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2000年11月17日 衆議院 厚生委員会 議事録

 一般質疑 


やまのい和則 質問 部分 介護保険について

○桝屋委員長代理 山井和則君。


○山井委員 

本日は、このような質問の機会を与えていただきましたことに委員長初め委員各位の皆さんに感謝申し上げます。

 本日は、介護保険のことについて質問をさせていただきたいと思います。私、この資料とカラーコピー、二部お配りさせていただきますので、見ながら質疑を聞いていただければと思います。

 まず第一点目、老人保健施設のあり方についてであります。

 私、京都で福祉の研究所をしておりますが、最近非常に多く受ける相談が、老人保健施設からそろそろ出てくれと言われている、それに対してどこかその次に行くところはないでしょうかという相談なんですね。それで特別養護老人ホームは申し込んである、しかし、一年から三年待たないとだめだと。そんな中で、その老人保健施設やいろいろな役所に相談しましたら、特別養護老人ホームがあくまで、二年ぐらい二、三カ所老人保健施設を回って待機しておいてくださいとおっしゃるわけです。これは、俗に老健のたらい回しとか老健めぐりと言われているわけなんです。

 このあたりは大臣を初め皆さんも御存じだと思いますが、痴呆症や体が不自由なお年寄りが老人保健施設を半年や一年単位で転々としていくことによってどんどんADLや症状が悪化していく、このことは老人保健施設の現場の職員さんのモラールの低下にもつながっております。半年一生懸命リハビリをした、しかし、行き着く先は特別養護老人ホームや自宅ではなくて、次のまた老人保健施設に行った。それを二、三カ所転々として、次に自分のところの老人保健施設に戻ってきたときには、見るも無惨な、痴呆が悪化した、あるいは寝たきりになって帰ってこられる。

 私も三年間欧米諸国に行って老人介護の研究もしてまいりましたが、残念ながら、このような中間施設を転々とさせるような政策をとっている国は諸外国にもありません。

 そして、資料の一ページ目ですが、老人保健施設に入る方がどこから来てどこに行くかという調査なんですが、「医療機関」というのは病院のようでして、「その他」の中に老人保健施設が入っているということなんですが、老人保健施設に入る方の四・四%がその他で、行き着く先がまたその他に四・九%行っている。聞いてみますと、二十ケースに一つというふうには、どう考えても現場感覚とずれがあります。つまり、一週間病院に入れるとか一週間家に戻ったあるいは戻ったことにして、ワンクッション置いて老健に行っているというケースが非常に多いんです。

 ですから、御指摘とお願いをしたいのは、厚生省はこのような老人保健施設のたらい回しの実態を残念ながら把握できていないのではないだろうか、もしそうであれば、どれぐらい老人保健施設のたらい回しが行われているのかということをきっちりと実態を調査して、それによって本来の老人保健施設のあり方はどうあるべきかという政策をきっちり立てていく必要があるのではないでしょうか。

 それとともにもう一つ、このことに関しては老健はそもそも自宅復帰と特養に向かっての中間施設で、それらのサービスを整備するというような答弁になるのかもしれませんが、そういうふうなこともきょうあしたできるわけではないですから、早急に現時点においては老人保健施設から老人保健施設へのたらい回しを禁止するような指導をするとか、二、三カ所老人保健施設を転々とするんだったら一カ所の老人保健施設にいた方が社会的コストとしても安いですし、本人にとってもいいわけですし、職員さんにとっても満足度は高いわけですから、ほかの老健に渡るぐらいだったら望めばずっと老人保健施設にいてもいいというような措置を緊急に講ずるべきではないかと思います。よろしくお願いいたします。

○福島政務次官 お答えいたします。

 介護老人保健施設については、施設の目標というのは、リハビリを重視し在宅への復帰を目指す施設であるということから、在宅に復帰し生活することが可能かどうかということは定期的に検討することとされております。
 しかしながら、一方で、そうした長期の入所者の方がおられるということもございます。
 現時点で、入所期間が制限をされているわけではございません。そしてまた、介護保険法が施行されて以降、入院期間が長くなることによって介護報酬が低くなるということもございません。したがって、長期間入所することが必要な、例えば先生御指摘がありました老人性痴呆の方などの場合に、施設をたらい回しにしなければならないような要因というものは現時点ではない、そのように考えております。
 今後、調査をしてはどうかという御指摘がございましたけれども、老人保健施設の調査の中で先生の御指摘の点については配慮しながら進めてまいりたいと思います。

