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2003年6月11日 

厚生労働委員会 会議録 

 

本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 次世代育成支援対策推進法案(内閣提出第一〇九号)
 児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一〇号)
 公益法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第八四号)(参議院送付)

     ――――◇―――――

○中山委員長

 次に、山井和則君。

○山井委員

 これから一時間にわたりまして質問をさせていただきたいと思います。

 このたびの法案、次世代育成支援法、そして児童福祉法の改正ということですが、私は、前回にも引き続きまして、次世代育成の中で最もきめ細かな支援の要るケースを中心に質問をさせていただきたいと思います。具体的に言いますと、母子生活支援施設、児童養護施設、乳児院、そしてまた児童相談所や市町村における児童虐待防止ネットワーク、それと最後に行動計画指針について、また、文部科学省さんにも来ていただいておりますので、高校中退の問題、そのことについても、最後になりますが、質問をさせていただきたいと思います。

 そもそも、政治の役割というものを考えてみますと、やはり子供が安心してすくすくと育てる社会、また、人生の後半になられましたお年寄りが、体が弱っても、痴呆症になられても、安心して長生きを喜べる社会、また、そういうお子さんの世話をされる親御さんもしっかりとお仕事と子育てを両立できる社会、そういう社会をつくっていくことが政治の大きな目的であると思います。

 そんな中で、最もそういう当たり前のことが難しいケースの一つが、虐待のケースやそういう家庭環境で非常に御苦労をされているケースだと思います。

 そこで、まず最初に、また大臣に質問をさせていただきたいんですが、前回の質問の続きになりますが、先週私は、この質問のために改めて母子生活支援施設に行ってまいりました。大臣に見てもらおうと思ってこの写真をちょっと撮らせてもらってきたんですけれども、全国に三百ぐらいの母子生活支援施設というのがございまして、そこに約五千人の方が、五千人のお母さんとお子さん方が生活をしておられるわけであります。

 その中で、前回も質問しましたように、最近、お母さんが障害のあるケース、それで子供さんが障害のあるケースというのもふえております。そして、ここの写真にもありますように、これは小学生の子供たちと囲碁をやってきたわけなんですけれども、この母子生活支援施設でも、虐待を受けて心のケアが非常に必要なケースというのも年々ふえてきております。そんな中では、こういう一対一でじっくり指導員さんが向き合うケアというのが非常に重要になってくるわけです。

 また、最近ふえているのは、未婚の母ということで、男性の方とつき合って、それで子供が産まれたということがわかったら男性がどこかに行ってしまった、しかし、お母さんだけの力では育てることができない。また、そういうケースでは、お母さんが軽い知的障害であるケースや、知的障害とまでは認定されないけれどもボーダーラインのケース、そういう方々が、悪い言い方をすれば、男からだまされるというケースも非常にふえてきているわけです。

 そういう中で、この母子生活支援施設の機能というのはますますこれから重要になってくると思います。

 それで、大臣に最初に一つ、これは質問通告にもなかったんですが、お伺いしたいんですけれども、そういうさまざまな問題が出てくる中で、お母さんが精神疾患、軽い知的障害、そういうケースや、あるいはお子さんが軽い知的障害あるいは身体障害、あるいはお母さんもお子さんも障害があるケース、裏返せば、そういうケースだからこそ施設入所が必要になってくるんですけれども、そういうケースがこれからふえてくると思うんです。そういうある意味で困難なケースの母子を母子生活支援施設が受け入れるということに関して、坂口大臣、いかが思われますでしょうか。一般論でいいです。


○坂口国務大臣

 山井議員にいつも母子施設、あるいはまた障害者の皆さん方に温かい心を寄せていただいて、私も感謝を申し上げる次第でございます。

 今お話しになりましたように、母子支援施設におきましても、お子さんだけの問題もございますし、お子さんよりもむしろ、中には両親、中には片親どちらかという、そういう問題もございましょうし、また、そうした母子関係だけではなくて、そこに障害が加味されてきた、幾つもの形が存在するだろう、私も、それは当然あるだろうというふうに思うわけでございます。そのときに、その皆さん方を障害者という立場から見ていくのか、それとも障害者としてではなくて、母子家庭あるいはまたそれに類する父子家庭、そういう形で見ていくのか、あるいは両方の形で見ていくのか、いろいろな考え方があるだろうというふうに思いますが、現在、今お話しいただいておりますように、母子支援施設の方にお入りをいただいているというのは、現在の制度の中でいえば、一番そこが順当なところではないかと私も率直に思うわけであります。

 問題は、そのときにその皆さん方に対してどういう支援をするかという、こちらの、受ける側の体制の問題になるんだろうというふうに思います。今までは、そういうところまでは考えずに、ただ家庭に置いておけないお子さんを何人預かるかとか、あるいはまたお母さんと御一緒に何人預かるかということだけを考えていた。いわゆる量的な問題を中心にして、どういう質の人をお預かりするかというところまで、なかなか人的配置にいたしましてもそこまでは行っていないんだろうというふうに思っている次第でありまして、そういうふうにこれからなっていきます場合に、その状況によりましてどうするかということを考えていかなければならないというふうになっていくのではないかと思っております。
 今後の問題でございますが、現状をひとつよく把握をさせていただきながら対応させていただきたいと思います。


○山井委員

 今、大臣から、障害のあるお母さんあるいはお子さんが母子生活支援施設に入られるのは、今の現状では順当なことだという御答弁をいただきました。私も、そのとおりだと思うんです。もしここに入ることができなくて、地域生活ができなかったら、結局は、お母さんが障害者の施設に入るか、あるいはお子さんが障害者の施設に入るかということで、お母さんとお子さんがばらばらになってしまうわけです。これは国際家族年のモットーでもあります、精神でもあります、母子一体ということに反して、母子分離になってしまうわけですから。

