やまのい和則の
      「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」

             第44号(2001/06/05)

メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
グループホームのメールマガジンと福祉のメールマガジンと同じ内
容ですが、グループホームについてのレポートを送ります。
 
◆グループホームはスタッフ次第。スタッフの質と数で決まります。
しかし、今の介護報酬では夜勤問題を含め、なかなか十分なケアが
難しいと思います。

私の感触では、2年後の介護報酬の見直しでは、当然、グループホ
ームの介護報酬もアップすると思いますが、それまでに事故が頻発
する危険性があります。

 また、その頃には、グループホームの入居者も今よりもはるかに
重度化し、グループホームでターミナルまで介護することが大きな
問題となっているでしょう。

■以下のレポートは、私の知り合いがグループホームを昨年スター
トさせ、近況を送って下さったものを、了解を得て、メールマガジ
ンにさせて頂くものです。グループホームの苦悩を描いたものです。

■グループホームの報告(1)
「探し続ける」
人は力や地位がある時期は大切にされるが、歳をとりそれらを失う
ととかく個々の権利も色褪せ、隅に追いやられてしまう。増してや
痴呆症のお年寄りはなおさらだ。

対等な介護関係を築くことで、お年寄りの権利や主張を最後までき
ちんと考えて行こう、そんな思いに最も近い介護形態が痴呆性高齢
者のグループホームだった。

しかし、いざ始めてみるといろいろな方がおられる。黙って裸足の
まま外に出て行かれる方、深夜に冷蔵庫の中のものを食べてしまわ
れる糖尿病の方。

わずか六人定員のわがグループホームの玄関と、深夜のキッチンに
は鍵を掛けている。

これは顕かに「抑制」であり「管理」であると私は思っている。
つまり施設長としての「確信犯的決断」だ。

5名のスタッフと共に考えあぐね、交通事故防止と健康管理の名の
もとに下した苦い決断だった。

お年寄り個々のその時々の思いに極力、添いたいと願えば願うほど、
現在の3対1の介護人体制では、事故の危険率は上がる。

対等な介護と高齢者の権利遂行を願いつつも、日常ではこんなきつ
い結論を出さざるを得ない現実がある。

確かにグループホームは大きな施設よりは手厚い介護を受けられ
る。

だがもっともっと良い環境に出来ないものか、開設六ヶ月、スタッ
フ共々、模索の日々を送っている。

■グループホームの報告(2)
「光と陰」
昨年11月1日に開所したグループホーム。
いざ始めてみたら、思っていたことと現実とがあまりにもマッチし
ていた部分と、逆にギャップがあった部分がありました。謹んでご
報告いたします。

◆光
まず、日中は、長いあいだ思い描いてきたグループホームのイメー
ジにぴったりな出来事がありました。

昨日まで病院でパジャマ姿で過ごされていた方が、入居されたその
日から普段着でリンゴや野菜の下ごしらえをされている姿を見せて
くださいました。

「ばあちゃんが包丁を持っている姿を見るの何年ぶりだろうね
ー!?」と尋ねてきたお孫さんが嬉しそうに言われました。

また、紙オムツをはいて来られた方も1ヶ月で普通のパンツで過ご
されるようになりました。

他にも、お顔の表情や顔色がとても良くなった、と以前の施設の方
や、ご近所の方から言われました。その方の口からは、冗談まで出
るようになり、スタッフ一同、日々、新たな発見で喜んでいます。

◆陰
一方で、目の前が暗くなるようなこともありました。

◎入所1週間で、施設から移って来られた方が疥癬に罹っているこ
 とが分かり、大騒ぎになりました。

 徹底的な疥癬バスター作戦で、他の方々にうつる事もなく、無事
 に終結しました。

◎また、夜間に畳の上の布団から起き上がろうとして転んで小指を
 骨折されたり、朝起きてから急に呼吸が止まって、救急車のお世
 話になったり、この時は夜勤の介護士が人工呼吸を施し、咄嗟の
 危機を逃れました。

◎また、夜間の排尿回数も多く、ベッドや布団からの立ちあがりに
 ふらつかれる方や、また、トイレの場所が分からないという中で、
 個室で休まれることはとても危険であることが、数日で分かりま
 した。