○山井委員

 今政務次官からの答弁もありましたように、確かに、長期ではだめだというような規定はないんですね。でも、実質上は、長期いると、何でこんな長いこといるんだ、老健の本来のあり方じゃないじゃないかというようなチェックが都道府県から入ることによって、自主規制的に老人保健施設がたらい回しをしてしまっているということなんです。そういう意味では、お年寄りの方の権利を守るという意味でも、そういうたらい回しが起こらないようにというふうな施策をとっていただきたいと思っております。
 それから二点目、津島厚生大臣にお伺いしたいんですが、ここに写真がございます。先日、東京老人ホームという全室個室の老人ホームに行ってまいりました。津島厚生大臣、これからもし大臣が特別養護老人ホームで過ごすことになられた場合には、四人部屋か個室か、大臣でしたらどちらに住みたいと思われますでしょうか。

○津島国務大臣

 まずさっきの御質問の方から私なりの見解を申し上げます。
 私も地元に老健施設第一号をつくって、ずっとその状況を子細に観察してきたものであります。その立場から申しますと、委員御指摘のようなたらい回しがございました。また、非常に苦労をした。しかし、さっき政務次官から御答弁いたしましたように、介護保険導入と同時に変えてしまいましたから、報酬上出せ出せというような話、たらい回しという話の深刻性はやや和らいだと私は思うんです。

 ただ、問題は、老健施設にいつまでも置いておくのがふさわしい方かどうかという問題は残るんですね。これは、本来はリハビリをしてどこかへお帰りになるのにふさわしく組み立てた制度であります。だから、特定の方を出すかどうかということが問題じゃなくて、もっといい介護を受けながら自宅にいる方がいいかもしれない、あるいはいいケアハウスにいる方がいいか、それとも、次の質問でありますけれども、立派な特養にいる方がいいかという話だと思うんですね。この話については、もろもろの介護を支える施設を充実して、しかるべきところへ入れるようにしてあげるということに尽きるんだろうと思っております。

 そういう中で、特養老人ホームが個室化してあずましい状態でいるというのは、それはだれだっていいんですよ、もうお答えする必要もないくらいでありますが。

 これは御案内のとおり、一定の補助を受けながら全体として経費負担を今のルールの中でやっておられるわけですから、その経費負担を考えた場合にどうかということだろうと思います。

 委員御承知のとおり、個室に対する補助面積の加算というのをやっており、入所している高齢者の中で病状が重篤などのため個室での介護が必要な者に対応することを目的として加算の対象を定員の三割としている、こういうことでございますね。これがどうかということでありますが、生活環境の改善や生活の質の向上といった観点から、個室化の推進につきましては、個室化が進んだ施設におけるケアのあり方や、個室化に伴い増大する住居費用相当部分、いわゆるホテルコストの負担のあり方などもどうしたらいいんだろうということを総合的に検討して結論を出すべきことだと思っております。


○山井委員

 まさに、大臣が答える必要もないとおっしゃるぐらい、個室の方がいいのは当たり前のことだという認識であると思います。
 実際、この東京老人ホームが個室を中心としてできたのが一九九〇年で、くしくも津島厚生大臣が前回厚生大臣をされていた十年前であります。それから十年間たって、今でも上限が三〇%。実際、特別養護老人ホームの現場へ行きますと、この三〇%は、痴呆症のお年寄りで非常に重度の方をそこに入れておくとか病状が非常に悪化している方を入れておく、アメニティーとして入れておくのではなくてそういう重度の方を入れるということになってしまっているわけであります。


 このことに関して、平成五年九月の敬老の日のNHKの「おはよう日本」で、大内啓伍大臣も個室の方が自分はいいということを答えておられるわけです。そういう意味では、介護保険でお金を払うかわりにいいサービスを選ぶという時代になってきたわけですから、この個室化の問題は、三〇%という上限を撤廃して、望めば一〇〇%できるようにしていただきたいと私は思っております。

