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2001年06月06日 

衆議院 厚生労働委員会 議事録


やまのい和則 質問 部分 

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百五十回国会、内閣提出、確定拠出年金法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官田口義明君、厚生労働省労働基準局長日比徹君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、年金局長辻哲夫君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。


山井委員

 まず冒頭に、ハンセン病の控訴断念については、坂口大臣、すばらしいリーダーシップを示していただきまして、本当にありがとうございました。このことを契機に、二十一世紀が人権の世紀に、そして弱い立場の方々を隔離して収容することがないというような世紀にぜひともつくっていきたいと思っております。

 本日は、確定拠出型企業年金についての質問でありますが、大臣が最後の方でちょっと抜けられるということで、冒頭に一つだけ、介護保険のことも質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのは、この確定拠出型年金、最低三つの商品を提示して選ぶことになるわけです。ところが、要は中高年の世代の方が老後にどれだけ資金が要るだろうか、あるいは子供の教育にどれだけお金が要るだろうかということを考えるわけなんですけれども、そのどのパターンを選ぶかという中で、一つの大きな不確定な要素が、老後にそもそも介護の費用がどれだけかかるんだろうか、三百万で済むのか、一千万で済むのかによって全然老後の設計が違ってくるわけです。

 そういう意味では、私は、昨年の四月に介護保険が導入されましたことは、もちろんさまざまな課題があるとはいえ、大きな前進になっていると思います。やはり介護保険がなかったら、どれだけお金をためていいのかわからない。ところが、介護保険という一定のベースを持つことになったというのは、大きな前進であると思います。

 とはいえ、まだまだ介護保険は始まって一年で、さまざまな問題がございます。例えば、私も今週月曜日、神奈川県のある特別養護老人ホームに行きましたが、百人待っておられるわけですね。それで、ほかとのかけ持ちもありますので、その施設を待っているのは正味三、四十人であろう。しかし、言い方は悪いですが、年間六人か七人しか亡くなられないわけですね、いい施設ですから。というと、単純に考えても五年か六年待たねばならない。

 これは何も例外的なケースではなくて、首都圏ではこういうケースが非常に多うございます。あるいは、先日行きました東京都の療養型病床においても、自己負担が二十万円、そこに三百人の方が待っておられる。自己負担が月二十万円ということは、年間二百四十万円、五年間生きられたら一千二百万円、そういうところでも何百人の方が待っておられるということは、そういう現実を放置していると、この確定拠出型年金においても、一体老後幾らお金ためていいのかわからないという非常に不確定な要素になってくると思います。これは、私は、介護保険そのものが悪いんではなくて、まだ介護保険が本格的にやはり機能していないと思います。

 その意味で、大臣にもお示しさせていただきますように、民主党は過去九カ月の議論の中で、介護保険一年たって見直しへの十の提言というのを発表させていただきました。時間の関係上、全部は説明しませんが、十点の中で主な項目は、低所得者対策、そしてユニット型の個室の老人ホームを重点的に整備する、介護報酬の見直しを前倒ししてケアマネジャーやグループホームを整備していく。やはりこういう介護保険が本来持っている機能を十分発揮する体制に早急にやっていかないと、介護保険が導入されたけれども、老人ホームは入れない、選べるどころか入れない、そのために病院にたまる、自己負担も非常に高い、老後不安が一向に減らないじゃないかということにもなりかねないと思います。このあたりの点に関して、坂口厚生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 

おはようございます。

 民主党の方で介護保険に対する御提言をしておみえになります。さまざまな現場の問題も踏まえながら、衆知を集めておつくりをいただいたものだというふうに思いますし、私も、事細かく全体をまだ拝見しているわけではございませんが、各項目を拝見させていただきまして、まことに傾聴に値するさまざまな問題を提示していただいているというふうに受け取っておる次第でございます。私も、よくまた勉強させていただいて、そして皆さんの御意見も十分に検討させていただき、また、取り入れさせていただく問題は取り入れさせていただきたいと思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、今お話しいただきましたように、老後の問題、今までは老後の問題といえば、病気になったときという、いわゆる医療費がどれだけかかるかということが最大の問題でございましたが、今委員御指摘のように、病気になるという以前に、介護を必要とする状況が来るのか来ないのかといったことが最も大きな皆さん方の不安材料と申しますか、心配材料になってきていることは、私もそのとおりだというふうに思っております。