 私もつくづく思うんですけれども、夫からの虐待、あるいは父親からの虐待で子供が苦しむ、それでお母さんと子供で逃げたけれども、お母さんも軽い障害を持っている、そういう意味では、これはダブルハンディキャップ、そしてトリプルのハンディキャップになってくるんですね。そういう方をどうやって社会が支えていくのか。これは、子供には全く何の責任もないわけですから。やはりこれは社会の温かさというのが問われてくると思います。

 そこで、現状の中では、私の聞いている範囲では、母子生活支援施設でも戸惑いがある。当然、障害のあるお母さんが入居されると、それこそマンツーマンで対応しないとだめだから非常に大変だ。中には、DVの被害で、私の知っている方でも、ホテルに三日間監禁をされて夫から暴行を受けて、その後遺症で本当に数年たっても落ちつかない、そういう奥さんもおられるわけです。とにかく、そういう精神疾患や知的障害のあるお母さん、そして知的障害あるいは身体障害のあるお子さんを受け入れるときに、母子生活支援施設としたら、ただでさえ職員の数が足りないから、そういうケースは断られる施設も多いわけですね。これは、ある意味で責められない部分もあるかもしれません。

 そこで、大臣にお願いしたいのは、もし厚生労働省さんが障害のあるお母さんや障害のあるお子さんも母子生活支援施設で受け入れるべきだ、母子を切り離さないためにも受け入れるべきだというお考え、あるいはお立場に立たれるならば、私は、額は幾らかわかりませんけれども、そういう障害者保護費の加算というものを入れるべきではないかと思っております。これについては、実は、児童養護施設とかほかの施設はあるんです。ところが、母子生活支援施設にはないんですね。これは今までの質問と多少重なるかもしれませんが、改めて、大臣、その障害者加算ということについて、いかがでしょうか。


○岩田政府参考人

 障害のある方や虐待を受けている方については、特に手厚い保護、指導が必要であるというふうに考えております。

 母子生活支援施設についてですけれども、母子のいずれかに障害がある場合、あるいは両方に障害がある場合についてもそうですけれども、処遇が特に困難な母子が入所している母子生活支援施設については、実は、一定規模以上なんですけれども、三十世帯以上の施設の場合には、そういった障害の方を受け入れる場合の非常勤職員を配置した場合の加算制度がございます。また、DVの被害者や虐待を受けたお子さんの心の傷をしっかり専門家がいやすということが大変大事かというふうに思いますので、心理療法の担当職員も配置をしていただいた場合には加算をするといった制度もございます。

 こういう制度も使っていただきながら、本当に重度で自立ができない方は別かもしれませんけれども、そうでなければ、障害のある方、虐待を受けた方が、親子が分離されないで一つの施設で生活できるという母子生活支援施設の役割の大きさを、委員の御質問を聞いても改めて再認識をしているところでございます。


○山井委員

 今の答弁、前回の坂口大臣の答弁と基本的には一緒なんですけれども、改めて申し上げますが、そういういわゆる処遇困難ケースに関する加算というのはもう既にあるわけですね。私が申し上げているのは、処遇困難ケースという一くくりではなくて、その中でも特に障害があるというケースはある意味でスペシャルなわけですから、その障害者児加算というものをぜひとも検討してほしいということですので、今まである処遇困難ケースとは別枠でぜひとも前向きな御検討をお願いしたいと思います。

 続けてもう一つ、母子生活支援施設についての質問なんですが、大規模な施設というのはしっかりしている反面、社会復帰ということを考えると、ちょっと地域社会とは距離があるというふうに思います。そういう意味では、軽度なケースやもうそろそろ地域に復帰できるというようなケースは、大きな施設ではなくて、厚生労働省さんが進めていられるようなサテライト施設、小規模分園施設というものがこれからますます必要になってくると思います。

 前回の質問の続きになりますが、これは、運営費は出るんですけれども、いわゆるアパートの借り上げ代とか施設整備費とか、そういうものが出ないので、私も幾つかの施設に聞いたら、やりたいとは思うんだけれども運営費しか出ない、五、六世帯、例えばアパートの借り上げなり、そういうものに対する家賃なり、そういう住まいに対する補助が出ないので、なかなか採算が成り立たなくてできないということをおっしゃっていられますので、サテライト施設、小規模施設の支援ということで、そういういわゆる施設整備、家賃補助的な面の補助というのを考えられないか。いかがでしょうか。

○岩田政府参考人

 早期に自立をできる方については、大規模な施設ではなくて、地域社会の中で小規模な施設で生活するということの方が望ましいというのは、先生のお考えに賛成でございます。

 十五年度から、初めてでございますけれども、サテライト型母子生活支援施設の運営費の助成を始めたのは、そういう考え方に基づくものでございます。現行では運営費の補助だけでございまして、建物の関係はないわけですけれども、例えば地方自治体が建物を無償で貸与するとか、あるいは、新しくつくるというよりも、もう使われなくなった企業の社員寮を活用させていただくとか、少し大き目の民間の家を借りていただくとか、そういうことを考えながら、とりあえず運営費の補助を始めたわけでございます。

 施設整備などに対する国庫補助が必要かどうか、可能かどうか、十五年度から始めたばかりでございますが、実施状況を見ながら検討したいというふうに考えます。


○山井委員

 検討していただくということで、ぜひともお願いしたいと思います。

 特に大都市では、この母子生活支援施設も、ある意味では満杯状態で、DVなどで苦しむお母さんが子供を抱えて逃げ込んでくるケースも非常にふえているわけですから、ぜひともお願いをしたいと思います。

 次に、児童養護施設について御質問をしたいと思います。

 実は私も、恥ずかしながら、先日初めて児童養護施設に訪問をいたしました。ここは、今話しました母子生活支援施設と違いまして、御両親が何らかの事情で子供をもう育てることができないということで、お子さんだけが入っていられるところであります。