 それと、先ほどの老人保健施設のことですが、老健のたらい回しの深刻度は和らいだんじゃないかということですが、私もそう期待しておりました。ところが、なかなか和らいでいないという認識を私は持っておりますので、そのあたり、また改めて対策をお願いしたいと思います。
 次に、老人ホームのケアの質のことであります。
 私も老人ホームに泊まり込んで一緒に付き添って勉強させてもらったりしておりますし、おとついの晩も老人ホームに泊まらせてもらいました。例えば五十八人のお年寄りのために夜勤の方が二人、そして、晩の十時から朝五時までナースコールが百回。そういう中で現場の方も非常に苦しんでおられます。
 その中で、特別養護老人ホームで何が一番困っておられますかというと、入院したときのベッドに対して介護報酬が六日分しか出ない。ところが、私が聞いたところでは、五十床に対して大体二、三人は必ず入院しておられます。多いところでしたら、五十ベッドに対して五人入院されているというケースもあるわけです。これを、何とかもっとお金を出していただきたい。
 どういう問題が起こっているかといいますと、入院する可能性が高そうな要介護四、五の人は危ないからとらないでおこう、入所されてすぐに入院されたらたまったものではないという問題が起こっているとともに、下手に二カ月や二カ月半で帰ってこられても困るから、病院と多少話をして、もう三カ月は無理ですねと言って切ってしまわれるケース、入院がふえそうな方に関してはうまいことを言って老人ホームから出ていってもらうというケースさえ今出かかっております。そうなったら、四カ月
たって退院したけれども帰るところはない、その方はどうなるのかという問題もあります。
 そこで、入院中の特別養護老人ホームの入居者に対して、介護報酬を六日よりももっとたくさん出すべきであると思いますが、いかがでしょうか。


○福島政務次官 お答えいたします。
 特別養護老人ホームの入所者の方が入院した場合には、特別養護老人ホームから介護のサービスを受けることがなくなるわけでございます。介護報酬につきましては、介護のサービスを受ける対価であるということが基本的な考え方でございますので、当該入所者に着目して、入院したとしても支払うという形は原則的に難しい、そのように思います。
 ただ、一方では、そういった場合の特別養護老人ホームの経営ということも考える必要もございますので、介護報酬の設定に際して、あらかじめ入院等による空床を見込んで割り増しした単価を設定したわけでございます。
 六日間という設定でございますけれども、これは、外泊した場合における空床確保と同様の観点から介護報酬を一部支払っているものでございまして、入院がこれを超えた場合に継続して支払いを続けることは困難であるというふうに思います。

○山井委員

 繰り返しになりますが、その意味もわかりますが、それでは病気の人は特別養護老人ホームからどんどん出していくという危険が非常に高いですので、何とかしていただきたいと思います。
 次に、先ほど三井議員からも指摘がありましたが、身体拘束の問題に移らせていただきます。

 このカラーコピーの二ページ目の下に、身体拘束の写真、そして、それをなくそうと取り組んでいる、これは東京都北区のあじさい荘という、身体拘束ゼロ作戦に非常に先進的に取り組んでいる老人ホームにおとつい行ってまいりましたので、そのときの写真です。このように、さくをつけたりひもで縛ったりしないでいいようにベッドを低くしたり、あるいは、落ちても骨折しないようにやわらかいマットを敷くとか、そういうふうな取り組みをされているわけです。

 こういう先進的な施設や療養型病床群もある一方で、厚生省が勝手に身体拘束ゼロ作戦を言っているんだ、現場にはまだマニュアルも来ていないし何にも話も聞いていない、勝手に車いすのベルトを外したら転倒してこけてしまう、介護保険は導入されたけれども全然変わっていないよという声もよく聞くんですね。このことに関しては、現在どれぐらい身体拘束が行われているのかという実態調査をして、それに基づいてどうやって本当にゼロにしていくのかという計画を立てるべきだと思います。

 それとともに、前回の質問でも指摘させていただきましたが、療養型病床や介護施設の廊下に身体拘束ゼロ作戦というポスターを張って、身体拘束は禁止されていますということを啓発するポスターを張るのが一番安くて効果がある対策ではないかと思います。働いておられる方にも、家族の意識啓発にもなるのではないかと思います。
そのあたりはいかがでしょうか。

