精神病院 訪問記


-----病院訪問記-----

以下、私が書くことは、もしかしたら精神病院の現場の方に失礼な部分があるかもしれませんが、最初にお断りしますが、現場の医師や看護婦さんが悪いとは思いません。貧困な制度が悪い。

厚生行政の問題です。

まず、見学と話を聞く
20日金曜日に、ある精神病院を訪問し、3時間滞在。
大学の博士課程で、精神医療を研究する竹端君に案内されて、見学の後、お医者さんなどの話を聞きました。

そして、滞在記
昨日22日日曜日午後ずっと、一人で病棟に滞在し、患者さんや看護士さんの話を聞きました。
以下、感じたことを書きますが、良心的な病院なので病院を悪く言うつもりはありません。あくまでも今の現実です。


-----独房-----

症状が不安定な患者さんは、鉄格子がはまり、中からは鍵が開かない、保護室という独房があり、ここに入れられます。

-----プライバシー-----

部屋は四人部屋から個室までありますが、プライバシーはありません。時々カーテンはあるが。
「この方は20年もここに住んでおられるのですよ」と聞き、びっくり。やさしそうな顔をしておられる。

多くが精神分裂病の患者さんだ。一番長い人は45年も入院。


-----スウェーデンにはない-----

私が2年留学したスウェーデンはほとんどの精神病院はなくなり、グループホームやケア付き住宅に精神障害者は住んでいる。


-----ペニシリンとグレイ-----

四人部屋でカーテンのかげで、イヤホンをつけてテープを聞いている高校生がいる。
「何しにきたん。この部屋にお兄ちゃんも入院するんか」と気さくに声をかけてくれる。
「勉強にきたんや」と軽く答える。
「お兄ちゃんは、ペニシリンとグレイどっちが好きや」と聞く。

その後、ロビーでいっしょにグレイの曲を聴く。彼は交通事故をきっかけに精神障害者になったという。
「お風呂が週に二回は少ない」などと苦情を聞く。

横で「なんで薬飲まないかんの(飲まないといけないの?)。薬ほんまに効くの」と20歳代男性の患者さんが看護士さんに聞く。

多くの患者さんが精神安定剤を飲んでいる。幻覚が見えたりするからだ。

「なんでこんな病気になったんやろ。この病気、日本で150万人もいるから100人に一人やろ」とその患者さんは言う。


私は病棟に数時間も滞在するのははじめて。

最初、案内してくださったお医者さんが、「患者さんはしっかりしていますから、山井さんが病棟に座ってたら

『この人何しにきはったん(来られたの?)。医者か看護士か研究者かって、きっちり聞いてくると思いますよ。はっきり、自分は政治家で、精神病院をよくするために、国会で質問をすると言われたほうがいいですよ』といわれた。


-----何しに来たの?-----

その20歳代の男性から、
「この人、何しにきたん。患者か」と私を指差して、看護士さんに質問が出た。
「精神病院がよりよくなるために、お医者さんや看護士さん(私が滞在したとき、患者さんが33名、看護婦さん2名、看護士さんが3名だった)を増やしたり、部屋を大きくしたりすることを研究してるんです」と私がまじめな顔で言うと、

「何言うてんねん。うそつけ。入院やろ。わかってるわ(何を馬鹿なこと言ってるのか、入院するために来たのだろう)」と笑う。
看護士さんも苦笑い。


-----余裕がない-----

看護士さんは「夕方は看護士が2人。33人いる病棟で、落ち着かなくなって、暴れる人が出たら、もう対応できない。ほかの病棟から助けを呼ぶが、とても大変。今の基準では、医師も看護士も少なく、一人一人に余裕をもって接することができない」と。

-----病気になるで-----

患者さんが言う。「看護士さんもかわいそうや。一日中忙しく走り回って、お医者さんからも『そんなに、忙しくしてたら病気なるで』と言われてる」とのこと。

私の訪問に同行してくださったのは、非番なのにわざわざ来てくださった看護士さん。私と同じ学年で、意気投合した。


-----来るはずないやん-----

その後も、いろんな話をする。さきほどの若者が再び聞いてくる。
やはり、見ず知らずの私のことが気になるのだろう。
「なあ、この人、ほんまはなにもん。入院やろ(本当は何者?入院するのでしょう?)」と看護士さんに聞く。

看護士さんは「実は、政治家や」と答える。

「えっ、うそやろ!」。
「国会議員」と看護士さんが言うと、噴きだすように彼は、

「そんな見えすいた嘘をよう言うわ。なんで国会議員がこの病棟に来るねん。この人も入院やろ。わかってるわ」と笑う。

おまけに、「国会議員やったら顔も知ってるわ」とのこと。
私が「ほんまに議員なんです」というと、
「うそやん。その顔、薬飲んでる顔つきや。ほんまは入院やろ」と言われる。

看護士さんいわく。「ほんまやて。そもそも国会議員ちごたら、なんで俺が休みの日やのに付き添いで、来てるんや」と説明。

-----国会議員って仕事してるの?-----

何度か説明してやっと納得してもらった。
「へえ、何党。ぼくも国会に関心あるねん。細川さんの時に政権交代したのに、あれが惜しかったなあ。国会議員ってちゃんと仕事してんのん」などといろいろ聞かれた。

国会の説明で話が盛り上がる。


-----世間の偏見-----

横に座っていた50歳過ぎの患者さんが口を開く。
「話を聞いてると、ほんまの議員さんらしいけど、お願いしたいのは、精神分裂病や、精神の病気に対する世間の偏見を、取り除いてほしいということですね。

私も自分がこんな病気になるまでは、偏見を持っていたけど、今の忙しくて勝った負けたとばかり言ってる社会。頭がおかしくならんほうがおかしいわ」という。

「政治家も精神医療に関心もって欲しいですわ」とのこと。

「水曜日には厚生大臣に質問しますけど、なんか言うことないですか」と聞くと、
「言うといてほしい。大臣も選挙通ったんやろうけど、その大臣がもらった票の何%かは精神障害者の票も入ってるんやから、精神医療のことも真剣に取り組んでほしい」とのこと。


-----現場の声を届けてほしい-----

私に付き添って下さった看護士さんは、休みの日なのに来てくださった。申し訳ない。
「本当に有難うございます。病棟に滞在したいと、私が急に申し出て、貴重なお休みの日に申し訳ありません」と謝ると、
「いいんです。はっきり言って、この病院に国会議員さんが来て下さるのは初めてです。ぜひ、この問題に取り組んで、現場の声を届けて欲しいと思います」ときっぱりおっしゃった。
責任の重さを痛感。


-----なかよし-----

患者さんとは、数時間滞在してすっかり仲良くなった。
ひとことで言えば、愛すべき方々との出会いであった。しかし、その愛すべき方が精神分裂病に苦しむ姿は痛々しかった。

私が滞在したのは急性期の病棟だが、重い人は部屋で寝ていたり、保護室という独房に入っているので、私が廊下の椅子で話せたのは軽い人ばかりだったと思う。

 さきほどの国会に関心のある若者から、
「また来てくれるん?」と帰り際に聞かれる。
「また、来るわ」と笑顔で答える。


-----専門分野に-----

生まれて初めての精神病院での数時間滞在。
私は、今まで高齢者福祉や痴呆性高齢者が専門だったが、精神医療も私の専門分野として取り組まねばと感じた。


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