決定に基づいたがん医療が提供されるようにすること、がん医療に関する最新の情報に基づいた適切ながん医療が提供されるようにすること、外国において有用であると認められたがん医療が日本でも提供されるようにすること、がん医療の提供に当たって可能な限り苦痛を軽減するとともに、日常生活の質をできる限り良好な状態に保つように配慮すること、また、がんに関する調査研究を促進し、がんの予防、診断及び治療に関する方法の開発を行われるようにすることを定めます。
 第二に、国は、基本理念にのっとり、積極的にがん対策を推進し、地方公共団体は国と協力しつつ、当該地域の状況に応じたがん対策を推進することとし、政府は、がん対策を実施するために必要な法制上または財政的措置を講じなければならないことといたします。
 第三に、基本施策として、地域格差によるがん医療格差が生じないようにするため、つまり、国及び地方公共団体は、がん患者が日本じゅうどの地域に住んでいても、がんの状態に応じた適切な医療が受けられるようにするため、医療機関の整備、がん医療にかかわる医師、看護師その他の医療従事者の養成、がん登録の実施、がん情報ネットワークの構築、緩和医療の提供の確保を行うことといたします。
 第四に、がん対策を総合的かつ計画的に推進するために、首相の国民の命を守ることの強い思いを国民に示すために、内閣にがん対策推進本部を設置することといたします。
 第五に、がん対策推進本部は、毎年がん対策計画を公表し、医療機関の整備の推進、がん医療に関する客観的な評価、がん医療に携わる医師及びその他の医療従事者の養成、がん登録の実施、がん情報ネットワークの構築、適切な緩和医療、日常生活の質の保持、がんに関する調査研究、がん検診等について講ずべき施策を定めたがん対策の推進に関する計画を作成、公表し、三年ごとに計画を更新することといたします。
 なお、がん対策には一刻の猶予も許されないという切迫した現状にかんがみ、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとします。
 以上が、本法案の提案理由及びその概要です。
 がん患者の方々からも、一日も早くがん対策基本法を成立させてほしいと切々たる要望を受けています。しかし、財源も十分に伴わない、つまり、法律ができてもがん対策が今まで以上に進まないような法律では、がん患者の方々の期待を裏切ることになります。
 がん対策基本法は、決して政治家や政党の得点稼ぎや自己満足であってはなりません。そのためにも、十分な財政措置を伴い、しっかりした中身のある法案にせねばならないという基本姿勢で本法案を策定しました。
 がん対策については、今年度の政府予算は百六十八億円ですが、本法案では財政上の措置は五百億円と見積もっております。
 なお、がん対策は党派を超えて行うべきものであり、本法案についても、必要であれば修正協議に応じる用意はあります。
 我が党の医療制度改革チームの座長であった今井澄参議院議員も、がんによりお亡くなりになられました。
 そして、この法案は、四年前にがんを発病され、胃の全摘手術を受けられた仙谷由人衆議院議員が、がん患者という当事者として中心となって法案作成をリードし、多くのがん患者の方々の切なる願いを込めてつくり上げました。また、我が党の山本孝史参議院議員も、がんと闘いながら、一日も早い法案成立のために必死の思いで取り組んでいます。
 最後になりますが、二千人のがんの患者大集会を企画、成功させ、がん対策基本法の制定を切に待ち望んでおられたのが三浦捷一医師でした。三浦さんは、みずからもがんに侵されながらも、がん難民をなくすために闘い続けられましたが、がん対策基本法の制定を待つことなく、昨年末に静かに息を引き取られました。ホームページで公開された遺言とも言える最後のメッセージの一部を御紹介します。
  夢 何の成功の目途もないままに始めた患者大集会企画が成功し、がん患者の声を世にアピールするきっかけとなったこと、いつの日か支援機構のようなものができればと思っていたことがすでに発足したこと。私はただひたすら夢に向かって歩き続けてきた。結果的には私は病状を悪化させ、長期展望にたったがん患者の望む理想的な夢である日本がん情報センターの実現にもはや何の貢献もできなくなったが、どなたかがこの夢をひきついで下さることを最後の夢としている。
この三浦さんのメッセージを、国会がしっかり受けとめねばなりません。
 以上、本法案を御審議の上、速やかに可決していただきますよう切にお願い申し上げます。(拍手)

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2006年6月