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2000年10月25日 衆議院 厚生委員会 議事録

 法案質疑 (医療法の改正)


やまのい和則 質問 部分 精神医療について

○山井委員 

よろしくお願いいたします。

 医療法の改正について、精神科特例などの精神医療に絞って質問をさせていただきます。

 その理由は、今回の医療法の改正は日本の医療の貧困さを何とか二十一世紀に向かってよりよいものにしていこうという方向性なわけですけれども、長期の入院を初めとして、最も日本の医療の貧困な部分が取り残されているのがこの精神医療の分野であると思います。

 まず冒頭に、ある患者さんの御家族からいただいた手紙を少し読ませていただきます。

 私の息子は精神障害者です。

そのことで私はここ十年ほどいろいろなところへ行き、何とか息子が社会に出られないものかと東奔西走しましたが、結局は精神病院しかなく、しかも、急性期には独房のような個室に薬漬けで入院をさせるしかないというお粗末な状況でした。

しかも、良心的と言われるこの精神病院も、喫煙室さえない始末。

もうもうと煙が漂っている部屋で薬漬けになっている息子を見ると、涙が出て仕方がありませんでした。

息子はいつも言っています、僕の行くところは病院しかないのか。

それを聞くといつも涙が出ます。

二十一世紀になろうとしているのに、日本の現状は相変わらず臭い物にはふたをするという時代と変わらないのかと。

母親はそれに絶望し、何度も死のうとしました。

ほかの精神障害者の家族も同じような気持ちだと思います。

だから、グループホームのような地域の住居で生活できるところが実現したら、障害者の人が社会化し、自己実現できる第一歩になると思います。

 また、昨日、私は精神障害者のある集会に行きました。

その中での横式多美子さんという方の発言なんですが、この方は当事者であり、過去八回精神病院に入院経験を持って、今自宅で暮らしておられます。

その方が言うには、現在の精神病院は治療の場ではなく、収容の場になっています。

私たちは病人なのだからちゃんとした医療を行ってください、普通の病気と同様に扱ってください、精神科特例など早くなくしてください。

私たちは精神病院の劣悪な環境の中で、一日も早く退院したいというのが心の底からの願いです。

私は、一週間から十日ぐらいの入院を中心に、三カ月くらいで退院させるべきだと思います。

すっかりよくなって二度と再発しないようにしっかり治そうねと言って、十年も入院させるのには、ぞっとして足が震えます。このように言っておられました。

 このような現状を、私も先週末から四カ所の精神病院を訪問して、その中の閉鎖病棟にも滞在させてもらって、現場の声も聞いてまいりました。

 きょう、この写真と資料をお配りいたしました。

冒頭にございますように、全体では二百十七万人、入院患者の方は三十四万人。そして、この下のグラフにありますように、半数の約十六万人の方が五年以上入院している。

これは後ほど述べますが、国際的には考えられないぐらいの、入院というよりは精神病院に住んでいるという現状になってしまっております。

 まず第一に、津島厚生大臣にお伺いしたいと思います、

失礼な質問かもしれませんが、このような精神病院に行かれたことはありますでしょうか

。閉鎖病棟に入ったことはありますでしょうか。

また、特にこの写真にありますような保護室というところに、見られたこと、入られたことはございますでしょうか。

    〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕

○津島国務大臣 

私も政治家であり、また、地元におきましては精神障害者あるいは障害者を家族に抱えておられる方々と大変に親しく会話をさせていただいております。

そして、幾つかの地元の精神病院を訪ねさせていただいておりますし、今言われたようなだんだんと監視の厳しくなるいろいろな施設の状況についても、私はつぶさに知っておるつもりでございます。

○山井委員 

そのことについて、率直なところ、精神病院を訪問されて、ほかの病院と比べてどのような御感想をお持ちでしょうか。

○津島国務大臣

 個人的感想として、できるだけ患者さんをいい状態で治療して、早く社会復帰をさせてあげたいなという素直な気持ちを持ったことを申し上げる次第であります。

 ただ、構造的に日本の医療体制に問題があるということも感じまして、つまり、委員御指摘のとおり、ほかの先進国に比べると何でこういう状態なのか、病床が極めて多くて、しかも長く入院をされるのか、これはやはり制度の問題もあるなというふうに感じております。

○山井委員

 この二ページ目に、いわゆる精神科特例というものについての資料をつけさせていただきました。

 ここでは、御存じのように、精神病院では医師は一般病院の三分の一、看護婦は三分の二という規定となっております。

これらについて、一九九一年の国連決議、精神障害者の保護及び精神保健ケアの改善のための原則、その八、ケアの基準にうたわれている、

「すべての患者は、みずからの健康上の適した医療的、社会的ケアを受ける権利を持ち、また、他の疾病を持つ者と同一の基準に則してケア及び治療を受ける権利を持つ」

という原則がありますが、このような少ない人員配置でよいという精神科特例は精神障害者差別のシンボルだと私は思いますが、今の日本の現状はこのような国連の決議に反してはいませんでしょうか。

○福島政務次官

 精神科特例につきまして、歴史的な背景をまず申し上げたいと思います。

 この基準が策定されました当時は、今日ほど薬物療法等が進歩しておりませんで、精神障害者への医療サービスの内容が限られていた。

また、医療スタッフも十分でなかった。

こういう状況の中で、多くの精神障害者の方にできるだけ治療的環境を確保するためには、このような基準を設ける必要があった、そして、それに基づいて精神病床の整備を急がなければならない状況であった、そのように私は理解をいたしております。

