Ms.Community 
介護保険・高齢者福祉の専門情報誌の

輝きインタビュー記事 に登場

安心して年をとれる社会を目指して

介護保険の改善とグループホームを提案


現場の声をいかに
反映させるかが改善の鍵

 私は、介護保険は必要と思っていますし、導人してよかったと考えています。それは、介護保険が女性を介護や家庭から開放する第一歩だからです。

 介護問題の諸悪の根元は、「女が家で看るべき」の発想です。

介護サービスを利用するのは親不孝と考える“福祉嫌い”に、頑張れば何とかなると“根性福祉”を強制され、泣いている女性がどれほどいるか、さらに、その女性の多くが要介護者の亡くなった後も「十分な介護ができなかった」と良心の呵責に苛まされている。

こんな現状が放置されていいはずがありません。

第一、根性福祉には限界があります。

介護している人がボロボロなのに、介護されている人が幸せなわけがない。かといって、措置では困った時に気軽にサービスを利用することができませんでした。

その点、保険には「使って当たり前」の権利意識が持てます。

ただし、意義はよかったのですが、いくつかの問題もあります。

利用者にとっての問題のひとつは、サービスが値上げになったケースです、「利用料が高いので」とサービスの利用を控えているケースもあります。

しかも、その判断をしているのは本人ではなく、家族。

家族はいらないと思っても、本人は必要としているかもしれない。

介護保険の導人で必要なサービスが受けられなくなったのでは本末転倒です。

低所得者でも利用しやすいような対策が必要です。

もう1つの問題は、選択が大前提なのに、サービスが足りなくて選べないと、いうことです。

一歩間違えると、方也言隻が介護幸侵酬の高い入居者を選ぶようになってしまう。

サービス量の確保が緊急課題です。

現場サイドから見ても問題はあります。

収入(報酬)は増えないのに、事務作業は増えるばかり。特に、ケアマネジャーに関する問題は重大です。

介護の要となるはずが、今はケアマネジメントが十分に機能していません。

標準50人という受け持ち数が多すぎたり、デスクワークに'忙殺されているからです。

30人でも生活が成り立つように報酬を上げなければ、ケアマネジャーは十分に機能しません。

介護保険は高齢者や家族を救うためにできた制度です。

それが予想通り機能していないのですから、見直しは3年後などと悠長なことは言っていられません。

ケアマネジャーなどの深刻な部分から、早急に介護報酬の引き上げをするべきです。

また、報酬などに問題が起きたのは審議会に現場の声が届いていないからだと思います。

介護保険の審議会には介護している家族、ホームヘルパー、ケアマネジャー、利用者などを入れ、生の声に耳を傾ける。

これが介護保険改善の重要な鍵です。

グループホームは
明るい高齢社会の切り札

 介護保険の改善とともに私が目指しているのは、住み慣れた地域で痴ほう症になっても身体が弱っても、人生の最後まで暮らせる社会です。

その拠点となるのがグループホーム。

大規模施設は改築して、個室化やユニットケアを進める。

そして、単独型のグループホームを作っていく。

21世紀は、地価の安い町外れに痴ほうの人などを隔離する従来の隔離収容型施設のあり方を根本的に変えていかなければならないと思います。

 もちろん、施設のスタッフが悪いと言っているわけではありません。

それどころか、現場スッタフの献身的なお仕事や熱意には頭が下がります。

ですが、痴ほうの人は多人数の環境や住み慣れない土地にいくと余計に混乱してしまうなど、大規模施設は根本的に高齢者福祉に不向き。

少人数の家庭的なケアが当たり前の海外では、大規模施設の集団ケアは痴ほう症にとって良くないと結論が出ています。

それなのに、いまだにr,本は痴ほうに適さない大規模施設を大量建設しようとしている。



 私は、全国の小学校区に1つずつグループホームを作るべきだと考えています。

そして、これが高齢者にとってのみならず、すさんだ“本社会を温かい共生社会に変えていく役割も果たすはず.地域にあれば、誰もが気軽に訪問できます。ボランティアもしやすい。

住み慣れたところだから、利用者は気軽に散歩などに出掛けられる。

近所の人がグループホームに子どもを預けているところもあります。

弱い立場の人が地域社会の真ん中にいることによって、「お互い助け合っていこうよ」という気風が生まれるんです。

ただし、グループホームを増やすには課題があります。

今の介護報酬では経営が成り立ちませんし、夜勤が組めない現状では事故の心配もあります。

また、いくら経営者や施設長に情熱があっても、薄給ゆえに良い介護スタッフの確保が難しい。

そのため、サービスの質が低くなる危険性があります。

その結果、良心的で責任感がある法人ほどグループホームの計画を諦めてしまうケースが多いのです。

だいたい、同じ痴ほうケアなのに、なぜ介護報酬が低く、利用者が特別養護老人ホームの倍の自己負担を払わなければならないのか。

良質のグループホームを増やすためには、介護報酬のアップが必須です。

報酬を上げるとともに、重要なのが不公平を正すこと。

現在は医療法人・社会福祉法人にしか建設費の補助が出ません。

自由競争が原則の介護保険で、これはおかしい。

NPOや民間事業者にも補助を出すべきで、代わりに行政はグルーブホームのチェックを厳しくする。

都道府県だけではなく、地域と密着している市区町村の認可も必要とし、市区町村の監督責任をもっと強化させたほうがいい。

介護報酬を.Lげて利用料は施設並み(月6〜7万円)にすれば、グループホームは爆発的に増えます。

さらに、チェックと競争原理でおのずと質がアップし、悪徳業者の排除も可能になります。

そして、グループホームの充実が「安心して年をとれる高齢社会」につながっていきます。
                          (インタビュアー中根裕)