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2003年5月28日 

厚生労働委員会 会議録 

 

本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)

     ――――◇―――――
○中山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、労働基準局長松崎朗君及び経済産業省大臣官房審議官桑田始君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。
    ―――――――――――――

中略

    ―――――――――――――

○中山委員長 次に、山井和則君。

○山井委員

 三十分間質問をさせていただきます。

 労働基準法改正の中の有期雇用について質問をしたいわけですが、冒頭、お時間をいただきまして、疑惑がますます深まっております木村副大臣のことを取り上げさせていただきたいと思います。

 今までから、整骨、接骨の保険の適正化に関する疑惑、これに関しては大臣もよく感じていただきたいんですけれども、新聞報道にもありますように、ますます疑惑は深まって、副大臣の虚偽答弁、のみならず、厚生労働省ぐるみの隠ぺいという問題に発展しております。

 もしこの資料がやはり内部のものであったということになったら、これは厚生労働委員会、大変なことになりますよ。三週間ずっと答弁でうそのことを、隠したことを言い続けてきたというとんでもない大失態になるわけですから。

 このことについては、同僚議員も質問しますので、私はここでは質問しませんが、この保険の適正化の問題、また日本精神科病院協会からの献金、十一月の集会に対する謝礼を受け取ったということ、また社会保険病院の問題、疑惑はいっぱいあるわけですけれども、きょうは一点、東京女子医大病院に関する医療事故の被害者であります平柳さんと昨日会う予定が、急遽キャンセルになったと。それで、副大臣は平柳さん側からキャンセルをしたとおっしゃっていますが、平柳さんの方は、そうではない、急に副大臣が条件を出してこられたということをおっしゃっています。

 医療で金を稼ぐ弁護士がふえてくるという、医療事故の被害者の方々や弁護団の方々からしたら絶対許せないそういう発言をされて、そういうことに対して一回会おうということになったにもかかわらず、急に会わなくなった。

 副大臣にお伺いしたいんですが、どういう条件を出されたわけですか、会うときに。

○木村副大臣

 山井先生の御質問にお答えを申し上げます。

 平柳さんとは、去る四月の三十日に電話でお話をさせていただきました。その際に、お嬢様が大変不幸にも医療事故に遭われたと、私も娘が一人おりますけれども、男親にとりましては娘というのは本当にかけがえのないものでございますが、そういう大変不幸な目に遭われたその被害者にある平柳さんの率直な思いや御意見をお伺いをさせていただきたい、そして、平柳さんと、また御夫妻、奥様もちょうど電話に出てこられましたものですから奥様ともお話しさせていただいて、平柳さん、また奥様との個人的な信頼関係をぜひ築かせていただきたい、そういう趣旨で面会をさせていただこうということでお話をさせていただいたわけでございます。

 その後、お目にかかる時間や場所等につきましては、いろいろと事務方に調整させていただいて打ち合わさせていただいた結果、面談の方法にも平柳さんも御了解をいただきまして、一たん二十七日の午後でお目にかかる、この予定が決まったわけでございます。向こうも、これこれこういう形でお目にかからせていただきますよということで御納得いただいて、それで結構ですと、こういうことになったわけでございますけれども、その御了解をいただいた後突然、秘書官の方に電話がかかってまいりまして、先方の、向こう様の方の御判断で面会をお断りしてこられたのですよ。(山井委員「ちょっと、肝心なことを言ってください。どういう条件だから会えなかったんですか」と呼ぶ)いや、だからお話しさせていただいているじゃないですか、今。今ちゃんとお話しさせていただいているじゃないですか。

 私は、お嬢様を亡くされた、その御不幸なことに遭ったその御本人やお母様の、奥様の本当の率直な思いや御意見をお伺いしたい、そして個人的な信頼関係を築きたい、そういうことでお目にかからせていただきたいと、これは私、そのときからずうっとお話しさせていただいているんです。それで、時間や場所等については、それはいろいろと、私はWHOの出張等もありましたから、それはすぐというわけにいきませんからということで、その日にちを、また時間、場所等を設定させていただいて。また、昨日も委員会が二つもございまして……

