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2000年8月4日 厚生委員会 議事録

身体拘束・グループホーム・介護報酬
(やまのい和則質疑部分のみ)

○遠藤委員長 

続いて、山井和則君。

 なお、山井君の発言の前に私から申し上げることがございます。

 山井君からはスライドを映写したいという申し出がありました。これを許可することにいたします。しかし、この際一言申し上げておきますが、きょうのことをきょうではなかなか大変でございます。また前例がないのです、断る理由は前例がないということしかありません。

 そこで、今まではパネルとか何かを提示したりしましたし、これからはOHPなども使われることもあり得るのではなかろうか。そんなことを考えると、何を映させてもいいというわけにはいかぬ。ですから、これは事前に少なくとも理事会とか何かにどういうものを映すんだということを、ただスライドだけではだめです。今後、これは委員の皆さん方も御承知おきいただきたい。

 それから、今回のことは他の委員会にも影響を及ぼすことがあり得る、及ぼさないということを条件に、そのかわり、私からは議運の委員長に対して、こういうことも今後ありますよということをきちっと申し上げておきましたから、今後、スライドの問題をどうするかは議運の場でやるということにして。それが条件です。よろしゅうございますか。委員の皆さん方もそのとおりにしてください。

 では、そういうふうにさせていただきます。

 山井和則君。

○山井委員 

本当にありがとうございます。

テストケースとしてスライド使用を許可していただきまして、ありがとうございました。

委員長、ありがとうございます。

 私、初めて質問をさせていただきます山井和則と申します。

本日は、介護保険の問題、私の生涯のテーマでありますが、このうち四点ぐらい質問をさせていただきたいと思いますが、初めてのことですので、少しだけ私の自己紹介もさせていただきたいと思います。

 私は、学生時代から福祉施設でボランティア活動をしておりまして、そんな中で、豊かな日本と言われるけれども、本当に困っておられる、体の不自由な方や家庭が崩壊した子供たちあるいはお年寄りが多いということを痛感して、生涯を福祉にかけたい、そんな思いで過去十五年ぐらい活動をしてまいりました。

 その中で、私は、今の豊かと言われる社会で、最も政治や社会の光が当たっていない寝たきりや痴呆症のお年寄りに取り組んでまいりましたが、非常にいろいろ考えさせられたことがありました。

その十五年間の間、二年間はスウェーデンに参りましたし、また、イギリス、アメリカ、デンマーク、ドイツの老人ホームで一カ月単位で実習をさせてもらったこともありました。

その中で考えさせられたのは、残念ながら、日本の社会というのが安心して長生きができないということであります。

その最たるものが、最初に取り上げさせていただきます身体拘束という問題であります。

 今回、厚生省は、介護保険において身体拘束ゼロ作戦というものをスタートされまして、身体拘束というものは認めないということを決められました。

このことに関しましては、本当にすばらしい英断だと思います。

このことについて少しスライドを使ってお話をさせていただきたいと思います。

 まず、身体拘束といっても、それは何なのかというのはなかなかわかりにくい部分があるかと思います。

ちょっと薄くて見えづらい方もあろうかと思いますが、実はこれがいわゆる身体拘束であります。

見えますでしょうか。

ベッドの上にさくをつけて、座っておられて、それでひもで縛られておる。

痴呆症のお年寄りは動き回ると勝手にこけて骨折をする危険性があるということで、現場の方も泣く泣くひもで縛っておられるわけであります。

私は、過去十五年、こういう老人ホームや在宅で、研究をしてまた海外にも行く中で、残念ながらこういう現状が十五年前からずっと今日においても続いております。

 まず最初、大臣にお伺いしたいと思いますが、このような身体拘束、これ以外にも、痴呆症のお年寄りを車いすにひもで縛る、あるいは薬で寝かす、あるいは個室に閉じ込めて出られないようにするこのような身体拘束、現場をごらんになったことがございますでしょうか。

大臣、よろしくお願いいたします。

○津島国務大臣 

ちょうど今から十年前、山井先生はまだ学校でございましょうか、そのころ、私に対して御質問が某党の委員からございました。

身体拘束、縛りつけの現場をあなたは見たことがありますかと。

幸いに、私はその数年前に厚生政務次官をやっておりまして、そのときに実情をある程度知っておりました。

まず、事実だけ申し上げます。

○山井委員 

ありがとうございます。

 今までこういう問題を御認識いただいていたということですが、ほかにもいろいろな形がございます。

 こういうふうに、昼間の時間、さくをつけて、それでもさくから落ちるかもしれないということで、ひもで縛りつける。

あるいは、このようにさくをつけて、ひもで縛られて、実際にはひもをほどいてください、ひもをほどいてくださいというふうに私に懇願をされるわけです。

ひもで縛られたお年寄りは、見る見る顔つきが変わっていき、落ち込み、二週間、三週間で寝たきりになる。

そうすると、もうこける危険性はないだろうということで、ひもからほどいてもらえるわけですが、この痴呆症のお年寄りも、残念ながら、ひもからほどかれて一カ月後にお亡くなりになられました。