 その後、精神医療の世界も、治療法につきましても、大変大きな変化が起こってまいりましたし、さまざまな形での社会的復帰ということに対しての取り組みも進んできたというふうに思います。

 こうした流れに対応する観点から、本年の一月、公衆衛生審議会におきまして、この精神病床の人員配置等の基準について、精神疾患の特性に十分配慮しつつ、一般の病床とできるだけ格差のないものとすべきであるというような指摘がなされておりまして、それを踏まえて、現在、専門委員会におきまして、具体的な基準について検討を進めているところでございます。

○山井委員

 先ほど大臣が答弁してくださった国際的に見ても日本は非常に入院日数が長いということ、これは三ページの資料を見ていただけますでしょうか、

私はこれは不思議だと思いますのは、日本の人口千人当たりの病床数が二・九床、イギリスは一・五床、ドイツ一・六床、アメリカ〇・六床に比べて、二倍から四倍も多いわけです。

素朴な疑問ですが、これが多いということは、日本には欧米よりも精神障害者が多いということなんでしょうか。

 そして、このグラフにもありますように、欧米で精神病床が減っていった六〇年代から八〇年ぐらいにかけて、逆に日本は急速にふえているわけですね。

このグラフで見る限り、日本の精神病院のあり方というのは隔離収容型、逆に欧米では地域で暮らすノーマライゼーション型と言えると思います。

 また、次のページを見ていただきますと、平均在院日数は、今日本では平均三百三十日ということで約一年入院しているわけで、半数近くの方が五年以上入院しているわけです。

このような状況、日本の精神障害者は地域に暮らせる権利はないのかというふうにも思うわけですが、なぜこのような格差が出てきているのでしょうか、それが放置されているのでしょうか。

○福島政務次官

 先生御指摘いただきましたように、欧米諸国におきましては、一九七〇年代から大幅に精神病床の数を減らしまして、長期療養が必要な患者さんに対しましてはナーシングホーム等の受け皿づくりを進め、精神障害者の方を地域において処遇していく体制というものを進めてきた、このように理解をいたしております。

 これに対して我が国の状況はどうであったかということでございますけれども、欧米諸国に比べますと長期療養患者の地域での受け皿づくりがおくれ、そのような患者さんも含めて精神病床で処遇してきたため、欧米諸国に比べて病床数が多い状況が続いている、そのように理解をいたしております。

 したがって、平均在院日数につきましても、長期に療養する精神障害者の方を処遇する機能をあわせ持っているという観点で、欧米諸国の平均在院日数に比べると長くなっているという現象も生じていると思います。

○山井委員

 まさに、今の答弁の中に、欧米ではナーシングホームで対応しているということがございました、その分日本は病院でと。

 皆さんもおわかりのように、ナーシングホームと病院は根本的に違います。

居住環境も大きく違います。

昔ナイチンゲールがその著書「看護覚え書」で言ったように、病院に二カ月以上いると、いることによって逆に体調が悪化してしまうんだ。

そこを、今の答弁では欧米ではナーシングホームでとおっしゃったわけですけれども、なぜ日本は同じことができなかったのか。

五年ぐらい入院している方にとってはナーシングホームの方がいいに決まっているわけであります。

 そこでこの写真をもう一度見ていただきたいんですけれども、保護室というのがあります。

いろいろ手がかかる状態のときにこういうところに無理やり入れられたりします。

この写真で見てもらったらわかりますように、鉄格子があったり、あるいは中から出られないような状態になっています。そして、食堂兼デイルーム。

そして、ここには写真で四人部屋ということですけれども、基準は今六人部屋でありまして、十人部屋、二十人部屋はまだまだあるわけであります。

このようなことは狭いだけではなくプライバシーの問題もあると思います。構造設備基準については、精神科特例廃止の議論の中でも、広さを現行の四・三平米から六・四平米に広げることが議論されておりますけれども、このことについてお伺いしたい。

 もう一つ、このようなプライバシーのない環境に長くいると、人間性が失われやすいと考えられますが、この写真の中の後ろ姿で写っている方も、二十年この病院に入院されているわけですね。

大臣にお伺いしたいんですが、率直に言ってこのような環境で二十年、四人部屋でプライバシーのないところにいて元気になるとお感じになられますでしょうか。

○津島国務大臣

 先ほども申し上げましたけれども、自分がその立場になったらなかなか大変なことだな、精神的にも打撃を受けるだろうな、こういうのが私の率直な印象です。

○山井委員

 まさにそこなんですね。

心の病で苦しんでいる方に入院してもらう、ところが、そこに行ったら精神的な打撃を受けてしまうということになれば、何のことやわからないわけですね。

 心の病に苦しんでいる方がそこの病院に入って、心の負担、ストレスから解消されたら治るわけですよね。

ところが、そこに行って余計に精神的打撃を受ける、悪化して入院が長期化する。

そこに何年もいて、半数ぐらいの方が五年以上いると、帰る家もなくなる、歩くことも不十分になってしまって、社交性もなくなるから、五年いたらそれこそ六年目に地域に帰ってもらうということが余計に難しくなってしまう。

こういう悪循環があると思います。

 それで、お手元にお配りした資料の中に幾つかの社会的入院の資料がございます。

この五番目、まさに先ほど福島政務次官も、欧米ではナーシングホームで対応できている方が日本では病院に入っているのが平均在院日数の長い原因であるということですけれども、

そこで根本的なデータとして私はお伺いしたいんですけれども、そもそも地域で支えるナーシングホームやグループホーム、援護寮、訪問看護、デイケア、いろいろなメニューがあれば、在宅や施設、つまり、精神病院でなくて暮らせるという患者さんは、日本の入院患者さん三十四万人の中で大体どれぐらいあると厚生省は考えておられるのでしょうか。

