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2002年6月12日 

衆議院厚生労働委員会 議事録 

健保法改正に関して

◎山井委員

 民主党の山井和則です。二十分間で四問質問をさせていただきたいと思います。私も少し早口になるかもしれませんが、小泉総理も、ぜひとも簡潔に前向きな答弁をお願いしたいと思います。

 まず最初に、先週金曜日、この委員会室におきまして強行採決が行われました。今の釘宮議員の質問にもございましたように、この健保法の改正案は四つの重要法案の中でも最も反対意見が世論調査でも高い法案であります。

高齢者やサラリーマンの方々の自己負担をアップし、そしてそれによって受診抑制がかかって、本当に手おくれになって命を失う方も出てくるかもしれません。

また、戦後最悪のこの不況のときにこういう自己負担増をやるということは、五年前の例を持ち出すまでもなく、ただでさえ今深刻になっている失業者の増加、自殺者の増加、家庭崩壊の増加に私はつながっていくと思います。

そういう意味では、今回の法案は断固として私たちは許すわけにはいきませんし、強行採決に強く抗議をいたします。

 しかし、その中で、先ほどの釘宮議員の質問にもありましたが、何が何でも負担増反対と国民が言っているわけじゃないんです。

そのためには抜本改革をやってほしい、そして同時に医療の質をアップしてほしい、そういうものが明確に出るならば、すべてが反対ではないということなんですね。それが見えないから、今みんなは反対しているわけです。

 そこで、各論について三つほどお伺いしたいと思います。

 まず、きょう、資料をお配りしておりますが、一番最初は社会的入院の問題であります。医療制度改革の中で、この四月の診療報酬の改定、さまざまな混乱と問題を現場に投げかけております。

 そして、私も、この政治の世界に入った一番大きなきっかけは、病院で、行き場所がなく長期入院しているお年寄りの方々のお世話を私も学生時代にさせてもらう中で、人生の終末がこんなことでいいのか、そういう本当に胸に突き刺さるような思いが一つの原点となって私はこの政治の世界を志しました。

 しかし、今回の改定によって、この図にもございますように、半年以上の長期入院で社会的入院と判定された方は一部特定療養費化されて退院を促進される、このことによってますます行き場所を失うお年寄りがふえてくるんです。

 手元にある資料、そしてこのパネルにもありますように、例えば、この二人のお年寄りは、五年、四年入院して、そして今、特別養護老人ホームに申し込んでおられる、ところが、特別養護老人ホームが満員なために病院で待っておられるわけです。世界じゅう探しても、介護施設があいていないからという理由で病院で待っている、そんな介護施設が不足している国なんて日本だけです。これは本人にとっても、また社会のコストにとってもよくないことは明らかであります。

 そして、何よりも、自宅にも帰れない、あるいは施設も満杯だという中で、たらい回しに遭うことが一番お年寄りにとっては苦しいわけです。今回の診療報酬の改定、長期入院を減らしていくという趣旨には理解できないわけではありませんが、それによってお年寄りがたらい回しに遭って死期が早まることがあっては絶対になりません。

 小泉総理、このことによって、この改定によって、お年寄りがたらい回しに遭わない、介護難民が生まれない、行き場所のなくなる高齢者の患者が出ないということをこの場でお約束いただきたいと思います。――いや、ちょっと、きょうはだめですよ、それは。総理のためにきょう時間をとっているんですから。大臣にはこれ聞いているんですから、今までから。

(小泉内閣総理大臣「大臣に先に答弁させますから」と呼ぶ)

いや、だめです。それはだめですよ。当たり前じゃないですか、今までからこのことは大臣には聞いているんですから。ちょっと待ってください。何のためにきょうやっているかわからないじゃないですか。

○森委員長 坂口厚生労働大臣。

◎山井委員

 ちょっとそれはだめです、それはだめです。そんなのじゃ何のためにやっているかわからないじゃないですか。これは事前通告していますので、この質問は。

○小泉内閣総理大臣

 大変専門的な領域に入るものですから、今の御意見を……

(山井委員「専門的じゃないですよ」と呼ぶ)

努めて改善策を講じているわけで、具体的な点については、厚生大臣せっかく出席しているわけですから、厚生大臣に答弁していただいた方がいいなと思いまして……

(山井委員「いや、事前通告でこの質問は総理にと言っていますよ」と呼ぶ)

