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2002年8月1日

多様なライフスタイルを生きる時代の自立と安心の政策

〜女性政策から男女共同参画へ〜

みんなを元気に
   〜いま、なぜ男女共同参画政策なのか〜

女性も男性も多様なライフスタイルを生きる時代です。

 人生80年時代という長い人生において、ライフスタイルは多様になりました。学校を出たら就職し定年まで勤めて老後…これまで、男性の人生がこんなパターンだと考えられていたとしたら、女性の人生はすでに多様でした。勤め続ける人、出産して退職する人、子育てしながら地域で活躍する人、家庭や地域での経験も活かして再就職する人、事業を始める人、学校で学び直す人。企業での働き方も、正社員、パート、派遣といろいろでした。
 いま、男性も多様なライフスタイルを生きる時代になっています。年功よりも知識がものをいう21世紀。生涯を通じて教育を受け、学ぶことが欠かせません。リストラや会社の破綻も珍しいことではなくなりました。転職や脱サラ起業、パート就業も意識する必要があり、「家族を養う」責任はひとりでは担いきれなくなっています。
 「適齢期」に結婚して子どもは2人、というパターンも薄れました。「適齢期」という考え方が弱まり、いろいろな事情で結婚しない人、離婚する人も増えました。いずれ結婚しようと考えている若い人の中でも、生活設計への不安などから、未婚でいるケースが増えています。子育てが困難な環境に不景気も手伝って、夫婦がもつ子どもの数は減り、全体的に子どもの人口は減少し続けています。
 高齢期の生活はいっそう多様です。若い頃のライフスタイルや中年期からの備え、現在のコンディションなどによって、「同じ歳」でも驚くほどの個人差が出ます。また、長期化傾向にあるひとり暮らしの老後を、どれだけ素敵にすごせるか、がひとつの課題といえます。
 性別や年齢によるパターンにこだわらず、誰もが「自分らしく」ライフスタイルを選択し、元気になる―それが男女共同参画社会です。
 

それなのに、社会の制度や慣行は、 あなたの選択をサポートしていません。

 その一方で社会の制度や慣行は、まだまだ従来のパターンにもとづいています。男性が一家の稼ぎ手で妻子を養い、女性は家庭中心という、「男性世帯主・片稼ぎ」モデルが主流だとされています。
 もちろん、職場での男女平等や仕事と家庭の両立のために、法律も整備されてきました。すでに1985年には、男女平等の観点から「男女雇用機会均等法」が制定され、97年に改正強化、最近では「育児休業・介護休業法」も改正されました。それでも、保育所をさがす親の苦労はあまり軽減されず、待機児童は増えています。高齢者の介護サービスも十分とはいえません。サービスの総量は足りているようでも、種類やタイミングに大きな改善の余地があります。
 そして、社会保障や税制。生活を保障し、政府を支えるこれらの制度は、私たちひとりひとりがライフスタイルを選択し、職場や家庭・地域で活躍していく上で基盤(インフラ)ともなります。それなのに税制も社会保障も、まだまだ「片稼ぎ」世帯を標準としています。例えば、厚生年金では、40年間勤め続ける夫と一度も勤めることがない妻というカップルがモデル。これでは、年金財政もおかしくなるというものです。
 職場や地域でも、家事・育児・介護はもっぱら女性の役割と見る性別役割分業の慣習や意識がまだ続いています。制度が整備されても、育児休業をとる男性が「変わり者」と見られるのでは、選択することはむずかしく、仕事と家庭の両立もすすみません。少子化に歯止めがかからない原因です(少子高齢化の悪循環)。
 右肩上がりばかりでなく、多様な変化が起こる時代、社会の制度や慣行は、特定のライフスタイルを標準とするのではなく、どのようなライフスタイルにも中立的であることによってはじめて、あなたの選択をサポートできるのです。


古いパターンの社会システムが、生活の危険(リスク)を増し、社会の活力をそいでいます。

 個人の選択をサポートしない社会システムは、女性にとっても男性にとっても、生活や労働のさまざまな場面における危険(リスク)を高める原因になります。
 雇用不安や生活不安は、犯罪の増加にもつながっています。家計が消費を抑え、企業が人件費を削るというのは、個々の家計や企業にとっては合理的な防衛策かもしれませんが、社会全体としては景気をさらに冷え込ませます(不安と不景気の悪循環)。リスクが分かち合われないまま、弱い立場にある子どもや高齢者・障害者、女性を対象として、犯罪、虐待、家庭内暴力が目立っています。
 男性も被害の例外ではありません。1998年から4年連続で、年間の自殺者数が3万人を超え、そのうち1万人以上は中高年の男性です。交通事故の死亡者数が年間1万人弱ですから、中高年男性の自殺はきわめて深刻な事態です。不安定な社会情勢の中で、一家の稼ぎ手、頼もしいお父さん、不退転のリーダーなどといった、従来の「男らしさ」像を押し付けることは、逆境にある男性たちをさらに追い込んでしまいます。
 多様なライフスタイルに対して中立的な社会システムは、性別・年齢に縛られない個人の選択とリスクの分散をサポートします。選択がサポートされるという安心の上にこそ、自由で創造的なエネルギーが発揮されるのです。現状では、古いパターンの社会システムが、日本社会全体の活力をそいでしまっています。


男女共同参画政策こそ、あらゆる人の自立と安心の政策となります。

 不安と不景気の悪循環も、少子高齢化の悪循環ももうたくさん。時代と社会の変化に対しておずおずと社会システムを手直しするのでは、悪循環を逆転できません。時代と社会の変化を積極的に呼び込むような、新しい男女共同参画政策が必要です。
 多様なライフスタイルを前提に、リスクを分かち合うことで個人として自立し、人と人との関係、家族、社会との関係を広げていける社会システムづくり。そして変化の激しい時代に、個人が全方位で柔軟に生きることをサポートする社会システムづくり。そんな新しい男女共同参画政策は、女性のための女性政策を超えて、性別・年齢にかかわらず、あらゆる人の自立と安心をすすめます。
 あらゆる人が、みずから選択し、「自分らしく」活躍すること、日本を再創造するカギはそこにあります。


民主党はあなたの選択のサポーター

 民主党は、
  1. 政策が、男性・女性の固定的な役割分担を前提とせず、すべての人の自分らしいライフスタイルの選択をサポートすること
  2. ペイドワーク(有償労働)とともにアンペイドワーク(無償労働)を社会的に評価すること
  3. ライフスタイルの多様化の基本に均等性、公平性をつらぬくこと
  4. 政策の緊急性・実現性の観点から、短期・中期・長期の政策展開を視野におくこと
をポイントに、総合的な男女共同参画政策の立案をすすめました。

 その結果を、8つの柱として皆さまに提案します。
 民主党政権を実現させて、誰もが自立し安心して生活できる社会を、共に生きませんか?


