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2001年06月20日 

衆議院 厚生労働委員会 議事録

欠格条項見直しについて      やまのい和則 部分掲載


山井委員 

民主党の山井和則でございます。

 三十分間という貴重な時間で、今回のこの欠格条項の見直しについて御質問をさせていただきます。

 当然のことながら、今回のこの欠格条項の見直しということは大きな一歩前進であると思います。そういう意味で私も賛成の立場ではありますが、ただし、最大の懸念は、ここで見直したけれども、数年たって見たけれどもまだまだ障害のある方がお医者さんや看護婦さんや薬剤師さんになるケースが非常に少なかったということでは、やはり絵にかいたもちであったということになりかねません。そういう意味では、いかにこれを実効力を持たせるかということが大事だと思っております。

 午前中、聴覚障害のお医者さんの藤田先生、また肢体不自由の医学部学生の熊谷さんの、参考人の方々のお話をお聞きして、こういう方々にぜひとも全国の学校を回って講演をしていただきたい。そうすれば、障害のある子供たちも、将来僕もお医者さんになるんだ、私も看護婦になるんだ、私もお医者さんになるんだというふうな、そういう夢を大きく持ってくださるようになると思います。

 さて、私の知り合いのお孫さんで、あかりちゃんという四歳になるお子さんがいらっしゃいます。私も先日御相談を受けたんですが、十カ月の時点でやはり聴覚障害であるということがわかった。それで今、聾学校に通っておられまして、先日、私もそこを見学に行かせていただきました。

 本当にかわいらしくて、元気いっぱいのお子さんなんですが、やはり親御さんとしては、将来この子がどういう学校で学べるんだろうか、また大学で学べるんだろうか、あるいは人生、どういう職を持って生きられるんだろうか。恐らくあかりちゃん本人は、まだ四歳ですから、そこまでは考えていないとは思うんですけれども、やはり親御さんはもうそういうことを今から考えておられます。そういう意味では、今回のこの見直しが、将来の、あかりちゃんに代表されるように、多くの障害のある方々の人生の選択肢と可能性と自己決定を広げるものであってほしいという思いを持っております。

 まず最初、大臣にお伺いしたいんですが、私自身の理解は、今回のこの欠格条項の見直しということに関しては、障害のある方々にもちょっと門を開いて、渋々、看護婦さんやお医者さんや薬剤師さんになることを認めてあげるよという消極的な意味じゃなくて、これから二十一世紀の共生の時代において、これからはどんどんそういう方、いろいろな仕事で社会参加していってくださいという、それを社会が、国がバックアップしていきますよという積極的な意味ではないかと私は思っているんですけれども、そのあたりについて、大臣のこの法案についての思いをお聞かせいただければと思います。


坂口国務大臣

 お話のとおり、この法律案というのは、やはり障害者の皆さん方に大きな夢を持っていただく第一歩でなければならないと私も思っております。今回のこの法律案が完全なものではございませんけれども、まだまだこれから進めていかなければならないというふうに思いますが、その第一歩をこれが開くというふうに思っているわけでございます。

 これから進めていきますためには、一つは、いわゆる資格を取得していただきます試験、これに合格をしていただきますための、いわゆる試験を受けていただくためへの配慮というものがまず第一。それから次には、就職をしていただきますときの就業環境における配慮というのが二番目にあって、それからもう一つは、障害を補う機器と申しますか機械器具、やはり補うものの開発が必要ではないかというふうに思っております。

 これからこの法律が皆さん方の御協力によって成立をさせていただくということになりますと、まず最初、来年の四月から、三月からと申しますか、いわゆる入学試験があるわけでございまして、まず最初は試験を受けていただきやすい環境を、これは文部省の方に御協力をいただいて整えていかなければならないというふうに思います。