 そうした意味で、介護の制度を充実させていかなければならないのと同時に、やはりそれに対応できる年金制度、それは公的年金も整理をし、そして充実をさせなければなりませんけれども、しかし、それだけではなかなか足りないというふうにお考えの皆さん方も多いことも事実でございますし、私も、公的年金だけで足り得るかといえば、人によりましては、それは公的年金も多い人少ない人ありますから、一概には申せませんけれども、しかし、足りない人も多く出てくるのではないかというふうに思います。そうした場合に、やはりいわゆる自助努力もその中にプラスしていただき、あるいは企業の努力もしていただきまして、そしてトータルとして年金制度が充実をしていくことを私は期待している一人でございます。

山井委員 

私たち民主党も、まさに今回の拠出型年金の趣旨には基本的には賛成しているわけですが、まさに今大臣もおっしゃいましたように、そのベースとなる公的年金、近い将来、特別養護老人ホームも個室化されてホテルコストを自己負担するようになる。そうなったときに、本当に個室に低所得者の方が入れるのか、本当にせっぱ詰まった問題にもなってこようとしております。

 それと、先ほどお話しした療養型病床の問題や特別養護老人ホームの問題も、残念ながら過去十年ぐらい放置されている問題でして、残念ながら一向に改善されていないように思いますし、坂口大臣も老人保健施設に一時お勤めになっておられたと聞いておりますが、老人保健施設でのたらい回し、特別養護老人ホームがあかないから、やはりそういう問題、早急に取り組んで、介護の安心と年金の安心、両輪で取り組んでいく必要があると思います。

 それで、確定拠出型企業年金についてなんですが、そういう意味では、公的年金を補完するものとして、またポータビリティーや選択肢をふやす意味として私たちも基本的には賛成でありますが、やはりさまざまな課題もあると思いますので、順番に質問させていただきたいと思います。

 まず、この年金制度は老後の安心のためよりも企業の負担が軽減されるとか、そういう面もメリットの一つとして言われております。それで、アメリカでは九〇年代にこういう株式のお金が企業や株式市場に流れ込んで、それが好景気を支えたとも言われておりますが、日本において、今回導入される確定拠出型企業年金が株価対策、そういうものにどれぐらい寄与するとお考えになっておられますでしょうか。


坂口国務大臣

 確定拠出年金全体としましては必要性ということについてお認めをいただいておりますし、そして、この重要性を私も考えております一人でございますが、確定拠出年金も、これは企業が拠出をしなければならない年金でございますから、企業に特に有利になるというようなことでは決してないというふうに私は思っております。

 そして、株価に対してこれがどういう影響を与えるかということにつきましてはここでそう簡単に結論を出すことはできないというふうに私は思いますが、株式もその選択肢として選ぶことができるということでありまして、多くの方がこの株式の方に走られるということはないだろう。現在、日本の金融状況、金融の実態を見てみますと、預貯金は非常に多いわけでございますが、個人として株式に走られる方というのは、日本は非常に少ないわけでございます。

 したがいまして、この確定拠出年金ができたからといって年金により多くの人が走られるということではないんだろう、やはり年金でございますから、堅実に対応をされる人が多いのではないかというのが私の考え方でございます。

山井委員

 まさに今大臣も御答弁されましたように、これはあくまでも年金なわけですから、堅実さ、安定性、安心感というのがやはり大事だと思います。アメリカで四〇一kが爆発的な人気を呼んだのは株価が九〇年代に上がっていたからで、今の日本の状況と大きく違うというように思います。

 そういう意味では、今の状況では、労働者、つまり加入者にリスクが非常に大きくなるのではないかということを心配しております。実際、アンケート調査で、導入しない企業のその理由のトップは、老後設計のリスクが非常に大きくなると答えられております。

 その意味では、そもそも確定拠出型企業年金は、運用コストが高くなって、そのためにリスクの高い商品を選ぶ、そういう方向に行くんではないかというような心配をしているんですが、もちろん、この年金が自己責任なのはわかるんですが、余りにもリスクが大き過ぎてはならないと考えます。

 株の急落もあり得るわけで、ハイリスクの商品に偏った運用をして老後の年金資産がなくなってしまわないように一定の制限を設けるべきだと考えますが、このあたり、いかにリスクを下げるかということについて何か方策はお考えでしょうか。


桝屋副大臣

 今委員の方からリスクに対する対応ということについてお尋ねがありました。また、その前にも、こういう厳しい金融環境の中でこの制度を導入するのはいかがかというような話もいただいたわけでありますが、先ほど大臣もお話をいたしましたように、今回のこの確定拠出年金の制度、新たに導入するものでありますが、現在の雇用情勢の変化等を考えながら、企業あるいは国民にとって選択肢をふやすという観点で、大変厳しい環境ではありますが、ぜひとも導入したいというように考えているところでございます。