○福島政務次官

 先生もただいま御指摘ありましたように、身体拘束の問題というのは、さまざまな要素が関連しています。介護現場の意識ということもありますし、ケアのあり方やハードの部分もあるわけでございます。したがって、本当に身体拘束をなくしていく、身体拘束ゼロを実現しようと思えば、現場の意識改革も必要ですし、ケアのあり方についても十分な研修をしていただくことも必要だし、ハード面での対応もしていただくというように、総合的な取り組みを私どもは進めていかなければならないというふうに思っております。

 ただいまあじさい荘のお話がございましたけれども、現場でもさまざまな取り組みが始まっております。私ども行政としましては、こうした現場での取り組みと一体となりまして、この身体拘束ゼロの実現というものに向かって今後とも努力をしてまいりたいというふうに思っております。
 先ほども参考人の方から御説明させていただきましたけれども、現在、身体拘束ゼロマニュアルというものを作成いたしております。できるだけ早くこれをつくりまして、徹底をしたいというふうに考えております。また、痴呆性高齢者の方につきましても、その介護のあり方についてセンターをつくって研修を進めてまいる準備も今進めておるところでございます。

 さらに、その上で周知徹底ということでポスターはいかがかというお話がございました。これは、一般的な広報をしても現場での対応というものがそれについていかなければ、かえって現場での混乱を招くということがあってはならないだろうというふうに私どもは思っております。そういう意味で、総合的な取り組みの推進というものを進めていくことの方がまず初めの取り組みとしては大事ではないかというふうに考えておる次第でございます。

○山井委員

 今答弁にもありましたように、ポスターを張っても現場がついていけないという、まさにそこが問題だと思うのです。一日も早くポスターを張って、それに対して現場がついてこれるようにしないとだめだと思います。

 これはさまざまな研究からも出ていますように、ベルトで車いすに縛られる、ベッドに縛られる、あるいは薬で不必要に寝かされる、こういうことで体がぼろぼろになって死期を早めているということも明らかになっているわけですから、急いでいただきたい。五年ぐらいたって、やはり徹底できませんでしたでは済まないと思うのですね、看板倒れでは。ぜひともよろしくお願いいたします。

 次に、最初の老健の話で、受け皿となる特別養護老人ホーム、それも個室のものやユニット型のものが必要であるという主張が一つ。それともう一つは、もっと在宅に帰れるようになればいいわけですけれども、そこに関してやはり低所得者に対して負担が重過ぎるということもあります。それとともに、最も大きな根本的な原因は、ケアマネジャーが十分に機能していないという部分があると思います。

 そこで、介護報酬絡みで三点のことについて続いて質問したいのです。

 まず、ケアマネジャーの岩手県の五月の調査では、非常にオーバーワークである、デスクワークが多くて利用者の方に十分接触できないというような声が非常に高く出ております。そして、そのアンケートの結果からも、介護報酬が低いということが問題点のトップにも挙げられております。このようにケアマネジャーさんが十分に機能できない、そのことが在宅に帰りにくくなっている現状にもなっていると思います。

 ですから、今五十件が上限になっていますが、上限はやはり三十件が限界だというのが一般的なケアマネジャーさんの言い分であります。十分なアセスメントも訪問もできない。そのためには、三十件で生活をやっていけるような介護報酬、ケアプラン作成の報酬を上げるべきだと思います。

 それとともに、老人保健施設で、痴呆症の方もそう簡単に症状がよくなって家に帰れるわけではありません。そういう方のついの住みかとして痴呆性高齢者のグループホームが必要なわけですけれども、そこも、昨日の発表でも、非常にチェックを厳しくするというのは私はすばらしいことであると思います。しかし、なかなか良質なグループホームがふえないのは、やはり介護報酬が低過ぎるという問題と同時に、特
に、今は宿直でいいということになっておりますが、徘回する痴呆症のお年寄りが入居されておられるわけですから、夜勤が必要なのではないでしょうか。また、単独型のグループホームにも建設補助をつけるということは、英断であり、すばらしいことだと厚生省の取り組みを私も評価しておりますけれども、医療法人や社会福祉法人のみならず、NPOや民間企業にも建設補助をつけるべきではないでしょうか。