 それで、坂口大臣、例えば、申し上げますと、私の行ったところ、私は三カ所行ったんですけれども、そのうちの一つは四十世帯入っておられるんですけれども、なぜお子さんが入居されているかというと、親が行方不明が五名、ところが、これもかわいそうな話で、最初は親御さんはいらっしゃったんです、ところが、施設に入れたらどこかに行方不明になっちゃったというケースとか、とんでもないですよね。

 それとか、私が行ったときにも、施設が割と大騒動になって、どうされたんですかと言ったら、三年前に一歳の子供を置いていったお母さんが、何の前ぶれもなく、私がちょうどいるときに三年ぶりに登場して、子供を返してくれと言ってきたというわけですよ。そうしたら、施設としても、それは、返してくれはいいけれども、ほんまに育てられるんかと。それと、育てる気があるんやったら、三年間どこで何していたんやと。それはまあそういうことになりますわね。当然、その男の子も、一歳のときに離れ離れになっているわけですから、お母さんですと来ても、それは、この人だれということになりますよ。

 この一例を考えても、どれほど対応が大変かということは想像を絶すると思います。

 私も聞いたんです。一歳や二歳のときに虐待を受けているんだったら、お子さんは覚えていられないんじゃないですかと施設の職員さんに聞いたら、そんなことはない、頭では覚えていないけれども、体が覚えている。火が怖い、水が怖い、いろいろなそういうことがあるわけですね。

 それで、続けますと、行方不明が五名、虐待が十八人、養育能力欠如六名、この中には、やはり御両親がそういう障害があるケースもあると思います。それと、養育意思欠如、育てる気がない、それと病気二名、就労四名。

 それで、例えば、この養育意思欠如なども虐待に入ると思うんですけれども、その結果、御飯をほとんど定期的には与えてなかった、カップラーメンぐらいしか与えてなかった。それとか、泣くこととか笑うことができないお子さんもいらっしゃって、赤ちゃんというのは、泣いたらだれか来てくれるから泣くわけですよ。ところが、泣いても一切ほったらかしということで、泣けない。感情表現ができないお子さん方がおられるわけです。

 それで、この施設でも、お子さんたちの部屋の近所に当然食堂がありまして、そこはダイニングキッチンになっているんですね。養護施設で安定した食事を提供するのがまず最初のケアだということで、どうしてですかと言うと、三食安定して食べさせてもらっていないと。私なんかにはちょっと想像がつかないんですけれども、小学生の中にも、ここに来て初めて人間らしい生活をした、おふろも入れてもらったことがない、そういうケースもあったりするわけです。そういう子供たちの心の傷をどうやっていくか。そのためには、例えば、こうやっておいしいものが一日に三回食べられる、それを一緒に、きょう何食べようと言いながら、メニューを考えて、料理する、そのこと自身が非常に重要なケアだということなんですね。こういうふうにマンツーマンでお世話をすることが非常に必要になってくるわけです。

 それで、現在、約五百五十カ所、三万人余りの児童がここに暮らしているわけなんですけれども、大臣、こういう現状について、一言、御感想というか、どうせなあかんということをちょっと、まず最初にお聞かせいただければと思います。


○坂口国務大臣

 お聞きをしますと、我々が想像をしております以上のことがいろいろ起こっている。せっかく子供を産んだのに、なぜそんなことになるのか、普通そう思うわけでございます。しかし、三食食べさせない、あるいはまたおふろにも全然入れないというような、普通考えられないようなことが起こっているということでございまして、そうしたお子さんがだんだんとふえてくるということは、これはいわゆる社会の中の基本的な形態が何か崩れてきているというふうな思いに駆られて、何となく背筋が寒々とするような気がするわけであります。

 基本的には、そうしたことがないような家庭をどう築いていくかということをやはり一方ではやらなきゃいけないんでしょう。それは、障害がありますとか、そういう御家庭は、これはもう格別でございますから、もともと手を差し伸べなければならないところでございますけれども、そうではなくて、どこから見ても正常な家庭がやっていけそうに思える、そういう家庭の中で、さまざまなことが起こり、暴力ざたになりといったようなことになってくるということになれば、そこを一体、日本の国として、全体、中長期的な問題も含めて、何が欠乏して、何をどうやっていけばいいのかという基本的な問題をひとつ考えていかなきゃならないんだろうと思います。

 それから、今起こっておりますことに対してどう対応するか。これはもう起こっているわけでありますから、これに対して対応しないわけにはいかないわけであります。それは、昔も暴力ざたというのはあったんだろうとは思いますけれども、最近とみにそういう話が多くなってきているということも事実でございまして、そうした状況に対して、現在の施設といったものでそれが皆賄い切れるのかどうかといったことにもなってまいります。児童相談所等も、私もお邪魔いたしましたけれども、毎年倍々ゲームでふえてきているというようなお話をお聞きをいたしまして、大変なことになってきているなという印象を私も持っているわけでございます。

 それらの問題、今起こっております問題につきましては、これは正直なところ、予算措置の問題もあるわけでございますし、そう一朝一夕にいかない話でもございますけれども、現実がそういうふうであります以上、これは、予算がどうのこうのと言っておれない側面もあるわけでありまして、そうしたところをどのように対応していくか。だから、厚生労働省なら厚生労働省の中の予算の枠組み、それはいろいろありますけれども、今まで続けてきた延長線上で考えていたのでは少し対応し切れない事態になってきている可能性もあるわけでありますから、しっかりとその辺のところを考えていかないといけないなという思いで、今聞かせていただいたところでございます。


○山井委員

 お心のこもった答弁、ありがとうございます。

 私も感じますのは、昔は御両親が病気で亡くなられたケースとかも多かったわけです。そういうケースはまだある意味では簡単なわけですよね。ところが、今は、親はいる、でもその親から虐待を受けたりしている。それと、私の知っているケースなんかでも、親と離れ離れになって里親に出されて、その里親から性的虐待を受けて逃げてきた女の子という子も先日私は出会ったわけなんですね。そうしたら、何を信じて生きたらいいのか。また、そういう人間に対する不信をどうやって取り除いたらいいのか。そのために現場で頑張っていられる職員の方々の御苦労というのは、もうすごいものがあると思います。