 加入者のリスクをいかにするかというお尋ねでございますが、この加入者のリスクを最小にしたいというふうにもちろん考えるわけでありまして、確定拠出年金は、これまでの確定給付型の企業年金とは異なって、委員おっしゃるように、加入者が自己責任で運用するという、国民にはなじみが薄い全く新しい制度でございまして、雇用の流動化あるいは企業再編が進むなど、経済や時代の変化の中で確定拠出型の企業年金も必要になってきているということで、今申し上げたように、この国会に提出をさせていただいたという背景であります。

 委員が一番心配されるのは、今大臣も言いましたように、我が国の貯蓄が、六割ぐらいが元利保証のある預貯金で運営されているということもあって、委員も重ねてその辺を心配されているんだろうと思いますが、法案の中では、このような実態にかんがみまして、加入者に運用商品を提示する際には必ず元本確保型の商品を選択肢の中に入れるということを義務づけているところでありますし、また、企業などは、資産運用の基礎知識、それからリスク、リターンの関係、長期投資あるいは分散投資の考え方など、一般的な投資に関する資料を加入者に情報提供するように努めるというふうにしているところでございます。また、運営管理機関は、運用商品を提示する際に、その商品の仕組みあるいは元本割れのリスクがあるかどうかというようなこと、あるいは過去の実績等の情報を加入者に提供するというふうにしているわけであります。この情報の提供ということが極めて大事だと私は思います。

 こうしたことを通じまして、自己責任での運用になれていない加入者のリスクができるだけ小さくなるように取り組んでいきたいと考えているところでございます。


山井委員

 この年金の一つのポイントは、余りにもハンドリングコストが高くなり過ぎるとまたよくないわけなんですが、このハンドリングコストをいかに下げるか、このあたりについてはいかがでしょうか。


桝屋副大臣

 今運用コストのお話をいただきました。これはきのうの委員会でも随分議論が出たところであります。

 確定拠出年金制度におきましては、企業や個人が拠出した掛金を資産管理機関などがまとめた上で大口扱いで運用するということによりまして、個人が金融機関と個別に契約する場合に比べて高い利回りが確保できるようにしているわけでございます。あるいはまた、運営管理機関に幅広い参入を認めるということにいたしまして、競争の促進ということで、適正なコストとなるような仕組みとしているところでございます。

 具体的には、各種商品の中でも、例えば利回りの低い預金の利率を見ましても、その預金を選択した加入者に係る資産が資産管理機関から一括して金融機関に預け入れられるということになるわけでありますから、金融機関では個々の加入者の口座管理等は行う必要がないということで、これらのコストが不要になるということも織り込み、一般の顧客に提示される利率に比べて高目の利率の提示が可能ではないか、これはきのうも議論があったところでありますが。

 今のところから、個々の加入者の口座管理等を行う運営管理機関の手数料が控除されることになるわけでありますが、それを考えても、一般の預金の利率と同程度以上の利回りが確保できるのではないかというふうに考えているところでございます。


山井委員

 そもそも、この確定拠出型企業年金はどれぐらいの会社、加入者が利用すると予想しておられますでしょうか。例えば、朝日新聞の二月の調査では主要企業二百社のうち三十七社が導入したいと明言しているとか、社会経済生産性本部や中小企業団体中央会の統計などもありますが、このあたりの見通しについてお伺いしたいということ。

 それと、少なくとも三つのパターンの商品を用意して、一つは元本確保の商品を提示するとのことですが、聞きづらいことですが、元本割れをして損をする人はどれぐらい出てくると予想されているのでしょうか。といいますのは、大多数は元本確保の手がたい商品を選ぶと予想されておられるのか、逆に、大多数はリスクの高い商品を選ぶと予想しておられるのか。それによってこの年金の持つ意味も違ってくるか思いますので、そのあたりのイメージをお答えいただければと思います。


桝屋副大臣

 二つお尋ねをいただきました。

 最初に、どれぐらいの企業がこの確定拠出年金を導入するのかということでありますが、実は、この委員会でこうしてこの確定拠出年金の審議が始まったということを多くの皆さんが関心を持って見ておられるわけで、今委員からも御紹介をいただきましたけれども、例えば東京商工会議所、これは昨年三月に実施した調査では、中小企業の約二割ぐらいの方が確定拠出年金の導入を考えているというような調査結果もあるわけであります。あるいはまた大企業の中でも、昨日の参考人質疑等でもいろいろ御議論があったようでありますが、相当多くの企業の方が研究をされておられる、興味を持って見ておられるというような状況も聞いているところでございます。

