グループホームトップへ
グループホームめるまがバックナンバー目次へ
イラスト・地球を抱いたやまのい和則 クリックしてホームページへ

グループホームめるまが配信は 登録 解除 バックホーム

「2015年の高齢者介護」の報告書

 第81号(2003/06/27)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
  27日(金)朝11時。
  朝8時から民主党の年金改革の検討会に参加し、
  そのあと今、新幹線で京都に向かっています。

 今日は、さる26日(木)に発表された
  厚生労働省の高齢者介護研究会(座長=堀田力氏)の
  「2015年の高齢者介護」の報告書について、
 まさに、私の専門分野なので、書きたいと思います。

 この報告書については、
  新聞で解説が大きく報道されているので、
 詳しくはここでは書きませんが、
  私なりの解釈も含めて説明すれば、

 今まで痴呆介護においては、
  「老人ホームなどの施設」か、「自宅で介護する在宅か」の
  2者択一の選択肢しかなかった。
 しかし、2015年までには、
  第3のカテゴリ、第三の選択肢を整備すべき

 ということです。

 この第三の選択肢は、
  小規模、多機能、地域密着の3点をキーワードとします。

 具体的には、利用者や家族の都合に合わせて、
  日中だけ通うデイサービスもあり、
 そこからホームヘルパーさんも派遣でき、
  さらに、必要なら数日間、泊まれるようなサービス
  (施設とは書けないので)を
  全国、小学校区・中学校区に整備する
 とのことです。
 本当はもっと多くの内容があるのですが、エッセンスは以上です。

 さて、この報告書は画期的です。

  私が1987年にスウェーデンでグループに出会い、
  さらに、その後も日本の「宅老所」よりあい、
  「ことぶき園」と出会う中で、
 痴呆症や身体の弱ったお年寄りが、
  住みなれた地域で、近所付き合いや家族との関係が切れない
  身近な生活圏で、小規模で家庭的な単位で
  介護を受けられる社会をつくりたいと
  ずっと願い続けてきたことです。

 私はそのため10年前から高齢者のグループホームを
  小学校区に1つ、2万5000ヶ所、
  ということを訴え続けてきました。

 ただ私もグループホームだけでは不十分で、
  そこに住むだけではなく、短期間泊まれたり、
  日中通えたり、ホームヘルプがそこを拠点として
  受けられるべきだと、「多機能性の重要さ」を
  考えていましたので、今回の報告書には感動をしています。

 この報告書どおりになれば、日本は世界一、
  お年寄りが安心して年をとれる国になるでしょう。

 ただ、以下、何点か、さらに高望みですが、
  私の意見を書きます。
 すばらしい報告書にケチをつけるようで
  申し訳ないのですが、お許しください。


 (1)まず、これは言っても愚痴になりますが、
   「小規模、多機能、地域密着」というのは、
    20世紀型の「町はずれに大きな施設を建設して、
    弱ったお年寄りを隔離する」
  という旧厚生省の政策の大転換です。

    この隔離政策は10年以上前から批判されていたわけで、
    欲を言えば、今回の報告書を
    もう少し早く出してほしかったと思います。

  この10年に多くの大規模施設が増えました。
    私は大規模施設をすべて否定するわけではないですが、
    もっと早く宅老所やグループホームが
    整備されていたらよかったと思います。

 (2)2つ目の意見は、この報告書の目標の2015年というのが
  今から12年先ということです。
  つまり、今困っているお年寄りには
  間に合いそうもないということです。

  理想的過ぎるかもしれませんが、
  「お年寄りは待てない」
  「介護している家族も待てない」のですから、
  5年後くらいの目標にして今の案を出してほしかったです。

 (3)次に、今回の報告書では、
  「痴呆介護」が前面に出ています。
  しかし、私は、
  今の痴呆性高齢者向けグループホームの制度も、
  痴呆でない要介護高齢者に広げる必要が
  あると思っています。

  小規模で地域に密着し家庭的で個室のケアは、
  痴呆でない介護を要するお年寄りにも有効です。

  1つのGHや宅老所のなかで、
  痴呆とそうでないお年寄りが共存することについては、
  賛否両論がありますが、
  少なくとも痴呆でない要介護高齢者が利用できる
  GHも増やすべきです。

 (4)さらに、(3)で述べたように痴呆ケアだけでなく、
  一般の要介護高齢者にもこの理念を広げることは
  当然ながら、同時に、障害者にもこの理念を広げるべきです。
  知的障害者や精神障害者にも。

  この報告書では、
  「痴呆があっても在宅で暮らしが継続できる
   新たな介護サービス体系を2015年前までに確立する」
  となっています。

  高齢者介護研究会ですから、
  ここまでしか書けないのは当然でしょうが、
  私が気になるのは、では、高齢者介護以上に
  10年、20年遅れていると言われている
  知的障害者や精神障害者も地域で暮らせるように、
  どのようにしてするのか、ということです。

  おそらく、厚生労働省は、痴呆ケアを突破口にして、
  将来的には、知的障害や精神障害があっても
  住み慣れた地域で暮らし続けられるサービス体系を
  つくるのでしょうが、
  理想的には、それも急ぎで示す必要があります。

  34万人の知的障害者のうち13万人が
  施設に入っている日本。
  精神障害者が34万人も入院している日本。
  先進国の中では異常な施設・病院依存です。

  また、精神病院には、
  必ずしも本人にとって良くないケースでも、
  行き場所がないという理由で、
  多くの痴呆性高齢者も長期入院しています。

  行き場所がなく多くの痴呆性高齢者が
  精神病院に入院している現状から、
  どのように今回の報告書のような
  「地域密着、小規模、多機能」に移すのか?

  急ぐ必要があります。

  以上、勝手なことを書かせて頂きましたが、
  今回の報告書は画期的なものだと思います。
  なお、何とか私はこの報告書をすぐに入手しましたが、
  日本中の福祉関係者が関心を持っている報告書ですので、
  すみやかにHPに掲載してもらえればありがたいです。
  (週明けには、掲載されると聞きました)

  なお、この高齢者介護研究会の報告書について、
  下記の通り、厚生労働省から
  「民主党の介護保険ワーキングチーム」で
  説明を聞く機会を持ちます。

  ご関心のある方は、tokyo@yamanoi.net まで
  ご一報いただければ傍聴可能です。

  ■介護保険WT
   日時:7月1日(火) 13:30〜14:30
   場所:衆議院第一会館第一会議室

  これで今日のメルマが終わります。山井和則 拝

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ☆やまのい和則の「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」☆
     (2003年06月27日現在 登録数 2834)

前へ 目次へ 次へ