身体拘束ゼロ作戦レポート
 & 痴ほうケア講演会

             第54号(2001/09/14)

メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
今日は「身体拘束ゼロ」に向けた素晴らしい事例の報告です。
また、痴呆ケアの講演会のお知らせもあります。

■老人保健施設に勤務する私の尊敬する知り合いのレポートを、
本人の許可を得て、転載させて頂きます。施設名ははずさせて頂き
ました。わかりやすいレポートですので、お目通しください。


■〜悪循環から良い循環へ〜 
       介護老人保健施設の介護福祉士さんによるレポート
【はじめに】
 高齢者の自立支援に向け身体拘束(施設内のお年寄りをヒモやベ
ッドで椅子や車いすに縛ること)が禁止され、「身体拘束ゼロ作戦」
として拘束のないケアの実現に向け様々な取り組みが進められてい
る。

当施設において、実態調査行ってみると100名の入所者のうち、
つなぎ服8名、ベット4点柵15名、拘束はしない方が良いと思う
がやむを得ないと感じているスタッフが82%もあり、身体拘束ゼロ
への道のりが遠く感じられた。

そこで身体拘束廃止委員会での勉強会、マニュアルつくりと平行し、
入所者一人ずつに焦点を当て取り組みを開始した結果、スタッフの
意識改革ができ身体拘束ゼロに向け前進する事ができた。
事例を通して報告する。

【経過】
  O氏 78歳 要介護度4 痴ほう性老人ランク4

入所時のO氏は、急な立ち上がりのため安全ベルト使用、不潔行
為のため終日オムツ・つなぎ服着用。痴ほう症状として、夜間せん
妄、脱衣行為、暴言暴力がみられた。

家族も骨折を恐れ、抑制して欲しいとの要望である。
そこでO氏のアセスメントを行い、家族と共にケアの方向性を決
めた。

(1)安全ベルトを使用せず随時見守る。危険を予測し訪室回数を
   増やす。
(2)不潔行為は不快感が原因と考え、清潔を心がけ排せつリズム
   をつかむ。
(3)自ら起き上がり下肢を動かしていたため、筋力トレーニング
   をすることで歩行が可能と考え、リハビリプログラムを作成
   した。

【結果ー考察】
  プラン実施
2週間は転倒の危険が何度も見られたが、行動を制限せずスタッフ
が必ず付き添って行動した。
つなぎ服をやめると、不潔行為、オムツはずしがあった。

オムツでは、かさ張り違和感があり、また尿失禁後のパットが不快
へとつながったためトイレ誘導し、終日リハビリパンツにて排せつ
リヅムをつかんだ。

3ヶ月の期間を要したが、自ら尿意を訴えることができるようにな
り、夜間では自らポータブルトイレにて排せつを行えるようにまで
なられた。

また、時間の経過と共に自力歩行しようとする本人の意志が見られ、
筋力アップと共に4ヵ月後にはシルバーカー歩行まで可能になっ
た。

 この事例を通じ、今まで行っていたケアが過剰予防といえるので
はないかと感じた。拘束廃止に取り組んだことでスタッフの質の向
上が図られたと考えられる。

(1)自由に歩行できることが、精神安定につながり、問題行動が
  無くなった。また抑制を外したことにより、表情は明るくなり
  自ら話しかける場面が多くなった。

(2)拘束をしてでも安全第一を考えていた家族も、ひとつひとつ
  拘束が外れていく課程で自由を奪われていた親の姿を思い浮か
  べ、苦悩し後悔していた。拘束をしないことにより「自由」に
  なれるのは入所者だけでなく、家族の心も開放された。

(3)拘束は最終手段と考え、なぜ必要なのかの原因を見つけ出し、
  できる限りの、ケアでカバーしようとするアセスメント能力が
  向上した。拘束廃止委員が発足し、事例検討を行っていく中で
  再度実施調査を行ってみると、つなぎ服0名。ベット4点柵3
  名、拘束はやむを得ないと感じているスッタフは、17%へと
  大幅に減った。

今後の対策として、
つなぎ服は排せつケアの工夫で不要となる見通し。
不快なオムツ状態を放置せず排せつリズムをつかみ随時交換する。
紙おむつの異食行為の対応には布オムツとする。
ベット柵への対応としては見守りの強化とべットの高さ調節、床に
直接マットレスをしくなどの工夫を考えた。

