痴呆性高齢者グループホームを訪問


◆さて、9月14日は朝10時から12時半まで京都の特別養護老人ホームを訪問しました。

ここは、特別養護老人ホーム50床、ショートステイ20床、デイサービスは日に40人定員、ケアハウス30室です。

○まず、ショートステイは平均45%しか利用されておらず、いつも半数の10ベッドは空いているとのこと。

○反面、特別養護老人ホームは4月オープンなのに、すでに50人待機者がいて、何年待ったら入居できるかわからないとのこと。

入所希望の問い合わせに対して、「『50人待ちで何年待ったら入れるか、わかりません』と答えると、『それでも待ちます』と言う人はいません。だから、待機者は50人以上に増えないのです」と。

 年間7-8人亡くなるとして、多くがが他の特別養護老人ホームと掛け持ちで申し込んでいるとしても、今から申し込んでも3年くらいは待たねばならない。

 厚生省はショートステイの特別養護老人ホームへのベッド転用に上限を設けているので、この施設でも、ショートステイの20ベッドのうち2ベッドだけ、特別養護老人ホーム(つまり、長期入所)に転用しているという。

○しかし、ここの特別養護老人ホームに限らず、ショートステイが空いているケースが多いので、ショートステイのベッドをもっと特別養護老人ホームに転用できるようにしてもよいかもしれない。
これについては検討せねばならないと思う。

厚生労働省は、「在宅重視」なので、あくまでもショートステイは減らしたくないのだろう。

あるいは、ショートステイのベッドを3ヶ月や半年のミドルステイに、老人保健施設のように使えるようにするのも1つの案かもしれない。

ショートステイのベッドが空くと収入が減るわけだから、施設も苦しい。

○ケアハウスは、所得に応じて月8-15万程度の自己負担。

ここは、30人定員で25人入居。男性が4人、女性が21人。私が話を聞いた女性は、車で1時間半かかる遠方から入居されていたが、要介護1で、「ここは安心です」と話しておられた。

○デイサービスは、定員40人だが、毎日平均20人しか利用がない。

「スタッフは定員40人で対応できるように多く雇ってある」と。

「けれど利用者が半分だったら、濃厚なケアを受けるので利用者にとってはいいですね」と言うと、「でも、経営からすると苦しいです」との施設長さんの話だった。

最高、週に5回利用している利用者もいる。週5日も利用できれば、家族はかなり楽である。

しかし、他の自治体では、デイサービスセンターが足りないので、デイサービス利用の上限を要介護にかかわらず、週2回と決めているところもある。

○ここの特別養護老人ホームは、50室のうち約半分が個室で、8室で1つのユニットをつくっている。残り半分は、四人部屋だが、カーテンで区切ってプライバシーに配慮してある。

 個室に住んでいる90歳の女性に聞くと、「人との付き合いは嫌だ。個室がいい」とのこと。「昼間は自室にこもってテレビを見ている」とのことだった。

しかし、スタッフに聞いてみると、彼女の自室にはテレビはない。彼女は痴呆症だった。また彼女は、「モノがなくなるから嫌だ」とも言っておられた。

○ここは自己負担は月に5万5000円程度。個室と四人部屋のすみわけは、「感染症の方や痴呆症の方は個室にした」とスタッフはおっしゃる。

「痴呆症のお年寄りは、四人部屋だと、モノが盗られたとか、トラブルが起こりやすい。個室だとそんな『盗った』『盗られた』という訳のわからないトラブルにスタッフがまきこまわれなくて済むのでよい」とのこと。

○また、当初は、近所から来た人は仲が良いだろうと思って同じ4人部屋に集めたところ、お互いを知りすぎていてケンカになったり、「お宅は全然、家族がお見舞いに来ないですね」など言い、お互い気まずくなったりしたので、その方法はやめたとのことだった。

○『四人部屋のほうがよかった』というケースはないですかと尋ねると、「ほとんどない。日中は部屋の外に出ていますから」と。

「個室といっても、寝室です。寝るだけの場所で、日中は共用ルームや食堂でみんなと一緒に過ごしています。スタッフはうまくお年寄りを部屋から外に連れ出しますので、個室は寂しいという声は聞かない。四人部屋でも部屋の中でお互いに会話してる人はほとんどいませんよ。外で話してられます」とのことだった。

 ただ、先ほどの痴呆症の女性は、「人付き合いは嫌だし、モノもすぐ盗まれるので、昼間はずっと自分の部屋に閉じこもっています」と言っておられた。

◆特別養護老人ホームの個室化問題については、賛否両論がわかれる。

ある厚生労働省の方は、「四人部屋だからといって、部屋の中で会話があるわけではない。今から新築する老人ホームは今後少なくとも20〜30年は使うことを考えれば、四人部屋の特別養護老人ホームを建てるのはよくない。自立した個室を好むお年寄りが年々増えるからだ。特別養護老人ホームの現場の人ほど、『個室はお年寄りが寂しがる』と個室に反対する人が多いが、それは、下手に『個室が良い』と言えば、いま自分がやっていることの自己否定につながるからではないか」と言っていた。

 これから新築される特別養護老人ホームの多くが全室個室であれば、2年後からは、全室個室で月10〜12万円くらいの自己負担の特別養護老人ホームと、従来型の四人部屋で自己負担が5〜7万円の特別養護老人ホームが社会に両方存在することになる。

 老人保健施設に勤務する私の知人は、「多くの家族は安いほうを好むので、自己負担が高い全室個室の新型特別養護老人ホームは空室ができるのではないか」と言った。


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