| 日本でグループホームを増やすために! その魅力と現状と課題 |
| はじめに
私と痴呆性高齢者向けグループホームとの出会いは、1989年に初めてスウェーデンでグループホームを訪問した時のこと。 それ以来、「グループホームこそが痴呆ケアの切り札だ」「グループホームが日本にも必要だ」と痛感し、日本でグループホームを普及させるための研究・運動に取り組んできた。 本の執筆や講演だけでなく、ホームページやメールマガジンも作成した。 このレポートでは、「なぜ、グループホームが必要なのか」「なぜ、グループホームが日本で増えないのか」「どうすれば日本でグループホームが増えるのか」などについて述べたい。 グループホームの魅力 「グループホームを開設したい」 「施設を辞めて、グループホームで働くのが夢」などという相談が連日殺到している。 では、グループホームの魅力とは何であろう。先日、老人保健施設の隣に新築されたグループホームを訪問した。 老人保健施設にいた時には、部屋の中のゴミ箱に排泄する癖があった。 しかし、グループホームでは部屋の向かいにトイレがあるため、グループホームに入居した当日にトイレの場所を教えたら、すぐにそのおばあさんは理解し、自分でトイレに行くようになり、二度とゴミ箱で排泄することがなくなった。言葉数が増え、目つきがかわった。 「老人保健施設にいた時には、声かけをしても私の目を見てくれなかった。 しかし、グループホームに移ってからは、声をかけると、私の目を見てくれるようになった。 視点が定まるようになったんです。 入居して2週間後には、『庭の花に水をやりたい』と自分から言い出すほど生きる意欲が湧いてきました。 グループホームがよいとは聞いていましたが、ここまでガラッと変わったのには驚きました」と。 老人保健施設は入居費が月8万円だったが、グループホームは月16万円と二倍の自己負担。 この理由は、グループホームが在宅サービスであるため、家賃も食費も全額自己負担になるからだ。 入居費が高いため、このグループホームはまだ8人の定員が満員になっていない。 グループホームの現状と課題 痴呆性高齢者が160万人と推計(厚生省)されているから、400人に一人しか利用できない。 では、このように「痴呆ケアの切り札」と期待されるグループホームがなぜ増えないのか。 1、介護報酬が低すぎる 実際、全国の自治体調査でも、「介護保険の中で最も足りないサービス」のトップがグループホームである。 なぜなら、介護報酬が低すぎるため、良心的な法人も採算がとれないという理由で、グループホームに二を足を踏むようになった。 実際、私の知る限りでも、グループホームの予想よりはるかに低い介護報酬が発表されて、グループホームの設立をあきらめた良心的な法人がいくつもある。 一方、金儲け主義の質の悪いグループホームも増えている。 要介護3で月25万3000円の介護報酬は、1日8時間預かるデイサービスよりも安い。 早急に30万円に引き上げるべきである。 このままの低い介護報酬では、十分なケアが行えず、近い将来グループホームで事故などが起こることを私は危惧している。 2、単独型グループホームに建設補助がでなかった。 今年度まで、グループホームの建設補助は、老人ホームやデイサービスセンターとの併設型にしかでなかった。 グループホームの良さは、住み慣れた地域の小さな土地に容易に建設することができることである。しかし、建設補助が併設型に限られていたため、単独型が増えにくかった。 しかし、この建設補助は、医療法人や社会福祉法人のみを対象とし、NPOや営利企業は除外されている。 私のところには、グループホームを計画しているNPOや営利企業から、抗議や問い合わせが殺到している。 しかし、自由競争を原則とする介護保険市場において、社会福祉法人と医療法人にのみ建設補助を出すのは、不公平極まりない。 「市町村が認めるNPOや営利企業」に限って、建設補助を出せばよい。 3、入居費が介護保険施設の倍 冒頭に紹介したグループホームも質はよいが、「多くの家族が値段を理由に入居を断られました」(グループホームの職員)という現状だ。 同じような症状の痴呆性高齢者が利用するのに、特別養護老人ホームよりもグループホームの入居費が倍も高いのはおかしい。 このままでは、グループホームは介護保険施設よりも、比較的裕福な高齢者が住むという住み分けになってしまう。 これは、「グループホームは個室で、介護保険施設よりも居住環境が良いから自己負担が高くても仕方ない」という考え方だろうか。 実際、厚生省の山崎史郎老人福祉計画課長も、「グループホームは将来的には中学校区に1つぐらい、1万ヶ所くらい必要」(京都新聞一面、2000年9月12日)と発言している。 グループホームの質の確保へ3つの提言 1、グループホーム開設相談窓口の設置。 「市町村の担当者にグループホームの開設について相談しても、『自分もグループホームを見たことがない』という始末。話にならない」と嘆いている。 厚生省はどこかの団体に委託してグループホーム開設相談窓口をつくるべきだ。 そうすることで、質の悪いグループホームの設立を未然に防ぎ、良質なグループホームを増やすことができる。 2、市町村の監督責任の強化。 市町村の積極的な指導や監督なしには、グループホームの質の確保は難しい。 都道府県だけでは、1つ1つのグループホームの質に責任を持たせるのは無理だ。 3、痴呆ケアスタッフの育成 痴呆疾患センターが、宮城、東京、大阪に設置されるが、そこでは、痴呆ケアを指導する講師の養成が行われ、痴呆ケアスタッフの養成そのものではない。 同時に、すでにグループホームで働いているケアスタッフの研修も充実する必要があるが、今の低い介護報酬では、十分な研修は無理である。 結論を言うならば、私の意見は、 介護報酬などをアップし設立しやすくすると同時に、 質のチェックも厳しくし、良質のグループホームを急速に増やすという考えだ。 メールマガジン登録のお願い なお、私はグループホームの普及をライフワークとしており、グループホームのメールマガジンも発行しているので、登録して頂ければ嬉しい。 メールマガジンは、週に2,3回定期的にグループホームなどの情報が私からメールで送られてくるサービスだ。 登録は無料で、解約も自由。 誰が登録しているかも私(発行者)にはわからない。 ホームページから簡単に登録できる。 やまのい和則 拝 |