 そこで、三歳から高校三年生まで入居できるわけなんですけれども、やはり多くの児童が高校三年生までいる。裏返せば、途中で家族のもとに帰ることがなかなか難しいんです。大臣、このことについて、どうしていけばいいと思われますか。理想は、高校三年生までいるというよりは、途中で親と仲直りというか、そんな簡単なものじゃないと思いますけれども、やはり家族の再統合という形になるのが理想だと思うんですけれども、そのためにどういう取り組みが必要でしょうか。


○坂口国務大臣

 専門的なことは局長からまた答弁してもらいたいと思います。

 そういうお子さんの場合に、御本人もさることながら、家族の方に多分問題があるんだろうと思うんですね。そのときに、そういう家庭の中に返しますと、またそのお子さんももとどおり悪くなってしまうわけですね。高等学校の三年生ぐらいになっておみえになったら大分違うだろうというふうには思いますけれども、小学校あたりのところで、子供さんが心の痛手から回復をしてきた、だからといって返したらいいかといえば、家庭の方が回復をしていなければ、またもとどおりになってしまうわけですね。だから、そこは非常に難しいわけで、両方を見ていかないといけない。

 高校三年生のところまで成長をしておみえになって、いよいよこれから就職をされるという時期ですね。そういうふうな時期にまで成長しておみえになります場合には、ぜひこれは就職をしていただくなり、あるいはまた、最近のことでございますから、優秀なお子さんで、普通であってもそうですけれども、育英制度もあるわけでございますから、進学されるなり、それぞれの道をまた歩まれるということの方が私はよろしいのではないかというふうに思います。それは御家庭の状況次第、そこが回復しているかどうかということが大きな分かれ目ではないかという気がいたします。


○山井委員

 もう大臣のおっしゃるとおりで、子供が幾ら元気になっても、肝心の親にちゃんとなってもらわないと子供は帰れないわけなんですね。

 まさにそういう趣旨からも、私は二つポイントがあると思いますのは、一つは、子供の方に対しては、やはり児童養護施設で職員の数をふやして、本当にきめ細かな、そういう心の傷をフォローできるような、そういうお世話をするということが一点。しかし、親に対する取り組みをしっかりしないと、この問題は解決できないと思うんです。

 そこで、坂口大臣、今の点についてなんですが、とにかくこれは子供には全く責任はないわけですから、先ほど予算の枠を超えてでも何とかせなあかんということをおっしゃってくださいましたが、一つには、これは一九七六年の時点で改正されまして、六対一、お子さん六人に対して職員一人。ところが、これは三交代でやっているわけですから、実際は二十四対一なんですね。先ほどの、料理を一緒につくるとか囲碁を一緒にするとかしますけれども、やはり、一対二十四ではなかなか愛情が行き届きにくいというものがあると思います。そういう職員の配置をこの際ふやすべきではないかということが一点。

 それとともに、まさに今大臣おっしゃったように、児童養護施設に親のケアを担当する専門の職員を置く、そういうふうなことをしないと、今も親御さんへの多少のケアはもちろんやっていられますけれども、そういう専用の職員をしっかり置くというような位置づけをしないと、結局高校三年生まで帰れないんじゃないかと思うんです。そのような人員をふやすべきではないか。親御さんのケア、ある意味で加害性がある虐待の場合、そういうケアを担当する職員をしっかりと別個に置くべきではないか。この二点について、大臣いかがでしょうか。


○坂口国務大臣

 ここが一番難しいところですね。お気持ちはもう十分わかるわけだし、我々もそういう思いには同感できるところがあるわけでありますが、状況からいきますと、なかなかそう簡単にふえる状況にないわけであります。

 それで、こうした児童養護施設あるいは先ほどお触れになりました母子支援施設にいたしましても、こうしたところには、施設も、中もしっかりやっていかなきゃいけませんが、ここをバックアップをする体制というのも私は大事だと思うんですね。それが、市町村の問題もございましょうし、それから民間のレベルの問題もあると思うんですが、こういう施設、こういうところにおみえになる皆さん方のことを考えて、そしてバックアップをしようという体制がやはり必要じゃないかと思います。この施設の中の人員の問題もございますが、それを支援していただくようなバックアップの体制があれば、かなり施設の皆さん方の負担というのも減るというふうに思うわけでございます。

 ただし、そういうことが起こることを期待だけしてじっとしているというわけにもこれはいかないと思います。ですから、そうしたことをどういうふうに進めていくかということについて、やはり施設の職員をうんとふやしていくということができないのであれば、これまでもある程度ふやしてくることに努めてきたところでございますし、またこれからも努めていきたいというふうに思っておりますけれども、それが完全にできないというのであれば、そうしたバックアップ体制も含めてどうしていくかということをやはり考えていく時期に来ているのではないかというふうに私は思います。

 しかし、ぜひ努力はするつもりでおります。


○山井委員

 一九七六年以来、この六対一という基準は二十七年間放置されているわけですね。御存じのように、介護保険を機に、お年寄りの方は、四対一だったのが三対一というふうにアップをしてきています。

 では、二十七年間、養護施設の現状はどうなったのかというと、今のようなひどい虐待のケースや、親が精神疾患、知的障害があるケースもふえていますし、さらに、例えば最近不登校の児童なども来ているわけですね。親からの虐待で学校に行けなくなった。そうしたら、学校に行って帰ってくる子供のお世話と、二十四時間、三百六十五日施設にいる子供の世話をどうするのかでは手のかかりようが全然違うわけです。

 そういう意味では、心理療法の非常勤の職員の加算などいろいろな取り組みをしてくださっておりますけれども、ぜひともやはりそういうふうに、本当に大変なケースがふえているということで、職員をふやすことが必要だと思っております。