そういう意味では、残念ながら、こういう身体拘束というのが死期を早めているという部分もあるかと思います。

 例えば、この方も右手を縛られておりますが、やはりひっかくくせがあるということで、それでひっかけないように右手を縛っている。

でも、こういうとき、だれかが寄り添って手を握っていればひっかかないわけです。

あるいは、一緒に手をつないで散歩をすれば、このような方も元気に暮らせる。

しかし、右手を縛られて寝かされていたら元気になるはずがないわけであります。

あるいは、点滴の針を抜くからといって、こういうふうに両手を縛られている。残念ながら、十五年前からこのような現状は続いております。

 厚生省が身体拘束ゼロ作戦を打ち出された英断には敬意を表しますが、この意義、このような問題に対して今身体拘束ゼロ作戦を厚生省が始められてどのような取り組みをされるのか、

そのことを大臣にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○津島国務大臣 

身体拘束の実態でございますけれども、ある社団法人の調査によりますと、医療・福祉サービスを利用した者五百七十六人のうち四百九人、七〇%が何らかの形で身体拘束を受けた経験があるという回答がございますように、委員御指摘のとおりの現場における問題はございます。

 それで、欧米の状況と比べてどうなんだろう。

これはいろいろ議論がございますけれども、欧米でも多少国によってニュアンスが違うと思いますけれども、しかし、基本的に言えることは、身体拘束というのは、やはり人権の立場からいっても極力ゼロを目指さなければいけないということでございましょう。

それと同時に、恐らく介護をされる側からいうと、例えば痴呆のある方の自損事故であるとか、事故を避けるためにはこれは次善の策であるというような意識もあったかもしれない。

ただ、厚生省としては、そういう考え方もこの際やはり乗り越えていこう、それでゼロ作戦を今はっきりと打ち出したわけでございます。

 具体的に言いますと、介護保険の事業者の指定基準の中に身体拘束を原則禁止する旨の規定を盛り込んだ、これがきっかけになりまして、最近になって関係者の方々のさまざまな取り組みが始まったというふうに理解をいたしております。

 この身体拘束がある背景について、いろいろ日本独特の問題もあると思いますね。

というのは、寝たきりが多いということ、これは委員、各地でごらんになっておわかりのとおり、あれも日本独特のいろいろな生活慣習、寝るときの習慣とかいろいろあると思うんですね。

そういうことの中から身体拘束というのは出てくる可能性がふえていく。それから、痴呆に対する対策がまだ十分でない。

 私は、そういう身体拘束そのものを減らしていくためには、いろいろなことに取り組んでいかなければいけないなと。

ただ、基本的に、今申し上げましたように、そういう原則を打ち出して、それで承認の条件にもしておるというのは大きな変化であったというふうに私は思っております。

○山井委員 

今大臣からもございましたように、社団法人呆け老人をかかえる家族の会のデータによりますと、七一%の方が、自分の家族の痴呆症のお年寄りが拘束を経験したと言っておられます。

例えば、部屋に閉じこめられた四十六件、ベッドの上で手や足を縛られた百六十八件、車いすに体を縛られた、また立てないようにされた百三十四件、薬でおとなしくされた、行動を抑えられた百八件。

七〇%もの方が経験しているというのは、これはかなり日常的に行われていると言っていいと思います。

 今海外との比較がございましたが、例えばスウェーデンでは、こういう拘束をする場合には市町村に対して届け出の義務があります。

それが正しい身体拘束、どうしても命や安全のためにやむを得ないかどうかチェックをします。

またドイツでは、以前、縛られたお年寄りが首が締まって亡くなったという事件をきっかけに一九九二年に世話法というのができまして、このような身体拘束はすべて医師の鑑定書が必要になって、裁判所の許可なく縛ったりすれば警告を発し、それでも改善されなければ閉鎖ということになっております。

 このような問題は今日始まったわけではありませんで、例えば、私の手元にある、一九八八年に出ましたこの「ルポ老人病棟」という本、大臣も御存じだと思いますが、ここで、一九八七年にこの著者の方が、こういう身体拘束というのはゆゆしき問題じゃないかということを指摘されています。

