グループホームトップへ
グループホームめるまがバックナンバー目次へ
イラスト・地球を抱いたやまのい和則 クリックしてホームページへ

スウェーデン報告グループホーム関連

第68号(2002/05/07)

  メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
  今、ストックホルムから日本へ向かう飛行機の上です。
  正確に言えば、オーストリア航空でウイーン経由。
  あと1時間で朝7時50分に成田に着きます。

  5月2日(木)から5月6日(月)まで。
  スウェーデンには3日(金)〜5日(日)の3日間滞在。

  スウェーデン訪問の目的は、
  スウェーデンの経済や雇用の現状、
  スウェーデンの医療の現状、
  痴呆性高齢者向けグループホームをはじめ
  高齢者福祉の現状の調査です。

  私は10年前に2年間、スウェーデンに留学していましたが、
  今回、スウェーデンに来るのは1年9ヶ月ぶり(1人で自費)。
  たった3日間で調査などできるはずがありませんが、
  それでも日程で可能なのが、この3日しかありませんでした。

  失業率が3.8%と日本より低く、経済成長率も2〜3%で、
  雇用政策を最大に重視するスウェーデンは、
  日本の雇用政策を考える上で参考になります。

  さらに、県(ランスティング)が責任を持ち、
  公的医療を行っているスウェーデンは、
  5月に国会で審議する健康保険法改正のヒントになります。

  さらに、来年4月に向かって、
  介護保険の見直しが議論される今年、
  痴呆性高齢者向けグループホームをはじめ、
  スウェーデンの高齢者福祉の最新情報を入手するためです。

  スウェーデンには私の恩人や知人が多いのですが、
  今回はほとんど連絡もできず非常に残念でした。
  3日間ですが、原昭治さんのおかげで
  多くの現場視察やインタビューができました。

  今回は、
  グループホームや高齢者福祉についての一部報告です。

  今回、痴呆性高齢者向けグループホーム3ヵ所、
  老人ホーム2か所、療養型病床3ヵ所を訪問しました。

  スウェーデンでは、グループホームをグルップボエンデ、
  日本の特別養護老人ホームはオールデルドムスヘム、
  日本の療養型病床はシュークヘムに、
  ケアハウスはサービスハウスに近いものです。

  ストックホルムで3ヵ所訪れたすべてが、
  療養型病床とグループホームと老人ホーム、
  サービスハウスが併設されていました。

  つまり、複合施設、いや、正確には複合住宅です

  興味深いのは、
  この4つの入居者の状態があまり変わらないことです。

  まず、痴呆性高齢者向けグループホームは、
  当初は、軽度・中度の痴呆性高齢者が対象でしたが、
  重度化しても家族はお年寄りの引越しを望まないため、
  「ついのすみか」になっています。

  重度と軽度の痴呆性高齢者の両方が、
  1つのグループホームに住んでいます。

  食事の手伝いや、
  アクティビティーのできる痴呆性高齢者もいれば、
  車いすに乗って、ほとんど動けない痴呆性高齢者もいます。

  そのため、夜勤は当然、制度化されており、
  看護婦は、併設の施設から毎日必要に応じて訪問。

  日本では、グループホームは
  初期・中期の痴呆性高齢者の居場所となっており、
  重度になると、特別養護老人ホームや、
  療養型病床に移ってもらうケースも多いですが、
  これはこれから大きな問題になるでしょう。

  そのためには、スウェーデンのように
  日本のグループホームでも夜勤を制度化させ、
  訪問看護を受けられるようにすることが必要不可欠です。

  スウェーデンのサービスハウスは、
  日本語ではケア(介護)付き住宅。
  私がスウェーデンで2ヶ月実習した10年前は、
  軽度の高齢者が入居していましたが、
  ここもグループホームも同様に、最近では、
  重度の高齢者が増え、「ついのすみか」となっています。

  日本の特別養護老人ホームに近いのが、
  オールデルドムスへムですが、
  これも90年代はすべて個室でユニット化されています。

  まさに、日本はスウェーデンの10年遅れで、
  特別養護老人ホームの個室・ユニット化が進んでいます。

  実際、スウェーデンでも
  オールデルドムスヘムの個室化によって、
  「施設」ではなく、「在宅」サービスと位置付けられ、
  ホテルコスト(食費や家賃)を自己負担してもらうことに
  なりました。

  これも全く日本と同じです。

  しかし、違うのは、スウェーデンには
  家賃補助(ボースタッズ・ビドラーグ)という制度があり、
  貧富の差なく、誰もがオールデルドムスヘムや、
  サービスハウス、グループホームに住むことができます。

  なお、シュークヘムは、日本の療養型病床に近いですが、
  ここは一番重度の高齢者が入居しています。
  ここも個室化とユニット化が進んでいます。

  つまり、名前は違っても
  すべて個室化・ユニット化・住宅化が進んでいるのです。

  日本との大きな違いは、

  日本では、
  グループホームやケアハウスに住んで重度になれば、
  特別養護老人ホームや療養型病床に移ってもらう
  という考えがまだまだ根強いですが、

  スウェーデンでは、
  「在宅サービス」である以上、家族や本人が望めば
  重度化しても同じ場所に住み続けられるということです。

  「特に、痴呆性高齢者は環境の変化が強いと、
  一気に痴呆が悪化するのだから、グループホームで重度化した
  高齢者を施設に移すのはおかしい」という、
  スウェーデンのスタッフの言葉は説得力がありました。

  日本では、症状が悪化すれば、お年寄りを移動させる。

  スウェーデンでは、症状が悪化すれば、
  スタッフを増やしたり、
  訪問看護を受けたりして、
  受け入れ側が体制を強化し、
  お年寄りは移動させない。

  これは、理念の違いです。

  スウェーデン報告の第一弾はここで終わります。
               やまのい和則 拝

  ドイツのことわざ 「老いた木は植えかえるな」 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ☆やまのい和則の「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」☆
     (2002年05月07日現在 登録数 2148)

前へ 目次へ 次へ