 そして、その内容によりまして二年制のものもありますし四年制のものもありますし、あるいは医学部のように六年という長いものもございますけれども、その学生生活を送っていただいておりますその間に、やはり、今度はお勤めをいただきますときに、勤めていただきます職場の環境というものを整えていく準備を、それぞれの大学やそれぞれの病院でやっていただかなければならないというふうに思っている次第でございまして、その一歩をここに踏み出させていただくという思いでございます。

山井委員

 ありがとうございます。

 今、いろいろな補助的な手段をどう整備していくかということも含めて御答弁いただいたんですけれども、やはりこれを実効力を持たせるためには、そのような補助的な手段の整備というものをできるだけ早急に進めていただきたいと思います。また、そういう意味では、これは五年後の見直しということになっているようですけれども、ぜひとも三年後ぐらいに見直して、現場に問題点がないかということをきっちりチェックする必要があるのではないかと私は思っています。

 今まさに試験の話を大臣おっしゃいましたが、医学部に通った、看護学校に通った、問題はその後きっちりと教育が受けられるかということだと思います。実際、実習のこともあるわけです。そこで、私、お二人の方のことをまた御紹介させていただきたいと思います。

 一人は今、工学部の大学二年生の男子学生さんです。私の知り合いです。高校時代まではクラスメートに支えられて一生懸命勉強して、聴覚障害ながら国立大学の工学部に進まれました。そういう聴覚障害ですから、やはりパソコンや情報通信に関心があるということで、情報工学を勉強しておられます。

 しかし、大学に入って、一年、二年とノートテーカーの方々をボランティアで集めて何とかやってきたけれども、だんだん専門学科に入ってくると、一般のノートテーカーの人では対応できない。ところが、そのノートテーカーの人もなかなか集まらないわけなんですね。

 これに対して大学も、財源が十分にないからノートテーカーまではつけられないというふうになっている。また、御本人さんは、合格させてもらっただけでもありがたいと思っているんだから、余り自分のことでこれもあれもというのがあるから、大学には言いづらい。でも、そんな中で、実際、授業にもついていけないから大学をかわろうかということまで考えておられる。

 やはり、こういうふうに試験を通れても、実際、授業が十分に受けられなくて大学をかわるんだったら、何のための合格か。それだったら、最初から合格させなかった方が親切だったんじゃないかというような議論にもなりかねないと思います。このことが一点。

 もう一人の知り合いも大学二年生なんですが、聴覚障害の女子学生さんです。その大学の福祉学部初の聴覚障害の方ということで、鳴り物入りで合格をされました。ところが、やはりメールで話を聞いてみると、毎日毎日ノートテーカーを集める調整とお願いで走り回っていて、授業以前の問題だということになっているわけなんですね。

 単純な話ですけれども、聴覚障害の学生さんが福祉学部で学んで、聴覚障害の福祉の学者が、研究者が出てくるということは、すばらしいことだと私は思うのです。その大学の工学部にも聴覚障害の方がおられるんですけれども、まだ福祉学部だからボランティアの人も集まるけれども、工学部の学生さんなんかは、ノートテーカーも集まらずに、ほとんどあきらめて、授業へ出ても独学で本を読んでいるということです。

 やはりこういう現状ではだめで、何が問題か。具体的に二点挙げさせてもらいますと、一点目は、やはり財源なのです。大学で何とかしなさいと言ってもこれはだめで、地方自治体や国が出さないとだめだと思います。

 この点に関しては、確かに障害のある学生さんの人数に応じて予算は出ているんですけれども、バリアフリーとか建物を直す予算はそれでフォローできるんですけれども、ノートテーカーやそういう通訳、あるいは実習先にノートテーカーさんなりに行ってもらうときの交通費をどうするかとか、そういうところまではまだまだ非常に不十分なんです。

 あるいは、こういうソフト面、人的援助をセットでやらないとだめだと思います。体の不自由な方が大学に入られて、私の知り合いがやはり一人でトイレに行けない。トイレ介助をどうするのか。やはり、そういうこともきっちりと対応していただきたいと思うのです。