  1. 安心と公正の年金制度
    〜女性には、無年金になる可能性がある。残念ながら、それが現状です〜


    無年金者をなくしてすべての国民に年金を 

     自分の老後はなかなか想像しづらいかもしれません。
     しかし、年老いた時にもし安心して暮らせなかったらと思うと、心中穏やかではいられないのではないでしょうか。
     現在の年金制度は、少子高齢化がすすむ中、負担と給付のアンバランスが問題となり、制度に対する不信と不安が広がっています。
     そんな中、女性の年金制度についても、多様化した女性のライフスタイルに追いついていないため、さまざまな面で支障をきたしています。
     たとえば、サラリーマンの妻で自分自身は無収入か収入が低い場合(第3号被保険者)は、世帯収入として老後に自分の基礎年金、夫の基礎年金と厚生年金、夫が死亡の際は遺族年金を受け取ることができます。一見、安定しているようですが、離婚をした場合は条件が一変し、夫の年金を受給できない上、自分の老齢基礎年金も25年の拠出期間を満たしていなければ受給することができません。女性の平均寿命が延びる一方で、無年金になる可能性を否定できないとなると、高齢女性がどうやって生きてゆけばよいのか、不安は募るばかり。離婚は近年増加傾向にあり、その後の金銭的困難は、決して見過ごせない事実なのです。
     では、働いて自分で厚生年金に加入している女性(第2号被保険者)の年金はどうかというと、決して満足のゆく水準ではありません。1999年の新規受給者の年金額は、男性の受給額20万円と比べて女性は10・3万円と、二分の一の水準にとどまっています。これは、女性の賃金水準が低いため年金受給額への反映も少ないことや、育児や介護の家族責任のために就業の中断または休止を余儀なくされ、厚生年金加入期間が短くなってしまうことなどが原因です。また、老後に夫の遺族年金を全額受給した場合は自分の厚生年金受給を放棄しなければならず、本来の拠出に見合う給付を受けられないことになってしまいます。
     同じく働いて収入を得ている場合でも、パートや派遣で働く女性が年収130万円未満(社会保険料控除を除く)の被扶養配偶者で、フルタイム就業者の四分の三以内の労働時間である場合は、厚生年金に加入せずに第3号被保険者にとどまらなければなりません。
     また、第3号被保険者の老齢基礎年金の財源が、その三分の二を女性を含む被用者(第2号被保険者)の拠出に負っていて、負担と給付の関係が女性同士の間で不公平という問題もあります。
     これらの不公平は、現在の年金制度が個人単位ではなく世帯単位となっていることが大きな原因だと考えられます。そして世帯単位の弊害に大きく左右されうるのは、女性です。誰でも安心して年金を受給できるようになるためには、負担も給付も個人単位の年金を形成できる制度づくりが必須です。


    【私たちは次の政策を実現します】
    • 給付の財源を税金とする全額税方式により、すべての国民に基礎年金を実現します。このことにより、無年金者がいなくなりますし、第3号被保険者の問題が解消されます。
    • 負担についても世帯単位から個人単位へ切り換えることで、各人が性別に関わらず正当な給付を受けられるようにします。ただし、男女の間に賃金格差が大きいという現状に考慮して当分の間、二分二乗方式(夫婦の所得を合算し給付はそれぞれ半分ずつ)をとることとします。このことにより、離婚が女性の年金に不利にならなくなります。
    • 誰もが自分の年金を持つようになれば、遺族年金の必要性が薄れ、老齢の遺族厚生年金を廃止でき、女性の厚生年金受給放棄をくいとめることができます。子どもに支給される遺族基礎年金と若年の遺族厚生年金については、後述の子ども手当(児童手当)が充実するまでの間残すこととし、その水準を調整します。


    • 個人単位の年金には、こんな方法もあります(・ひとくちメモ)
      〜スウェーデンの一階建て年金〜
       最近では、所得比例の保険料率固定方式をとるスウェーデンの一階建て年金(ただし最低年金保障あり)が注目されています。個人ごとに拠出と給付の関係が明らかな制度であり、わかりやすく関心をひく意味でも秀でています。しかし給付財源は拠出世代がまかなう賦課方式をとっていますから、人口構成が安定していない社会では導入に際して調整すべき事項が多くあります。これらの点を踏まえ導入が可能かどうか前向きに検討します。


  2. 自由な選択のための中立・簡素な税制
    〜税金に、生き方選びの邪魔をされていませんか〜

    ライフスタイルの選択に中立な税制にします 

     個人の所得に係る税制は、原則として個人単位のものですが、家族に対してのさまざまな配慮が持ち込まれています。家族配慮は、納税負担の軽減を可能にしますが、一方で個人の自由なライフスタイルの妨げとなっていることを、ご存じでしょうか。
     家族配慮の例を挙げると、妻(または夫)が無収入の場合には、扶養者である夫(または妻)に対して配偶者控除や配偶者特別控除(配偶者の収入が1000万円以下が条件)が適用され、所得税額が低くなります。妻が働いて収入を得ている場合でも、年収入103万円(社会保険料控除を除く)までは給与所得控除65万、基礎控除38万円という控除のしくみで、本人所得に課税されないばかりか、夫も配偶者控除や配偶者特別控除により税額も低くなります。また妻の収入が年141万円未満であれば、夫は配偶者特別控除を受けることができます。
     このように税負担が軽くなることは、一見ありがたいものと思われます(・ひとくちメモ)が、この制度のためにパート女性の4割近くは就労や年収調整を考え、その8割は税制控除を考慮して働く結果となっています(厚生労働省「パートタイム労働者総合実態調査報告」1995年)。扶養配偶者世帯に厚い所得税制が、女性の自由なライフスタイルの選択を妨げ、働き方、生き方に影響を及ぼしていることは明らかです。
     では、子どもや高齢者の扶養控除はどうでしょうか。世帯内に扶養控除の該当者が多い場合であっても、被課税者本人の所得が課税最低限に達していなければ減税などのメリットはありません。
     高齢者が社会サービスなどを利用する場合に、世帯が課税か非課税かで負担を決められることもあります。税制や負担が個人単位となっていないために、高齢者の自立した生き方が妨げられているのです。

    • 税負担はどのくらい軽減されるのでしょう(・ひとくちメモ)

       内閣府の男女共同参画会議・影響調査専門調査会の報告(2002年4月)によれば、配偶者控除、配偶者特別控除による世帯の税額減少について、その額は「退職後パート世帯」で生涯で112万円、「退職後専業主婦世帯」で369万円、と試算されています。
       また、世帯生涯可処分所得額は、「継続勤務世帯」「退職後パート世帯」「退職後専業主婦世帯」でそれぞれ4億6883万円、3億4128万円、R億963万円と報告されています。
       被扶養配偶者になることによる税額減少額に比べて可処分所得額の差の大きさにおどろきます。ライフスタイルの選択は、本来個人の自由ですが、配偶者優遇税制による税額減少に対して、あまりにも大きい所得格差を注目しないわけにはいきません。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 個人所得税を性別役割分業に固定しない税制に変え、ライフスタイルの選択に中立な税制にします。
    • 子どもや女性についての税制を改革したのちに、高齢者に関する税制を見直し、特定年齢層だけを特別扱いしない税制を実現します。