 次に、ふえている性的虐待の問題。

 これは、厚生労働省さんの資料を見ますと性的虐待がそれほどふえていないということになっているんですが、要は、これは表になかなか出ないわけなんですね。でも、現場の職員さんから聞くと、非常に悪質でひどいケースがふえている。それで、かつ性的虐待を受けた女の子のケアというのは本当に大変だということなんです。人生の大きな大きな取り返しのつかない傷になるわけで、これをどう防止していくのか。罰則が甘過ぎるという声も現場で聞きました。どう防止するのか、それとともにどうやってケアをしていくのか、そのことに関してお考えをお聞きしたいと思います。


○岩田政府参考人

 防止というのは本当に難しいことだと思いますけれども、まずやらないといけないことは、いかに早期に発見するか、自分からは言い出しませんので、性的な虐待が疑われるサインをいかに見逃さずに早期に保護するかということが大事だというふうに思っております。

 何人かの専門家とお話ししたことがございますけれども、児童虐待の中でも最も難しいのはこの性的な虐待であるというふうにお話を伺っておりますので、まず、そのサインを見逃さないためにどうすればいいかとか、それから、その初期の対応、性的虐待があったということを初めて知ったときに、その知る立場に立った大人はどういうふうにすればいいかということについて、厚生科学研究でも研究をいたしました。

 学校でそれがわかったときはどうするか、幼稚園、保育所でわかったときはどうするか、病院であればどうするか、保健師さんが発見したときはどうするかというように、場面場面に応じまして、性的虐待が疑われるサインというのはこういう形であらわれるとか、それがわかったときには、初期対応としてこういうことをやらないといけない、関係機関とこういう連携をとらないといけないといったようなガイドラインをつくっていただいたところでございます。

 こういうガイドラインも参考にしていただいて、保育所、幼稚園、学校、医療現場、そういうようなところが早期発見と適切な初期対応をするということ、そのために、まず関係職員のこういうことについての研修と、連携のための仕組み、ネットワークだと思います。

 それから、発見されたお子さんの保護とその後のケアも大変専門性が要るところでございますので、一つは、情緒障害児短期治療施設というのがあります。通所でも可能ですし、入所も可能なんですけれども、そういったところで専門的な治療を受けるとか、児童養護施設に入所をさせるときにも、特に、個別対応職員をつけるとか、心理療法士、精神科医に治療をお願いするとかといったような専門的なケアをしながら、本当にその子が安全感、安心感を取り戻すというのは、そこにたどり着くまでに大変な専門的なケアが要るというふうに伺っております。非常に深刻な重要な問題であるということで、しっかり取り組んでまいりたいと思います。


○山井委員

 今おっしゃった安心感ということで、性的虐待を受けたある女の子も、施設に入ってきて、二時間おふろに入って出てこなかった。ゆっくりおふろに入れたことが生まれて初めてだといって、二時間おふろにずうっと連日入っていられるという話も聞きました。結局、その彼女もその後不登校になってしまったわけなんですけれども、こういう本当に大変な、困難なケースがふえている。ところが、現場は、職員の数がもう手いっぱいだから、どっちかというと、軽い人なら受けるけれども、困難な人はもう無理だということにどうしてもなりがちなんですね。

 そこで、ちょっと聞きづらいことなんですけれども、欧米先進国の児童養護施設の人員配置基準、これは諸外国はどうでしょうか、いかがですか。


○岩田政府参考人

 実は、把握できておりません。恥ずかしい答弁をしなくちゃいけないんですけれども。

 それで、欧米の要保護児童対策がどうなっているかということについての概略はわかっているつもりでございまして、大型の児童養護施設に子供を預かるのではなくて、まず、できれば里親、そこで家庭的な環境で育てようということを優先しているようでございます。また、施設に入所してお預かりする場合でも、大型の施設ではなくて、グループホーム的なところでお預かりをしているというふうに聞いておりますので、大型の児童養護施設もないことはないと思いますので、最低基準もあると思いますが、まだそこまで勉強していなくて、大変申しわけない答弁になります。


○山井委員

 私も、老人福祉の研究をずっとやってきまして、今はやはりイロハですよね。諸外国ではどうなっているのかというようなことは、ぜひとも調査してもらって、また近いうちに調査結果を教えていただきたいと思います。

 それで、では、これからどうしていくかということで、一つは、ショートステイというところも私行かせてもらいまして、全国二百五十カ所、例えば週末だけお子さんを預かるというケースで、全国で約三万人がこういうショートステイを利用されています。これは、その小学生の方々が泊まる部屋なんですけれども。
 大臣も、こういうのを見ると、ショートステイというのは、お年寄りは聞いたことがあるけれども、子供もあるのかというふうに、もしかしたら思われるかもしれませんが、要は、月から金までは、お母さんも働いていられて、晩だけ子供と顔を合わす、学童保育とか行っていて。ところが、週末、二十四時間顔を合わせていると、どうしてもいらいらしてきて殴ってしまう、そういうふうなケースなんですね。

 こういうふうなショートステイの施設、現在全国で約二百五十カ所、約三万人が利用しているということなんですけれども。いい取り組みだと思うんですけれども、ぜひとも、こういうものに対する補助もふやして、数もふやすべきだと思いますが、いかがでしょうか。


○岩田政府参考人

 私も、児童養護施設がショートステイという形でお子さんを受け入れていただく事業は拡充をしたいというふうに考えております。十三年度は二百四十九の市町村で実施をしていただきました。前年度と比べて二割ぐらい実施市町村がふえているので、大変喜んでいるところでございます。

 昨年の児童福祉法などの改正によりまして、この事業を強化するために幾つかのことをやりました。一つは、この事業を児童福祉法に第二種の社会福祉事業という位置づけをさせていただきました。また、国庫の負担率を、従来三分の一だったんですけれども、これを二分の一に引き上げるということをやりました。

