鳩山由紀夫代表 と DVシェルター&ホームレス視察 へ


DVシェルターの現場視察の報告。 

 今日の視察は、鳩山さんにはスーツでなく、ラフな 私服で来てもらった(私や一緒に行った松本部長と大村さんも)。


背広の集団では、いかにも「見に来ました」という感じですし、どうしても相手との間に線が引かれてしまいます。相手の方に率直に話してもらうためにも、ビジネスライクなスーツではない方がよいと考えています。スーツは、ある意味「戦闘服」ですので、どうしても相手の緊張感が高くなります。

「DV」=ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)
「DV防止法」=配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律

「シェルター」=一時避難所
「SP」=セキュリティ・ポリス


◆男子禁制DVシェルター
さて、DVシェルターの場所は秘密である。電話相談の電話番号は、公開されているが、場所は非公開。

なぜなら、場所を公開すれば、暴力をふるった夫が妻や子供を取り返しに来るからだ。それだけではない。
このシェルターでは、タイ・フィリピン・コロンビア・ペルーなどから日本に来て、ブローカーにだまされて売春を強要されている外国人女性も緊急避難でかくまっている。

ヤクザやブローカーにも場所を知られてはならない。だから、入口には監視カメラがあり、原則として、男子は禁制だ。

なぜなら、DV被害の女性や子供は、男性を見るだけで、恐れおののいてしまうケースが多いからだ。だから、シェルターの職員さんからは、「鳩山さんはいいですが、お付きのSP(シークレット・サービス=護衛)の頑丈な男性は、シェルターに入ってもらっては困ります」と言われた。

★DV防止法
昨年、10月13日から施行されたDV防止法は、小宮山洋子参議院議員をはじめとする超党派の女性議員の尽力により成立した。

このように、「DV問題は女性議員のテーマ」というイメージがある。
しかし、このシェルターに初めて訪問した男性国会議員が、鳩山さんと私であった。

ある意味で、男性こそ、DV防止に取り組まねばならないと考えるからだ。


◆このDVシェルターは、2世帯と2人が滞在中。フィリピン人のお母さんと子供2人。タイ人の女性と子供3人。二人とも夫は日本人だ。そして、日本人の女性2人。
 すべての女性がDVの被害者である。

一人の女性は、過去3年間におよぶ夫の暴力で肋骨(ろっこつ)を骨折し、子供を抱いてここに逃げ込んできた。ここに2週間をメドに緊急避難し、その間に次のアパートなどを探すのだ。

最近では、DV被害だけでなく、ホームレスの女性もここに入居している。女性がリストラにあい、
  ホームレスになるケースが増えているが、女性のホームレスは危険なので、福祉事務所の紹介でここに緊急避難するのだ。

このシェルターを利用する日本人は、3分の2がDV被害者、3分の1がホームレスである。

ここの女性スタッフは、「妻にDVをしたという自覚と反省が夫にないのが、最大の問題。
その自覚なしに『急に妻がいなくなった』と探し回る。
また、子供への虐待に対しても、
『あれは虐待でなく、躾(しつけ)だ』
と反省の気持ちがない父親が多い」と嘆く。

そして、
「男性の意識改革なくして、DVの問題はなくならない」と言う。

また、要望として女性スタッフは、
「民間のシェルターへの公的な補助金が少なすぎる。
よいスタッフを数多く雇うには、
もっと多くの補助金が必要です」と言った。

その後、シェルターの食堂や居室を訪問。
特別なはからいにより、入居されているお母さんや子供さんたちにも会わせてもらった。鳩山さんと共に、空き部屋にも入った。ふと机の引出しを開けてみると、「がんばるぞ!」と落書きがしてあった。人生を立て直す決意の落書きだろうか。

このようなDVの増加の背景には、昨今の不況も大きい。夫がリストラにあい、「住宅ローンをどうするのよ! 子供の教育費をどうするのよ!これからの生活をどうするのよ!」と妻から詰め寄られ、
逆ギレして妻や子供に暴力をふるうケースもあるという。

さらに、リストラや会社の経営不振が夫の精神を不安定にし、
夫の暴力の引き金になるケースも多い。
不況が家庭をも崩壊させているのだ。

そして、このシェルターでは子供のケアに力を入れている。
女性スタッフが言うには、
「子供が落ち着かないと母親も落ち着きません。
子供が安定しなかったら、母親もカッとなって怒り、
さらに、子供が泣き叫ぶという悪循環になります」という。
 
昨年のDV防止法の施行まで、
DVは「夫婦げんか」という次元でしかとらえられず、
「民事不介入」の原則から、警察も十分に対応してくれなかった。
しかし、DV防止法により、夫からの暴力がようやく
「犯罪」と見なされるようになった。
さらに、妻も泣き寝入りしないケースが増えてきた。

◆防止法では不十分
しかし、女性スタッフは「まだまだDN防止法は不十分」と言う。
次に主な問題点を列挙する。
(1)DV防止法は、民間シェルターへ委託費を出すことを
  うたっているが、まだ不十分な制度で、
  民間シェルターが増えていない。

(2)DV防止法は、妻への半年間の接近禁止を規定しているが、
  半年間では短すぎる。
  調停してきっちり離婚するまで、半年ではできない。

(3)夫の妻への接近は、半年間禁止されているが、
  子供への接近は禁止されていない。
  そのため、夫が子供に会いたいと言えば、
  警察もこれを阻止できない。
  さらに、子供を夫に取り返され、逆に、
  「子供に会いたかったら、家に戻って来い」
  と子供を人質にとられるケースもあるという。

(4)DVの定義が、身体的な暴力に限られ、
  「殺すぞ!」と大声でどなるというような言葉の暴力、
  お金を渡さない、という経済的な虐待などは、含まれない。

(5)DV防止法は各都道府県に、
  配偶者暴力相談センターを設置することになっているが、
  その設置が十分に進んでおらず、
  まだ、専門の相談員の養成も十分に進んでいない。

  DV防止法は、3年後に見直すことになっている。

まさに、このシェルターは、
「女の館」であったが、
「悪いのは男性」と痛感し、
少し神妙な面持ちで、鳩山さんと私は、シェルターを後にした。


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