    控除から手当へ 

     配偶者控除や配偶者特別控除は、女性が家事や育児・介護のアンペイドワーク(支払われない労働)をする代償、という見方があります。しかし人間の暮らしの再生産に不可欠な家事や育児・介護は片働き世帯だけではなく共働き家庭でも担っているものであり、また小規模化した家族ではこれらの労働を家族で担うとしても担いきれるものではありません。いわゆる専業主婦が育児や介護に携わっている片働き世帯でも、子育ての不安は保育サービスを、過重な介護は介護サービスを必要としています。それゆえ、アンペイドワークの見地から配偶者控除や配偶者特別控除を肯定することは合理的と言えません。
     配偶者控除・配偶者特別控除が適用される所得水準は、企業の家族手当支給の収入ラインと重なっている場合が多く見られます。それゆえ配偶者控除・配偶者特別控除の実施は、家族手当制度とあいまって、いっそう女性の多様な生き方・働き方の選択を妨げる要因となっています。
     女性が自由に働き方や生き方を選べるように、配偶者控除、配偶者特別控除を廃止して、それによる税の増収分を歳出政策として手当の充実にあて、総体として生活の安定を図るほうが政策として有効です。(・ひとくちメモ)
     子どもの扶養控除も課税最低限以下の所得の家庭には減税などのメリットはないのですから、これを廃止して手当に切り替え、すべての子どもの暮らしの安定・充実に資するようにしたいものです。

    • 子どものいない人は不利?(・ひとくちメモ)

       配偶者控除、配偶者特別控除の廃止による税の増収分で子ども政策を充実するとしても、子どものいない世帯には何の見返りもないと疑問がもたれるかもしれません。けれども、子どもがいない人もやがては年金を受け取り、社会的介護を利用することになるわけですから、世代間連帯の視点に立てば子ども政策充実の意味は大きいと言えます。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 配偶者控除・配偶者特別控除を廃止して、税の増収分で子ども手当(児童手当)、子育て支援策を充実します。ただし制度転換による激変緩和のために、基礎控除の引き上げを検討します。 

    • 控除を廃止し、子ども手当てを支給すれば(・ひとくちメモ)

      【片稼ぎで年間の給与収入が500万円、16歳未満の子ども2人の場合】
      《現行の概算所得税額》
      控除=基礎+配偶+配特+扶養×2+給与所得控除+社会保険料控除(概算)
         =38+38+38+38×2+(500×0.2+54)+(500×0.1)=394
      所得税額=(500−394)×0.1=10.6万円 ―(1)

      《配偶者控除・扶養控除等を廃止した場合》
      控除=基礎+給与所得控除+社会保険料控除(概算)
         =38+(500×0.2+54)+(500×0.1)=242
      所得税額=(500−242)×0.1=25.8万円 ―(2)

      《子ども手当を子ども一人当たり月に1万6千円※支給すると》
      (1.6×12×2)−((2)−(1))=23.2万円
      ◎家計収入は年間23.2万円の増となります。

      基礎=基礎控除
      配偶=配偶者控除(年収103万円の配偶者に適用される)
      配得=配偶者特別控除
      扶養=扶養控除
      (単位:万円)
      ※課税分を差し引き後

      【配偶者の年収・子どもの数と負担の増減】
      被扶養配偶者 16歳未満の子どもの数 現行の所得税額 控除廃止後の税額 子どもの手当額 家計収入の増減
      無し 2人 10.6 25.8 38.4 +23.2
      1人
      14.4 25.8 19.2 +7.8
      無し 18.2 25.8 −7.6
      103万円 2人 14.4 25.8 38.4 +27.0
      1人 18.2 25.8 19.2 +11.6
      無し 22.0 25.8 −3.8
      141万円 2人 18.2 25.8 38.4 +30.8
      1人 22.0 25.8 19.2 +15.4
      無し 25.8 25.8
      (単位:万円、扶養者年収500万円・子ども手当額1.6万円の場合)

  3. バリアフリーな雇用・労働
       〜働き方に、個性はあっても差別はいらない〜

    家族と時間を共有できるゆとりのある労働 

     日本では、長時間労働が企業への忠誠心の証のように考えられていた面もあり、家庭生活に支障をきたすような状況をつくり出してきました。
     また、有給休暇の連続取得や、男性による育児休業や介護休業などの取得も諸外国に比べて少ない状況です。これは、戦後の高度成長期に、女性が家にいて、育児などをすることを前提とするシステムを構築してきたことも原因のひとつです。家族と時間を共有しなければ、家で起こっていることもきちんと把握できません。仕事のために家庭を犠牲にするのは、もう止めにしたいものです。
     女性にとっても男性にとっても働きやすい社会にするためには、長時間労働を強要されず、必要な休暇が取りやすい社会づくりが必要なのです。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 時間外勤務手当の法定割増率を、国際水準である50%まで引き上げ、企業側が時間外労働を自粛する体制を促します。
    • 長期休暇制度の法制化を推進します。

    仕事の能力以外で給料や昇格を差別しない

     子どもをもとうと思えば、出産・子育てをする必要がありますが、これまでは、出産・子育てが業務への貢献度の判断に織り込まれて昇格や賃金に格差が付けられ、職場の慣例として退職を強要される場合もありました。出産や育児を「仕事の邪魔」とする見方は、男性が育児休業を取りにくい要因ともなっています。このような、仕事の能力と関係ないことを理由とする差別が、まだまだ多く見られます。
     また、パートタイムや非常勤での労働では、仕事の内容や責任が同等なのにも関わらず、正社員と福利厚生や賃金で大きな格差が付けられるなど、不合理な差別が行われてきました。
     正社員/非常勤/パートタイマーという「身分」ではなく、仕事の内容や、責任の重さに応じた処遇にすることは、多様な働き方を認める社会を作る上で、欠かすことができない課題となっています。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 雇用機会均等法を改正して、男女双方を対象とし、間接差別(・ひとくちメモ)を禁止する性差別禁止法の制定に取り組みます。また、同時に女性の登用を促進する積極的差別解消(アファーマティブ・アクション)に取り組みます。
    • パート・派遣・契約労働など雇用形態による差別を禁止し、均等待遇を実現します。
    • 育児・介護休業法を改正して両立支援法(・ひとくちメモ)を制定し、男女とも仕事と家庭を両立できる環境を整備します。
    • 女性も男性も同じ労働には同じ賃金を実現するようにし、男女の賃金格差を是正します。