 また、従来は、親が病気とか仕事で子供の養育ができないという場合にその利用の目的が限られておりましたけれども、今年度から新たに、育児不安ですとか看病疲れといったような親の身体的あるいは精神的な負担ということも利用できる理由の中に追加をいたしまして、もっと多くの方が利用していただけるようにしてまいりたいと思います。


○山井委員

 やはり私、このショートステイというのは非常に効果があると思います。例えば、児童養護施設から引き取って、また虐待してしまったというケースもあるわけですけれども、そういうときには、しんどくなったらまた週末だけ預けてくれたらいいよというような、そういうショートステイがあったり、あるいは、ショートステイに預ける段階で、ショートステイの職員さんがお母さんの、それこそ育て方の相談に乗るとか、やはりこういう使いやすい制度というのは非常に重要だと思います。

 続きまして、先ほど岩田局長からも答弁がありました、私もちょっとショックを受けたのは、欧米では大規模な施設は、そもそも児童養護施設は余りないということなんですね。社会復帰というものを目標とするならば、やはり家庭的なところで住んでもらうというのがこれからの流れであると思います。

 もちろん、今の大規模施設、日本で必要であって、今までもすばらしいお仕事をされているということはそのとおりでありますけれども、これからふやしていかれる場合には、そういう大規模施設を中心としたサテライトで、先ほど岩田局長もおっしゃったグループホームのような小規模のホーム、小規模児童養護施設をふやしていかれるべきだと思います。

 これについても私も行ってきましたが、本当に普通の家ですよね。それはやはり、子供にとっての安心感、安定感というのはこっちの方がいいですし、ここを経営されている人も、もう子供にとっては絶対的に小規模の方がいい、絶対的にいいということをおっしゃっていました。

 ただ、問題点は、先ほどの小規模母子生活支援施設と同じように、運営費しか出ないから、無償で自治体から借りなさいといったって、なかなかないわけですよね。だから、ここも二千五百万、法人が全額出して、家を一軒買ってやっていられるんですけれども。

 だから、多くの養護施設さんが、こういう小規模ホームをやりたいけれども、お金がなくてなかなかできない。例えば、五十人の施設でも、こういう民家の小規模ホームで暮らせる子供が半分ぐらいいると言うてはるわけですよね。そうしたら、そういう子供は入ってもらって、ある意味でもっと処遇困難なお子さんを大規模施設で見るというような機能分化もこれから必要となってくると思うんです。

 この点に関して、運営費だけじゃなくて、先ほどと似たような質問になりますが、やはり家賃補助とか、家を借りたり買ったりするときのそういう施設整備の補助も出して、こういうものをふやしていくべきじゃないか、そのことについていかがでしょうか。


○岩田政府参考人

 母子生活支援施設のときにも同種のお尋ねがございましたけれども、地域小規模養護施設も比較的新しい取り組みでございまして、十二年度にモデル的に十カ所、そしてその後、十三年度から本格的に実施をしているわけでございますが、十三年度二十カ所、十四年度二十カ所、十五年度は四十カ所ということで、運営費については、必要な予算措置を講じてきたところでございます。

 御指摘のように、施設の関係について今補助金が出せておりませんけれども、実施状況なども見ながら、なかなか大変な課題ではございますけれども、施設整備に対する国庫補助ができるかどうかということは検討してみたいと思います。

○山井委員

 これは高齢者の世界でもグループホームが切り札じゃないかと言われているし、知的障害者の世界でもグループホームが重要だと、こういう大規模から小規模へ、地域密着へというのは福祉のすべての流れだと思いますので、その支援をぜひともお願いしたいと思います。
 次に、乳児院。

 私、いろいろなところを今回初めて行かせてもらったんですけれども、乳児院に行ってまいりまして、ここは零歳から二歳の御両親が育てられないお子さんなんですね。私も、行って、さすがにここはちょっと、本当にさらなるショックを受けました。こういうふうな小さな小さなベッドに生まれて間もない赤ちゃんがいるわけですね。それで、なぜここに赤ちゃんがおられるんですかと聞いたら、例えば、お母さん今服役中ですとか、お母さんが産んだ後自殺してしまわれましたとか、それで、お母さんがそもそも産みたくて産んだんじゃないといって、産んでもうすぐにここに持ってきはりました、もともと育てる気がなくて産まはりましたというような話もあるわけですよね。

 それと、ここは二歳まで預かるわけですけれども、お子さんと遊んでいたら、何か涙目の子供がいるわけです。それで、どうしはったんかなと思って聞くと、かわいそうに、足と手がはれ上がっているんですね、足と手が。それで、これはどうしはったんですかと職員さんの方に聞いたら、要は暖房がその家になかった、暖房が、冬も。暖房のない部屋にほったらかし、だから手の指と足の指がただれてしまったわけですわ。(発言する者あり)凍傷、凍傷。だから、本当にかわいそうですよね。

 さらに、ある二歳の子供は、三カ月前に引き取ってもらった、家族が、親が引き取れるというから引き取ったにもかかわらず、また虐待してしまって、保育所がこれは大変だということで、もう一回その乳児院に来た。そうしたら、お母さんは、何で私の子を勝手に保育所から持っていったのよといってどなり込んでくるわけですね、私の子供を返せと。だから、職員さんたちがおっしゃっているのは、昔はよかった、子供の世話だけしていたらよかった、ところが、今はどなり込んでくる親の対応をしないとだめだ、でもそんなの私たちの専門じゃない、こう言うわけですね。

 それで、こういうことに対して、全国百十五カ所、三千人ぐらいが入所されているわけですけれども、個別対応職員、家庭支援専門員というのが非常勤でやはりついているそうなんです、そういう親に対するケアということで。しかし非常勤だということで、これを常勤にしてほしいというような要望なんですが、厚生省、いかがでしょうか。