○福島政務次官

 平成七年に障害者プランを策定いたしましたけれども、私ども、この策定に当たりまして、社会復帰施設などの受け皿が整備された場合、入院している精神障害者約三十三万人のうち、二万人から三万人の入院患者さんが社会復帰できると想定をいたしております。

 現在、この障害者プランに基づいて社会復帰のための環境の整備を進めてきておるところでございます。

○山井委員

 二、三万人ということですけれども、それではさっきの福島政務次官の話と違うように思います。

 というのは、先ほどの三ページにもありましたように、欧米に比べて二倍以上病院のベッド数が多い。

その大きな部分が、向こうではナーシングホームで見ているんじゃないか。

そのことからいうと、それこそ、きのうも私、精神障害者の当事者の会に行ってきましたけれども、少なく見ても三十三万人のうち十万人ぐらいは地域で暮らせるはずだという発言がありまして、私も実感的にそう思います。

 ここは根本的な数字だと思います。

厚生省さんは、三十三万人のうち二万人から三万人しか地域で暮らせない、裏返せば、三十万、三十一万人は精神病院でしか暮らせないと本当にお考えになっているんでしょうか。

○福島政務次官

 私が申し上げましたのは、決してそういう意味ではございません。

 この障害者プランを策定する際に、授産等の対象となって社会復帰できると想定した数値が二万人から三万人ということでございまして、このとらえ方にはさまざまな幅があると思います。

社会復帰は可能であるという定義の仕方が一つあると思うんですね。

私どもの出した数値が唯一のものであるということは決してございませんで、そのとらえ方を幅広く考えるということは十分あり得ることだと私は思います。

    〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕

○山井委員

 いや、幅広くという、そこが問題なんですね。

障害者プランで二、三万人しか施設も含めて地域に帰れないと考えるという前提に立てば、そういう計画しか当然立てないですよね。

ところが、実態は全然違うわけです。

 繰り返しになりますけれども、日本は欧米の倍以上ベッドが多いわけですね。ですから、厚生省さんは、この医療法の改正を経て、二十一世紀も二、三万人しか地域に帰れないという前提で精神医療行政を進めていかれるとしたら――これは根本的なことです、

今のこの構造、日本の多くの精神障害者の方は、ほとんどは今のまま病院でしか暮らせないというような現状認識に立っておられるんですか。

○福島政務次官

 決してそのようなことではございませんで、先生が御指摘されたような方向性というのは私どもも極めて大切だと思っております。

 一つは、現在の精神医療の世界では、在院日数が新規の患者さんにつきましては短くなってきておると思います。

早期に集中的に薬物療法も含めて適切な治療を進めることによって在院日数を短縮することは可能になってきている、私は医者としてそのように認識をいたしております。

そうした短期の在院によりまして、社会復帰をしていく患者さんの支援というものを一方でしっかりしていく必要がある。

 一方では、先生御指摘がありましたように、非常に長期にわたって入院しておられる方の対応というものをどうしていくのか、こういう流れがある。この二つの柱があるんだろうというふうに私は思っています。

 そして、この二万人から三万人という数値は決して絶対的なものではありませんというふうに申し上げましたのは、これは、平成七年に十四年までの計画で障害者プランというものを策定しまして、その中で一定の仮定を置きましてつくった数字であるということでございまして、

これは七年間かけて厚生省として現実問題としましてどこまでやれるか、それも、単に今までのトレンドでやるということではなくて、これは上積みしてより進めていかなければいけないという観点でつくった一つの数字だというふうに私は伺っております。

 ですから、十四年の後にどうするのかという話があります。

これは新しい引き続きの障害者プランをつくっていかなきゃいけないと思いますけれども、さらにその障害者プランをつくっていく中で、先生が御指摘された視点を十分踏まえてその数字を考えていかなきゃいけない、そのように私は思っております。

○山井委員

 まさに問題となるのは、では、何人ぐらい地域で暮らせるのかということなのですが、それは今後調査をされるわけですか。

 というのは、その目標がなかったら、今ちらっとおっしゃいましたけれども、厚生省としてこれぐらいだったらやれるのじゃないかということで考えたということなのですけれども、冒頭に読ませていただいたように、

実際病院に長期入院されている本人や御家族の思いとしたら、もうちょっとグループホームや援護寮やいろいろなサポートがあったら帰れるのに、いつになったら帰れるのだ、おれの人生どうなるのだ、私の人生どうなるのだという思いが、一日千秋の思いであると思うのですね。

三十三万人中何万人ぐらいだったら十分な施設やサポートがあったら暮らせるかということは、そもそもきっちりと調査をしないと、調査なくして計画なしだと思うのですが、そのあたりはどのように考えておられますか。

○福島政務次官

 まさに先生は調査に基づいての政策提言ということで、老人福祉におきましても、また、本日は精神医療ということで、みずからの足で幾つかの施設を先生が拝見してこられたということを伺いまして、大変すばらしい取り組みだと私も共感をいたしております。

 そして、この三十三万人、なかなか難しい点といいますか検討しなければならない点がある。

というのは、その御家族の状況も恐らくさまざまであろう、入院期間もいろいろなケースがあるだろう。

ですから、かなりミクロにきちっと見ていきませんと、なかなか適切な判断が下せないのではないかというふうに私は思っております。

 いずれにしましても、先生の御指摘を踏まえて、厚生省としても前向きに検討させていただきたいと思っております。

○山井委員

 まさにそこなのです。

今回の医療法の改正の中で精神科特例の廃止――廃止といっても、ほかの一般医療と切り離されてこのまま低い水準に据え置かれるのではないかという危機感が非常に患者さんや御家族の中にあります。