    • 間接差別とは(・ひとくちメモ)

       例えば「パートの賃金は安くてもいい」というのは、性が基準ではありません。しかしパートの大多数は女性なので、結果的に女性の賃金が低くなります。また、「住宅手当は世帯主のみ」という場合、実際には住民登録の世帯主は夫である場合がほとんどですから、女性には支給されないことになります。
       このように、直接「女性だから」という差別ではなくても、状況から結果として差別になることが予想されるものを、「間接差別」と言います。

    • 民主党の仕事と家庭の両立支援法とは(・ひと くちメモ)

      1. 育児休業はパパ・クオータ(父親割り当て)制により、父母がともに取得すると最長14カ月(一方だけでは13カ月)となる
      2. 子どもの看護休暇は父母それぞれ年間10日間(最長15日間)
      3. 勤務時間の短縮の制度化
      4. 育児休業の分割取得可
      5. シングルペアレントの場合は、育児休業が最長14ヵ月、看護休暇は年間20日間(最長30日間)取得できる、など。

    みんなで仕事を分かち合って多様な働き方を 

     失業率が高い中、短期的な視点のワークシェアリング(・ひとくちメモ)による雇p確保が議論されています。しかし、ワークシェアリングには、当面の失業を減らすというだけではなく、多様な働き方をするための積極的なワークシェアリングもあり、将来を見据えてすすめる必要があります。
     仕事を分かち合い、短時間労働を選択することで、出産や育児による女性の離職を減らし、就労が途切れないようにできます。また、長時間の就労が困難な障害者や高齢者にも自分に合った就労の場が広がります。
     このことは、多様な雇用、男女を問わず働きやすい社会の構築には欠かせませんが、そのためには働く時間の長さでなく職務内容で時間あたりの待遇を決めること(均等待遇)の徹底が不可欠です。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • ワークシェアリングの前提となる、均等待遇の実現に向けての法整備を進めます。
    • 人員削減による長時間労働化を抑制し、時間外や休日労働分を新規雇用へ振り向けます。

    • ワークシェアリングとは(・ひとくちメモ)

       ワークシェアリングは、「仕事(ワーク)を分かち合う(シェアリング)」という意味です。
       仕事を分かち合うことにより、社会全体の労働量が同じでも、就業できる人の数は増えます。個人の労働時間が減る分、それぞれの収入は減りますが、自分自身で使える時間が増え、また個人の事情に合わせた多様で柔軟な就労が可能になります。
       オランダでは、ワークシェアリングによって、失業率が、1983年の12%から、2001年には2・2%まで下がりました。

    女性の再就職に支援を 

     最近は、育児休業などの充実により多少改善されてきたとはいえ、結婚、出産、育児、介護など、人生のいろいろな局面で、まだまだ女性は離職を余儀なくされることが多くあります。
     一旦離職して再就職をしようとしても、子育てなどで長く離職していた場合や、以前と異なる職種への就業を希望する場合などは、年齢の壁もあり、なかなか就職できません。教育訓練が必要な場合も、現在の教育訓練給付金は働いている人が対象のため、使うことができないという矛盾があります。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 就業を目指す人に対する職業教育手当を検討します。
    • 就職についての年齢差別禁止法制定を推進します。
    • 企業の再雇用制度を支援します。

    女性の視点で起業を 
     
     時代の変化の中で、これまでの男性による仕事場からの視点の起業ではなく、環境や福祉に配慮した、生活の場に近い女性の視点からの起業が、新しい道を切り開く鍵になります。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 女性起業家に対する財政支援を含む援助体制を 確立します。
    • 女性起業家についてのデータベースを作成します。
    • 女性起業家育成のため、政府が行う事業のうち一 定比率を女性起業家への発注にあてます。
    • NPOや協同組合による起業を推奨します。

  4. 次の世代の育成を支援する社会
        〜親の願いを、社会の願いに〜

     子どもを産むか産まないか、というのはもちろんそれぞれの人の自由です。子どもをほしいと思わない人もいるでしょう。また、子どもを産みたくても身体などの事情で産めない人もいます。「少子化」の問題を考える上では、これらの背景をきちんと考慮に入れ、それぞれの人の多様なあり方を尊重する必要があります。くれぐれも「産めや殖やせや」で子どもをもつことのできない人を追いつめないようにしなければなりません。
     でも、その一方で、子どもがほしいけれども、さまざまな要因によって希望するだけの数の子どもがもてない、という人も今の日本にはたくさんいます。
     また、子育てをしている人を経済的、物理的、精神的に追いつめる社会というのは、子どもたちを大切にできない社会であると言えます。そこでのしわ寄せは、必ず、大人に依存した立場である子どもたちに向けられるからです。
     子どもたちは未来の社会を背負う貴重な存在です。子どもたちを大切にするということは、子どもたちを育てる人たちをサポートする社会をつくるということでもあるのです。

    子育てへの経済的支援を 

     子育てにはお金がかかります。子育て世代は、特に、収入に余裕がないことも多く、子ども一人育てることによってもずいぶん家計が圧迫されます。また、教育費はとても大きな負担になっています。もう一人子どもを、と思っても、経済的事情のために断念する人も少なくないのです。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 子育て世代の経済的負担を軽減するために、子ども手当(児童手当)を所得制限をはずして抜本的に拡充します。子ども手当は義務教育N齢までの支給とし、食費、被服費をまかなえる水準とします。
    • 教育費の負担を軽減するために、奨学金制度を大幅に拡充します。希望者全員が奨学金を受けられるようにし、働きながら返せるようなシステムを作ります。

    所得制限なしというのはバラマキ政策では?(・ひニ くちメモ)

     所得制限がない方が運営事務費がかかりませんので、結果として行政経費の削減になります。一定額を一律支給することによって、所得の低い人ほど恩恵が大きくなります。また、課税所得に含めれば、高所得者からは税率分戻ってきますので、所得制限と同じような効果を得ることができます。一方、所得制限を設けると、「子ども手当をもらっている人は低所得」という烙印を押されがちです。所得制限を設けないということによって、「子どもを育てる人は誰でも」というプラスのイメージをつくることができます。