◆衣擦れの音ひとつで私たち介護者がスッと手を差し出せる位置に
居ないと、とても事故を防ぐ自信がありません。

不安と心配の中、今は四人の方が個室から大部屋に布団を移し、ス
タッフも一緒に夜を過ごしています。

夜間のトイレ介助は20〜30回が平均です。

夜中に個室から一人で起きてトイレまで行ける方や、ぐっすりと朝
まで眠られるような方は、逆にまだご家族が家で看ていられるとい
うことなのです。

◎そして今、また新たな重大な問題が持ち上がりました。

 肺炎で入院された方が、鼻からの経官栄養になってしまい、その
 状態でグループホームに戻れるか?と入院先の病院から尋ねられ
 ました。

 ここには看護婦はいません。栄養を一日三回入れることは、何と
 か家庭でもやっていることです。

 しかし、病院では鼻の管を抜いてしまわれないように、両手をベ
 ッド柵に縛ってあるのです。

 ご家族は、抜けるとまた入れる時に痛い思いをするから可愛そう
 だけど、縛ることを了解しました、と。

 何とか管を外して、口から食べられないものかと、思いましたが、
 プリンすらも誤燕してしまう状態で、とても怖くて管は抜けない、
 また肺炎を繰り返してしまう・・・と。

◆いずれは起きる問題だとは思ってはいましたが、こんなにも早く
 起きてしまいました。

終末までグループホームで、という願いは医療の入り方で違ってき
ます。

本当に一人ひとりの状態に合わせて最後まで行けるのは、理想に近
いのかもしれません。終末が近くなればなるほど、医療のバックア
ップ体制が不可欠となります。

入居を希望される方は日々、後を断ちません。重度の方が増えると、
本当にグループホームケアに適した方がいつまでも入居できない状
態となり、本来のグループホームのあり方もまた問われます。

医療度が高い方でも、最後まで暮らせるナーシングホームの必要性
を今、ひとしお強く感じます。

優しくそして屈強な看護婦軍団がいれば出来ます。
グループホームをホスピスに、という提起も全国からは一部、出て
います。

しかし、現行の介護保険下のグループホームでは介護報酬的にもそ
れを支えるだけの力はありません。

昼夜、看護婦を配置しなくてはなりません。

ご家族や理事長と相談した結果、止むを得ず、今回は再度、その方
に老人保険施設に移っていただくことにしました。1月31日、11
月1日に入居されてからわずか3ヶ月での退居となりました。

部屋の荷物を片付けながら、その方の穏やかな姿が思い起こされ、
わずか三ヶ月で転々と居を変えていただくことになってしまったご
本人への負担を思うと、かえってここを利用されなかった方がお元
気でいられたのでは、という思いに苛まされました。

また、身の回り品の一つひとつにご家族の温かな思いが感じられ、
ここなら安心してお願い出来る、と言ってくださったそのお気持ち
にも何一つ応えられないまま、このようなかたちになってしまい、
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

私たちグループホームの力の無さと脆さをいやというほど痛感しま
した。

末期に近付きグループホームケアが限界に達したら、やはり次も小
規模で家庭的なところで医療的ケアが出来たら・・。

核となる心身共に屈強な看護婦が一人いれば「ナーシングホーム」
が出来る・・・。

理想と現実の狭間を埋めるべく、この悔しさを、何としても無駄に
するまい、と、心に誓った出来事です。

■追伸 以下に最近、出版されたグループホーム関係の2冊の素晴
らしい本を紹介します。

◆プライエム「老人ホーム」を超えて
21世紀◆デンマーク高齢者福祉レポート
松岡洋子著
出版社:クリエイツかもがわ
定価2400円
推薦
外山義 市川禮子 ベント・ロル・アナセン

「老人ホーム」はいらない!
「できるだけ長く自宅で」も、もうふるい!?
◎介護住宅 ◎ユニットケア型プライエポーリ 
◎痴呆性高齢者のためのグループホーム ◎高齢者住宅

 グループホームはスウェーデンが発祥の地ですが、デンマークで
も最近、グループホームが増えていることがこの本で紹介されてい
ます。また、デンマークで増えている介護付き住宅についても紹介
されています。デンマークの高齢者福祉についての貴重な最新レポ
ートの力作です。

◆介護小説 「最後の贈り物」
中島久美子 著、出版社:学陽書房

あらすじ
 徹三は、元大学教授。人格者として多くの人に慕われる存在だっ
た。それがある日突然、帰る家を忘れ下着姿で街を徘徊するように
なった・・・・・・。
 痴呆のお年寄りをかかえ、介護の責任は長男の嫁である奈津子
の双肩にかかった。子育ても介護も完璧にこなさなければならな
いという思いと現実の狭間で、次第に壊れていく奈津子。そして
介護家族の地獄絵図。
 この状況を何とかしなくては------------心の闇をかかえる孫の香子
が、可愛がってくれた祖父と家族の再生に向け選んだ道は、徹三の
心地よい「居場所」を見つけることだった。
グループホーム-----------介護を社会に開くことが、「居場所」探し
のキーワードに。

介護に関する情報を数多く盛り込み、お年寄りにとっても介護家族
にとっても幸せな介護とは何かを探る感動の介護情報小説!
                 やまのい和則 拝

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