特別養護老人ホーム訪問 各サービス問題点 

             第55号(2001/09/16)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。

■9月14日は、午前中は特別養護老人ホームの訪問、午後は、和
束町の敬老会に参加、晩は、奈良でグループホームの講演でした。

◆晩は、奈良でグループホームの講演。
質疑応答の際に、
「グループホームの入居費は月々10万円以上」と話すと、
「そんなに高ければ、私の近所で入れる人は少ない。自分の近所は
国民年金ばかり。国民年金で入れないとグループホームの意味がな
い」という意見が出た。

●確かに、グループホームの自己負担が月に10万円を越える現状
では、中所得者以上しかグループホームは利用できない。

2003年度から個室の特別養護老人ホームがホテルコストを取る際
には、低所得者も利用できるような対策を考えると厚生労働省は言
っている。

その際には、当然、グループホームにおいても、低所得者対策がセ
ットで行われねばならないと思う。

◆さて、9月14日は朝10時から12時半まで京都の特別養護老人
ホームを訪問しました。

ここは、特別養護老人ホーム50床、ショートステイ20床、デイサ
ービスは日に40人定員、ケアハウス30室です。

○まず、ショートステイは平均45%しか利用されておらず、いつ
も半数の10ベッドは空いているとのこと。

○反面、特別養護老人ホームは4月オープンなのに、すでに50人
待機者がいて、何年待ったら入居できるかわからないとのこと。

入所希望の問い合わせに対して、「『50人待ちで何年待ったら入れ
るか、わかりません』と答えると、『それでも待ちます』と言う人
はいません。だから、待機者は50人以上に増えないのです」と。

 年間7-8人亡くなるとして、多くがが他の特別養護老人ホームと
掛け持ちで申し込んでいるとしても、今から申し込んでも3年くら
いは待たねばならない。

 厚生省はショートステイの特別養護老人ホームへのベッド転用に
上限を設けているので、この施設でも、ショートステイの20ベッ
ドのうち2ベッドだけ、特別養護老人ホーム(つまり、長期入所)
に転用しているという。

○しかし、ここの特別養護老人ホームに限らず、ショートステイが
空いているケースが多いので、ショートステイのベッドをもっと特
別養護老人ホームに転用できるようにしてもよいかもしれない。
これについては検討せねばならないと思う。

厚生労働省は、「在宅重視」なので、あくまでもショートステイは
減らしたくないのだろう。

○あるいは、ショートステイのベッドを3ヶ月や半年のミドルステ
イに、老人保健施設のように使えるようにするのも1つの案かもし
れない。

ショートステイのベッドが空くと収入が減るわけだから、施設も苦
しい。

○ケアハウスは、所得に応じて月8-15万程度の自己負担。

ここは、30人定員で25人入居。男性が4人、女性が21人。私が
話を聞いた女性は、車で1時間半かかる遠方から入居されていたが、
要介護1で、「ここは安心です」と話しておられた。

○デイサービスは、定員40人だが、毎日平均20人しか利用がない。

「スタッフは定員40人で対応できるように多く雇ってある」と。

「けれど利用者が半分だったら、濃厚なケアを受けるので利用者に
とってはいいですね」と言うと、「でも、経営からすると苦しいで
す」との施設長さんの話だった。

最高、週に5回利用している利用者もいる。週5日も利用できれば、
家族はかなり楽である。

しかし、他の自治体では、デイサービスセンターが足りないので、
デイサービス利用の上限を要介護にかかわらず、週2回と決めてい
るところもある。

○ここの特別養護老人ホームは、50室のうち約半分が個室で、8室
で1つのユニットをつくっている。残り半分は、四人部屋だが、
カーテンで区切ってプライバシーに配慮してある。

 個室に住んでいる90歳の女性に聞くと、「人との付き合いは嫌だ。
個室がいい」とのこと。「昼間は自室にこもってテレビを見ている」
とのことだった。

しかし、スタッフに聞いてみると、彼女の自室にはテレビはない。
彼女は痴呆症だった。また彼女は、「モノがなくなるから嫌だ」と
も言っておられた。

○ここは自己負担は月に5万5000円程度。個室と四人部屋のすみ
わけは、「感染症の方や痴呆症の方は個室にした」とスタッフはお
っしゃる。

「痴呆症のお年寄りは、四人部屋だと、モノが盗られたとか、トラ
ブルが起こりやすい。個室だとそんな『盗った』『盗られた』とい
う訳のわからないトラブルにスタッフがまきこまわれなくて済むの
でよい」とのこと。

○また、当初は、近所から来た人は仲が良いだろうと思って同じ
4人部屋に集めたところ、お互いを知りすぎていてケンカになった
り、「お宅は全然、家族がお見舞いに来ないですね」など言い、お
互い気まずくなったりしたので、その方法はやめたとのことだった。

○『四人部屋のほうがよかった』というケースはないですかと尋ね
ると、「ほとんどない。日中は部屋の外に出ていますから」と。

「個室といっても、寝室です。寝るだけの場所で、日中は共用ルー
ムや食堂でみんなと一緒に過ごしています。スタッフはうまくお年
寄りを部屋から外に連れ出しますので、個室は寂しいという声は聞
かない。四人部屋でも部屋の中でお互いに会話してる人はほとんど
いませんよ。外で話してられます」とのことだった。

 ただ、先ほどの痴呆症の女性は、「人付き合いは嫌だし、モノも
すぐ盗まれるので、昼間はずっと自分の部屋に閉じこもっています」
と言っておられた。

◆特別養護老人ホームの個室化問題については、このメールマガジ
ンでもたびたび取り扱っているが、賛否両論がわかれる。

ある厚生労働省の方は、「四人部屋だからといって、部屋の中で会
話があるわけではない。今から新築する老人ホームは今後少なくと
も20〜30年は使うことを考えれば、四人部屋の特別養護老人ホー
ムを建てるのはよくない。自立した個室を好むお年寄りが年々増え
るからだ。特別養護老人ホームの現場の人ほど、『個室はお年寄り
が寂しがる』と個室に反対する人が多いが、それは、下手に『個室
が良い』と言えば、いま自分がやっていることの自己否定につなが
るからではないか」と言っていた。

 これから新築される特別養護老人ホームの多くが全室個室であれ
ば、2年後からは、全室個室で月10〜12万円くらいの自己負担の
特別養護老人ホームと、従来型の四人部屋で自己負担が5〜7万円
の特別養護老人ホームが社会に両方存在することになる。

 老人保健施設に勤務する私の知人は、「多くの家族は安いほうを
好むので、自己負担が高い全室個室の新型特別養護老人ホームは空
室ができるのではないか」と言った。

■この個室問題は今後も議論したいし、16日に宇治で行う福祉学
習会でもこのあたりを参加者の方々と議論したいと思います。
http://member.nifty.ne.jp/yamanoi/news/01/0107/0916.htm

                 やまのい和則 拝


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