    多様な保育ニーズに対応するための基盤整備や保育サービスの充実を 

     仕事をしながらの子育ての場合、保育は深刻な問題です。保育園に入所できない「待機児童」となることもありますし、入所できても、自分の働き方に合わないということも少なくありません。
     また、何といっても重要なのは保育の質です。大切な子どもですから、少しでも質の良い保育を、というのが親に共通する願いです。そんな中、時々報道される保育所での虐待事件などは、とても見過ごすことのできない問題です。
     保育の問題は、就学前だけではありません。学童保育の方が、量の不足という点ではむしろ深刻な状況にあります。
     少子化の今、保育所は「保育に欠ける子どもを預かる場所」という以上の意味を持ちます。子どもたちにとって、年齢の異なるいろいろな子どもたちと共に育つコミュニティとしての役割を持っているのです。また、親にとっても、働いている・いないに関わらず、育児支援の場としての機能があります。仕事をしていない親も、密室での子育てによりストレスを抱えているというケースが少なくないからです。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 保育を必要としている人に見合うだけの保育の「量」を確保します。また、保育のニーズ(要望)は人それぞれです。低年齢児保育、延長保育、休日保育、夜間保育、障害児保育、病児保育など「多様な」保育体制を整備します。
    • 単に保育士の「頭数」をそろえれば良い、という発想ではなく、質の良い保育士が働き続けられるような人件費を確保することによって、保育の「質」 を確保します。
    • 民間のNPOなどの活動で、保育現場からの声を反映させながら、保育の質をチェックできるような仕組みを作ります。
    • 多様な学童保育を提供し、希望するすべての小学生に安全で楽しく遊べる居場所づくりをすすめます。また、障害児が、普通学校に通おうと、養護学校に通おうと、地域で安心して楽しい放課後を過ごせるように、障害児学童保育も充実させます。
    • 現在、縦割り行政の中で機能が分かれてしまっている保育所と幼稚園の連携を強化し、一元化を目指します。そして、「希望するすべての子ども たちに家庭以外のコミュニティを」という目標を達成します。

    • 保育さえ整備されれば良い?(・ひとくちメモ)
        もっと子どもの立場になって考えなければいけないのでは?

       もちろん、保育の問題は働き方の問題と裏表の関係にあります。本来は、夜間や休日、病気の時など、働かずに子どもと共にいられる体制を作る方が正論かもしれません。でも、現に、母子家庭で、どうしても夜働かなければならない、あるいは、どうしても重要な会議があって休めない、というようなケースは少なくありません。そんなとき、多様な保育が確保されていないと、結局その被害に遭うのは子ども本人です。劣悪な託児環境に置かれたり、あるいは、家に子どもだけで放置されたり、という状態になってしまうのです。子どもの立場から考えると、質の良い多様な保育を整備することは急務です。 
       
    • 無認可保育所は都道府県知事に届け出ることになりました(・ひとくちメモ)

       ベビーホテルなど認可されていない保育所で虐待事件や子どもの死亡事故がおき、保育の安全性や行政のあり方に批判が広がっています。民主党は緊急な取り組みとして届出制を義務化する法案をいち早く国会に提出、これがきっかけとなり、法改正が実現しました。

    子連れでも自由に移動できる社会を 

     日本の社会は子育て中の人に優しくないと言われています。子どもを抱えると移動もままならないですし、公共交通などでは社会のお荷物扱いされることもあります。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • バリアフリー社会を目指します。
       〈「6.自立と自治の介護保障」参照)〉
    • 歩きタバコなど街中での子どもの危険をなくします。そのひとつとして公共の場において歩きタバコを規制する軽犯罪法の改正に取り組みます。

    ひとり親家庭を支援します 

     離別・死別・非婚など、ひとり親家庭になる理由は様々ですが、いずれにしても、二人親家庭との格差は大きく、必要とする支援もたくさんあります。
     現状では、ひとり親家庭への支援は十分ではありませんし、死別>離別>非婚の順で、支援は少なくなっていきます。本来、必要とする支援は、ひとり親になった事情とは関係ないはずです。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • なぜひとり親家庭になったのか、という事情によるのではなく、現在どのような支援を必要としているか、という視点に立った支援をします。
    • 離婚の場合には、別れたからといって子どもの扶養義務がなくなるわけではありませんから、養育費の支払いがきちんと行われるように制度を整えます。 具体的には、民法を改正して、協議離婚の際の養育費の取り決め及び面接交渉について明記します。
    • 制度によっても養育費が十分に支払われないケースに関しては、その分の配慮をします。基本的には、すべての子どものための子ども手当に加えて「ひとり親加算」をしていきます(現行の児童扶養手当に当たります)。
    • 母子(単身)家庭の自立を促進するため、保育所の優先入所、親の残業や病気などの場合の子育て・生活支援、職業能力開発などの就労支援等を推進します。

      〈職場における仕事と家庭の両立支援については、「3.バリアフリーな雇用・労働」を参照〉

  5. 真の男女平等のための基盤づくり
      〜理不尽な「男らしさ」「女らしさ」はいたるところに〜

     固定的な性別役割分業意識(いわゆるジェンダー)は、実生活において様々な弊害を生んでいます。「男は弱音を吐いてはいけない」「男は家族に頼らずに生計を立てなければならない」という意識が、男性を過労状態に追い込んだり、昨今の中高年男性の自殺の急増につながったりしています。
     一方、「女性は家庭に入るもの」という考えにとらわれて、「一日中家にいる」というライフスタイルを余儀なくされた結果、たまったストレスが子どもへの虐待という形であらわれたり、うつ状態に陥って子育てに致命的な悪影響を与えるというケースすらあります。
     制度と意識は、相互作用の関係にあります。男女平等の制度が整えば、男女平等意識にもプラスになります。その一方、意識が変わらなければ、制度をより良いものにすることも、活用することもできなくなります。
     私たちの基本的な意識をつくるのが、教育の場です。教科書では「男女平等」と教えているけれど、現実には日本の教育ではさまざまな固定的性別役割分業意識の刷り込みがあります。
     男の子は少々活発な方が良いけれど、女の子は従順な方が良い。男の子は家事などできなくても良いけれども、女の子はちゃんとできなければいけない・・・。そんな感覚が、まだまだ教育現場の空気を支配しているのではないでしょうか。進路指導で「男子は理系、女子は文系」「男子は四大、女子は短大」と指導するなどというケースもあります。
     教科書には載っていなくても、教育の現場で暗黙のうちに刷り込まれていくこれらのことこそ、教科書そのものよりも私たちの意識に重要な影響を与えているのではないでしょうか。
     小さな頃から刷り込まれた固定的性別役割分業意識は、なかなか克服できません。「頭ではわかっているけれど・・・」ということになってしまうのです。逆に言うと、小さな頃からの教育に気を配ることによって、固定的性別役割分業意識にとらわれない、自然な感覚を身につけていくことができるのです。