その方々の一番大きな不安は、この先どうしてくれるのかが医療法の改正においても見えないということなのですね。

その精神医療、日本の医療の中でも一番貧困で、国際的にも非難を浴びているそこに対して、ビジョンなくして医療法の改正をしていくということなのです。

私は問題だと思うのです。

 重ねてお聞きしたいのですが、このページ三にあります精神病床の多さ、在院日数の長さ、先ほど私は十万人という数字を言いましたけれども、何万人ぐらいなら地域で対応していこう、いけるという意味合いじゃなくて、いくべきだという厚生省としてのビジョンがないと二十一世紀を迎えられないと思うのですけれども、そのあたりのビジョンについてどういうふうに考えていかれるのでしょうか。

あるいは、もし今そのビジョンを検討中と言うならば、二十一世紀の精神医療は入院隔離中心というよりも地域で展開していくというようなビジョンをいつまでに出してもらえるのでしょうか。

○福島政務次官

 今回の医療法の改正の中では、精神病床をどうするのかということにつきまして十分な視点が盛り込まれておらないではないかという御指摘が一つあったと思います。

 先ほども申しましたように、本年の一月に、公衆衛生審議会で「精神病床の新たな機能区分の設定について」ということで、幾つかの指摘を私どもはちょうだいをいたしております。

 一つは、先ほども言いました精神科特例についてどうするのか。

これは、人員配置ということもございますし、先ほども委員から御指摘がありましたように施設整備基準ということで、病床面積の問題につきましてもこの中で御指摘をいただいております。

この点につきまして、関係団体ともよく協議をしながら検討を進めていく必要があることは確かなことだと私は思っております。

その検討を踏まえて、二十一世紀において日本の精神医療がいかにあるべきかということついて一つの方向をきちっと示していく必要がある、私はそのように思います。

○山井委員

 繰り返しになるのでこれ以上は申し上げませんが、患者さんや御家族が一番心配されているのはそこなのですね。

ずるずるずるずる先延ばしになって、今回の医療法の改正の中でもっと精神科医療というものが本当にレベルアップするのではないかという大きな期待を持っておられたけれども、非常に裏切られた気持ちを持っておられる。

今回きっちりとそういうものが出ないのだったら、次いつどのような形で出るのかということを非常に不安に思っておられます。

 それで、先ほど御家族の状況などもあってなかなか退院が難しい面もあるというお話がございましたが、私が思いますのは、やはり医師の数が少ない、看護婦の数が少ない、だから、たくさんの患者さんが来ても十分に対応できない。

本来だったら、短期間、もっと多くのお医者さんや看護婦さんが集中的にタッチして、早期にある意味で地域に帰していく、そのような形の方が理想だと思うのです。

 そこでお聞きしたいと思います。

現在の精神病院の医師の基準である患者四十八人に医師一人を満たしていない精神病院は何%で、何ベッドぐらいあるのか、また、精神病院の看護婦の基準である患者六対看護婦一を満たしていない精神病院は何%で、何床ぐらいあるのでしょうか。

○遠藤委員長

 山井君に申し上げますが、発言のときは挙手または声をかけてから。タイミングが合いませんから。

 福島総括政務次官。

○福島政務次官

 平成十年度の医療監視結果によりますと、精神病院千百九十三病院のうち、医師については約二九%に当たる三百四十六病院、そして、看護婦については約四%に当たる五十三病院が基準を満たしていないという結果が得られております。

○山井委員

 精神病院ではいろいろな問題も出ておりますけれども、このような基準を満たしていないところは保険指定を取り消すことはできないのでしょうか。

今回の医療法改正の中でも、著しく不十分であり、適正な医療の提供に著しい支障が生じる場合には、人員の増員命令や業務停止を命ずることができるという規定が設けられていますが、処分に至る前に、指導で改善が見られない病院名や、その病院に対する指導情報をまず利用者のために公開する必要があるのではないかと思います。

 その理由は、もし劣悪な病院であることを知らずに患者さんが運悪く入ってしまって、ああ、運が悪かった、十年間退院できなかったよというようになったら、これはとんでもないことですよね。

いい病院に入ったら三カ月できっちり治療してもらえて地域に戻れた。

ところが、人員配置基準も満たしていない病院に、一般の方にとってはわからないですよね、運悪く入ってしまって十年間あるいは二十年間帰ってこられなかった。

この写真の中にも二十年間退院できていない方がいらっしゃるわけです。

そうなったら、患者さんにとっては本当に死活問題であると思います。

もちろん、病院の立場からいえば、公表をしてもらったら困るというのはあるとは思いますけれども。

 そこで、厚生省にとりましては、都道府県に任せるというよりも、こういうことは公開する義務がある。逆に言えば、患者さんは少なくとも人員基準を満たしていない病院の情報を知る権利があると思うのですが、その情報公開、その延長線上の保険の取り消しということに関していかがでしょうか。

○福島政務次官

 今回の医療法の改正案では、長期にわたって人員の配置が著しく不十分であり、かつ、適正な医療の提供に著しく支障を生じる場合には、増員命令や業務の全部または一部の停止命令ができるという制度を設けました。

これは非常に大きな前進だったというふうに私は思います、成立をすればでございますが。御協力いただきたいと思いますが、この制度をいかに適切に運営をしていくのかということが大事だと思います。

 私も、この厚生委員会で土肥委員が安田病院の問題を長らく追及してこられたことも委員としてずっとお聞きをしてまいりましたし、都道府県における適正な監視というものが行われる必要があると認識している一人でございます。