 それと、このノートテーカーを集める責任が現時点では学生さんにあるのです。学生さんが頭を下げて集めて回って、また勉強もしてもらってということだったら、それこそ本業の勉強どころじゃないわけですね。そういう意味では、財源の問題と、障害のある方に入学してもらった以上は、ノートテーカーとかそういうバックアップの人は大学が責任を持って手配するという形にしていかねばならないのではないかと思います。

 以上のことについて、文部科学省さんにお伺いしたいと思います。

清水政府参考人

 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、いわゆる障害を持たれた方が入学された後に、教育の履修にあるいは学習活動に、あるいは円滑な学生生活を送れるように、支援体制をどのように図っていくかということは、非常に重要なことと考えております。御指摘の具体的な事例については、私ども必ずしも把握していなかったわけでございます。

 例えば、ノートテーカーという問題につきまして、私どもそれなりに予算上の措置は国立大学に対してはしておるわけでございますが、まだまだ御指摘のような事例に対して対応し切れているかということについて、私どもとしても考えてみなければならないことであろうかというふうに思っております。

 また、学生さんが、いわばノートテーカーをみずから確保。なかなか専門領域との関係で難しいという部分も別の問題としてあろうかと思いますが、少なくとも、そういう意味で、何らかの形での組織化、あるいは学生のボランティア等も含めて組織化、あるいは全学的な取り組みというようなことがやはり必要なんだろうというふうに思っております。

 そういう意味で、私どもとしても、予算面も含めまして今後努力してまいりたい、こういうふうに思っております。

山井委員

 まさに今、ボランティアという言葉で言っていて、ボランティアでできる面も多少あるかと思いますが、実際、私の知り合いの学生さんも、ボランティアを集めたり、チラシをまいたり、ポスターを張ったりしているんですけれども、なかなか集まりません。というのは、週に一回とかじゃなくて、一日じゅう毎日の話ですから。

 実際、それでしようがなく隣の学生さんに頼んだら、九十分間ノートテークで必死になっちゃって、自分は勉強できたけれども、友達は授業が頭に入らなくなっちゃった、こういうふうなこともあるわけで、やはりそういう支援体制の充実も、権利として、教育を受ける権利というものもこの資格の問題とセットで考えていただきたいと思います。

 また、私、民主党の中で今、情報バリアフリー法案、ユニバーサルデザイン法案というような議論などもしておりますが、先ほどの工学部の情報通信を学ぶ学生さんなんですけれども、まさにこれから、こういうバリアフリー、ユニバーサルデザインの情報機器の開発というのは重要になってくるわけですね。そういう中で、やはり聴覚障害の研究者がそういう分野に出てくるというのは、国にとっても社会にとっても非常に重要なことだと思っております。

 実際、アメリカでは、リハビリテーション法の五〇八条が二十一日に発効ということで、すべての公共機関が使うパソコン機器は障害者対応でなければならないというような法律もできているわけですから、そういう意味でも、障害のある研究者を、どんどん大学を出てもらうということが非常に重要であるというふうに思っております。

 私、スウェーデンで二年間福祉の勉強をしたことがあるのですけれども、その国民高等学校というところでは視覚障害の学生さんが同じクラスにいました。そのためには、やはり付き添いの人がいらっしゃったわけですね。それで、全校集会があって、クラスメートの視覚障害の友達が、視覚障害者に対してどういう援助をするのかというのを普通のクラスメートに教えるのですね。やはり、一般の学校に障害のあるクラスメートがいる、そのことによって、みんなの福祉への関心や意識というのは高まっていくわけです。