○岩田政府参考人

 大変難しい、だけれども大事な課題であるというふうに思います。

 乳児院に限りませんで、児童養護施設あるいは児童自立支援施設のそれらにおける職員の態勢をどう考えるか、特に虐待を受けた子供、親の養育放棄の結果家庭で育てられない子供という、難しい子供さんを預かるケースがふえているわけですから、難しい課題になっていると思います。

 きょうの午前中の答弁の中でも述べさせていただいたんですけれども、五月から社会保障審議会児童部会の中に社会的養護のあり方に関する専門委員会を設置して、今専門家や関係者で議論をしていただいております。早急に取りまとめていただきたいと思っているわけですが、その中で乳児院の態勢の問題についてもぜひ検討してみたいというふうに思います。


○山井委員

 先ほど申し上げましたように、素人から考えると、零歳、一歳のころなんか忘れているんじゃないかというふうに思われがちかもしれませんけれども、非常に重要な、一番人間の人格の根本を形成する時期ですので、そこをぜひとも大事に、手厚くしてもらいたいと思いますし、きょう一枚だけ資料を入れました。大臣、これを見てください。これを私ぜひともお願いしたいんですけれども、やはり乳児院でも児童養護施設でも人手が少ない、とにかく人手だと。それで、要は、これは三歳児未満の場合、二対一なんですね、ここの乳児院の方が。ところが、これは二十四時間体制ですから、公休を考慮したりしたら八対一ぐらいになるわけです。一般の保育園はどうかというと、一日八時間が原則ですから、零歳児三対一、一歳児、二歳児六対一、こう考えたら、乳児院と同じぐらいか、乳児院の方が人手が少ないぐらいなんですね。

 それで、私も今回つくづく感じたのは、虐待とは何かということなんですね。虐待とは何かということは、親が手をかけてこなかったということなんですよ。放置してきたわけですよね、子育てを。放置してきた、あるいは、殴ったりけったりしていて、親が愛情や手をかけてこなかったというのが私は虐待の本質だと思うんです。では、それを、その虐待で傷ついた子供をどう優しくケアしていくかというと、今まで手をかけてもらっていなかった、今までは愛情をかけてもらっていなかった部分を補うしかないんですよ、これは。その愛情と手を補うためには、機械とかそんなんじゃだめなわけですよね。やはりこれは人で、人間の心と体でないとこの傷というのはいやせないわけです。だから、少ない職員で効率的にというのは、これはやはり無理なわけです。

 そういう意味では、ぜひとも保育園の人員基準よりも少ないというこの乳児院のスタッフの数ですね。お一人お一人の、なぜ乳児院に来られたかというケースは、言い出すと私も心が痛いので申し上げませんけれども、やはりこういうことをぜひとも前向きに考えていただきたいと思いますが、乳児院の人員配置の引き上げについて、大臣、いかがでしょうか。(発言する者あり)


○坂口国務大臣

 先ほども申し上げましたとおり、なかなかここが一番難しいところだというふうに私も思っております。

 先ほど申しましたように、職員の皆さん、それからこういう施設を取り囲みます環境をどうつくり上げ、そして支援をしていく体制をどうつくり上げていくのかということも大事な問題でございますから、そうしたことも、周辺からの支えるその体制も含めまして、鋭意検討していきたいというふうに思います。


○山井委員

 今、そんな家庭に金払う必要はないという意見も場内から出ておりましたが、私が申し上げたいのは、これは、子供には何の責任もないということなんですね。それは、親は私もおかしいと思いますよ。でも、子供はその家庭に生まれたくて生まれてきたわけではないですから、これはやはり社会の責任としてしっかりとやっていかねばならないと思います。

 では次に、児童相談所のこと。

 ちょっと時間も限られてきましたので急ぎますが、児童相談所、もちろんこういう虐待問題や子育て支援の一つの核でありますけれども、私もいろいろ知り合いの相談所に聞いてみると、先ほど答弁にもありましたように、倍々ゲームのように虐待の相談件数もふえている、それも困難ケースがふえているということで、そこで一つに質問を絞りますと、やはり、私の知り合いの保育所の先生とかに聞いたら、児童相談所に相談してもあかん、抱えてはる件数が多過ぎて丁寧に相談に乗ってもらえない、本当に当てにならぬという声が出てきていますし、また、私の知り合いの相談所では、去年、三人、過労で、相談に乗るケースワーカーが倒れてしまったというようなことになるわけですね。それで、かつ、親からは、子供を虐待だといって取り上げたら、何で子供をとるんやといって、殺すぞとか刺しに行くぞとか、そういうおどしも来るということで、非常に厳しい仕事だと言われています。

 そこで大臣に質問なんですが、だれもが相談所のケースワーカーさんは人手が少なくて苦しんでいるというのは認めるところですので、やはりこの人手をふやすということと、もう一つは、子供を引き離した職員が親のところへ行っても、子供を返せと、けんかになるわけですから、やはり親をケアする専門の職員というのを別個に配置すべきではないか、この二点について、大臣、いかがでしょうか。


○坂口国務大臣

 ここは、十分とはなかなか言えませんけれども、しかし、だんだんと職員の増員も実はしてきているところでございます。対象の数が、お子さんの数がふえてきていますから、これをふやしましてもなかなか、イタチごっこになっているわけでございますが、かなりふやしてまいっておりますし、これからもここはよく目をかけていかなければならないというふうに思っております。

 それから、専門の方を嘱託でというお話でございまして、これは嘱託でそういう皆さん方はたくさんおみえでございますので、御理解をいただいて、できるだけ御協力をいただけるような体制をつくり上げていきたいと思っております。


○山井委員

 ぜひともこの児童相談所の職員さんをふやすことをお願いしたいと思います。現場の方は本当にてんてこ舞いという状況であります。

 次に、虐待防止ネットワーク、現在何百か立ち上がっておりますけれども、こういうものもふやすべきだと思いますし、それとともに、ネットワークをつくってもその受け皿が必要なわけなんですけれども、そのことについて、とにかく大臣にだけ聞きますので、市町村の虐待防止ネットワークを今後どうやっていくか、大まかでお答えいただければと思います。


