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2001年03月16日 

衆議院 総務委員会 議事録


やまのい和則 質問 部分 

NHK 予算について

○御法川委員長 次に、山井和則君。

○山井委員

 民主党の山井和則でございます。

 まず、海老沢会長を初め参考人の方々に、お忙しい中、お越しをいただいたことに心より御礼申し上げます。また、社会をよくするために、そのよりどころとなる公共放送として、日々社会的価値のある番組をつくっていただいておりますNHKさんにも御礼申し上げます。そのようなNHKファンの一人として、今後もよりよい番組をつくっていただくために、やはり健全な公共放送というのは、健全な放送労働あるいは放送労働環境から生まれるというような思いで、以下四つ、十五分で欲張りなんですが、質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、NHKに働く方々の労働条件についてであります。

 私は昔、大学の講師で福祉を教えておりましたので、「あすの福祉」を初めとする幾つかの福祉の番組に出演をさせてもらったことがあります。その関係で、多くの福祉担当のディレクターさんと親交があるのですが、非常に気になりますのは、そのディレクターさんの中で体を壊される方が非常に多い。あるときも、私も出演させてもらった番組を、三日徹夜で編集作業とかをされたそうです。その後、続いてまた仕事をされて、新たな取材先で倒れて、そのまま即入院になったという話も聞きました。あの方、それから連絡がないけれども、どうしていたのかなと思ったら、入院していましたというわけですね。また、私の知り合いの、NHKに勤めるお父さんを持つ娘さんのお話では、子供のころからお父さんと遊んでもらった思い出がほとんどないということをおっしゃっておられました。

 そういう意味では、例えば三日徹夜をすれば二日丸々休むとか、やはり優しい労働環境をつくっていく必要があると思います。確かに、ある程度の業務の効率化ということは、私も必要であるとは認めますが、それによって体を壊して、いい仕事ができなくなってしまっては困ります。昭和五十八年には一万六千人だった職員が、今では一万二千人に減り、これから一万一千人体制になっていくと聞いております。一方で、衛星放送、ハイビジョン放送等、放送の波、仕事量は拡大する一方であります。

 放送労働の特徴というのは、やり出せば切りがない、緊急事態もある。そういうことで、本当にどうしても、気がつけば体を壊してしまう部分があると思います。実際、NHKの方の年間労働時間は二千七十九時間を超え、一般の千八百四十八時間よりも二百時間以上も長いわけです。これについては、放送労働は長時間でやむを得ないという意見もあります。しかし、疲れ切って自分の時間も持てない、家庭も大事にできないというのであれば、放送労働者はよい仕事もできないのではないでしょうか。これから生活感のある、人間を大切にする番組をつくってもらう上でも、そのような労働条件の向上が必要だと思います。

 御答弁をお願いいたします。

○山田参考人

 お答えします。

 先生御指摘の制作、放送現場につきましては、放送事業者ということで、一定の時間外勤務などが発生することについてはやむを得ないんじゃないかという気がしますけれども、NHKとしても、休日の確保、休暇の取得などめり張りのついた勤務をするようにということで、一生懸命指導なりをしているところでございます。

 それから、全体的な労働時間の短縮という社会動向も踏まえつつ、平成五年度から業務の仕組みあるいは仕事の進め方の改革に取り組んでいるところでありますが、今後ともよりよい職場環境の整備に努めてまいろうというふうに思っております。

○山井委員

 放送業務だから長時間は仕方がないというのは、ある意味で言いわけにすぎないと思います。やはり、時代に先駆けて、公共性の強いNNKさんにその辺、率先垂範をしていただきたいと思います。

 そのような過重な労働環境の被害を一番受けているのが女性の方だと私は思います。

 実際、現時点においては、トータル一万二千四百六十一人のお勤めになっている方の中で女性が千百三十五人、九・一%、十人に一人にも満たないわけです。そして、大学卒の新規採用を見てみますと、三百十人に対して女性の方は六十三人と二割です。これからNHKさんも命を大切にする番組をふやしていくということを聞いておりますが、やはり生活感のある女性が、もちろん、男性も含めて、働きやすい環境が必要だと思っております。ぜひ女性の方の採用というのを二割から三割にふやしていただきたいと思います。

 しかし、幾ら採用をふやしても、途中でやめてしまっては意味がありません。私の知り合いの女性の方でも、NHKに勤めておられる方で、結婚のことや子育てのことで悩んでおられる方が非常に多くおられます。ところが、実際、女性の比率を見てみますと、管理職では二・四%、役員さんに至っては一人も女性がおられません。経営陣に一人も女性がいない状況では、幾ら女性に働きやすい職場をつくるということを言っても、できないのではないでしょうか。

 具体的に、役員さんに女性を入れる計画があるのか、女性の採用をふやす方向があるのか、あるいは働きやすい環境、仕事を続けることができるようにするために何をしているのか、お答えください。

○海老沢参考人

 女性の採用につきましては、年々ふやしていく方向へ今来ております。今お話にありましたように、全体では千人ちょっと、九・一%でありますけれども、今、新しい採用者については二〇%を超えようと。そして、今御指摘のように、二〇%を三〇%にふやす方向で採用しようと思っております。