それに対して、当時の斎藤十朗厚生大臣は、これは遺憾なことであるので改めていきたい、そして都道府県に対して指導をしていきたいと。

そして、注目すべきは、もっと興味深いのは、私がやめましてもこの方面のことはやってまいりますということで約束されているわけです。

 それ以来、何と津島厚生大臣まで十五人、厚生大臣がこの十三年間にかわっております。

この十三年間、このような現実が指摘されてから、厚生省はどのような取り組みをされてこられたのでしょうか。

○大塚政府参考人 

身体拘束に関連する問題というのは、折々確かに御指摘がございました。

 ただ、先ほど大臣からも御報告申しましたように、これを受けとめる現場、あるいは家族も含めての土壌というのが必ずしも成熟をしておらなかったという面が率直に言ってあろうかと思います。

したがいまして、私ども、随時関係者とお話をしたりする機会もございましたけれども、一つの明確な、具体的な取り組みということで大きなきっかけになる施策を打ち出すことに至らなかったというのが、率直に言ってこれまでの経過だろうと思っております。

 先ほど大臣から申し上げましたように、今般、関係者の機運というのも正直に言って盛り上がってまいりました。

そういうことが、今回思い切ってこうした方向を打ち出せる一つの条件づくりでございます。

したがいまして、私どもとしては、いわば現場からのこの盛り上がりというのを貴重なきっかけといたしまして、思い切って今後この対策に取り組んでまいりたい、こういう経過でございます。

○山井委員 

そういう経緯を経て今回この身体拘束ゼロ作戦に取り組まれることには本当に敬意を表しますが、先ほどの家西議員の質問ではありませんが、忘れていただきたくないのは、今痴呆症のお年寄りが百六十万人、家族の会の調査では七〇%が拘束をされているということを考えたら、何十万という痴呆症のお年寄りが毎年拘束を経験され、そして、私も実際目にしましたが、縛られて無念のうちに亡くなっていかれた。

家族も、家で見られない以上仕方がないといって家族も泣いた。痴呆症のお年寄りも泣いた。

そして、それを縛っている看護婦さんも、本当はこんなことをしたくないんだと十三年間泣き続けてきて、多くの方が無念のうちに亡くなられたわけです。

ですから、今回の身体拘束ゼロ作戦では、ぜひとも毅然とした態度で取り組んでいただきたい。

 それでお願いになりますが、まず一点目は、やはり実態調査をしていただきたい。

実態調査をしなければ、どういう対策、なぜ縛らざるを得ないのかと言うことができないと思います。

ぜひとも早急に実態調査をしていただきたい。

 それとともに、二番目は、アメリカなどでは、例えば老人ホームの廊下にオンブズマンのポスターが張ってありまして、いろいろな虐待や食事を与えないということがあったらすぐにオンブズマン、この電話番号に電話してくださいというポスターが張ってあります。

もし毅然とした態度で本気で厚生省が取り組むのであれば、身体拘束ゼロ作戦をやっています、

もし安全上の問題あるいは命に別状がないのに安易に縛るようなことがあったら、これは禁止ですから保険の取り消しになりますよというポスターをぜひとも全国の介護保険施設に張り出していただきたい。

これをやっただけでも、お医者さんの意識、現場の方の意識、家族の意識も変わると思います。やはりやる以上はそれぐらい一生懸命やっていただきたい。

そして、毅然とした姿勢で取り組んでいただきたい。もし安易に今までのように取り組んでいる施設が発見されたら、保険をもう取り消すということをしっかりと表明していただきたいと思います。

 続きまして、この身体拘束の問題にもかかわるんですが、では、このような身体拘束をせずにどう世話したらいいかということに関しまして、私は、グループホームというものについてお願いをしたいと思います。

 今まで、私も過去十年間、いろいろなグループホームの本を書いて運動をしてまいりました。なぜ痴呆症のお年寄りが縛られるか。

行ったこともない病院に行って、ここはどこだとふらふらと歩いてしまう、そんな中でこけてしまう。そうじゃなくて、このグループホームは、厚生省が介護保険と同時に正式なメニューに入れたわけでありますが、御存じかとは思いますが、五人から九人規模の痴呆症のお年寄りがスタッフとともに共同生活をする。

 その写真も一応持ってまいりましたが、これは、一九九三年、日本で初めてできたグループホーム、秋田県のもみの木の家というところです。

この一階に六人の痴呆症のお年寄りが住んでおられます。

グループホームを見られた方もないのではないかと思ってちょっとスライドを持ってこさせてもらったんですが、

このように痴呆症のお年寄りも、先ほどの病院のように寝巻きを着ていると元気がなくなるわけですが、こういう私服を着て簡単なお皿洗いや料理のお手伝いをすると、痴呆の進行が遅くなるあるいは症状が和らぐということが厚生省の調査でもわかっているわけであります。

