痴呆性高齢者グループホームを訪問


今日はあるグループホームに訪問したので、ご報告します。入居者のプライバシーの関係もあるので、グループホーム名は伏せさせて頂きます。

 今日訪れたグループホームは、老人保健施設に併設された新築2階建て。私の拙著を読んで下さり、「一度、見に来てください」とお誘いを受けたので、有難く訪問させてもらった。

 中に入ると、新築の木のいい香りがする。玄関を入ってすぐ右がスタッフルーム。
 入ってすぐ、ダイニングキッチンがある。1階に居室が5つ。2階に居室が4つ。9人入居だ。

 スタートが4月25日。ちょうど20日経ったところで、すでに2人入居。あと2人入居するめどがたっているとのこと。

 朝の9時にお伺いすると、入居者2名とスタッフ4名が音楽を鳴らしてラジオ体操をしていた。

表情が豊かになったふめさん

 一人の入居者ふめさんは要介護4で痴呆症。身体は元気。もう一人の入居者ハツさんは、要介護1で軽い痴呆症。しかし、足腰は多少弱っている。

 中を見学すると、二階には介護教室の部屋もある。ホームヘルパー2級の教室を開いているが、20人の教室に30人以上の応募があったという。受講料は8万円。

 「2階に居室があるので、目がまわらないのが不安なのです」と、施設長さん。
 確かに、私も民家改造型で2階建てのグループホームは知っているが、新築で二階建てのグループホームは初めてだ。

 居室は四畳半よりも少し広く、小さな洗面台が各居室にある。廊下も部屋もフローリング。

 スタートしてまだ20日だが、ふめさんは以前、老人保健施設の個室に入居していたが、その時は、言葉数が少なく、人の目を見て話すことが少なかった。その時に比べて、表情がとても良くなった。

「こんなに変わるなんて信じられない」とスタッフも驚いている。

 老人保健施設では、ふめさんは、昼間でも、寝る時間が多く、トイレ以外の場所でおもらしをすることもあった。
 グループホームでは、トイレに行けるようになったし、昼間の寝る時間が減った。

 「花に水やりしたい」とふめさんは、自分から言い出すようになって、以前の「無口な人」のイメージから、顔つきも生き生きと元気に変わり、スタッフも驚いている。

 「ふめさんの会話や発語が増えた。以前は、名前を呼んでも目を合わせてくれたなかった。しかし、今は目を合わせてくれる。視点が定まったという感じ。
 語弊があるかもしれないが、

ふめさんが『人らしくなった』という気がする。

 これは、グループホームも始まったばかりでこれといったレクリエーションをしているわけではない。
 グループホームのほうがスタッフも多く、接触回数や声かけが多いから」とスタッフはその理由を考える。

 もう一人のハツさんは要介護1で軽い痴呆症。しっかりしているがスタッフの名前は覚えられない。
 自分は痴呆でないと思っており、「なぜ、痴呆性高齢者向けのグループホームに自分がいるのか?」を、多少不審がっている。
 ハツさんは自分のこのグループホームでの役割をいま探している最中のようだ。

 ふめさんのほうは、昔はみかん畑で働いていて、踊りが好きなことがわかっている。ハツさんについては、家族もあまり昔のことを知らないようだ。

利用者負担が高い 高いから入居者が集まるか?

 このグループホームの悩みは利用者負担。利用者負担は、介護保険の1割負担の月2万5000年程度を含めて、月18万円程度。そのうち家賃が月4万5000円、食費が月6万6000円くらいである。

 今まで10人相談に来て、「新築でアットホームできれいなグループホームでいいわね」と家族の方は言うが、「お金がちょっと高すぎる。せめて月13〜15万なら」という声が多く、希望者6人が利用者負担が高いことを、理由に断わられた。
 月18万円の負担で、入居者があと5人集まるかが不安だという。説明をすると「高いわねえ」という声が多いという。「別に儲け主義でもないのですが、これだけの費用がかかるのです」と施設長さん。

 しかし、敷金・礼金は無料だ。ここは、併設型なので2000万円建設補助が出たが、それでもこのグループホームは新築で8000万くらいはかかっているだろう。

介護報酬の違い 

施設長さんは、次のように言う。

「療養型病床の痴呆病棟なら介護保険から43万円月に出る。しかし,グループホームなら25万円。この18万の違いはおかしい。老人保健施設でも月35万でる。この老人保健施設とグループホームの介護報酬の10万の違いが、在宅サービスという理由でグループホームでは利用者負担になっている」

 確かに、併設の老人保健施設は自己負担月8万5000円(介護保険の1割負担込み)で、介護報酬が35万(9割が施設に入る)で、合計40万かかっている。グループホームは、利用料18万に、介護保険から介護報酬25万の9割の22,5万円が入って、40万5000円。

 つまり、老人保健施設もグループホームもかかっている費用は同じなのに、介護報酬がグループホームのほうが10万低いので、利用者負担が10万グループホームのほうが高くなる。これはおかしい。

夜勤にしてほしい 

 さらに、施設長さんは「夜勤でなく、厚生省が言う宿直だけの体制では晩はやっていけない」と言う。

 ただ、他のグループホームのパンフレットでは、入居金や建設費協力金、利用料の前払いなど合計880万円を入居時に支払わねばならない高級グループホームもある。

 グループホームもさまざまなものが試行錯誤で増えている。「うちのグループホームはこんなのです」という情報もお知らせ頂ければ嬉しい。

                         やまのい和則


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