    自立と自律を推進する教育の確立を 

     このような暗黙の刷り込みのほかに、固定的性別役割分業意識に支配されないための自立した人格形成についても、今の日本の教育現場は、問題を抱えています。
     その一因として、教育現場の「横並び主義」が挙げられます。横並び主義からは、「自分の頭で考えて行動する」意識は生まれにくいものです。「子どもは大人の言うことを聞いていれば良いのだ」という意識が教育側にあることもまた、自律能力が形成されない大きな原因の一つでしょう。人間は社会との関わりの中で育てられていきますが、さまざまな職業現場から子どもだけが隔離されたような状況では、なかなか「自分の頭で考える」人間を育てることはできません。
     また、固定的性別役割分業の意識が色濃く残っている日本の教育からは、真に自立した人間を作ることは困難です。「女性は男性の後ろについていれば良いから、自分で責任をとらなくても良い」という意識は、女性の自立を阻害します。また、「男性は家事などできなくてもかまわない」という意識を持ったり、実際に家事や身の回りのことをする技能を身につけることができないと、男性の自立が阻害されます。
     固定的性別役割分業意識の刷り込みは、学校以外のところにもあります。裁判の結果から、役所の窓口の対応から、警察の対応から、メディアから、私たちは知らず知らずのうちに固定的性別役割分業意識を刷り込まれています。
     教育は子どもにとって重要ですが、同時に子どもたちだけのものではありません。社会に出てからも、女性も男性も、自立と自律を高めるための教育が必要です。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 自律能力の形成を教育目標に据えます。
    • 職業体験学習を学校教育に導入します。
    • 男性の家庭参加促進のための教育も含め、実質的な男女の教育機会を均等化します。
    • 人権に密接に関わる仕事をしている人たち(・ひとくちメモ)への男女平等教育を行います。
    • 幼稚園・保育所、学校(小〜大)教育において、固定的性別役割分業意識を見直し、両性の自律と平等の教育を推進します。また、固定的性別役割分業意識によらない職業観の育成をし、進路指導に生かします。
    • 教育ローンと教育休暇を組み合わせたリカレント教育(必要に応じて職場から学習の場にもどり、生涯にわたって繰り返し学習すること)を実現し、社会人が学習しやすい環境をつくります。

    • 人権教育国連10年行動計画に示す「特定職業従事者」(・ひとくちメモ)

       検察職員、矯正施設・更生保護関係職員等、入国管理関係職員、教員・社会教育関係職員、医療関係者、福祉関係職員、海上保安官、労働行政関係職員、消防職員、警察職員、自衛官、公務員、マスメディア関係者、議会関係者、裁判官

    男女共同参画の視点から社会制度・慣行の見直しを 

     さまざまな社会制度や慣行も、私たちに固定的性別役割分業意識を刷り込んでいます。
     例えば、日本の民法では、夫婦は必ず同じ姓でなければなりませんが、95%以上の夫婦が夫の姓を選んでいます。法律では夫の姓を名乗ることを定めているわけではないのにこのような結果になるのは、固定的性別役割分業の意識が背景にあるからです。もちろん、夫婦同姓にすることも貴重な選択なのですが、別姓にするという選択肢がない法律下では、女性が「改姓したくない」と思ったときに、「女は結婚したら夫の姓を名乗るのが当たり前」という価値観が押し付けられることになってしまうのが現状です。
     また、町内会の会長の多くが男性、PTAの会長の多くも男性、というように、法律や条例で決まっているわけではないけれども、慣行として続いているものもあり、これらも「責任を取るのは男」という固定的性別役割分業意識をさらに刷り込んでいきます。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 選択的夫婦別姓制度を導入し、男性にも女性にも「改姓しない」という選択肢を等しく提供します。
    • 女性が「責任のとれない性」であるかのような考えや女性に対する固定観念に基づく社会制度や慣行を改めます。

    あらゆる分野で男女共同参画の推進を 

     社会の根本的なことを決めている政治や行政の場は、まだまだ男性中心です。また、職場においても、管理職などはまだまだ男性が多く占めています。時代がすすめば自然と女性が増えるだろうという楽観的な見方もありますが、やはり、積極的に男女共同参画をすすめていくのが政治の役割です。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 政策・方針決定過程へ女性の参画を拡大します。具体的には、行政の管理職、審議会の委員などについて、割り当て(クオータ)制を含む積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)を講じます。

    • 民主党は女性候補者を支援しています(・ひと くちメモ)

      <民主党女性支援基金>
      対 象―党公認・推薦(他党籍を有しない)女性新人
      支援額―都道府県議・30万円、政令市議・20万円、市    区町村議・10万円、国政についても支援

      <女性新人地方自治体議員候補者への貸付制度>
      対 象―民主党籍の女性新人
      資 金―供託金相当額(都道府県議・60万円、政令    市議・50万円、市議・30万円、町村議・20万円)返 済―落選時には返済の義務なし

    女性に対する暴力(ドメスティック・バイオレンス)の根絶を 

     ドメスティック・バイオレンス(DV)の背景には、男性による女性支配の基盤となる社会経済的構造があります。実質的な男女平等を確立する取り組みが、女性に対する暴力の根絶につながります。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • DV防止法をフォローし、被害女性に対する相談・ 支援体制の充実を図ります。
    • 加害者更生プログラム、子ども、不法滞在の場合 への支援など、DV防止法を見直し充実させます。

    地域からの男女共同参画を 

     私たちが暮らしているのは、それぞれの地域です。私たちの暮らしぶりがどうなるかということを決める、最終的な権限が集中しているのは、地方政治です。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 市区町村での男女共同参画プランなどの策定を すすめます。
    • 各自治体における男女共同参画推進条例の制定 などを通して、実質的な男女共同参画が地域で 推進される仕組みを作ります。

  6. 自立と自治の介護保障
       〜介護はやっぱり「嫁」「妻」「娘」のもの?〜

    介護を担う人たちが不幸では、よい介護はできない 
     
     少子・高齢社会へ向かう中で、より良い介護を受けるためには、介護の質の向上や、量的な充実が求められます。
     これまで、介護は、「嫁」や「妻」や「娘」といった家族、それも女性が中心となって行うことが暗黙のうちに求められてきました。家族からの介護が受けられない人には、「福祉」という形で行政が必要と判断した介護サービスが提供されてきましたが、この福祉の現場においても、主な労働者は女性でした。
     「介護が必要なときにはそれを受けられる」という権利を明確化し、家族ではなく、社会によって提供される介護を明確化するために、2000年4月には介護保険が始まりました。しかし、介護の現場を支えているのは、相変わらず低賃金で働く多くの女性です。
     ヘルパーなどの介護専門職は、その業務の重要性、専門性に比べて、従来からの「福祉」という看板などもあいまって、若年層、または補助的収入を求める主婦層などを低い賃金で雇用することを前提としたものになっています。特に、訪問介護の「家事援助」は、女性のアンペイドワークに対する無理解、低い評価が反映されて、低額な報酬にとどまっています。
     (株)ヘルスケア総合政策研究所が平成13年に行ったアンケート調査によれば、正社員のホームヘルパーでも、約3割の人が「ヘルパーという職業で手取り20万円の月収を得ることは無理」と答えています。また、パートや登録ヘルパーという、身分も収入も安定しない形での雇用も増えており、社会保険も適用されていない人が多数を占めています。
     介護する人たちが安心して働けないような職場環境では、職場への定着率が悪くなり、全体としての介護技術も向上しないため、安心して介護を任せることができません。
     実際、現場ではホームヘルパーやケアマネージャーへのなり手が集まりにくくなってきています。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 介護労働の労働条件や待遇の改善、短時間労働者への社会保険の適用などに取り組みます。
    • ケアマネージャーやヘルパーなどの介護職員の専門性を高める施策を行います。
    • アンペイドワークに対して社会的に正当な評価がされるよう、啓発を行います。