 情報公開ということにつきましては、情報公開条例がさまざまな地方公共団体で制定をされているわけでございますが、そういうものを通じて医療監視の調査結果というものが公開されるような事例があるというふうに私は承知をいたしております。

○山井委員

 それで、結局情報公開をするかしないかということに関してはいかがなんでしょうか。

今の、そういう人員基準を満たしていない病院名を公表するかどうかということはいかがでしょうか。

○福島政務次官

 基本的には、地方公共団体、都道府県の事務であるということがございます。

私どもとしましては、適正な監視を行うことについて指導を行うということを進めてまいりたいというふうに考えております。

○山井委員

 いや、それでは地方自治体は勝手にして、公開しなくてもいいということですから。

先ほど言いましたように、患者さんにとっては死活問題にかかわる点でありまして、また、知る権利があると思います。

もしそういうところで何か大きな問題が起こったときに、いや、実は都道府県は情報を知っていましたけれども、患者さんは知らなかったのですかでは済まないと思うのですね。

私は、所轄の厚生省として都道府県に対してこういうものは公開しなさいと言わないと、都道府県に任せたら公開はされないと思います。

そのあたりはいかがでしょうか。

○福島政務次官

 任せると、しないということは必ずしも言えないと私は思います。

○山井委員

 今の、任せるとしないということではなくて、患者さんの知る権利があるとは思われませんか。

権利があると認めるならば、都道府県に対して情報公開を義務づけるなりすることが必要だと思います。

もし知らなくてもいいのですよという立場になれば、都道府県が判断するでしょうということになると思います。

そこをお答えください。

○福島政務次官

 適切な情報につきましての開示ということは必要であろうというふうに私は思います。

そういう観点から、日本の行政におきましても、さまざまな形で情報公開条例の制定が進められているところでございます。

これは、地方分権を踏まえた上での地方自治体の行政としての判断を厚生省は尊重すべきだというふうに思っております。

○山井委員

 そこのところは、ぜひとも患者さんが知らなくて本当に悪い病院に入ってしまったということがないようにしていただきたいと思います。

 私も、この四日間幾つかの精神病院に行かせていただきましたが、多くの方がおっしゃっておられるのは、いい病院と悪い病院と、正直言って非常にピンからキリまである。

しかし、それに対して、どこの病院が悪いからやめろというのはだれも言うことができない。

そういうことをきっちりと取り締まることができるのは、はっきり言って厚生省しかないと私は思います。

そういう意味では、経営されている側の意見、当事者の方の意見をしっかり聞いていただきたいと思います。

 このように当事者の人権を守るためには、当事者の政策決定への参加が不可欠だと考えます。

公衆衛生審議会精神病床の設備構造等の基準の専門委員、十三人の委員を見ましても、当事者、つまり、精神障害者本人が入っておられません。

私たち民主党は、介護保険の中でも市民参加、当事者参加ということを訴えてきて、そのことを盛り込ませてもらったわけですが、今後、省庁再編の後も、同じような専門委員会あるいは分科会というものが精神医療に関してつくられると思いますが、その際に当事者を入れるべきだと思います。御意見はいかがでしょうか。

○福島政務次官

 政策決定のプロセスの中で患者さんの意見というものも十分に受けとめられる必要がある、その点につきましては、先生の御指摘はそのとおりだと私は思います。

 現在、どういう状況かと申しますと、精神医療のあり方を検討する公衆衛生審議会精神保健福祉部会の委員に関しましては、医師、看護婦、精神障害者の家族の代表の方、そして弁護士等の方々に務めていただいておりまして、それぞれの学識や精神障害者の方と接してこられた経験というものを生かして審議をしていただいております。

また、同部会のもとに設置されております専門委員会におきましては、精神障害者の方々を参考人としてお招きいたしまして、その意見を伺いながら、精神病床の人員配置についても検討をいたしておるところでございます。

 直接に委員になるべきではないかという御指摘だと思いますが、さまざまな意見を持っておられる複数の団体がございます。

また、こうした団体に加入をしておらない精神障害者の方もおられます。どの方が精神障害者を代表できるのか、その点についての判断はなかなか一概には言いにくい、難しい点があるのではないか、そのように私は思っております。

 いずれにしましても、先生が御指摘いただきました、精神障害者の方の御意見というものを受けとめながら政策決定を進めていくことは極めて大切でありますし、私どももその姿勢で今後とも取り組んでまいりたいと思っております。

○山井委員

 今までから参考人として当事者の方の声を聞いていただいていたと思いますが、私は、参考人と委員では全然意味合いが違うと思います。そして、この当事者の声を入れないとだめだということに関しては、公衆衛生審議会でも当事者を委員に入れるべきという意見が多数で承認されたにもかかわらず、実際は残念ながら今も無視されたままになっております。

 それで、今当事者の方はいろいろな団体があるという話でしたが、そんなことを言い出したら、業界団体もいろいろなものがあるわけです。

もし二つあるならば、二つ入れたらいい。

それは本質的な問題ではなくて、当事者の代表を入れねばならないという原則を打ち立てたならば、だれかを選ぶことは不可能なことではないと思います。

ですから、今の難しいというのは理由にならないと思うのです。

改めてお聞きしたいと思います。

 これはやはり譲れないところであります。

なぜかといいますと、どうしても経営する方々――その方々の声も半分は聞くのは重要ですけれども、最初から大臣、政務次官のお話をお聞きしていても、今の現状がおかしいことは百もわかっている。

