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2001年5月23日 

衆議院 厚生労働委員会 議事録

雇用関連法案について
やまのい和則 部分掲載


○山井委員

四人の参考人の皆さん、本日は、大変お忙しいところ、雨の中をお越しくださいまして貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。これから、二、三点に絞りまして、四人の参考人の方々に御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
 冒頭、貴重な時間なんですが、ほんの一言だけ、私はハンセン病のことについて一言御意見申し上げたいのですけれども、この午前中にでも、小泉首相が元患者の原告の方に会われると聞いております。これは、一首相、また一大臣の問題だけではなくて、この厚生労働委員会も問われていると思いますので、ぜひこれは控訴しないということになるようにしていきたいと思いますので、皆さんもよろしくお願いいたします。


 では、質問に入らせていただきます。

 まず、今回の年金法案についてですが、そもそも企業年金に対する基本的な考え方というのが、四人の参考人の方々においてかなり違ったり微妙に違ったりするような気がいたします。一番本質的なところですので、既に述べられたところと重なっている部分もあるかと思いますが、四人の参考人の方々、企業年金のあり方について御意見をお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。


○堀参考人 

基本的に企業年金というのは、公的年金とは違って私的な企業年金ですから、労使の自由な合意によって行うというものではないかというふうに思います。役割分担としては、先ほど言いましたように、公的年金が柱であって、豊かな生活を保障するために私的年金、企業年金があるというふうに思います。
 ただ、そうはいっても、企業年金が私的なもので労使の自由といっても、やはり公的に、例えば税制上の措置を講じているとか、あるいは国民全体の老後の生活にかかわるものでございますから、完全に自由に任せるというわけにはいかないだろうというふうに思います。
 したがって、税制措置に見合うような年金であるかどうか、そういったような判断も必要でございます。規制はできるだけなくした方がいいというのは私は賛成ですけれども、そういった意味での最小限の基準といったものも必要ではないかというふうに思います。
 問題は、日本においては厚生年金基金という公的年金を代行する部分がありまして、これが企業年金に対する議論をある意味で混乱させている面があるのではないか。税制適格年金とかあるいは自社年金とか、それと公的年金は割と対比させやすいんですが、厚生年金という、これはイギリスの制度に倣ったものですけれども、イギリスは、当初は公的年金の一定部分をコントラクトアウト、適用除外した年金についても支給しなさい、こういう要件をした。代行ではないんですが、ある程度、代行的な考えもあったわけですね。しかしながら、その後、もう労使の免除保険料率内で労使が自由にやっていく、そういうふうなことに変えたというふうに考えております。
 したがって、日本の公的年金も、公私の役割を明確にするということなら、厚生年金基金のメリットも生かしながらそういう形にするということは、やはり国の公的年金を代行するという形ではなくて、免除保険料率という形で、ある意味で民営化をして、民営化した年金についてはもう公的年金ではありません、これは労使の自治によってやっていく、自主的にやっていく。しかし、その場合には二階部分の公的年金部分も支給できないという事態も生じ得るんですね。だから、それはもう労使がそれを合意で選択したんだ、そういった意味で、労使の責任にしてもいいんではないか、そういった形で厚生年金基金の代行を適用除外年金に将来はしていくべきではないか、そういうふうに考えております。


○中村参考人 

公的年金は退職した方々の老後の生活を支える制度で、非常に重要な制度だと思っております。ただ、今巨額の積み立て不足があるということで、持続可能性に対して疑問が投げかけられている。そういう意味におきまして、私的年金としての企業年金の役割はそれを補完する意味が非常に高まっていると思います。
 ただ、この企業年金は、あくまでも私的年金ということでありますので、やはりある一定の、最低限の共通ルールを定めた上で自由な制度設計をしていくということが必要でありますし、特に国民の最近の価値観やライフスタイルが多様化している中で、この企業年金、私的年金の役割は高まってきているというふうに考えております。

○向山参考人

 先ほども述べましたとおり、老後の生活保障の柱というのはやはり公的年金であろうというふうに思います。そういう中で、企業年金や任意加入の個人年金というものについては、公的年金に取ってかわるものではなくて、あくまでもそれを補完するものという位置づけで考えております。
 最近、グローバル化を背景に、自己責任とか市場原理主義とかいうものが横行しておりますけれども、世の中にはやはり自己責任でできない人たちが数多くいるという中で、やはりそういったものをどう位置づけていくかということも一方では必要でありまして、そういった面では、自己責任というものを中心に私的年金を拡大をして、そして公的年金を削減しようというような話は論外な話だというふうに考えています。
 また、今日の企業年金は退職金以外の要素も加わって若干複雑化はしておりますけれども、そのベースになるのはやはり退職一時金であるというふうに認識しておりまして、そのベースとなる退職一時金は労働条件の一つの柱でありまして、退職金規程に基づいて個々人の年金額が確定するものでありますから、それを年金化するということであれば、先ほども申しましたように、確定給付でやるのは当然であろうというふうに思います。
 そういったことを前提にしながら、現行の企業年金制度には、公私の峻別が明確でない厚生年金基金、それと積み立て基準や情報公開というものがきちっと明文化されていない適格退職年金、こういったものの現行のものを見直す中で、あわせてそういった受給権保護のための、先ほど申しましたように、支払い保証制度なんかが組み込まれた包括的な企業年金基本法というものを早期につくるべきだろうというのが連合の企業年金に対する基本的な考え方というふうに思います。