 そして三つ目は、やはりデイサービスに関して非常に不満が強うございます。介護保険までは十五人ぐらいの入居者の方をお世話していたのに、介護保険の後は同じ職員の数で二十五人ぐらいお世話しないとやっていけない。おまけに、毎日、風邪を引いたとか気分が悪いということで三、四件キャンセルもある。そういう部分があります。厚生省は介護報酬の見直しは三年後とおっしゃっておられますが、優先順位の高い、今申し上げたケアマネジャー、デイサービス、グループホームぐらいは英断をもって来年から上げるべきではないか。そうしないと、結局は、このままでは三年間もたない。ケアマネジャーさんもやめてしまう、体を壊してしまう、あるいはグループホームも少ない報酬や質の悪いものがふえていく危険性が非常に高くなる、デイサービスももうやめたい、採算がとれないという声が非常に充満しております。

 このあたり、介護報酬を一部のものに関しては来年からでも上げていく、そういうふうなことについて御答弁賜りたいと思います。

    〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕

○福島政務次官

 先生御指摘ございましたケアマネジャー、デイサービス、グループホーム等々の報酬につきましては、いずれも従前の補助対象経費、介護報酬に関する実態調査の結果を踏まえ、事業の安定的な運営に配慮して設定したものである、まずそれを申し上げたいと思います。そしてまた、現在、介護保険の施行からまだ間もなく、その制度の定着というものを図っている途上であるというふうに思っております。したがって、介護報酬につきましても、この制度の定着状況というものを踏まえながら考えていく必要がある、私はそのように思います。

 それを前提とした上で、個々の話を申し上げたいと思います。

 ケアマネジャーの方につきましては一部改正を行うということから、現在報酬の対象となっていないショートステイの振りかえ業務や住宅の改修の理由書作成業務につきまして、来年一月から、市町村が助成を行った場合に国庫補助の対象となるよう現在準備を進めているところでございます。これによりまして、ケアマネジャーの方の業務にかかわる介護報酬というものが一定確保されるということが図られる予定でご
ざいます。

 次に、グループホームについてでございますけれども、現在、入所一人当たり八万円増の介護報酬に設定をさせていただいております。そういう意味では、介護保険がスタートする以前よりははるかに手当てが厚くなったということはまず言えるというふうに私は思っております。

 そして、グループホームの施設の整備に関して、NPOや民間法人が行った場合でもこれを国庫補助すべきではないかということが指摘をされたわけでございますけれども、この点につきましては、憲法八十九条で公金の支出につきましては厳しい制限があるわけでございまして、現時点では難しいというふうに私は考えます。

 また、夜間の職員体制のことでございますけれども、単独型のグループホームの整備を進めようという方針を打ち出させていただきましたけれども、現状におきましては、グループホームというのはバックアップ体制というものがあるわけでございます、緊急時の対応を特別養護老人ホームや病院等が行っていただけるという。また、入居対象者の方々の状態ということを考えますと、痴呆の状態にある方でも共同生活を営むことに支障がない方が入所されているわけでございまして、この点を踏まえましても、夜間の頻回の介護というものについて、夜勤というような形で対応する必要性は現時点においては乏しいのではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、利用者の状況、グループホームの運営の状況を踏まえながら、今後ともこれは適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

 デイサービスの問題につきましては、冒頭述べました答弁と同一でございまして、従前の経費等を踏まえながら設定をしたものでございまして、介護保険の制度の定着というものを踏まえながら、三年後の見直しに向けて検討を進めてまいりたいと考えております。

○山井委員

 最後の質問に入りたいと思います。
 今答弁をお聞きして、やはり現状認識が非常に違うのかなという気がします。

 まず、NPOや民間企業へのグループホームの補助金につきましては、介護保険というのはある意味で自由市場なわけですから、医療法人や社会福祉法人だけに建設補助を二、三千万出して、ほかは出さないと非常に不公平になる。やはりこういう公平性の面も考えていただきたいと思います。

 そして、夜勤に関しても、徘回する痴呆症のお年寄りが入っておられる以上は当然必要だ。そのあたり、またぜひとも前向きに考えていただきたいと思います。

 それで、四月の時点で考えたあげく今の介護報酬にしたということですが、私は一つ提案というかお願いをさせていただきたいのは、介護保険がスタートして七カ月の現時点で実態調査をきっちりやっていただきたいということです。

 といいますのは、介護保険はおおむね順調という、老人クラブ連合会などの調査などからそういう結論が出ているようですが、私は、いろいろな福祉現場を回っておりまして、おおむね順調じゃないんじゃないかなという危機感を持っております。