    介護保険に参加しやすく、使いやすく 

     2000年4月から始まった介護保険制度は、女性を介護《地獄》から解放することが期待されましたが、まだまだ使いにくいことや、過重な費用負担があるために、制度が十分に利用できていない面があります。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 在宅で介護を受ける人の負担が施設に入るよりも高くつくようなことがないよう、給付額や自己負担について見直します。
    • 要介護認定を見直し、身体状況だけでなく、痴呆などの症状に対しても必要な質・量のサービスを受けられるようにします。
    • 家事援助と身体介護の区分を見直し、利用者の実態にあった必要なサービス利用がしやすい制度に変えてゆきます。
    • 地域に根ざし、利用者のニーズ(要望)に合わせたサービスが提供しやすいNPOの活動を支援します。
    • 女性が女性を、男性が男性を介護するという同性介護の実現をめざします。
    • 低所得者への配慮について、所得が低くても安心して介護サービスなどが使えるよう、年金制度の改善なども含めて、総合的に取り組みます。
    • 介護保険制度のあり方について現場の意見を吸い上げ、改善に向け具体的な提言を行います。
       
    必要な時に使える、安心できる介護保障 
     
     介護保険が導入されて2年経ちましたが、特別養護老人ホームの待機者は増え続け、必要なときに入れるかどうかわからないという不安から、現在必要でない人まで申し込むという、悪循環に陥っています。 
     また、医療保険の診療報酬の改定により、社会的入院(医療上の必要がないのに退院先が確保できないため入院を続けること)をされているお年寄りが病院から追い出され、行き場がなくなることから、今後ますます、特別養護老人ホームなどの介護施設やグループホーム、高齢者向けの介護サービスが受けやすい住宅への需要が高まると予想されます。
     平均寿命が長い女性のほうが、要介護状態になるリスクは高く、介護保険の利用者の多くは女性です。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 生活圏の中で利用できる施設を、必要なときに利用できるよう、グループホームや宅老所などを小学校区に1ヵ所以上整備するなど、住み慣れた地域で暮らし続けられる安心を提供します。
    • バリアフリー住宅や、街づくりにおける交通機関、公共的建物、設備のバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化(・ひとくちメモ)への取り組みを強力に推進します。

    • バリアフリーとユニバーサルデザイン(・ひとくちメモ)

       床の段差解消、階段への車椅子用リフトの設置など、行動の障害になるもの(バリア)をなくすこと、またバリアがない状況を「バリアフリー」と言います。一方、誰にでも使いやすいことを意識して初めからデザインされたものが、「ユニバーサルデザイン」です。ユニバーサルデザインで作られたものは「共用品」とも呼ばれます。
       この二つの違いは、概念的に重なる部分もありますが、端的に言えば、新しい建物を作るときに、入り口に数段の階段を設けて、あわせて車椅子用に迂回するスロープを設けるのは「バリアフリー」で、誰でも同じように通れるよう、階段がないように設計するのが「ユニバーサルデザイン」です。

  7. 生涯を通した女性の健康保障
         〜自分らしい健康を手に入れよう〜

     従来から、女性の健康は後回しにされてきました。「産婦人科は恥ずかしいので受診しにくい」「結婚後は、夫や子どもの健康が優先されて、自分の健康は犠牲になる」、というのが今までのパターンだったのではないでしょうか。「母子保健」という言葉も、常に、健康な子どもを産み育てるための母親の健康、というふうに、子どもとセットで語られ、独立した人格である女性自身の健康という観点からは語られてきませんでした。
     男性と同じく、女性にも、心身の健康を享受する権利があります。自分らしい生活を組み立てていく基盤となるのが、健康です。働く女性も働かない女性も、子どもを産む女性も産まない女性も、障害や持病を抱える女性も抱えない女性も、それぞれの人が自分らしい健康を生涯にわたって保障される環境を整備することが必要です。

    女性の性と生殖に関する健康と権利を保障します 

     日本は、年代に関わらず、望まない妊娠の多い国であると言われていますが、中でも、10代の妊娠や中絶は増えており、社会問題になっています(・ひとくちメモ)。望まない妊娠は、産むにしても中絶するにしても、女性本人や子どもを傷つけます。また日本には「堕胎罪」がありますが、そもそも喜んで中絶する女性などいないはずです。北京女性会議の行動綱領では、「違法な妊娠中絶を受けた女性に対する懲罰措置を含んでいる法律の再検討を考慮すること」と規定しています。
     また、日本では、不妊の悩みを抱えても相談するところがない、更年期の苦しみや不安もそのまま我慢するしかない、性感染症についての知識もなく、どう対応したら良いかわからない、というように、性や生殖に関する環境はとても貧困です。

    • 0代の人工妊娠中絶(・ひとくちメモ)

       2000年の統計では、15歳〜19歳の女子の中絶率は、人口千人につき12・1となっています。これは、性交経験の有無に限らず約83人に1人が一年間に中絶を経験していることを意味します。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 女性の性と生殖に関する健康と権利を守るため、年齢 にふさわしい性教育を男女ともに行い、いつでも相談できる体制(・ひとくちメモ)を作ります。氾濫する性情報 の中で性について誤った知識や偏見を持っている子ども たちに対して、性についての正しい科学的知識を与える と同時に、性というのは自分と相手の人格に関わる大 切な問題なのだということを教える中で、モラルや自 己コントロールについても考えられるようにします。具 体的には、自尊心と知識を高めることを目的に、ピアカ ウンセリング(同年代同士の話し合い)などに重きをお いたものとします。ピアカウンセリングによって、自分 だけでなく他人を大切にする姿勢が生まれ、人格形成 にもプラスであることが指摘されています。
    • 性と生殖に関する女性の権利と健康を守るため の法整備をすすめます。
    • 不妊についても、カウンセリング体制を整えると同 時に、不妊治療の効果と安全性を、漢方治療なども 含めてきちんと検証し、適応症と効果が明らかな治 療法については医療保険の適用を検討します。その一 方で、「女性は子どもを産んで一人前」というような 画一的な価値観に縛られず、子どもを産まない女性 が追いつめられないような社会をつくっていきます。
    • また、代理母や出生前遺伝子診断などの技術が どこまで許されるかということについても議論を 積み重ねていきます。
    • 人間は、ひとりひとり持って生まれたものも、抱えて いる事情も異なります。ひとりひとりの女性が、そ の多様性を最大限尊重されながら、生涯にわたる健 康と権利を保障されるような体制をつくります。