しかし、まだグループホームの数が非常に足りないわけであります。

 このグループホームに関して、厚生省は、どれぐらいグループホームが今後必要なのか、そして、今全国で四百カ所ぐらいで、ほとんど、八割から九割の自治体に全くないわけですね。

このような家庭的な居心地のいいグループホームに入りたいと多くの御家族の方から私のところに問い合わせがありますが、ほとんどの自治体にまだないんです。

このことに関して大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

○福島政務次官 

大臣にかわりまして御答弁をさせていただきます。

 先生の御著作は何冊も私は読ませていただいておりまして、グループホーム問題につきましても、先生が熱心に訴えてこられたということはよく承知をいたしております。

 これから二十一世紀に向かいまして、痴呆性高齢者の数というものが急速にふえていくわけでして、その処遇をどういう形でするのかということが極めて大切だ、特に身体拘束というものを本当にゼロにしようと思えば、痴呆性高齢者の方に対するケアというものに対して確立された体制をつくることが必要である、私はそう思っております。

このグループホームは、その一つの中核になる施策である、そのように考えております。

 現在、グループホームは、介護保険制度の中で保険給付の対象サービスの一つとして位置づけられました。

数が少ないではないかという御指摘でございますけれども、平成十二年七月一日時点で、六百五カ所のグループホームが指定居宅サービス事業所の指定を受けております。

 昨年、私ども、ゴールドプラン21、今後五カ年間の高齢者保健福祉施策の方向というものを決めたわけでございますが、これは基本的に、それぞれの自治体の立てられた計画というものを合計してどの程度の水準になるか、そういう決め方をしたわけでございます。

そのゴールドプラン21の中では、平成十六年度までに全国で三千二百カ所の開設を見込んでおります。先生方の大変な御努力で、グループホームというものが非常にいいんじゃないかということが全国的に浸透しつつあることの一つのあかしだ、そのように私は思います。

 ただ、この三千二百カ所というのは、さまざまな議論があろうかと思いますが、ゴールドプラン21そのものが、国が数字を先につくるということではなくて、地方自治体の計画というものを踏まえてつくられた性格のものであるということを御理解いただきたいというふうに思っております。

国としては、この三千二百カ所が見込まれておりますけれども、地方公共団体の取り組みというものに対してしっかりと支援をしていきたい、そのように考えております。

○山井委員 

二〇〇四年度で三千二百カ所ということですが、三千二百カ所というと二万五千人ぐらいでしょうか、一カ所八人とすると。

痴呆症のお年寄りは、大体そのころには厚生省の推計では百八十万人ぐらいになっているわけですから、それでも百人に一人も入れるか入れないかわからないぐらいだと思うのです。

やはり大きな施設や四人部屋、回廊式のものよりはこのようなグループホームの方が居心地がいいということがわかって、効果も上がっています。

 少しこの話を続けさせていただきますが、この痴呆症のお年寄りも、家族の名前はわからなくなってしまっても、ホウレンソウのお浸しをつくったり、そういう今まで長年やってきたことを続けることによって元気を取り戻していくわけですね。

 一方、同じような痴呆症のお年寄りが十分なケアができない施設に行くと、ひもで縛られて、弱って寝たきりになって亡くなっていく。

こういうところは利用しやすいけれども、実際、こうやって笑顔で暮らせるようなグループホームは利用しにくい。

これではやはり、介護保険の理念というのは、保険料は払ってもらうかわりにできる限り受けたいサービスは利用できるというのが介護保険の理念だと思いますが、二〇〇四年度三千二百カ所でも、全国に三千三百カ所市町村があるわけですから、半分ぐらいの自治体にまだグループホームがないということになると思います。

今ないのは百歩譲って仕方がないとしても、二〇〇四年の目標でもまだないというのが目標になるというのはやはりおかしいのではないでしょうか。

 そのあたり、ある程度御家族なり本人がグループホームに入りたいということを望めば利用できる体制を、大体でいいですが、何年後ぐらいにつくっていこうということを考えておられるのでしょうか。

○福島政務次官 

何年後という具体的な数字を示すのはなかなか難しいところがあろうかと思います。

 それは一つには、自治体においてどのようなサービス提供をするのかということについての考え方というのが一つあると思いますし、そしてまた、それはスウェーデンにおきまして大きな転換が起こりましたように、二十一世紀に入りましてから数年の間にその認識そのものも大きく変わっていく可能性があると私は思っております。

そしてまた、グループホームも一つのバリエーションとして、例えば、特別養護老人ホームにおきますユニットケアというような考え方もあるわけでございまして、そういうようなさまざまな施策を組み合わせるということも一つの考え方ではないかと思っております。