 また、私も民主党の中で堀利和参議院議員という視覚障害の方と一緒に仕事をさせてもらう中で、非常に勉強させてもらっています。だから、やはりそういう、学校の中に、障害のある方がどんどん一緒に学べるように、そのための付き添いや人的援助をお願いしたいと思います。
 次の質問に移らせていただきますが、正直言ってこれはちょっと質問しづらいことなんですが、きょう午前中の参考人質疑のときに、パソコンを使ってそこで筆記をされていまして、それもこの厚生労働委員会始まって以来のことですばらしいことだと思うんですが、そのことに関して、きょうも聴覚障害の方が傍聴にお越しくださっております。要約筆記をしていただいているわけなんですけれども、要約筆記というか、そのときにパソコンを持ち込んでやりたいということをお願いされたそうなんですけれども、やはり音がするとうるさいということで、参考人の方々のはよかったのですけれども、傍聴席はだめだったということなんですね。

 皮肉にも、まさにそういうバリアをなくそうという議論をしている厚生委員会のこの場ででもパソコンはだめだというのは、何か非常に残念な気がいたしまして、例えば、財務委員会はだめだけれども、厚生労働委員会は率先して、傍聴席にそういう聴覚障害の方が来られるときには認めますよというようなことや、もし音がうるさいのであれば上にカバーをかけるとか、周りの迷惑にならない、それこそ音がしないパソコンの開発なんてすぐできると思うのですよね。

 そういうことも含めて検討していくことが必要かと思うのですけれども、このあたり前向きに、今後、傍聴席への聴覚障害の方へのパソコンの持ち込みも考えていただきたいのですけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣

 それはもう山井さんのおっしゃるとおり、私もそう思います。

山井委員

 ありがとうございます。

 今までの前例とかいろいろあって本当に難しいかもしれませんが、一歩一歩、この厚生労働委員会が率先して取り組んでいくということで変えていっていただきたいと思います。

 そして、次になりますが、今回のような欠格条項の見直しというのは非常に重要なことだと思うのですが、根本的には、世の中には差別がまだまだいっぱい残っているわけです。このようなことに関して、民主党も昨年以来、政策の中で、日本版ADA法、障害者の権利法ということを訴えておりますし、鳩山代表もぜひともそれを推進していきたいということを言っております。また、公明党さんも二週間前ぐらいに、日本版ADA法を制定しますということをおっしゃっておられます。

 やはり、今回の法案も大事ですけれども、行く行くは日本版ADA法、障害者の権利法を制定していくということが必要だと思いますが、このことに関して大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

坂口国務大臣

 前回と申しますか、参議院でも同じような御質問をいただいたように記憶をいたしております。

 方向性としましては、私も、そういう方向性に向かっていかなければならないというふうに思っておりますが、アメリカの法律のように、それがもし不可能で、不可能と申しますか、それが実現されなかった場合にはすぐに裁判でというようなことは、余り日本の文化としてはなじみにくい面もあるのではないかという気もいたします。ただし、日本の中におきましても、障害者の皆さん方が、いかなる分野であれ、それが職業であれ普通の生活であれ、健常者と同じように生活をしていただけるようにしていくというのが大前提でございますから、その方向に向かっていかなければならないことだけは間違いがないというふうに思っております。

 アメリカと同じようなものがいいかどうかは少し検討をさせていただきたいというふうに思っておりますが、方向性としては私も、そういう方向性で進まなければなりませんし、今回のこの法律もその一環であるというふうに思っている次第でございます。

山井委員

 ありがとうございます。

 今ちょっと、不自由があればすぐ裁判というものはいかがなものかという大臣の答弁がありましたが、そういうお気持ちもわかりますが、同時に、やはり今は多くの障害者の方々が、権利を侵害されても、差別をされても泣き寝入りをされているという部分が正直言ってあるわけです。

 だから、そういう意味では、私は、裁判を乱発する、訴訟を乱発するというのは、もちろんそういう社会は健全ではないと思いますが、やはり本当に深刻な差別、人権侵害、そういうことに関してはきっちりと訴訟ができる、そのための権利法的なものというのは、アメリカと同じものがいいとは思いませんが、日本にも、その方向性でやはり議論すべきではないかと思います。