 ただ、委員からもお話がございましたが、私どもは、まず普及をしたい、多くの企業に取り組んでもらいたいということも期待をするわけでありますが、そうではなくて、まずやはりこの制度を国民に十分に理解していただく、そして納得をしていただいた上で、定着普及をするということを願っているわけでありまして、そういう意味では、導入時の対応といいますか、極めて大事だなというふうに考えているところでございます。

 それからもう一点、どのぐらいの割合の加入者が元本割れをするかという、聞きづらいというふうにお尋ねがあったわけでありますが、これは本当に答えづらい話でもあるわけであります。

 確定拠出年金におきましては、運営管理機関が加入者の立場に立って、専門的な知見に基づいて、預金、国債あるいは保険、投資信託など多くの運用商品の中から三つ以上のリスク、リターン特性の異なる運用商品を加入者に提示する、加入者はその中から自由に運用商品を選択できる、委員御説明があったとおりでございます。

 したがいまして、どのような運用商品が加入者に提示をされて、また加入者がどのような運用を行うかはまちまちではないか。委員からお話がありましたように、老後をどのようにお考えになるかということも個人あるいは企業の形態によって違ってくるわけでありまして、また投資信託などの運用商品の運用実績もその時々の運用環境に左右されるということもあるわけでありますから、どれぐらいの割合の加入者が元本割れするかという予測をすることは極めて難しいと思っております。

 ただ、既に導入しておりますアメリカの例では、当初は元本確保商品で運用するものが多かったというふうに聞いているわけであります。その中で徐々に株式での運用がふえていった、こういうことがあるわけでありまして、さらに、委員からも御指摘がありましたように、我が国では多くの国民の資産が元本確保商品で運用されている、こういう実態があるわけでありますから、こうしたことを考えますと、当初から多くの元本割れする商品の組み合わせが多く出てくるということはにわかには想定しがたいわけであります。

 いずれにしても、労使が協議をしていただくわけでありますが、企業型年金規約を定めるに当たっても、運用商品の安全性に一層留意をすることになるのではないかというふうに考えているところでございます。


山井委員

 まさにこういう株式というのは、どちらかといえば日本人になじみのないもので、一割ぐらいの人しか株や債券、投資信託を今持っていないという統計もあります。

 そういう意味では、加入者がみずから運用を指示するこの拠出型では、運用商品の適切な選択と的確な指示をできるだけの投資教育と情報提供が極めて重要になります。運用リスクを最小限に判断する条件が整わなければ、加入者は金融市場の変動に無防備なままさらされることになると思います。競馬をしない人には確定拠出は向かないという指摘すらあるわけで、そういう意味では、投資教育が不十分なままで、加入者が投資判断が本当にできるのかということがあります。

 そういう意味では、実効力のある投資教育をいかにするかということをしていかないと、確かに元本保証もいいけれども、それこそ老後の介護にお金がかかるんじゃないかということを心配し出したら、よくわからないのに高い商品に手を出してしまって、後で老後の設計が狂ってしまった。言ったらなんですけれども、国、何とかしてくださいというふうなことになっても困りますので、そのあたりの実効性のある投資教育ということについてお伺いしたいと思います。


桝屋副大臣

 我が国の国民の今の現状に基づいてお尋ねをいただいたわけであります。

 まさに投資教育という点で、これは大臣ともよく話をするんですが、大臣も私もこの道に余り明るくないものでありますから、競馬ももちろんいたしませんし、この確定拠出年金制度の導入に当たって、本当に大臣、副大臣として十分理解できているかということをいつも二人で話をするわけであります。

 いずれにしても、加入者がみずからの責任で運用指図を行うというこの確定拠出年金では、加入者が資産運用について適切な知識を持ち得るようにするということが、委員御指摘のとおり、極めて重要であります。まさに投資教育ということでございまして、事業主の役割も極めて重たいのではないかというふうに感じております。

 資産運用に関する情報提供につきましては、各加入者によって資産運用に関する知識水準あるいは老後の生活設計などが異なるということがございますので、どのような内容、方法でどの程度まで行うべきかについて一義的に決めることはなかなか難しいわけでありますが、確定拠出年金制度の仕組みでありますとか、あるいはリスクの内容、あるいはリターンとの関係などの投資に関する基礎的な知識、預貯金あるいは投資信託、保険商品などの各商品の特徴、あるいはリスク、リターンなどの主な金融商品の特徴や仕組みというもの、これは必要な情報ではないか、こう思っているわけでありまして、こうした事項について、最低限、加入者に情報提供をすべきものであるというふうに考えております。これをこれから通達等で明らかにすることとしているわけでございます。