 いずれにしましても、先生御指摘ございますように、痴呆性高齢者の方の万全の処遇の体制というものをつくるということに向けて、国としてはしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

○山井委員 

民主党は、今回の衆議院の選挙でも、小学校区に一つ、そう考えるとやはり二万五千カ所ぐらいになるのですが、そのグループホームを将来整備する、それで、痴呆症や体が弱ったときに、町外れの大きな施設や病院に行くのではなくて、住みなれた地域で暮らし続けられる社会をつくろうじゃないかということを言っております。

 公明党さんも、今までグループホームに福島先生を先頭に取り組んでくださったのは存じ上げております。

 やはり二十一世紀、本当に豊かな高齢社会というものをつくるのであれば、ぜひとも厚生省さんにおかれましても、今までのように、痴呆症になったり弱ったお年寄りを移動させる、環境変化させるとますます痴呆症を悪化させるわけですから、そうではなくて

、住みなれた地域に、例えば小学校がどんどん空き教室がふえているわけですから、そういうところにグループホームをつくって、できるだけお年寄りが移動しなくていいように、家族や茶飲み友達が訪問できるような、そのようなグループホームをぜひとも整備していっていただきたいと思いますし、

これも厚生省の調査でもわかっていることですが、必ずしも大規模な施設や大規模な病院よりもコストがかかるわけではないと思います。

 そこでお伺いしたいのですが、私、グループホームについて数多くの質問を受けるのですが、その一番大きなふえない理由と言われているのが、介護報酬がやはり低いのですね。

今約二十六万円ぐらい、月々平均で。老人ホームが平均で月三十三万円ぐらい、そして療養型病床群が四十三万円ぐらい。

そう考えると、最も安いわけです。ある市長さんがおっしゃっておられました、介護保険のサービスで最も採算がとれないのがグループホームであると。

これは各種の世論調査でも、市町村が最も足りないと言っている断然トップがグループホームです。

 でも、先ほども津島厚生大臣、これからは痴呆対策に力を入れていきたいとおっしゃっておられましたけれども、痴呆対策に力を入れたいと言って、その切り札がグループホームじゃないかと世界的にも言われている中で、その介護報酬が最も採算がとりにくくて、ふえないというのは、これはおかしいと思います。

特別養護老人ホームや療養型病床群並みの介護報酬にしても別に高くはつかないわけですから、そのあたり、早急にこのグループホームの介護報酬を上げていただきたいと思います。

 それとともに、あと二つ指摘したいと思いますが、もう一つ、ふえない理由と言われておりますのが、併設型には設備補助が出ます、建設補助が出ます。

ところが、単独型にはほとんど出ないのですね。その結果、老人ホームや病院の併設型はまあまあふえるけれども、本来のグループホームの趣旨である、住みなれた地域に単独でつくりたい、民家を改造してつくりたいというのが、建設補助がほとんど出ないからできないわけです。

これはやはり、先ほども言いましたように、二十一世紀の高齢社会、住みなれた地域で終えられるという社会づくりのためには、単独型の建設補助というものを出していくべきだと私は思います。

 それとともに、三点目、もう一つ言うならば、質の問題であります。

 私は、介護報酬をアップして単独型の建設補助を出したら、どんどんグループホームはふえると思います。

ただし、一方では、悪質な業者が安易にグループホームをつくるという弊害も逆に高まると思います。

そのためには、当然、介護報酬と単独型の建設補助をつけるかわりに、きっちりと質をチェックする。

 一つの例を言いますと、今は都道府県だけの認可になっています。

劣悪なグループホームも少しずつできています。

それに対して市町村に言いますと、いや、勝手に建てられたんです、都道府県の認可で建てられたんです、私たちは行ったこともありません、事故が起こっても私たちの責任じゃないですと市町村は言うわけです。

こんなことではだめだと思います。

やはり市町村にも都道府県と同様に認可の権限と、きっちり監督する、チェックする権限も持たせて、建てやすいようにするけれども質のチェックは今まで以上に厳しくするというようなことが必要ではないかと思いますが、グループホームをこれからふやしていく方策をお伺いしたいと思います。

○福島政務次官 

何点か御指摘ございましたが、まず初めに、介護報酬が低いのではないかという御指摘でございます。

 介護報酬に関しましては、平成十一年度、介護保険がスタートする以前でございますが、補助基準単価というのが一人当たり月約十七万円、介護報酬がスタートしましてからこれが一人当たり月額二十五万円ということで、八万円引き上げさせていただきました。

この二十五万円という数字が一体どこから出てきたんだという話がありますけれども、これは、十一年に実態調査というものを実施いたしまして、どの程度の水準になるのかということで決めさせていただいた数字でございます。