○山井委員

 もう結構です。質問に答えてないですから。

 私が聞いているのは、どういう条件を出されたから会えなかったのかということを聞いているわけです。

 それで、副大臣が公開の場では会えないとおっしゃったということなんですが、それは事実ですか。

○木村副大臣

 先ほどから何回も申し上げているんですが、面談の趣旨は、平柳さんの率直な思いや意見をお伺いするとともに、私と平柳さん夫妻の信頼関係を構築しようというものであります。

 こうした面談は、何か政策決定の場ではないわけでございまして、何らかの政策決定を行うような話でないわけでございますので、全部、最初から最後まで、例えば速記者を入れて、テレビカメラを入れて、お話しさせていただいてというような場面じゃなくて、何回も言っていますけれども、やはり本当に被害に遭われた、不幸な目に遭った、そういうことのお気持ちをお伺いさせていただきたい、そういう、いろいろなまた思いをお聞かせいただきたいと、そういう本音の意見交換の場でありますから、それを公開してということであれば、やはり本当の、本音の話が出てくるかどうかも、これもわからないわけでございまして、私が言っておりますように、相互の信頼関係を築くというような趣旨ではおかしいんではないかと、まあ、こういうことはですね。それで、向こうもそれを了解されたんですよ。向こうも、それで結構ですよと、向こうはそれでお目にかかりましょうと、こういうことだったわけでございますが、その後突然、向こうから逆にお断りされたんでございまして、私は、まことに残念だ、このように思っているような次第でございます。

○山井委員

 要は、公開であるということに対して副大臣側が拒否されたから、この話はとんざしてしまったということですね。でも、公開の場じゃ本音が話せないからだとか、御自分の立場を考えてくださいよ、副大臣ですよ。副大臣としてああいう暴言を吐いたから、それに対して医療事故の被害者のこの平柳さんが、個人的にではなくて、全国の医療事故の被害者の方々を代表して、ある意味で会いたいと。二人で話してもしようがないわけじゃないですか。それに対して、公開の場では会えないと。

 坂口大臣、私はこういう方は副大臣にはふさわしくないと思います。このことに関しては、もう副大臣、結構です。もう答弁結構ですので。――じゃ、公開の場で会ってもらえますか、それだけ聞きます、最後に。

○木村副大臣

 昨日の場合も、頭撮りは、向こうから公開してくれというので、では頭撮りはしましょうということで、頭撮りのお約束をしたんですよ。(山井委員「何で中身はだめなんですか」と呼ぶ)だって、いろいろな会合だって、頭撮りまでする会合、たくさんありますよ。頭撮りだって、たくさんありますよ、そういう会合は、頭撮りまでして。

 しかも、お目にかかった後のいろいろなお話は、それは後で記者会見をされるということでございましたので、それは記者会見で幾ら発表していただいても構いませんよと、このように言っているわけでございます。

○山井委員

 公の場で全国の医療事故の被害者や弁護団を侮辱する発言をされたんですから、そして委員会でもちゃんと、こういう趣旨だったということをある意味で木村副大臣、弁明されているわけじゃないですか、議事録に残る形で、私や阿部議員の質問に対して。それと同じことを面と向かって公開の場で言ったらいいわけじゃないですか。それもできないというのは、もうとんでもない。医療制度改革本部長代理、こういう役職につきながら、こういう医療事故の被害者の信頼のかけらも持たれないような方は、私は全くその任にあらないと思います。

 それでは、もう木村副大臣は結構ですから、有期雇用の質問に移らせていただきます。この問題は引き続きさせていただきます。

 坂口大臣、先ほど水島議員の質問の中で、有期雇用、一般職が一年から三年、専門職が三年から五年に延ばすという中でデメリットはどうかということに対して、坂口大臣は二番目の大きなデメリットとして、不当拘束、やはり途中でやめられないということを御答弁されました。まさに私もそれが最も大きな問題だと思っております。
 そういう問題が起こらないようにするために、その解消策として今回の法案でどういう歯どめをかけていられるわけですか、大臣。三年雇われたけれども一年たったらいい仕事が見つかったとか、労働条件が余りにも思ったより悪過ぎるとか、あるいは、上司からセクハラされてやっぱりこれはやめたいと思ったときに、先ほどの答弁だったら損害賠償請求される危険性もあるということなので、これは人身拘束で大きな問題だと思うんですが、そういうことにならないように、大臣もデメリットだと認めておられるわけですが、いかがでしょうか。