言っていますが、それは、だれが答弁するかという点について、私もこうして答弁しているわけです。

 今の御意見、わかりますよ。そういう改善策を今講じているんですから。その具体的な改善策については、厚生大臣がじかに答弁された方がいいでしょう。

○森委員長 坂口厚生労働大臣。

◎山井委員

 いや、厚生大臣は結構です。きょうは総理の総括質疑ですから。

○森委員長 私の指示に従ってください。

◎山井委員

 それはちょっとおかしいんじゃないですか。事前通告もしていて、時間がないんですから。(発言する者あり)

 

○森委員長 質疑を続行してください。

 

◎山井委員

 今回の措置によって、たらい回しに遭うお年寄りがなくなるように、介護難民と言われる、病院で介護施設を待っているお年寄りがなくなるようにするということを、小泉総理、お約束ください。

○小泉内閣総理大臣

 そのような措置をするように、今、改善策を講じ、いろいろ検討しているわけであります。 

◎山井委員

 今の答弁を、本当に、お聞きしましても、余りにもいいかげんです。

 苦しい戦争を経て、本当に、日本を支えるために頑張ってこられたお年寄りが、今、痴呆症や寝たきりになって、そして、病院から追い出されて自宅に戻っても、家族が介護できないということで、またどっかに行かれて、ピンポン玉のようにたらい回しになって死期が早まっている例というのが多いわけです。そういうことがなくなるように、小泉総理、坂口大臣、これからも対応していただきたいと思います。

 そして、次の質問に移らせていただきます。

 今回、情報開示の問題が医療制度改革の中でも大きなポイントとなっております。そして、このことに関しては附則の中で述べられております。附則の第二条第六項に、医療情報の開示や評価についてということが言われておりますが、これも、いつまでにやるかということも明確になっておりません。

 そんな中で、日本では今、医療事故において二万人以上の方が亡くなっているというふうに推定をされています。この中で、具体的に私、一つお伺いしたいと思います。

 やはり、今回の三割負担をする前にやることがあると思います。医療のむだな部分をどうやって省いていくか。そのためには、しっかりとレセプトを開示して、そして、患者さんが、どういう医療が幾らお金をかけて自分に行われているのかということをきっちりチェックしていくことが必要です。

そのためには明細つきの領収書をもらうという運動も盛んに行われていますが、明細つきの領収書もまだまだ十分もらわれていないんですね。こんな、どんな医療が行われているかという中身もわからないのに負担増だけというのは断じて許せないと思います。

 そこで、具体的に、この資料の二ページを見てください。

 まさに小泉総理が厚生大臣であった五年前に、小泉総理の九七年の予算委員会の答弁で、この新聞記事にもありますように、病院で死んだ子供のレセプトを親が見れない現状は憤慨にたえないという当時の小泉厚生大臣の英断によって、遺族へのレセプト開示になりました。このことに関しては本当にすばらしい英断だと思っております。

 しかし、残念ながら、実際、壁があるんですね。これは、次のページ三にもございますように、開示請求をすると、医療機関の方に、だれだれの御遺族に開示されましたよという報告が行くことになってしまっているんですね。

となると、やはり、これがわかってしまうと、医療機関が自分たちの治療が疑われているんじゃないかと、そういうふうな疑心暗鬼にお互いになって関係が壊れる、そういうこともあって御遺族としたらなかなか請求できないんです。

 先日答弁いただいた内閣府の個人情報保護法案の担当の審議官の方も、こういうレセプトを請求したというような御遺族の行動に関しては個人情報である、これを本人の許可なく知らせるのは個人情報保護の観点からも問題があるということを答弁されています。

 そして、小泉総理、これは私、防衛庁のリスト問題と一緒だと思うんですね。要は、防衛庁に情報を請求したら、だれが請求した、どんな身元の人間かというのを一々調べられる、チェックされるとわかったら自由に請求できないです。

 そこで、小泉総理にお願いがあります。五年前の英断に続いて、今ここでやっている、遺族がレセプト開示を請求したらそれが自動的に医療機関に行くというのをなくして、逆に、本人の了解なくしては開示請求したということを医療機関に言ってはならないという通達をぜひとも出していただきたい。

そうすれば、もっと自由にレセプトというものが見れると思いますし、それによって、患者さん、御遺族と医療機関との信頼関係が上がっていくし、また、不正診療、過剰診療、そういうことをやられる方は少ないと思いますが、そういうのも減っていくと思うんですね。