でも、一歩一歩なんだと。

家族のこと、現場のことがある。

しかし、その中で一番欠けているのは、一歩一歩と言っているときに、精神病院で半数以上の方が平均五年入院させられている、その方々の声はどこに届くのか。患者さんの声が厚生行政の原点であると思います。

そういう意味では、厚生行政を患者さん本位のものにするためにも、当事者の参加は私は絶対必要だと思います。

改めてその点についていかがでしょうか。

○福島政務次官

 現在、参考人ということでお招きをしてお聞きしていることが必ずしも反映をされないということにはならないと私は思います。

また、その政策決定の中で十分に精神障害者の方の意見が反映をされておらないではないかという御指摘があるとしますれば、私どもも、その政策決定に当たりまして、より注意深い配慮、御意見の尊重というものを踏まえて今後とも取り組んでまいりたいと思います。

○山井委員

 私もよく理解できないのですが、一番大きな理由は、団体が一本化されていないということでありますか。

それとも、ほかの団体は代表を出すべきだけれども、当事者は参考人ぐらいでいい、委員として入れる必要がないと考えておられるのですか。

その最大の入れられない理由をもう一度お願いします。

○福島政務次官

 私どもは、先ほどからの御答弁の繰り返しになりますけれども、現在まで、公衆衛生審議会精神保健福祉部会、また、そのもとにおきます専門委員会を運営してまいりました。

その中で、精神障害者の方々の御意見を十分反映させながら今後とも進めてまいりたいということでございます。

○山井委員

 いや、委員と参考人では根本的に違います。

そんなことを言い出したら、全員参考人にして、委員会はなくてもいいじゃないかということにもなりかねないわけです。

 私が繰り返し聞いているのは、なぜ当事者は参考人にとどまって、委員では入れないのか。

私は、その当事者こそが主人公であると。

なぜ当事者は参考人どまりで、委員としてはだめなのか、そのことをお伺いしたいと思います。

○福島政務次官

 ただいま委員から重ねての御質疑がございましたけれども、今まで精神保健福祉部会の進め方そのものにつきまして、精神障害者の方の意見が全く反映をされてこなかったではないかというようなことではなかろうと私は思っております。

○山井委員

 いや、私は全く反映されていないとは言っていないですけれども、十分に反映されてないわけですね。

繰り返しになりますけれども、なぜ委員ではだめなんですか。

 福島先生もお医者さんですから、いかに患者さん本人の気持ち、意見が医療をよくするために大切で、必要不可欠だということはおわかりになっておられると思います。

 私も、今回、精神医療の現場を回らせてもらって患者さん本人の声を聞いた。

一日も早く退院したい、世間、地域の偏見がある、家族との関係が難しい、いろいろな生の声を聞いた。

一番切実に言われたのは、私たちは待てないんです、五年も十年も待てないんです、私の人生はどうなるんですかという悲痛な叫びがあるわけです。

もちろん、それだけを聞いて政策決定ができるわけでもありませんが、それを問題解決の原点と踏まえて、こういう困っておられる現状をどうしたらいいのかというところから議論はスタートしないとだめだと思います。

 にもかかわらず、委員の中でそういう声を聞いてきっちり議論しておかないと、現状が難しいから、受け皿といいますか地域のサービスが足りないからもうちょっと我慢してもらおうかと、結局はこの先延ばし先延ばしのツケはすべて当事者の方に行ってしまうわけです。

 私がこういうふうにこだわる理由は、こういう先延ばしのやり方、例えば先ほど申し上げました三十四万人のうち二、三万しか地域に帰れないというようなことは、当事者の方が委員としてその場にいらっしゃったら、

冗談じゃないわよ、一回現場を見に来てよと言われると思うのですね。

残念ながら、そういう甘い政策になってしまう理由は当事者が入ってないからだと思うのですが、しつこくて申しわけないのですが、そこのところ、津島厚生大臣、お願いします。

○津島国務大臣

 委員御指摘のとおり、精神障害者の方々の声が公衆衛生審議会や関連の部会で反映されることは必要でございます。

今御指摘のように、委員として当事者に患者さんを加えるかどうかにつきましては、今の制度がいいかどうか、いろいろ研究をさせていただきたいと思います。

○山井委員

 研究……。

とにかく、そのことについては必須条件として、今度また新たな委員会がなされるときに実現をしていただきたいと思います。

そういうことをきっちりと厚生行政の中の一つの基本にする、当事者の声を中心に考えるということをこれからきっちりとやっていただきたいと思います。

 きのう集会で聞きました横式さんの話の中にも、こうおっしゃっています。

私たちの周りには月に一回しか回診がない精神病院もたくさんあります、月に一回の回診で退院を決めると、当然入院日数も長くなりますと。

今の日本で入院日数が長いこと、その根本的な問題は、やはりお医者さんの数、看護婦さんの数が少なくてきっちりと対応できない。

欧米に比べて半分以下の人員配置であります。

このような現状では、早期退院、社会復帰ということも難しいと思います。

 今回の医療法の改正で、昭和三十三年に定められた精神科特例が廃止されます。

この改正の中で、精神、結核、感染症以外の病床は一般病床と療養型病床の二区分にされ、一般病床の看護基準は四対一から三対一に引き上げられるという案が今検討されているわけですが、精神病床においても人員基準の引き上げが必須だと私は思いますが、医師、看護婦、そしてコメディカルの方々の人員基準の引き上げについていかがでしょうか。

○福島政務次官

 実は私、きのう国立精神・神経センターに行ってまいりまして、本日、山井委員から二十一世紀の日本の精神医療はいかにあるべきかと御質問をいただくとは思っておらなかったのですけれども、どういう精神医療であるべきかということにつきましてその場でいろいろと考えて、帰ってまいりました。