 それを受けまして、企業等が個々の加入者に応じて、テキストの配付でありますとかビデオの上映、説明会の開催などの方法によりまして、わかりやすく、かつ丁寧な情報提供を行っていただきたいと考えているところでございます。

 現実問題としては、企業は投資教育を恐らく運営管理機関に委託することが多いのではないか、こう思っているわけでありまして、今後、運営管理機関となることを準備している者において、投資教育がより適切に行われるようなさまざまな方法を研究していただいている、工夫をしていただいているというように聞いておりまして、実質的な投資教育が適切な形で十分に行われるよう私どもとしても指導を続けていきたい、このように考えております。


山井委員

 まさにこの年金は自己責任が原則なんですけれども、言葉ではわかっていても、日本人にはなかなか自己責任の風土というのはなじみにくいと思います。

 それで、今運営管理機関の話になりましたが、私はそこについてちょっと心配があるんですが、どうしても加入者は無知な人が多いわけですから、運営管理機関の担当者がリスクの高い商品をもし勧めたりしたら大変なことになるのではないかと思います。例えば、運用利回り二%で毎月二万で三十年積み立てたら九百九十三万円、それが、七%と考えたら二千四百二十六万円というふうに全然違うわけですね。

 それで、運営管理機関は忠実義務があるわけですけれども、それでも初心者はアドバイスを欲しいと言ってしまうのではないかと思うんです。そのときに、やはり運営管理団体は主に銀行や生保などの金融機関が社員の口座管理や投資教育などを企業から請け負うために設立しているわけですから、そこの担当者が、どうしても、老後そんな困っていられるんだったらこれをされたらどうですかともし言ったら、初心者は、ああ、そうしたらそれにしておきますわということになって、結果的には株が急落して老後の設計が立たなくなってしまったということになってはだめだと思います。

 運営管理機関への教育あるいは運営管理機関への義務、そのあたりについてお考えをお聞かせ願えればと思います。


桝屋副大臣

 今委員から、株が急落してという話もありました。きのうのこの委員会を聞いておりましても、今回の確定拠出年金、これはまさにギャンブルの世界だという御指摘もいただいて、大変心配をしているわけであります。

 私は、やはり急落というような、株はもちろん動くわけでありまして、今回の確定拠出、まさに長期の投資という観点で制度が設計をされているわけでありますし、投機と違うわけでありまして、ギャンブルとも違うという意味では、ぜひその点を国民の皆さんにも御理解いただき、あわせて、さっきから委員が御指摘されていましたように、やはり国民の皆さんにしっかり教育を進めるということが大事だと思っているところであります。

 それからもう一点、今委員から、運営管理機関がリスクの高い商品を勧めたり、運用商品の乗りかえを頻繁にやってその手数料を稼ごう、こういう事例が出るのではないか、こういうお話もいただいたわけでありますが、今委員からもお話がありましたように、行為準則ということを定めるようにしているわけでありまして、こうした事例については、もちろん自己や第三者の利益を図る行為を禁止するということになっているわけであります。

 こうした、法律において禁止されている行為でありますから、運営管理機関が仮にこうした行為を行ったときは、改善命令あるいは登録の取り消しなど行政処分の対象になるというふうに考えているわけでありまして、ここはこの制度の信頼を確保するためにも極めて大事な点だろうというふうに思っております。


山井委員

 ありがとうございました。

 私としては、この確定拠出型企業年金、基本的には賛成でありますが、先ほども申し上げましたように、やはり老後のリスクというものを自己責任で負うということに日本人はまだまだなれていないと思いますので、そのあたり、慎重な運用をお願いしたいと思います。

 それと、冒頭に言いましたように、介護と年金は車の両輪であると思います。

 月曜日に行きました老人ホームでも、個室がいいですか、四人部屋がいいですかということを囲碁をされていた車いすのおじいさんに聞きましたら、もう私なんかは預かってもらっている立場で、そんなぜいたく、どっちがいいと言えた身分じゃないよということをおっしゃっていて、自分の仲間もみんな戦争で死んじまって、この老人ホームも女性ばかりだということをおっしゃっておられました。

 やはり、そういう意味では、この年金の問題と介護の問題は車の両輪として、ぜひとも安心できる老後のために進めていっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。


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