○坂口国務大臣

 私は、そういうデメリットは、現在挙げられているということを申し上げたわけで、私自身がそれをデメリットだというふうに思っているということを申し上げたわけではありません。ただ、そういう心配が生じることもそれはあるんだろうというふうに私は思います。

 しかし、そういう契約を結びましても、やむを得ない理由がありますとき、あるいはまた、契約が不履行である、今おっしゃったようにセクハラが起こるとかなんとかというような、そういう理由のあるときには、それは現在でも既にできるようになっているわけであります。だから、そういうことが起こった場合には、当然それはそうでしょう。それは正当な理由ということになるというふうに私は思います。

 ただ、問題は、三年間なら三年間というお約束で、そして契約を結んで入られたけれども、例えばですよ、例えば隣に新しい同じような企業ができて、そこへかわるんだというようなことになれば、それは経営者の側としては決して快い思いをするわけではありませんから、法律でどうこうというような話にもなりかねないわけでございますけれども、しかし、普通の場合、常識的に考えて正当な理由のある場合、そしてまた、どうしてもそうならざるを得ないようなこと、あるいは契約したこととはそれは全然違うというようなことが起こってまいりましたときには、現在でもそれはやめることができるということになっているわけでございます。

○山井委員

 やむを得ない理由がなくやめた場合は損害賠償の危険性があるということなんですけれども、今おっしゃった、正当な理由があれば大丈夫だというような趣旨の答弁だったんですけれども、そうしたら、例えばもっといい会社からどうしても来てくれと引っ張られたとか、その会社が三年後にちょうどあくかどうかもわからないわけですから、そういうのはある意味で正当な理由だと思うんですが、そういうケース、あるいは労働条件が思っていたより悪かったとか、働いてみたら思っていた職種ではなかったとか、そういうふうなことでも正当な理由として、坂口大臣、今答弁を下さいましたけれども、かわることができるんですか。

○坂口国務大臣

 例えば、初めに約束をした賃金が支払われないというようなことになれば、これは契約違反でありますから、それは理由になると思いますし。それからまた、例えば御家庭の状況によってどうしても仕事が続けられないということだってあり得るというふうに思いますが、そうしたことが起こったときでありますとか、さまざまな理由があるというふうに思いますが、そこは労使で常識的にお考えをいただいて、それはまあやむを得ないなというときには、それは現在もやめることができるようになっているということを私は申し上げているわけであります。

○山井委員

 実際には、損害賠償請求されるかもしれないということで、泣き寝入りをされているケースが多い、それがまだ一年だから顕在化していないんではないかというふうに思います。

 鴨下副大臣、このような問題に関して、有期雇用の方は具体的にどのような仕事をされているのか、また有期雇用の今までのトラブルはどのような相談があったのか、そのことについて答弁をお願いします。

○鴨下副大臣

 平成十一年度の有期契約労働者に関するアンケート調査によりますと、事業所調査では雇いどめに伴うトラブルがあったという事業所は約一割程度あるというようなことでありますが、そのトラブルの原因は、理由に納得してもらえなかった、更新への期待について認識の違いがあった、こういうようなことが多くなっております。また、これは労働者側の調査の中では、過去に例えば雇いどめの経験を持つ労働者の五六・七%は雇いどめに不満だった、これが五六・七%でありますが、特に不満を感じなかったというのが三八・九%というようなことであります。

 また、これは労働基準監督署の監督において認められた労働基準法第十四条、契約期間についてでありますが、の違反の件数はそれぞれ、平成十一年が十件、それから平成十二年が八件、平成十三年が十一件となっておりまして、有期契約労働者が契約期間中に退職したことに伴って使用者から損害賠償請求をされたような具体的事案については、厚生労働省としては、現在のところは把握はしていないというのが現状であります。

