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2005年06月30日

人:介護施設長の岩尾貢さん その人らしい暮らしを /石川

 地方版の記事のようですが、こういう記事をたくさん読みたいですね。

 ◇従来型を脱却、「家」のように

 「介護とは、お年寄りと時間をかけて付き合って、理解しながらかかわること」。石川県山中町の指定介護老人福祉施設「サンライフたきの里」で、岩尾貢施設長(58)は、そう言い続けてきた。利用者に「一人一人の生活リズムを大切にし、その人らしい暮らし」を送ってもらえるよう、施設のあり方も常に問い直している。

 たきの里は同町内唯一の特別養護老人ホームとして94年に開設。利用者には認知症のお年寄りも少なくない。精神科病院のソーシャルワーカーとして認知症にかかわっていた岩尾さんが施設長となったのは4年前。「ベルトコンベヤー式に一方的にお世話されても、お年寄りの生活能力は衰えてしまう」。食事時間、寝る時間を決められ、音楽や運動に参加させられる従来型の大型施設からの脱却を目指した。

 取り入れたのは、少人数のお年寄りが家庭的な雰囲気で介護スタッフと共同生活する「グループホーム」的な運営手法だ。個室10室と共用の居間を合わせて1軒の家のように感じられる「ユニット」を三つ増設した。各ユニットには玄関や表札があり、スタッフも呼び鈴を鳴らし、「おじゃまします」とあいさつして入る。

 増設前からあった50床の部分のユニット化も検討中。中心部にあったスタッフの部屋を解体し、障子をつけ、ソファを置き、畳やカーペットを敷いた共用の居間スペースを設けてみた。雑然としているが、普通の家庭のように利用者がくつろげる。スタッフの事務作業は利用者を見ながらその傍らで行う。また、施設には、本格的なグループホーム「しゃくなげ」も併設されている。

 岩尾さんは「全国痴呆性高齢者グループホーム協会」の理事も務める。忙しいと不満を漏らすスタッフには「頼むから働かないでくれ」と言葉を掛けたという。洗濯や掃除などの作業に追われることよりも、利用者に寄り添う介護こそ大切だ、という意味だ。

 岩尾さんによると、認知症のお年寄りの行動にはすべて意味がある。トイレでトイレットペーパーをすすいでいた女性がいた。「ワカメを洗っている」と女性。調べてみると、海辺で生まれ育ち、食堂で働いていたことがあった。食事の世話を手伝ってもらったら、症状は改善したという。

 大声を出すのは、「来てほしい」ということ。うるさがって遠ざければ、ますます大声を出さざるを得ない。「『自分はこんな生活を送りたい』『ここにいるのは不安』というシグナル。きちんと理解し対応すれば、症状は落ち着く」と断言する。

 実父が認知症となり、夜中に何度も起こされて不満を募らせた時期もあった。「父に悪いことした」という思いが精力的な活動の原点になっている。【池内敬芳】
毎日新聞 2005年6月29日


(消えてしまうので、全文引用しています)

投稿者 unno : 2005年06月30日 15:09

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