 例えば、私、老人ホームの職員さんに対して講演をさせてもらう機会も多いですけれども、介護保険が入ってお年寄りとしゃべれる時間が減った、デスクワークが非常にふえた、残業がふえた、あるいはデイサービスの方に関しては、ほぼ一般的に、本当に一人一人のお年寄りと接する時間が減ったというような声を聞いております。ですから、介護保険によってサービスの質が上がったのか下がったのかというのは、もちろん利用者の声も聞いていただきたいと思いますが、同時に職員の方の声を一たんここで聞く必要があるのではないかと私は思います。

 三年後の介護報酬に向けて二年後ぐらいにはするというような予定を聞いたこともありますが、それでは遅過ぎる。といいますのは、普通の商品でも、売ったら三カ月後か半年後に、例えばテレビでしたら、テレビの映りはどうですか、ちゃんと映っていますか、おかしいところがあったらちょっと調整しますよというのが普通の話だと思います。しかし、介護保険に関しては、導入した後、ちょっと不都合があるんですけれどもと現場が言っても、いや、次の点検は三年後ですからしばらく待ってくださいと。こういうことでは、現場からの厚生省への不信感が高まっていくと私は思います。

 私自身もこの介護保険の導入に積極的に賛成した人間でありますから、五年、十年たって、混乱はしたけれども介護保険がいいものに育ってきたなと言ってもらえるような制度にすることが必要だと思います。

 さらに、二十一世紀、高齢社会において、年金にしても医療にしても介護にしても、これからある意味で負担増も含めて厳しいことを、私たち政治家や厚生省の皆さんも、現場の方々と、あるいは国民の皆さんと議論してやっていかないとだめだと思います。そういうときに、介護保険もこのままいったら、入れるまではけんけんがくがく議論したけれども、導入したら後はほったらかしじゃないか、現場は被害者だというような意識を植えつけるのではないかと思います。

 ですから、サービスの質が介護保険によってホームヘルプ、デイサービス、特養、グループホームを初めどう変わったのか、職員の方は仕事がふえたのか、お年寄りの方としゃべる時間がふえたのか、また、お年寄りの方にとっては、職員の方と話す時間あるいはサービスの質が向上したのか、ぜひとも私はそういうふうな実態を調査していただきたいと思います。

 それに加えて、省庁再編の後も介護保険の見直しに向かって介護保険の給付部会なりがされると思いますが、これも石毛議員や私の前の質問でも触れたことですけれども、ぜひともその新たな委員には、ケアマネジャーさんの代表、ホームヘルパーさんの代表、介護をしておられる御家族の代表、そして利用者の代表、実際介護保険を利用しておられる方、それらの方々を委員に加えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


○津島国務大臣

 介護保険制度を国民の間に定着させるためには、サービスの現場で頑張っている方々や利用者の方々の声に十分に耳を傾け、よりよい制度に育てていくことが重要でございます。

 私自身も、数回にわたってサービス現場に出向き、ケアマネジャーを初めサービス従事者や市町村の担当者、さらには利用者や御家族の方々と意見交換を行いました。また、担当部局におきましても、市町村の第一線の方々に施行状況を定期的にお伺いする定点市町村会議や事業者や利用者との意見交換会を数回にわたって開催し、積極
的に現場に出向くなどして、介護現場の実態の把握を行っているところでございます。

 このような現場の声を踏まえまして、訪問通所サービスと短期入所サービスの支給限度額の一本化やケアマネジャーの活動の支援を初めとするさまざまな改善策に取り組んでいるところでございますが、今後、引き続きさまざまな地域の方々、サービス事業者、利用者やその家族、市町村といった幅広い関係者の方から御意見を聞きながら、よりよい制度に育ててまいりたいと思っております。


○山井委員 

よりよい制度にするという思いが本当にあるのでしたら、ぜひとも現場の声を聞いていただきたいと思いますし、そのためにも実態調査をやっていただきたいと思います。

 私の感触では、デイや特別養護老人ホームの現場の方の八割、九割は、これによってサービスの質が低下したというような意識を持っておられるように思います。その原因が介護保険にあるのか、市町村の対応にあるのか、あるいは経営者の方の対応にあるのか、それはわかりませんが、どうかそのあたり、調査とこれからの取り組みをよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。


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