○山井委員

 実際そういう問題が、一年から三年になってくると途中でやめられない、これは職業選択の自由、転職の自由というものを侵す重要な問題だと私は思っております。例えば、エステティシャンの方が資格を取るための教育訓練をさせたのだから簡単にやめられたら困る、その分賠償しろというような問題。あるいは、新聞配達員も、最近なかなか集まらないので、募集の経費をかけているんだからやめるなというような問題。また、准看護師さんに関しては、今までもお礼奉公のような問題もあったわけなんですね。こういうふうなことを、今回の有期雇用の延長で選択の幅が広がると言いながら、実際には選択の幅が狭まっているというふうに私は思います。

 それで実際、坂口大臣、公明党さんの政策を見ましても、二〇〇二年の十一月に発表された公明党さんの全国大会での政策の中で、卒業後三年以内に離職する若年者が極めて多く、大卒約三割、不安定就業若年者を生み出している現状を改善するために、各学校が卒業後一年から三年程度の就労状況を把握し、ハローワークの専門職員等と連携の上、就労相談や職業紹介等を継続する体制を整備しますということが公明党の政策にも入っているわけなんですね。

 こういうふうに、大卒の方も三年以内に三割がやめておられる。そういうふうなケースを考えると、これは三年の有期雇用ということで、一年目以降やめたいのにやめられないということが非常に大きな問題になってくると思います。憲法二十二条第一項には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」ということが書いてありますが、やはり、やめる自由を保障すべきではないですか。これは憲法違反にもつながりかねないんではないでしょうか。坂口大臣、お願いします。

○坂口国務大臣

 どのような働き方を選ぶかは、その人の自由であります。常用雇用を目指す人もおりましょうし、あるいは有期雇用を目指す人もおりましょうし、あるいはまた有期雇用ではなくてパートのような働き方を目指す人もおりましょうし、それはその人が今後自分はどういうふうにしたいか、そういう将来に対する希望あるいはまた将来に対する予測、そうしたものを中心にして決定をしているんだろうというふうに私は思います。

 したがいまして、三年契約という上限があったとしましても、その人が契約で雇われますときに、いや、私は、いろいろなことがあって、考えていることもあるので、一年ならば一年の契約にしてくださいということだってこれはできるわけであります。何も三年と決まったわけではないわけでありますから、そうした契約にすればいいというふうに思いますし、その人がどういうお考えで職を持とうとしておみえになるかということによってこれは違ってくる。ですから、勤める皆さん方も、勤めます以上はそのことを自分がやらなきゃならないという責任を持ってお勤めになるわけでありますし、そしてそのためには覚悟を決めて働かれるわけだというふうに思います。

 ただ、何が起こるかわからないというのが人生でございますから、そうはいいましても、三年働こうと思っていたけれども途中でどうしてもやめなきゃならないということだって、それは私も起こり得るというふうに思います。そのときにお話し合いをして、そういうことが起こったのならそれはやむを得ないなというふうに経営者側も理解してもらえるようなことならば、それはそれで認めるということになっているということを申し上げているわけであります。

○山井委員

 まさに坂口大臣も今、三年と思っていたけれども一年過ぎたらやはり移ろうかという思いを持たれる方もいるということはお認めになりました。まさにそこ、個々に経営者側との話でということですが、やはり労働者の立場は弱いわけですから、契約違反、訴訟しますよということを言われたら、なかなかやめるわけにはいかない。そういう意味で、やはりこれは個々の話じゃなくて、きっちり制度としてそういう柔軟な、まさに転職の自由を認める、まさに労働者の選択の幅を広げる改正にすべきだと思うんです。

 きょう、資料を配らせていただきました。これはジュリストの「労基法改正と企業の人事」というもので、その中で当時の旭硝子の人事部長の平田さんと富士通の人事課長の三宅さんが次のようなことをおっしゃっているわけですね。まず、富士通の人事課長の三宅さんは、今の、まさに坂口大臣がおっしゃった問題に対して、「拘束を心配するのであれば、逆に「一年を超える場合については、解約を認める条項を必ず入れること」としておけばいい」と。これは経営側の方がおっしゃっているわけですね。その次のページ、三ページ、逆に旭硝子の人事部長の平田さんも「本当は五年なら五年保障してあげて、一年以降はどうぞと」、どうぞというのは自由にやめられますということなんですけれども、「どうぞというふうにしてあげたほうが、よっぽどお互いのニーズに合っていることになります。」ということを経営側の方もおっしゃっているわけですね。