 小泉総理のおかげで五年前にレセプトの遺族への開示が実現したわけですから、もう一歩ここで、小泉総理、もうそういうことはこれからしてはならない、遺族の了解なくしてはならないということを、個人情報保護法案を提出されている政府の責任者として、ぜひとも御答弁願いたいと思います。

○小泉内閣総理大臣

 情報の開示とプライバシーの保護、情報の管理、これを両立させるということは非常に大事だと思っております。特に病名につきましては、家族の間でも、患者本人と家族の場合では違う場合があるわけです。そういう点から考えて、今、委員の指摘される方向で見直すように検討しているところであります。

 特に、遺族へのレセプト開示につきましても、御指摘のような批判もあるものですから、それをどのように具体的に見直していくかということを今検討しているところでありますので、私は、しばらく時間をいただく必要があるのではないか。

 特に、情報開示の点で、親切だと思ったところが、人によっては親切と受け取らない面があるんですね。私は厚生大臣をしたときに思いがけない意見に会ったんですが、それは、年金をもらう方が、年金額を通知してほしい、自分はどの程度年金があるんだということで、厚生省としては親切な気持ちで年金の額を通知していたわけです。ところが、その通知を受ける中で意外と多かった不満は、この年金の通知が家族に見られるのが嫌だ、だから、この年金額が何とかわからないようにしてくれないかという要望が多かったものですから、厚生省としては、年金に、今ではちゃんと、本人しかわからないように、シールを張って、家族でも見れないようにしているんです。

 年金が本人に行った、家族も見たい、そのシールをはがすと二度とこのシールがつかないようになっている。だから、本人しか見ることができないようにしてくれという要望にこたえて、厚生省は、シールを張って、本人しか見られないようにしたんです。

 だから、情報の開示と情報の管理、個人のプライバシーの保護というのは非常に重要だと思っています。

今言った、この情報の問題、レセプト開示の問題。御意見を踏まえて、検討して結論を出したいと思っております。

◎山井委員

 今の小泉総理の答弁は逆だと思いますよ。

だからこそ、勝手に、開示を請求したという情報を医療機関に本人の了解なく知らせてはならないという結論になるわけですよね、うなずいておられますが。

いや、だから、こういうことは、本人の了解なく知らせることはしないという通達を出していただきたいんです。それは小泉総理の今の答弁の趣旨なんですが、小泉総理、ちょっと。

○小泉内閣総理大臣

 それは私はいいことだと思っております。その方向で検討したいと思います。


◎山井委員

 ありがとうございます。

 そういう本当に質のアップというものをしっかり一つ一つやっていく、そうしないと、自己負担増に対する国民の納得は当然得られないわけです。

 次に、この医療に対する問題点の大きな一つのポイントが、日本の救命率が非常に低いということであります。この質問に移らせていただきたいんですが、資料の次の四ページを見てください。

 お医者さんが乗っているドクターカーというものと、救急救命士が乗っている救急車とでは、こういうふうに心肺停止患者の救命率が非常に違います。

これは、この救命効果検証委員会でも、救急救命士が、三点セットと言われる、医師の指示なし除細動や気管内挿管、薬剤投与というものができないからだということが報告書でも明らかになっておりまして、次の五ページにもありますように、

諸外国に比べて、日本の救急救命士は多くの研修を、同じぐらいの研修をしているにもかかわらず、ここの下線にありますように、指示なし除細動も薬剤投与も、そして気管内挿管もできておりません。ここに出ておりませんが、韓国でも、もうこのことは日本よりも進んでいるわけです。

 このことに関しては、坂口大臣のリーダーシップのもと、今、検討会で研究をされているわけですけれども、人の命にかかわる問題で、十年間、救急救命士法ができてから、ずっと懸案になって、先延ばしされてきているんですね。

ぜひとも、やはりここで小泉総理の英断によって、今回の検討会を契機に早急にこの救急救命士の三点セットの拡大、業務拡大というものをやっていくんだ、そして救えるのに救えない命を減らしていくんだという御決意、小泉総理にこの場で聞かせていただきたいと思います。

○小泉内閣総理大臣

 救急救命士と医師との関係については、救急救命士を導入する際にも非常に多くの議論が出たところであります。私も承知しております。ようやく救急救命士制度が今定着してきて、多くの患者さんの命を救っている。

今御指摘の意見を踏まえまして、この点については、医師免許を持たない救急救命士がこれだけのことをしていいんだろうかという問題もありますが、要は救急患者の命を救う、これが一番大事だと思います。そのためには何が望ましいかということを考えて、今言った点も含めて検討して、適切な、救急患者本位の立場に立って、改善策を講じたいと思います。