 現在の日本の精神医療の状況をどうしていくのか、人員配置基準にしましても、設備基準にしましても、これは公衆衛生審議会での検討というものを着実に進めていく必要がある、そのように私は思います。

○山井委員

 いや、具体的に冒頭申し上げましたように、精神科特例、医師は一般病棟の三分の一、看護婦さんは三分の二、これを引き上げないと、今の状況では――私も訪問しました精神病院でも、現場のお医者さんが、

十年前よりもいろいろなことに対する告知義務がふえてデスクワークもふえた、

入退院の書類もたくさんある、

外来も以前に比べるとどんどんふえてきている、

にもかかわらず医師の人員基準がふえていない、

このままでは二週間に一遍あるいは一週間に一遍しか診ないような形で、責任を持って退院とかそういう対応もとりにくいということをおっしゃっておられます。

ですから、この人員配置基準を上げるべきだということに関してどう思われますでしょうか。

○福島政務次官

 公衆衛生審議会から意見が出されましたのが本年に入りましてからのことでございますけれども、いずれの基準にしましても一般病床との格差を改善していく、前向きな方向で進めていく必要がある。

ただ、具体的な基準、これは既存の施設をどうするのかという観点も当然ございますので、いろいろな議論が必要だと思いますので、審議会の場できちっと議論をしていただいて、前向きに検討を進めていただくことが必要だ、そういう意味で申し上げたわけでございます。

○山井委員

 何か本当に行く末が見えてこないわけです。

 例えば、精神病棟に関しても一般の病棟と同じように一般病床と療養型病床に機能分化をして、そして、精神病院の中の一般病棟に関しては一般病院並みに人員基準を引き上げるべきではないかと思いますが、いかがですか。

○福島政務次官

 今直ちにかくかくしかじかの基準であるべきだということを申し上げる段階ではまだないというふうに私は思っておりまして、むしろこの審議会での議論というものを、先ほども先生から御指摘ございましたけれども、精神障害者の皆様の御意見というものも踏まえながら着実に進めていくことが必要だと思います。

○山井委員

 そこがこの医療法改正の問題の大きな問題点だと私は思います。

 先ほども申し上げましたように、精神障害者の方々あるいはその御家族は、今回の医療法の改正で、精神科特例を廃止することを通じて一般の治療と同レベルの治療が受けられるんだという期待を持って今回の医療法の改正を待っておられたわけです。

 にもかかわらず、今の答弁にありますように、医療法の改正は通したいけれども、精神医療については貧困で、三、四十年大問題になってきて、国際的にも批判されている人員配置基準をどうするかまだ決まってもいない、これから議論をする、それで患者さんや御家族が納得されるんでしょうか。

まさに先ほど言った、当事者の方が入っていないから先延ばしになってしまうのではないでしょうか。この人員配置基準の引き上げなどについて、大体いつまでに決まるんでしょうか。

○福島政務次官

 繰り返しになりまして大変恐縮でございますけれども、関係団体等も含めて議論を進める必要がございます。

いついつまでということを申し上げるのではなくて、着実に、先生おっしゃられました御指摘も踏まえた検討を進めてまいりたいと思っております。

 また、付言をいたしますと、今般の医療法の改正で一般病床、療養病床という区分が導入されましたし、人員配置基準の是正ということにつきまして、より法的な根拠にのっとった対応ができるような形になったわけでございます。

 一つ一つの改革というものは抜本改革につながる非常に大切な性格を持つものだと思っておりまして、精神科特例の課題というものを認識はしておりますけれども、医療法の改正は改正として御尊重いただければと私は思います。

○山井委員

 本当に、答弁を聞いておりますと、精神医療に関しては、先ほどのデータにあったように、欧米と比べて極めて長くて、津島大臣も最初におっしゃったように、十分とは言えない環境の中に置かれている状況が残念ながら二十一世紀にもこのまま積み残されてしまうような気がいたします。

 次の質問に移らせていただきますが、このように障害者の方々はさまざまな差別にさらされているわけですが、精神障害者は危険な存在だというメッセージを与えかねないような規定、具体的に言いますと、医療法施行規則第十条の三や十六条の一の六や、身体合併症を持っている患者さんが一般病床に入院できないかのような誤解を与える差別的な規定がまだ残っていること。

また、保護室を――この保護室というのは独房のことでありまして、トイレもこの中でやることになるのですが、これを一般の病床、居室として取り扱ってよいという、精神障害者を人間として扱っていないような行政の文書があるなら、この際見直した方がよいのではないでしょうか。

障害者の欠陥条項の見直しも内閣を挙げて取り組んでおられるのですから、そのことについての見直しもすべきではないでしょうか。

 以上のような点について、引き続き公衆衛生審議会でも御検討いただきたいと思います。いかがでしょうか。

    〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕

○福島政務次官

 精神障害を持つ方に対しましての偏見というものは社会の中から取り除いていく必要があると私は思っておりますし、そのための取り組みというものを今後もしっかりとやらなきゃいかぬ、そのように認識をいたしております。

 今先生から御指摘のありました保護室の問題でございますけれども、これは精神疾患に特有の症状を踏まえつつ、人権に配慮した適正な医療と保護を確保できる療養環境が必要であるということから設けられているものでございます。

また、保護室のあり方といいますか、そういうものも最近変わりつつあるというふうに私は思っております。

 そしてまた、一般の病院に精神障害者の方が入院できないというような規定では全くありませんで、さまざまな合併症が当然生じることがございますし、私も内科の医師をしておりましたけれども、そういった場合には入院をして治療させていただいた経験もございますし、そういうことが妨げられているようなことは全くないと理解をしております。