 坂口大臣、こう考えたら、やはり柔軟にここは、三年契約だけれども一年目以降は自由にやめられる、そういう柔軟な形にした方がいいんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

○坂口国務大臣

 それは働く人にとりましてもメリット、デメリットのあることだというふうに私は思いますね。だから、一年なら一年でそれはやめてもいいよということになれば、逆に経営者の側からも一年たてば一年でもうやめさせてもいいよということになりかねないと私は思います。したがって、そこはある程度きちんとしておいた方が、私は、働く人のためにもいいのではないかというふうに思います。三年働けるというふうに思っていたのに、突然もうあなたいいよというふうに言われても困るわけでありますから。

 私は、山井先生の御意見というのは、尊敬する山井先生でございますからできるだけ尊重したいとは思いますけれども、それはメリット、デメリットのある話でございます。ここに書いてある、経営者の皆さんですから、経営的感覚の中でおっしゃっているということもよく理解をしていただかないといけない。両方ある。ですから、必ずしもそうした方がいいとは私は思いませんけれども、山井先生もそこはよくひとつお考えをいただきたいと思います。

○山井委員

 私は、三年じゃなくて一年と言っているのではなくて、私の提案というのは、三年は雇用を保証する、しかしやめる理由は一年からオーケーという話で、実際、次の四ページを見てください。こういう片務的と言われる、片方だけ自由にするという形があり得るわけですね。
 実際、この四ページ目の資料にありますように、二〇〇一年の十月二十三日の労働政策審議会の労働条件分科会でも、大阪大学の大竹先生が、「使用者側のほうだけ三年は解雇しないけれども、契約期間は三年であって、三年経ったら更新はしないかもしれないというタイプの契約。労働者のほうは、いつ辞めてもいいし、あるいは最低限一年は有期雇用と同じような形で扱ってもいいかもしれませんが、このように片方だけバインドするタイプの契約を法制化するということはどうだろうか、というのが私の提案です。」というふうに、規制緩和論者の法学者の方もおっしゃっておられるわけです。

 また、次のページの五ページでも、同じ委員会で十月三十日、諏訪康雄法政大学の教授が、「期間を長めにしていくというときには、こうした片務的有期雇用の可能性をも選択肢の中に入れてみたらどうだろうか」と。

 ですから大臣、必ずしも三年、三年ということではなくて、雇う側は三年保証する、しかし労働者にとっては、不当拘束をなくすために、一年以降は自由にやめられるという可能性を、まさに分科会の中でも、規制緩和論者の、法学者の、労働法の学者の先生方が提案されていられるわけです。これだと、労働者にとっていい、かつ、先ほど言いましたように、雇用者にとってもいいというふうに思うんですが、私の尊敬する坂口大臣、どうかよろしくお願いいたします。

○坂口国務大臣

 学者先生もいろいろなことを言いますから、それはいろいろ意見はあるんだろうというふうに思いますが、常識的に考えまして、雇う方、雇われる方、やはりそれぞれの立場があるわけであります。

 雇う側からいたしますと、三年という契約で雇って、そして何とか頑張ってもらいたいと思っているのに、半年でもうやめますと言ってやめられるということになると、また一からやり直さなきゃならないというようなこともあるし、また、働く側からいえば、三年という立場で契約はしたけれども、やむにやまれぬ事情が生じるということだってそれはあり得るというふうに思うわけです。だから、やむを得ない事情のときには、双方、それは認めましょうよということではないかと思うんです。

 賃金を、例えば月収三十万なら三十万で契約をしたら、隣に三十五万のところが出てきたからといって、すぐやめますよというようなことでもぐあいが悪いということではないかと私は思うんですね。ですから、そこは双方が、片方はいつやめてもいい、片方はやめさせたらいかぬというような調子にうまくいくかなというのを、私は、一遍それは整理して考えないといけないのではないか。逆の場合のことを言われる可能性も、起こってくる可能性がある。そこは法律的によく整理をして考えないといけないのではないかという気がいたします。私、法律の専門家ではございませんから、そこは一遍よく整理をしないといけないというふうに思います。