○庄司参考人 

老後の所得保障の基本はやはり公的年金でやるべきだと思います。
 それから、企業年金の実態は、今も話がありましたように、退職金を取り崩して年金化した部分が非常に多いということです。
 それから、老後の所得保障の問題で、企業年金のほかに、まだ個人年金もあわせて老後の所得保障を考えろという格好をされていますけれども、最近の週刊誌なんかを見ましても、個人で投資して失敗した例なんかも非常にありますし、個人年金の場合は、予定利率の引き下げなんかも、もう生命保険会社の都合でどんどん予定利率を引き下げられる、そういう不安定なものですね。それから、企業年金についても、一定の基準はありますけれども、今言ったような形で、実態は退職金の分割払いだ、そういうこともあります。
 自助努力で労使で決めればいいということですけれども、そうしますと、やはり今ある大企業と中小企業の格差がどんどん開いていくことになりますから、やはり土台になる公的年金の水準を高めて、その余力があるところは企業年金でやるという方に持っていかないと、そっちの、自助努力部分があるんだからということで公的年金の水準をどんどん低く抑えていくことには反対です。


○山井委員

ありがとうございます。
 自己責任、あるいは選択の自由、あるいはリスクをなくす、安心感、それぞれのお立場の価値観によって論調も異なるなということを感じさせていただいております。
 それで、さまざまな問題点、今までからも御指摘いただいているんですが、ぜひここで一点、最もこのことに関する問題点はどの点だと思われるかということと、そのことに関して、今すぐにとは言いませんが、将来的にどのように改善していけばよいかということを、できれば一点か二点に絞って述べていただければと思います。よろしくお願いいたします。四人の方々に。


○堀参考人 

公的年金あるいは企業年金に通ずる問題として最大の問題というのは、やはり税制ではないかというふうに思っています。
 この確定給付型の企業年金につきましても同様でございますが、基本的には年金には税金がかからない、拠出段階でもかからないし、それから給付段階でもかからない、こういったような税制は世界にも余りないと思いますし、それから拠出しているというのですか、被保険者、現役の世代の所得税負担、それから住民税負担と、年金受給者の所得税、住民税負担が非常に不公平になっている。それだけではなくて、国民健康保険の保険料の算定基準にもこういう年金所得というのが算定、その際に公的年金等控除が入りますから、その面でも非常に不公平になっております。
 例えばの話でございますが、アメリカは年金に課税をして、課税をした財源を年金財政に繰り戻しする、こういうことをやっております。なかなか年金受給者から所得税を徴収するというのは難しい面があろうかと思いますけれども、そういったような形で了解を得ることはできないかなというふうに思います。
 それとの関連で、先ほど申し上げましたように、特別法人税の廃止だとか、あるいは退職一時金と年金との取得した場合の課税の中立性というものを是正していく必要があるのではないか。
 これが私は今一番大きな問題点ではないかと考えております。


○中村参考人 

私も同じ考えでございまして、税制でございます。
 やはり、年金税制につきましては、拠出時、運用時非課税、給付時課税の原則をぜひ貫いていただきたい。そのためには、特別法人税は撤廃していただきたいというのが最大のポイントだと思います。
 もう一つあえて挙げれば、ポータビリティーが果たしてあるのかないのか、ポータビリティーの確保ということもぜひお願いしたいと思っております。


○向山参考人 

先ほどの意見陳述の中で述べたものがすべてなんですが、連合としてこの法案の中で問題点として八項目を実は挙げております。その中で、特に我々として問題として指摘しておきたいのは二点ありまして、特に厚生年金基金の代行が廃止されなかったこと、返上はできるんですが、廃止されなかったということについて大きな問題というふうに考えています。
 第二点目については、受給権保護のための支払い保証制度がこの法案に盛り込まれなかったこと、これが問題だというふうに思っています。
 特に、日本は非常にアメリカを好きでありまして、そのアメリカでもこの受給権保護については、一九七四年にERISA法で支払い保証制度というものが創設をされている。そういったアメリカでもこれは強制適用に実はなっているわけでございまして、確定給付の場合は強制適用になっております。このように、市場主義や自己責任の理念が非常に尊重されるアメリカでも、受給権の保護措置として支払い保証制度は不可欠だ、こういうふうに言っているわけでございますので、十分、日本の確定給付企業年金でも支払い保証は盛り込むべきだというふうに考えています。


○庄司参考人 

四〇一kもこの確定給付も、問題が出てきたのは、年金積立金の不足問題、そこから出発してきているわけですね。だから、過去勤務債務の伴わない、それから積立金不足の生じない確定拠出であれば、企業は資金運用の免責もされますし、それから、後の費用がかからない。そこからそもそも出発してきているのが四〇一kであり、今回の年金の改定案だと思うんですね。だから、そこのところをきっちりさせておく必要が一つあると思います。
 それからもう一点は、何回も申しますけれども、今回の法律の中では、やはり受給権の保障の問題と支払い保証制度の点については非常に欠落しているところがあるから、企業年金の基本法というのであれば、そういうこともきちっと加味させないと、欠落したままいくと、後々また問題を非常にたくさん残していくんじゃないかというふうに思います。


○山井委員

ありがとうございました。
 時間になりましたから終わらせていただきたいと思いますが、二十一世紀、やはり老後の安心が一番この国にとって大切だと思いますので、安心感のある年金制度にしていくために頑張りたいと思います。
 本日は、本当に貴重な御意見ありがとうございました。


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