 次に移らせていただきますが、先ほどの三井議員の質問にもありましたが、今後、政省令の中で基準や細部について議論していくことになると思うのですが、その中では、障害当事者の意見の反映が必要です。そういう意味では、先ほどの三井議員の質問でも多少触れておられましたが、障害者の当事者が加わった検討委員会の設置というものをしていくべきではないでしょうか。特に、午前中に参考人として来ておられたような医師の藤田さんや医学部学生の熊谷さんのように、実際、そういう障害を持ちながらもその分野で学び、あるいは仕事をされているような当事者の方々を入れることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

桝屋副大臣

 今回の法律案の施行に伴いまして、具体的に政省令の内容でありますとか、あるいは委員からは見直しのお話までいただいているわけでありますが、いずれにしても、これからの運営に当たっては、委員御指摘のように、しっかりと当事者の方々の御意見も幅広く伺わせていただく必要があるだろうというふうに思っております。

 もちろん、今回のこの法律案をつくるに当たりましても、パブリックコメントを初め、障害者団体など各種の関係団体から個別にヒアリングを実施するなど、幅広く意見もお聞きしてきたところでございますけれども、これからに向かっても努力を続けていきたい、このように思っております。

山井委員

 今まさにパブリックコメントという言葉もありまして、パブリックコメントも確かに必要だと思います。ただし、当事者の団体の方々からは、パブリックコメントでいろいろ意見を出させてもらったけれども、残念ながらほとんどそれが取り入れられていなかったというような御指摘もいただいております。当然、パブリックコメントというのは、聞ける面は聞きますというふうな弱いものですよね。そういう意味では、そういう弱いものよりも、きっちりその検討委員会の中に当事者が入る、やはり全然違いますから、そういうことを何としてもしていただきたいと思います。

 次に、色覚問題、色覚異常に対する差別の問題について御質問させていただきたいと思います。

 といいますのが、私も今、民主党の中で、中野寛成代議士座長のもと、色覚問題ワーキングチームというのをつくりまして、私、事務局長をしておるわけです。実際、男性の場合は二十人に一人、そして女性は二百五十人に一人、全国で四百万人が色弱などの障害を持っておられるわけなんです。

 これに関して、例えば教員の採用がどうなっているのか。朝日新聞の二〇〇〇年の十二月十二日の記事によると、二十の自治体で教員採用に関して色覚検査を行っているというようなことも報道されているわけなんですけれども、このような点、文部科学省さん、いかがでしょうか。

田中政府参考人

 色覚異常を持つ教員の採用についてのお尋ねでございますけれども、かつて、多くの都道府県、政令指定都市の教育委員会におきましては、色覚異常である場合には教員の採用選考の受験資格が与えられていなかったというような状況であったわけでございますけれども、文部科学省におきましても、国会の御指導も得ながら、色覚異常があることのみをもって教員の道が閉ざされることのないように指導を行ってきたところでございまして、現在では、すべての都道府県、指定都市で、色覚異常が欠格要件からは外されておるところでございます。

 なお、ただいま御指摘いただきましたように、現在、幾つかの教育委員会では教員採用選考に当たりまして色覚検査を行っておりまして、美術や理科の教員の採用選考における参考としているところもあるやに聞いておるところでございますが、正確な詳細につきましては把握をしておらないところでございます。

山井委員

 今御答弁ありましたように、幾つかの委員会ではそういう検査をして採用の参考にしている、裏返せば、ほかの教育委員会ではやっていないということなんですね。そうしたら、色覚異常の方がたまたま運の悪い都道府県に住んでいたら教員にはなれなかった、ほかの都道府県だったらなれたというようなことは、正直言って、国の中で差があってはならないと私はこういうことに関しては思います。

 そういう意味では、全国一律そういうふうな差別をなくすようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人