 介護報酬の水準についてさまざまな御意見があるということは承知いたしておりますが、今後、この介護保険制度を運営していく中で、介護報酬の見直しという意見につきましても、その実態を踏まえて対応させていただきたいというふうに考えております。

 それから、引き続き、施設整備の補助ということでございますが、現在、併設型ということで、特別養護老人ホーム等に併設するものに対して、社会福祉法人ですと三千万円程度、医療法人ですと二千万円程度の補助をさせていただいております。これは、グループホームにつきましても、入所しておられる方にさまざまなことが起こり得る可能性があるんだろう、そういう場合にバックアップをする施設があった方がいいのではないかという考え方がありまして、このような形でまずは力を注がせていただいているということでございます。

 ただ、単独設置の場合でも全く支援をしていないのかというと、そうではございませんで、先ほども先生から御指摘ございましたように、住みなれた地域でということですから、既にあるさまざまな家屋等を改修することによってグループホームに転換することが可能でございます。

 そういうことを考えまして、改修費また初年度の設備の補助ということで、一カ所当たり五百万円という補助を、これは国、地方も合わせてということでございますけれども、決めさせていただいております。

今後の整備状況も踏まえて引き続き対応してまいりたいというふうに考えております。

 最後に質の問題でございますが、先ほどの認可外保育所と同じでございますけれども、密室性ということがこのグループホームについてはやはり同様に指摘をされているわけでございまして、その質の確保というものはきちっとしていかないといけない。高齢者の虐待という問題もあるわけでございます。

基本的には、この介護保険の運営は市町村が主体となってやるわけでございますから、市町村においてきちっとこの質の確保に対しての取り組みをしていただきたい、そのように考えております。

 都道府県が認可をするという形になりますけれども、現場で市町村がさまざまな調査が可能になるように、法律上でも市町村に対してさまざまな資料の提出等々の権限を与えたわけでございます。そ

の権限を生かしていただくことによって、一つ一つのグループホームの質の確保を図っていただきたいと思いますし、そしてまた、国としましては、都道府県を介しまして、この市町村のグループホームに関しての質の確保ということに対しての取り組みに、積極的に推し進めていただくように指導してまいりたい、そのように考えております。

○山井委員 

今のことについてでありますが、私が聞いた幾つかの市町村では、グループホームが地域にできても、市町村の担当者は行ったこともない、自分はグループホームを見たこともないと。

そういうことに対して、事業者の方から、山井さん、担当の課が行ったことも見たこともないと言っておられるのですけれども、どうしたらいいんですかということを言っておられるわけですね。

その辺はそういうことがないようにきっちりと市町村に徹底をしていただきたいのと、先ほどおっしゃった単独型への補助、五百万円というのは残念ながら非常に低過ぎて、やはり改築には二、三千万かかるわけですから、この五百万円をもっと引き上げていただきたい。

 それと、いざという緊急時の対応のために併設型の方が安心だということでありますが、もちろんその面もあると思いますが、そのためには、何も隣になくても、一キロ離れていても、五分、十分で行けるということであれば、親施設を持っていれば単独型は柔軟に認めるというふうに変えていただければと思います。

 それで、実際このようなグループホームがふえれば、先ほどのように拘束をされて、ひもで縛られていても、家族はほかに預かってもらうところがないから泣く泣く預けているわけです。

実際、呆け老人をかかえる家族の会の調査でも、グループホームにおいては拘束を経験したという答えはゼロであります。

 ですから、そのようなことをやっていただきたいと思いますし、介護報酬、例えば今は夜勤という形では認められておりません、グループホームでは。宿直だけです。

痴呆症のお年寄りを五人から九人預かって、晩ゆっくり寝てるはずはないわけですから、ここはやはり宿直ではなくて夜勤という形で、その意味での介護報酬を上げていただきたいと思います。

 続きまして、痴呆症のお年寄りの問題。

これにつきましては、痴呆症の問題については若年性痴呆の方の問題や前痴呆の問題、さまざまな問題がありまして、私もこれから取り組んでいきたいと思いますが、この介護保険で最も切実な問題の一つが、やはり認定が軽く出るということであります。

 そして、厚生省もこのことに気づいて、今の認定を、一次判定プログラムを改定していくということをお聞きしているのですが、聞くところによると二、三年かかるというようなことでありますが、家族にとってはそれこそ一週間、一カ月の勝負をしているわけであります。

痴呆症のお年寄りは大体五年から七年ぐらいで亡くなられるわけですから、もし一次判定プログラムを直すのに二、三年かかったら、そのうちに、百六十万人の痴呆症のお年寄りのうち数十万人はもう亡くなってしまうわけです。