○山井委員

 まさにそこなんですが、労働法の学者の方々も分科会でこういう御意見を複数おっしゃっておられる。おまけに、先ほど水島議員の話にもありましたように、七ページ、八ページを見てください。実際既に労働基準法の枠内で、大学教員等の任期に関する法律の中で、八ページ目、具体的にいいますと、私立の大学教員の任期、坂口大臣、ちょっと見ていただければありがたいんですけれども。八ページの五項、下線が引いてあるところでございます。右上に八ページと書いてありますが、そこを見ていただくと、私立大学の教員の任期というところが、「第一項の規定により定められた任期は、教員が当該任期中(当該任期が始まる日から一年以内の期間を除く。)にその意思により退職することを妨げるものであってはならない。」ということで、裏返すと、今申しましたように、複数年契約するけれども、ただ、一年目以降は自由に退職できる、これは有期雇用という部分と、かつ職業選択の自由、不当拘束を防ぐという部分を両方ミックスした、労働者の選択を縮小させない法律、この部分というのが今現にあるわけですね。これは先ほどの局長の答弁でも、これは今回の法改正の後もこのままでオーケーですという答弁までいただいているわけです。

 ということは、坂口大臣、今回の法改正の趣旨は労働者の選択の幅の拡大なわけですから、三年と思って勤めたけれども、一年目以降やめられなくてトラブルが続出した、これは結果的には不当拘束の現代版、お礼奉公を一般的に拡大する、大変な悪い法改正ではないかということが、私は問題になってくると思うんです。一年だったから今まで我慢していたけれども、三年になると、それが深刻な問題になってくると思います。

 このような私立大学に実際あるようなことを、やはり拡大して、一年目以降は退職が自由にできる、そういう形に考えていく、これについて坂口大臣、前向きな御答弁をお願いします。ぜひとも御検討いただきたいと思います。

○坂口国務大臣

 三年というのは、上限を設けておるわけでありまして、何も全部三年にしろとか五年にしろということを言っているわけでは決してございません。

 私立の学校のこういう項目がありますことを、先ほども水島議員にお示しをいただいたところでございますが、確かにこういう項目がございますし、これからもこれが生き続けるということだそうでございますから、こういう生き方もそれはあるんでしょう。

 いわゆる学問の世界におみえになる皆さん方の問題と一般の人たちの問題を同じに考えてもいいのか、それともそこは若干違うのか、そうしたことも少し検討しなきゃならないというふうに思いますから、私もここで、私立の問題にできているから、まあそれじゃみんなそうしましょうともなかなか言いがたい。少しこれは検討を要することだと思っております。

○山井委員

 もう最後、一つだけなんですが、先ほど申し上げましたように、大卒の方も、三年以内に三割の人がやめています。だから、本当は常用雇用にしてほしいと。ところがもう、例えば量販店なんかでも、契約社員しか雇わないというようなところも出てくるわけですね。それで、泣く泣く、三年雇用しかないからといって入った。ところが、やはり二年目ぐらいに、いい会社が見つかったとか、いろいろな状況で、やはり移りたいというケースがこれから続出してくると思います。

 それを、この法改正をしてしまうと、恐らく坂口大臣は、これは職業選択の自由を拡大する、労働者にとっていい改正だと信じてこの法案を出していられると思うんですけれども、しかし実際には、そういう職業選択の幅を小さくして、不当拘束になってしまう、そういう法案であったということになってはならないと思いますので、ぜひともこの片務的な、一年以上の部分に関しては、自由に転職ができる、退職ができるということを前向きに検討していただきたいと思います。最後にそれだけ答弁を求めて終わります。坂口大臣、よろしくお願いします。

○坂口国務大臣

 山井議員の御主張はよくわかりました。我々、こういう法律を出させていただいているわけでありますから、この法律をぜひお願いしたいというのが現在の私の立場でございますけれども、今後、こうしたことを進めていく上で、それを進めていく中で、うまくいかない部分もそれは出てくるかもしれません。そうしたことについては、常時やはり見直していくということは大事でございますから、よく理解をし、頭の中に十分に入れておきたいと思います。

○山井委員

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

○中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩


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