 御承知のように、我々放送事業者というものは、番組をつくる、ニュースを取材、送出する、ある面ではいわゆる創造的な仕事をしております。そういう面で、職場によってはかなりの時間差がありますし、二十四時間放送しているために、労働条件的にいろいろな差が出てきております。そういう中で過重な労働があるのではなかろうかという指摘もありますけれども、できるだけやはり我々は、人材が宝でありますし、いい人材を育成しない限りはいい番組はできません、やはり健全な肉体でなければ健全な精神で仕事ができませんものですから、そういう面では、十分御指摘の点は配慮しながら、職場環境を改善しながらやっていきたいと思っております。

 私ども、女性の処遇につきましては、前にもNHKは、女性にとっては最も働きやすい職場として表彰されたこともあります。そういう面で、女性の昇進とか処遇につきましては、私は、ほかの企業と比べて見劣りするといいますか、最先端をいっていると思っております。今のところ、まだ女性の役員が一人もおりませんけれども、これから役員になる女性も出てくるだろうと私は期待しております。できるだけ男女の格差とかそういうものがないように努力しておりますし、もちろん、女性がふえて多彩な番組ができるように、さらに努力していきたいと思っております。

○山井委員

 会長さんから前向きな答弁をいただきまして、非常にうれしく思っておりますが、男女共同参画社会、二十一世紀のモデルとなる取り組みを期待したいと思っております。

 もう一つ厳しい御指摘をさせていただいて恐縮なんですが、「あすの福祉」など福祉の番組、私もNHKさんであるたびにビデオに撮って、非常に参考にさせていただいております。そのような福祉の世論形成でもリーダー役を果たしておられるNHKさん、残念ながら、調べてみますと、国が定めた障害者の法定の雇用率を満たしておられないわけなんです。何か私も非常にショックを受けました。民間の雇用率が一・八%、しかし、残念ながら一・七三%で、つまり、数でいいますと、二百四十二人雇わないとだめなところが、二百三十二人と十人足りないわけです。

 しかし、実際に、これは民間だったら一・八%なんですが、本当はこれ、公的機関だったら二・一%という基準があるんです。私は、やはり公共放送という役割から考えても、ぜひとも二・一%、つまり、二百八十二人雇っていただくということを一日も早く実現していただきたいと思っております。

 このことに関して、言い方はきついかもしれませんが、福祉の番組で福祉の世論をリードしながら、自分のところの法人は障害者は十分雇いませんよというのでは、言行不一致じゃないかということを言われても仕方ないのではないでしょうか。御答弁をお願いいたします。

○山田参考人

 御指摘の点については、NHKとしてもよくわかっております。障害のある方の雇用につきましては、先ほど先生が御指摘されたように一・七三%、二百三十二人にとどまっております。

 ただ、平成十年七月からNHKに適用される法定雇用率が一・六%から一・八%に上がりまして、公共放送事業者として、この法律の改正の趣旨を十分踏まえて、引き続き最大限の努力をしていく考えでございます。どうかよろしくお願いします。

○山井委員

 引き続き努力はお願いしたいんですが、毎年このようなことが取り上げられて、そのまま放置されるというのでは、やはり公共放送とは一体何なのかということになると思いますので、同じような質問が今後、毎年続かないように、ぜひともお願いしたいと思います。

 四つ目の質問でありますが、今回の事業計画の中に障害者や高齢者に優しい放送ということが書いてありますが、私は、その中にぜひとも外国人、特に英語圏以外の外国人にも優しい放送を心がけていただきたいと思います。

 実際、今回調べてみましたら、英語以外では放送としてラジオしかないんですね。外国語のニュースでは、ラジオの第二放送でポルトガル語、ハングル語、中国語ニュースがありますが、テレビにはありません。昨今、多くの若い留学生が中国や韓国、アジアの国々から来ているわけですから、やはりそのような英語圏以外の外国人の方々にも優しい番組というのを実現していただきたいと思います。そのことについて、御答弁をお願いいたします。

○松尾参考人

 先生御指摘のように、ラジオでは第二放送で四カ国語によるニュースをお伝えしています。BS1、世界のニュースというのが、BS1はほとんど世界からのニュースを発信しているわけですが、これは二カ国語でやっておりまして、日本語と現地語を同時に流しております。

 したがって、映像では、BS1の、世界から流れてくる、これは大体アジアで八カ国ぐらい、アメリカ、ヨーロッパを含めますと、十四、五カ国のニュースを絶えず、ニュース時間として放送しております。これを御利用いただくということにさせていただいて、今現在でも二カ国語の英語ニュースは万全ではございません。大変お金がかかるということが一方にございます。したがって、この二カ国語による英語ニュースの充実というところに当面、的を絞らせていただきたいというふうに思っております。

○山井委員

 そういう意味では、これから高齢社会とともに国際化社会でありますので、そのような、だれにでも優しいNHK番組ということを心がけていただきたいと思います。

 そして、今回、私がこのような労働条件や障害者雇用の問題を取り上げさせていただいたのは、あくまでもNHKさんが日本の法人の一つのモデルとなっていただきたい、IT産業のまたリーダー、モデルとなっておられる法人さんがそういう状況ではよくないと思ったからであります。

 最後に、監督官庁の片山大臣、このようなことについて、一言御意見をお伺いできればと思います。

○片山国務大臣

 委員からいろいろ重要な点の御指摘がありまして、NHK側の答弁も大変前向きで誠意があると私は思いますので、今後とも、我々も関係するところとして、十分見守っていきたいと思います。

○山井委員 どうもありがとうございました。


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