そういう意味では、ぜひとも早急にやっていただきたい。

 二、三年ぐらいないと直せないということをもし御家族の方に言うならば、言葉遣いは荒っぽいかもしれませんが、二、三年待ってくださいと言ったら、私は介護者の方から本当にどつかれると思います。

何を言っているんですか、二、三年も待てるはずがないでしょうということを言われると思います。

その一次判定プログラムの改善の問題と、もしそれに時間がかかるのであれば、痴呆の判定が軽くなって苦しむお年寄りや家族をなくすために、経過措置としてどうやって痴呆の判定を正確にやっていくのか、そのことをお伺いしたいと思います。

○福島政務次官 

委員おっしゃられますように、できる限り早くこの判定ソフトの見直しを進めなければいけないというふうに厚生省も考えております。

具体的には、八月十一日に第一回の要介護認定調査検討会をスタートさせることとなっております。

その後、一分間タイムスタディー等の具体的なデータを積み重ねて、そしてまた、実際に使用するまでにはテストもしてみなければなりません。

その結果を踏まえて、また修正をしなければならないということも出てくるだろうというふうに思います。

 現在の一次判定ソフトをつくるに当たりまして、実は膨大な取り組みをしたということは事実でございまして、早くても信頼性に欠けるようなソフトになってはいかぬということが一つはあると思います。

そういう点を踏まえながら、できる限り早く、委員御指摘のように見直しを進めてまいりたいというふうに考えております。

 一次判定と二次判定というものがあるわけでございまして、一次判定だけですべてが決まるわけではない。

そこで、二次判定によって本当に適正な判定がなされるように、それまでの期間対応していかなければならないということも一つあると思いますし、そしてまた、一次判定に関しましても、訪問調査を行うわけでございますけれども、そのときの訪問調査票の記入に際して、痴呆状態に随伴する身体の状況等に関して適切な記入をしていただく。

単に八十五項目チェックするだけではなくて、みずから観察したことを記入していただく。

そしてまた、その日だけ非常にぐあいがいいということもあるわけでございますから、その日の状態だけに注意するのではなくて、御家族の人から、問題行動がないかとか、そしてまた、介護の度合いに対して影響を及ぼすようなさまざまな困難な問題がないかとか、そういうことをきちっと確認をして、それを特記事項としてこの訪問調査のときに記入をしていただくということが必要だ。

これは従来から指導してきたところでございますけれども、今後もこれを徹底していくことによって、一次判定ソフトに関しましてこれを補強するような形というものをとってまいりたいというふうに思っております。

 委員おっしゃられることは確かにごもっともでございまして、厚生省としても全力で取り組ませていただきたいと思っております。

 また、二次判定によって一次判定が変わるという事例がたくさんございました。

これについても、具体的にどういう変更があったのかという事例集というものをきちっとつくりまして、今後の要介護認定の判定に当たりまして、その用に供するために、これは八月を目途に、都道府県また市町村にお配りをしたいというふうに考えております。

 以上でございます。

○山井委員 

この痴呆の判定の問題に関しては、やはり一つ言い添えねばなりませんのは、介護保険が施行される一年、二年前から、御家族の方々を中心に、モデル事業でも非常に痴呆が軽く出ている、何とかしてくれということを再三再四厚生省に対して言っていたにもかかわらず、本番でも、やってみるとやはり症状が軽く出てしまった、そのせいで今まで受けていたサービスが受けられなくなって、今までは在宅で面倒を見られたのに、泣く泣く病院や老人ホームにお年寄りが移らざるを得なくなったケースや、介護疲れで家族が倒れてしまった。本来、御家族やお年寄りのための介護保険であったはずですのに、それによって逆に泣く御家族やお年寄りがいてはならないと思いますので、早急な見直しをお願いしたいと思います。

 最後の質問になりますが、これも、今回の介護保険で御家族が非常に泣いておられる問題、これは、午前中の桝屋議員の質問にもございましたので深くは触れませんが、ショートステイが上限の枠ができて非常に利用しづらい。全体的には、介護保険までの六割、七割にダウンをしてしまった。

今まで月に一度、一週間ショートステイがコンスタントに利用できていたら家で面倒を見られた方が、残念ながら介護保険によってそれができなくなって、それこそ泣く泣く家で見ることを断念したというケースも出てきているわけです。

 このことに関しては、先ほどの答弁にもありましたように、受領委任方式の振りかえ方式で、枠を取っ払ってどんどん利用できるという方向。

これでまず一つお願いしたいのが、これはまだ市町村の裁量にゆだねられていて徹底されていないんです、

多くの自治体がまだこれをやっていません、

ですから、ぜひともこの場で、これは徹底するんだ、あしたから全国三千三百の市町村で介護度に応じて枠内で利用できるんだということをはっきりさせていただきたいと思います。