○坂口国務大臣

 虐待の背景は、もう本当に、先ほどからおっしゃいますようにさまざまな背景がございまして、多岐にわたっておりますことから、児童虐待を防止してすべての児童の健全な心身の成長、自立を促していく、そういう立場から、福祉関係者のみならず、これは医療それから保健、教育、警察など、そうした地域での幅広い連携をして、そして皆さん方の育成に努めていかなければならないというふうに思っております。その連携をいかにつくるかということが非常に大事な一つのポイントだと思っております。

 平成十四年の六月現在、児童虐待防止の機能を持っております市町村域でのネットワークの施設数は七百二カ所ということになっておりまして、計画中のものを含めますと千二十五カ所というふうに大分ふえてきていることも事実でございます。これはありがたいことだというふうに私たちも感謝をしている次第でございますが、今後、全市町村に虐待防止ネットワークの設置を進めていきたいと思いますし、そのネットワーク化を、機能が十分できるようにしていかなければいけないというふうに思っている次第でございます。


○山井委員

 ちょっと時間が迫ってきましたので早口でいきますが、要は、虐待の問題に関しては子供とともに親もセットでしっかりと研修というか教育を受けないとだめだと思います。その意味で、母子生活支援施設も、例えば意欲のある母子生活支援施設で一週間なり一カ月部屋があいているならば、このままでは虐待をしそうだというようなお母さんとお子さんをセットで預かる、そういうふうなことを母子生活支援施設にも機能として持たせてみる、そのようなことについて、大臣、いかがでしょうか。


○坂口国務大臣

 母子支援センターの方も、それはいろいろお忙しいでしょうから、そこまでなかなか受けていただけるかどうかという問題もございますけれども、そういう方もお受けをいただいて、そして、軽いうちに心のケアもしていただけるというようなところがあれば大変ありがたいと思いますし、どういう問題でもそうでございますけれども、初期の段階で早期にケアを行うということが本当に一番大事だというふうに思っておりますから、そうしたことも心がけていかなければならないと思います。


○山井委員 大臣にもう一つ。

 今回、このような行動計画の中で、水島議員の話にもつながるのですけれども、ぜひともこういう虐待された子供や、あるいは一人親世帯の子供の支援ということもこういう行動計画の中に入れていただきたいと思いますし、それで、一つお願いなんですけれども、ぜひとも、今までも行かれていると思いますが、これを機に子育て支援に力を入れるという意味でも、児童養護施設にまた一度行っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。


○坂口国務大臣

 児童相談所等にはお邪魔をさせていただいておりますが、きょう写真を拝見いたしましたような、そういうさまざまな施設に行っているかと言われますと、そこまでは私もようお邪魔をいたしておりませんので、幾つか選択をさせていただきまして、そしてお邪魔させていただきたいと思います。


○山井委員

 時間でありますが、文部科学省さんに一問だけ、せっかく来ていただきましたので、最後に聞かせてもらいます。

 この子育て支援の中で、一つ違った面から今問題になっているのが、高校中退の増加であります。

 御主人が失業される、そのことなどで夫婦間が悪くなって、例えば離婚される。そんなことで、私学の高校から中退をせざるを得ない。そういうケースが本当に最近日本じゅうにふえております。やはり、そこで高校をやめてお母ちゃんを支えるために働くわといったときに、お母さんも、あんた高校ぐらいは出えと言い切れないぐらい、またお母さんもなかなかいい仕事が見つかったり収入を得ることができない。かつ、じゃ、それだったら離婚のときに養育費をもらったらいいじゃないかといっても、実際、今非常にこういう不況の中で養育費を払えない御主人も多いわけです。

 そういう中で、端的に質問申し上げますけれども、高校中退の増加の実態と、奨学金の高校、大学を含めた拡充、これについて、文部科学省さん、お待たせして済みませんでした、よろしくお願いします。


○木谷政府参考人

 お答え申し上げます。

 まず、最近の高校中途退学者数の現状でございますが、平成十三年度の公私立高等学校の中途退学者数は十万五千人で、平成十二年度に比べて約四千人減少をいたしております。高等学校中途退学者数の高等学校在籍者数に占める割合は二・六%でございまして、ここ数年横ばいとなっているということでございます。

 ただ、この中途退学の理由の中には、経済的理由というものも当然にあるわけでございまして、文部科学省といたしましては、これまでも、親の失職を含め経済的理由で子供たちが学校を退学したり進学を断念したりすることがないよう、日本育英会の奨学金について充実を図ってきたところでございます。高校生に対する奨学金について申し上げますと、無利子で貸与を行っておりまして、平成十五年度予算におきましては事業費二百八十一億円で十二万二千人に貸与することとしておりまして、これまで貸与基準を満たす希望者は全員採用をしてきているというところでございます。また、大学生等に対する奨学金につきましても、毎年充実を図ってきておりまして、近年では、無利子奨学金と有利子奨学金をあわせて見れば、貸与基準を満たす希望者はほぼ全員採用しているというような状況でございます。

 特に、保護者の死亡やリストラ等によって家計が急変しても子供が勉学を断念することがないよう、高校生以上の学生生徒を対象にいたしまして無利子で貸与を行う緊急採用奨学金制度というものを設けておりまして、これは年間を通じて随時受け付けるということでございまして、これまで希望者全員を採用しております。平成十五年度予算におきましても、引き続き所要額として一万人分、三十一億円を計上しているということでございます。

 今後とも、教育を受ける意欲と能力のある学生生徒の支援のために、こうした奨学金事業の充実に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。


○山井委員

 ぜひとも制度の充実をお願いしたいと思います。

 時間が来ました。どうもありがとうございました。


○中山委員長

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――


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