    • まだ早い? もう遅い?(・ひとくちメモ)

       子どもたちは、幼い頃から驚くほどの一方的な性情報にさらされています。また、中学3年生ですでに、男子ではクラスの五分の一弱、女子ではクラスの十分の一弱が性交を経験しているというデータもあります(群馬県の思春期グループのデータ)。数としては「一部の子」であっても、周りのクラスメートに与える影響は無視できないものだと言われています。このような環境におかれた子どもたちに、正しい性知識を与え、自分と相手を大切にする姿勢を身につけさせる性教育を年齢に合わせて行うことの重要性が指摘されています。
       国連合同AIDSプログラムの文書では、一般に、性教育は性交開始時期を遅らせたり、セックスパートナーの数を減らしたり、望まない妊娠や性感染症の割合を減らす傾向があり、若者の性行動を活発化させる要因とはならないことが報告されています。

    医療は男性のためだけではなく女性のためにも 

     医療のさまざまな治療法が男性中心に作られているということをご存じですか? 例えば、血液中の脂肪の値。この値と心臓病やがんとの関係を見ると、男女で全くそのパターンが違っています。「心臓病にならないようにするためには、コレステロールを下げた方が良い」と思っていると、男性にとっては良いけれど、女性の場合は当てはまらない、ということにもなるのです。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 新しい医療の領域、ジェンダー・スペシフィック・メ ディスン(性差を考慮した医療)をサポートします。研究で女性のデータを集めていくだけでなく、 医学教育の段階から、ジェンダー・スペシフィック・ メディスンの考え方を徹底していきます。

    女性の医師にかかりたいのに・・・ 

     医療は、心身のプライバシーに関わる重要な領域です。できれば女性の医師にかかりたいと思っている女性も少なくないでしょう。
     でも、女性の医師にかかりたいと思っても、医師の世界はまだまだ男社会で、女性の医師そのものが少ないのです。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 女性の医師を増やすためにも、女性医療者の仕 事と家庭の両立を支援します。医療者としてよ うやく脂がのってきた時期に妊娠・出産をして仕 事を続けられなくなる、ということがなくなる よう、特に不規則で時間外・休日労働の多い女性 医療者をサポートします。

  8. 男女共同参画の視点に立った国際協調
         〜男も女も、地球人です〜

    女性を貧困化し格差を生み出す社会構造を改善します 

     世界の12億以上の貧困人口のうち、その約7割が女性で占められています。冷戦崩壊後の紛争地域において、被害と犠牲を被っている多くは女性と子どもです。開発途上国においても、一般に女性は教育、雇用、健康等の面で男性に比べて弱い立場におかれています。
     紛争国や開発途上国において、女性の教育水準を向上させ仕事の充足を図ることは、貧困を是正して、男女格差、国際間格差の解消に資するための重要な方策です。そのためには、女性を単に開発援助政策の対象(WID=Women in Development)にとどめるのではなく、女性自身のエンパワーメント(女性が力をつけること)を重視し、女性を重要な開発の担い手であると認識し、開発のすべての段階において女性が積極的に参加できるように配慮する考え(GAD=Gender and Development)が、国際間でとられるようになりました。
     さらに2000年には国連・安全保障理事会においても、各国・国際機関等におけるジェンダー主流化の必要性が決議されました。男女間格差のある国は、経済開発・人間開発も進まない実態もはっきりしてきて、ジェンダー主流化こそが開発援助において中心的な考え方になっています。
     しかし日本の援助については、「……ジェンダーに関する政策や方針を主流化させようとするのに必要な指導力が日本政府の本部では欠けている」(OECD/DAC 対日援助審査報告書、1999)と批判されていて、国際的な認識から立ち遅れている実態です。
     ODAにつきまとっている利権の疑いを排除して、ジェンダー主流化を追求し男女の平等を実現することこそが必要です。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • ODA予算配分に際して、男女共同参画の視点に立った予算配分を推進します。
    • ODAの実施に際して、事前の調査、計画の立案と事業の推進、評価のすべての段階に、男女共同参画の視点からNGOの参加を求めます。
    • 外務省、財務省、内閣府、JICA等に男女共同参画政策を推進する体制を強化し、ジェンダー主流化(・ひとくちメモ)を図ります。

    • ジェンダー主流化とは(・ひとくちメモ)

       ジェンダーは、社会的・文化的に形成された性別のことをさし、生物学的な性別であるセックスと区別して用いられます。国連が発表した「人間開発報告書」によると、女性が積極的に政治や経済界に参加し意思決定への参加を図る指標(ジェンダー・エンパワーメント指数)では、日本は66カ国中32位と大きく遅れています。
       開発援助におけるジェンダー主流化とは、女性のみを特定の援助の対象とするのではなく、経済開発、人間開発のすべての過程に女性が主体的にかかわる援助のあり方を指しています。

    • 民主党は、ジェンダーの視点からアフガン の復興支援を積極的に行っています (・ひとくちメモ) 

       世界各地で生じている紛争地域の難民支援は緊急の課題ですが、民主党として最近ではアフガン復興プロジェクトに取り組んでいます。とくに女性の自立支援に重点をおき、ペシャワール近郊難民キャンプで教育・衛生・井戸掘り・学校建設・麻薬問題対策などに取り組むNGOに5210米ドル、新生児死亡率10万人につき1700人に達している状況に対して助産婦を養成・再教育するNGOに4950米ドル、などの支援を行いました。支援金は募金活動を通じて、多くの皆さまにご協力いただきました。
       国際条約の批准をすすめます 

       経済のグローバル化は激しい勢いですすんでいますが、差別の克服や人権の保障、働く人たちの労働条件の確立などの側面では、日本はまだ国際的な標準に達していない分野を数多く残しています。女性や子どもにかかわる条約の内容を精査し関連法規の点検をすすめて、条約締結の促進を図ります。

    【私たちは次の政策を実現します】
    • 個人通報制(個人が直接、国際機関に人権侵害の 救済を求める制度)を認める「女子に対するあら ゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定 書」の締結に取り組みます。
    • 「パートタイム労働に関する条約(第175号)」 ほか、未批准のILO条約(・ひとくちメモ)の締結 に向けて、取り組みの促進を図ります。

    • 未批准のILO条約(・ひとくちメモ)

      母性保護に関する条約(第183号)
      雇用及び職業についての差別待遇に関する条約
      (第111号)
      看護職員の雇用労働条件及び生活状態に関する条約(第149号)
      使用者の発意による雇用の終了に関する条約
      (第158号)
      夜業に関する条約(第171号)
      パートタイム労働に関する条約(第175号)
      在宅形態の労働に関する条約(第177号)

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