 社会における偏見の除去ということにつきましては、さまざまな取り組みを進めていく必要があるという観点から、精神保健福祉全国大会の開催ですとか障害者の社会参加を促進する事業の実施ですとか、これは療養環境ということもございますけれども、鉄格子を撤去する等の療養環境向上のための補助というような事業を厚生省としては進めております。

○山井委員

 今私の聞き間違いでなかったら、この保護室というのは適切な療養環境とおっしゃったようにお聞きしたんですけれども、(写真を示す)こういう鉄格子がついていて、トイレも外からしているのがガラス越しに見える。

そういう環境にいると、人間というのは心のストレスがとれて元気になるのでしょうか。

本当にこういう保護室を二十一世紀日本に残していっていいのか。

こういう保護室の療養環境について、それこそお医者さんの立場から福島次官はいかがお考えですか。

○福島政務次官

 先ほど申しましたのは、精神疾患には特有の症状というものがあります。急性期の症状に対してどう対応するのか。

その場合に、人権に配慮するということが極めて大切なことであることは、先生の御指摘のとおりでございます。

人権に配慮しつつ、適正な医療というものを施す必要がある、保護を確保する必要がある、そういう観点からこの保護室というものが設けられているというふうに私は理解をいたしております。

 しかしながら、今先生御指摘ありましたように、鉄格子がはめられているような環境の中で、いかにも閉じ込められているような印象を患者さんが持たれる環境は着実に改めていく必要があると私は理解をいたしております。

 ですから、先ほども申しましたように、鉄格子を撤去する等療養環境向上のための補助というようなものも、そういう趣旨から生まれてきた事業でございます。

こうした事業を着実に進めていくことによりまして、保護室の存在に対してさまざまな御意見が現在もあるわけでございますけれども、対応してまいりたいと思っております。

○山井委員

 人権に配慮しつつということがありましたので、述べますと、人権に配慮すると言うのであれば、少なくとも外から用を足している姿が見えないというのが最低限の人権への配慮でもあると思います。

私もここに一日入ってみますかと言われたんですけれども、正直言って、人前で用を足して、それを見られて精神的に持ちこたえられるとは思いませんので、この保護室の改善、安易な利用をなくすようにしていただきたいと思います。

先進国の文化のレベルは、その国の精神病院の保護室を見ればわかるという言葉もあります。

 最後の質問になりますが、厚生白書で述べられているノーマライゼーションの定義の中に、

「地域で共に生活するために」

「社会的自立を促進するために」

「生活の質の向上を目指して」

「心のバリアを取り除くために」

というようなリハビリテーションとノーマライゼーションの理念が障害者プランで書かれておりますが、残念ながら今の精神障害者福祉の現状には余りにもほど遠いと思います。

 東京帝大教授の呉秀三さんは、大正七年の報告書の中で次のように書いておられます。

「我が国何十万人の精神病者は実にこの病を受けたる不幸のほかに、この国に生まれたる不幸を重ぬるものと言うべし」。

この国に生まれたる不幸、このような言葉があります。これこそが地域で暮らせない、病院に多くが入院しなければならない今の日本の現実です。

この国に生まれたる不幸というのは、二十一世紀にはどうしていくのか、その二十一世紀のビジョンを改めてお聞きしたいと思います。

 そして、今まで聞いていると、非常にマイルドな改革――改革とも言えないような本当に遅々として遅い歩み、これはある意味ではマイルドかもしれませんが、当事者の方々にとっては非常にハードで耐えがたい遅さなんだということを強調したいと思います。

二〇〇二年に障害者プランが一応のけじめがつきますが、その後、根本的にどう変えていくのか、そのビジョンをお話しください。

○津島国務大臣

 障害者に対するノーマライゼーションのビジョンに基づいてそれぞれの分野で最大限の努力をすべきである、全く同感でございます。

 問題は、今議論になっております精神病院における入院環境等の問題でございます。

 まず入院環境については、本年一月二十五日の公衆衛生審議会の報告の中で、入院患者に快適な環境で医療サービスが提供されるよう国民の生活水準にふさわしい療養環境を整備しつつ、多様なニーズに応じたきめ細かな医療サービスを提供することによってできるだけ早期に社会復帰につなげていくことがこれからの精神医療に求められると指摘をされております。

今の委員のもろもろの問題点の御指摘は、もしこのような趣旨に基づいて進んでいけば少しずつでも改善はされると思っております。

 一方、今度の医療法の改正後の人員配置の基準につきましては、先ほど総括政務次官からもお答えをいたしましたけれども、公衆衛生審議会から、精神疾患の特性に十分配慮しつつ、一般の病床とできるだけ格差のないようにすべきである、これもはっきりと言っているわけでございますから、方向性ははっきりしております。

具体的にどのように進められるかは、今専門委員会において検討を進めておるところでございます。趣旨は、私は理解をしているつもりでございます。

○山井委員

 ありがとうございました。

 先ほど政務次官の発言の中にも、関係団体といろいろこれから詰めていきたいということでありますけれども、その団体は当事者以外の業界団体ではなくて、先ほども言いましたようにしっかりと当事者の方を委員に入れて、当事者の声を最優先する。

そして、いろいろな反対があろうと、本当に豊かな社会というのはそういう心の病で苦しんでいる方々を温かく支えていく社会、それを先頭に立って取り組んでいくのが厚生省なんだ、そういう責任感と使命感を持って頑張っていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。


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