市町村の判断に任せるのではなくて。

 それとともに、私申し上げたいのは、ショートステイに安易な条件を設けたら家族が倒れてしまうというのはわかり切っていることです。

何でこんなことが介護保険で実施されてしまったのか。家族の声を聞いていたらこんなことをやるはずがないんです。

これを言った瞬間から、家族からは大ブーイングが出てきたわけです。

 それで、どういうメンバーでこのことを議論したのか、私今回調べさせていただきました。

そうしたら、これは医療保険福祉審議会の老人保健福祉部会と介護給付費部会で議論されて、例えば介護給付費部会二十一人の中で、いろいろ各種団体がおられますが、家族の代表が入っていないんですね。

お年寄りの代表も入っていない。もう一つの老人保健福祉部会の方も、二十人の委員の中で家族の代表が入っていない、お年寄りの代表が入っていない。

 ですから、私はここでお願いしたいのは、供給側、サービスを提供する側の理屈で介護保険をやってもだめなんです。

やはり利用する側が厚生行政の主人公なんですから、ぜひともこの委員に家族を入れてほしい。そうしないと、同じような失敗がまた起こるわけです。

それとともに、車いすのお年寄りなら出席できるわけですから、当事者、介護保険のサービスを利用しているお年寄りを入れてほしい。

それと、私もっと驚いたのは、在宅福祉の一番の核であるホームヘルパーさんの代表も入っていないんですよね。

これはどういうことですか。

もっと言えば、今介護保険で一番苦しんでいるケアマネジャーさんも一人も入っていないんです。

これはやはりおかしいと思います。

家族、当事者、ヘルパーさん、ケアマネジャーさんの代表を入れないとだめだと思います。

 おまけに、今在宅で介護している介護者の八五%は女性です。にもかかわらず、この委員のメンバーを見ると、二十人中二人、あるいは二十一人中二人で、女性が一割前後なんですね。

こういう審議会というのは、半分は女性あるいは介護経験者にしないと空理空論になってしまうのではないでしょうか。

そのことも求めて、最後の質問とさせていただきます。

○津島国務大臣 

御指摘の問題点は確かにあると思っております。

 まず第一に、例のショートステイを利用しやすくするために、システムを変えるまででも市町村の決断によって振りかえ措置をとってもらうという点では、今三千百七市町村というほとんどの市町村で振りかえ措置を実施する方針を決めていただいておるのですけれども、肝心の受領委任方式をとる市町村はその八割、二千四百七十五市町村にとどまっている。

おっしゃるとおり、これはできるだけ活用できるようにしてもらいたいということで、先般、七月三十一日の全国課長会議においてもその徹底を図ったところでありますが、引き続き、熱心に広報、指導に当たってまいりたいと思っております。

 それから、医療保険福祉審議会のメンバーのお話は、私も幾らか委員と似たような印象を持っております。

利用者代表として入っておられる方だけで、現場の声を十分に反映できるかなと思っております。

この点は今後の検討課題でありますが、と同時に、もっと広く現場の声を絶えずくみ上げる努力をする、また、あらゆるチャンネルを通じてそれを実現していくということも大事で、そのような方向で事務当局にも最大限の努力をするように、私からも申し入れているところであります。

 御意見、ありがとうございました。

○山井委員 

本当にどうもありがとうございました。初めての質問で失礼も多々あったかとは思いますが、最後に一つだけ申し上げたいのは、介護問題の性格であります。

 私たちは簡単に今二年後、三年後と言いますが、多くの介護者はもう二年、三年後なんか待てないのですね。

お年寄りは亡くなってしまわれるわけです。二年たってからいい制度ができたからといって、天国に追いかけていって、いいグループホームができたよ、いいサービスができたよと言ってももう遅いわけですので、一刻も早く進めていただきたいと思います。

 また、私も偉そうにいろいろ言わせていただいた部分がありますが、私は、ここに立たせていただいているのは山井個人ではなくて、

全国二百五十万人と言われる寝たきりや痴呆症のお年寄りやその家族が本来ここに来たらいいのですけれども、来れないわけですから、その代弁に来ているつもりであります。

私、生涯この介護の問題に取り組んでいって、安心して長生きができる、弱い立場の方々も地域の中で暮らせる社会づくりのために頑張ってまいりたいと思いますので、これからも御指導いただければと思います。

 最後になりますが、スライドのことを特段のテストケースとして御配慮いただきまして、本当にどうもありがとうございました。


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