 高齢者を拘束することにより、自由が奪われ身体機能の低下が生
じてくる。その結果、二次的な障害を招くこととなる。それが悪循環
となるのである。

高齢者の自立支援に向け、良い循環に変えていかなければならない。
今後も施設独自のマニュアルを作成し、入所者ひとりひとりの状態
に合わせた個別ケアを充実させ、良い循環、拘束ゼロに向かって努
力していきたい。

【終わりに】
 自立支援が目的である以上、拘束の介護ではなく見守りの介護で
なければならない。家庭復帰施設である以上「拘束したままでは家
庭に帰せない」をスタッフ全員の意識目標とし、今後も入所者のた
めの介護を考えていき、また職員個々が誇りとやりがいのあるケア
を喜びとして実感できるようにしていきたい。 以上
http://www.wao.or.jp/yamanoi/siryou/1/yoijyunkanhe.htm


◆身体拘束をなくすことは私のライフワークである。しかし、口で
言うのは簡単だが、現場の努力は大変である。このレポートには私
も感動しました。

■なお、この身体拘束ゼロ作戦の日本のリーダーである吉岡充先生
の講演が9月15日に京都であります。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
http://www.yamanoi.net/grouphome/information/01/010915.htm


■明日14日予定、
*午前中は、京都でユニット型特別養護老人ホームの訪問。
*午後は敬老会に参加。
*16日の国政報告会と福祉学習会の資料印刷(多くのボランティ
  アさんが印刷やホッチキス止めを手伝って下さいます)。
*夜は奈良で介護保険の講演です。

             やまのい和則 拝


■<おすすめ講演会です!>
素晴らしい講演会です。佐々木先生は痴呆ケアの第一人者です。
 
<説明>
 介護保険制度に実施により、痴呆性高齢者ケアのハード面(グル
ープホーム及び大型施設ケアユニット化)は少しずつ整備されてき
ました。今後はソフトの面で磨きをかけることが大切と考えます。
痴呆性高齢者はコミュニケーション障害者ともいわれています。

 超コミュニケーション法といわれている「バリデーション(共感
的理解)」について共に学びたいと考えます。

 「バリデーション」は共感のセラピーとして最近スウェーデンで
盛んに取り入れられているもので、日本でもまだまだ知られていな
いセラピーです。たくさんの方に参加していただければ、幸いです。
自由に参加できます。
http://www.yamanoi.net/grouphome/information/01/011013.htm

  日 時  10月13日(土)13:30〜16:30
             (受付開始 12:30)
  場 所  京都アスニー 4階ホール
      (丸太町七本松西入る)075−802−3141

 パネルディスカッション
  共感のセラピー「バリデーション」がケアを変える
              〜スウェーデン教育実践から学ぶ〜

 コーディネーター  佐々木 健氏(きのこエスポアール病院長)

 パネラー ( 外人の講師の方はスウェーデンからの講師です)
  *クリスティーナ・テレルード氏 (バリデーション教育担当)
  *ジェーン・リンデルールングテン氏 (バリデーションケア
              専門家・作業療法士・理学療法士)
  *篠崎 人里氏   (きのこエスポアール病院・本部長)

 参加費 無料
 募集人数 400名(先着順)
 申し込み方法
    郵便 〒607-8062 京都市山科区名神インター横
    宛先 洛和会本部 佐々木まで
       FAX 075-581-8831
 申込書記載内容 参加者氏名・返信はがき送付先・電話番号
 受付締め切り 10月5日(金)

 問合せ先
    洛和会本部 佐々木 または 出野(いでの) まで
         電話 075-593-7220

 共催 呆け老人をかかえる家族の会・
    京都新聞社会福祉事業団・社団 洛和会
 後援 京都府・京都市・京都府社会福祉協議会・京都市社会福祉
    協議会・京都市在宅介護支援センター連絡協議会
 協力 きのこエスポアール病院(岡山県笠岡市)


■おわび 前号はめるまが担当の発行ミスで同じものを2通お届け
してしまい、申し訳ありませんでした。今後このような間違いの
無いように気をつけると共に、深くお詫び申し上げます。

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     (2001年9月14日現在 登録数 1782)

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