 教員採用選考の際に色覚検査を含みます健康診断を行いますことにつきましては、その応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項まで把握する可能性があるのではないか、その結果、就職差別につながるおそれがあるのではないかということから、文部科学省におきましても、各教育委員会に対しまして、健康診断を実施する場合には、採用予定の職種ごとにどの程度の能力や身体的条件等が必要なのかといった、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうかを慎重に御検討いただいて公正な採用選考をするよう指導してきておるところでございます。

 いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、色覚異常があることのみをもって不合理な取り扱いがなされることのないように、引き続き指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

山井委員

 よろしくお願いいたします。

 こういう色覚異常という問題、本当に表に出ない問題ですけれども深刻な就職差別などもありまして、それこそ中学生、高校生の人たちが悩んでおられます。実際、私の友人も、この問題で結局教師になるのを断念したという友人がおります。

 最後になりますが、私、この正月、ヘレン・ケラーの伝記を読んでおりまして、目が不自由、耳が不自由、口が不自由ながらも、障害者福祉の母として世界的に有名な方であります。やはり、こういう方がおられるおかげで、人類の希望の光になっていると思います。そういう意味では、本当に豊かな社会とはどんな社会かということを考えたときに、ある学者の先生は、車いすの方が自立で何キロその国の都市部を歩行できるかがその国の本当の豊かさの物差しになるということをおっしゃっておられます。

 私、今回の法案の議論をさせてもらって感じますのは、やはり社会の中でどれだけ障害のある方々がいろいろな仕事について働いておられるか、それが、日本という国が、お金や物だけじゃなくて、本当に豊かな社会になるかどうかの大きな物差しだと思います。そのための大きな第一歩がこの法案であると思います。

 そういう意味では、この法案ができたけれども、実際、社会参加が阻まれたということではならないと思います。聴覚障害のお医者さん、あるいは視覚障害の薬剤師さんとか、もういろいろな障害のある方々がいろいろな分野に勤めていく、それこそが、障害のある方々にとっても一般の方々にとっても住みやすい世の中になっていくと思います。

 そのような思いを私は持っておりますが、最後に大臣に、そのような障害者の方々の社会参加を推進していく上での御決意をお聞かせ願えればと思います。

坂口国務大臣

 やはり、この法律をつくります以上、この法律ができたので大変世の中が変わった、障害者の皆さん方の生き方が変わった、障害者の皆さん方の生き方だけではなくて社会全体の行き方がそれで変わった、そういうふうに言われるようにしなければならないというふうに思います。

 したがいまして、ただこれをつくるだけではなくて、この実行をどう進めていくか。実行していくためにはいろいろのことがあるでしょう。先ほどのお話のように、ノートテークをどうするかといった問題もあるというふうに思いますが、そうした人をどうつくり出していくかということもあります。そういう人を入学させる以上、その人に付き添うヘルパーの人がやはり必要になってくるんだろうというふうに思いますが、そうしたことも含めてこれから検討をしていかなければならないと思っている次第でございます。

山井委員

 前向きな答弁、ありがとうございます。まさに今大臣がおっしゃいましたように、ボランティアとか助け合いでできる部分はもちろんやっていく、でも、人的なサポートは、やはり公的な責任、公的な財源でつけねばならないところはきっちりつけていかないと、当事者任せではなかなか進んでいかないと思っております。

 この問題は坂口大臣がハンセン病の英断を下されたことともつながってくるのですが、残念ながら、二十世紀の日本の福祉というのは、障害のある方を町外れに隔離しようというような方法だったと思います。しかし、二十一世紀は、そういう方々に社会の真ん中に出てきていただいてどんどん活躍してもらおう。そういう障害のある方が社会の中で活躍する姿を見て、またそういう方々を社会全体で、ボランティアでありあるいは行政であり、助け合っていく姿を子供たちに見せていくことを通じて、子供たちも、ああ人間の社会というのはお互い助け合うものなんだなあと、そういう気風が広がってくれば、いじめの問題などもどんどんなくなってきて、本当に人間らしい国に日本が二十一世紀なっていけると思います。そのようなリーダーシップを、坂口厚生大臣にこれからもとっていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。


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