◎山井委員

 ちょっと余りにも漠然な答弁だと思います。御存じのように、もう十一年前からこのことは懸案になっているわけです。

 そして、繰り返しになりますが、この五ページにありますように、欧米及び韓国と比べても明らかに日本の救急救命士の方の業務範囲は狭くて、それによって、救えるはずの命が救えていないという面が、この報告書でももう一年以上前に出てきているわけですね。

 はっきり言いまして、何でも検討会に任せるということでは、政治家は私は要らないと思います。やはり本当に医療改革をする気があるんであれば、この十年間も放置されている救急救命士の業務拡大をやはりやっていくんだということを、小泉首相ははっきりと決意を示してもらいたいと思います。そうしないと、何でも検討会に任せていく、検討会ももちろん重要だと思いますが、やはり一歩踏み出すところは賛否両論もある問題なわけですから、坂口大臣のリーダーシップ、そして小泉総理のリーダーシップだと思います。

 小泉総理、やはりもう十一年もある意味ではほったらかしにされている問題なんです。人の命にかかわる、一分一秒を争う問題ですので、小泉総理、ぜひとも前向きな決意を聞かせてください。


○小泉内閣総理大臣

 よく聞いていただければわかると思うんですが、私が言っているように、救急患者の命を救う、これが大事なんですから、その視点に立って今あるべき改善策を講じている、これが私の決意であり、その方向に沿って、私は着実に進んでいくべきだと思っております。

◎山井委員

 そういう、政治家が責任逃れをして問題を先延ばしにしているから、この問題が十年以上も放置されているんです。坂口大臣はリーダーシップを持って今検討会をやってもらっています。しかし、それがもう十年以上もずっと、こうなっていくわけですね。

 それで、小泉総理、先ほどの釘宮議員の質問にも続きますが、今回の抜本改革、一つの一番重要なポイントは、だれがリーダーシップをとるかということだと思います。私たちは三カ月かけて審議をやってきました。多くの場合、坂口大臣が、抜本改革、こうやっていきたいということを答弁されました。その大臣がかわるということがあったら、全然私たちの審議の意味がなくなるじゃないですか。私も委員会で坂口大臣にこのことを質問しました。そうしたら、小泉総理が決めることだとおっしゃいました。公約を守らないと政治の信頼は崩れます。小泉総理も、就任当時、一内閣一閣僚とおっしゃいました。五年前の医療改革のときに、その後抜本改革が、約束したにもかかわらず、当時の小泉厚生大臣、できなかったのは、厚生大臣をかわったからでしょう。

 一番重要なポイントです。これは譲れません。坂口大臣はやる気満々ですから、どうか、小泉総理、医療制度を抜本改革するという担保を、坂口大臣を留任させるという答弁で示してください。

○小泉内閣総理大臣

 抜本改革の決意には変わりありません。

◎山井委員

 答えになっていないですよ。本気でやる気なんですか。だれがリーダーシップをするんですか。医療制度の抜本改革の途中でそのリーダーをかえる、そんなことをやっておきながら、本気で医療制度改革をやる気があるとだれが信用するんですか。

もっと誠意ある答弁をお願いします。国民が見ていますよ。そんなことも約束できないんですか。

○小泉内閣総理大臣

 私は、誠意を持って答弁しているつもりですよ。坂口大臣を信用して、抜本改革をやろうという今決意で取り組んでいる。私の内閣も抜本改革を目指している。総理大臣の私が言っているんだから。信用するしないはあなたの勝手ですが、私は抜本改革をやる。

◎山井委員

 小泉総理、今約束してくださいましたね。坂口大臣、信用してくれとおっしゃったということは、坂口大臣とともに抜本改革をやっていくということですね。そういうお約束と受けとめます。どうか、坂口大臣を、私たちの委員会での質疑を生かして抜本改革を、坂口大臣、リーダーシップを持ってやっていってください。それがせめてもの担保であります。

 以上、本当に国民の命と生活がかかわっているこういう重要な法案が強行採決されたことを、非常に私は怒りにたえません。そして、このことによって、失業者、自殺者、家庭崩壊がまたふえていく危険性があります。

 小泉総理に再度申し上げます。どうか、国民の痛み、お年寄りの方々の痛み、患者さんの痛みに本当に心を注いで、これによって泣くことがないように、やはりこの改革案、私は撤回をしていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。


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